村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2021年10月

相変わらずとんでも経済理論でトルコ経済を破壊しつづけるエルドアン大統領

「エルドアン大統領の言動が、ことごとくリラ安に…」トルコリラの焦点

 お前まだこんなことやってたのか。

しばらくおっかけていなかったのでいまさらなのだが、トルコがまた変なタイミングで利下げしたということでばかすかトルコリラが対ドルでも対円でも売られるひどいことになっている。

【トルコリラ円のチャート】
タイトルなし


エルドアンはずっと利下げが物価安定につながるという、りんごが重力に逆らって浮上するようなニュートンもびっくりの間違った経済理論をぶちあげて利下げを行っている。
利下げしても許されるのは基本的に経常収支がバランスとれている国であり、トルコのような経常赤字真っ赤な国においてはそのようなとんでも理論は残念ながら許されない。
この辺の新興国特有の問題については下記過去参考記事を見てもらいたい。

【過去参考記事】
新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

特にトルコは足りない外貨を直接投資ではなくて証券投資でなんとか埋めている国である。
今見たいな資源輸入国、かつ所得が低いために食料価格とエネルギー価格上昇がインフレ率上昇に占める割合が多いみたいな状態かつ先進各国が金融引き締めに動いている中で、相対的に自国債券の魅力度を落とす利下げを行って証券投資を散らしたり、インフレを放置して外貨流出を促進させたりというのは自殺行為以外の何物でもない。


政治というのは経済と密接につながっており、投資家に信頼される政治というのは投資を受け入れる上では最低条件となっている。
中国もそうだが、トルコも現在は残念ながら投資家に信頼される政治を行っていないと言わざるを得ないことは確実だろうと思う。
また政治家は基本的に自分が間違っているのを中々認めない職業でもあり、というより間違ったことを認めるといきなり失職したりするということもあって中々軌道修正が見込めない。
特にそれが独裁であればあるほどその傾向は強く、大体は間違った経済理論をぶちあげているトップが辞任して新しい世代に交代しない限りは軌道修正される見込みは基本的にない。
なので政治の間違った方向性による悪影響というのは相当程度長期間にわたることを知っておかなければいけない。
トルコはまさにエルドアン大統領が居座っている限りはこの間違った経済政策を続ける典型的な代表例だろうと思う。
そのような投資家に信頼されない政治を行っている国への投資は避けることが枕を高くして眠る安心した投資法だと思う。
まあ短期的な乱高下を取りたいというのであればまた話は別だが・・・

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RBAのYCC完全放棄で債券市場に緊張が走る

豪中銀、利回り目標防衛せず-国債購入公表なくYCC停止観測も

多くの債券投資家ぶちぎれからのリスク資産ぶん投げ圧力が始まりつつある。

木曜日に一度オーストラリア中銀のRBAが本来イールドカーブコントロールで購入する必要性のあった3年国債の買い入れをしなかったために国債金利が高騰したことは一昨日のブログで記載した。

【過去参考記事】

先進各国の短期金利に圧力が加わり始める


金曜日は豪州市場が始まった直後はまだ中銀が国債買い入れをしてくれるのではないかという淡い期待と政策金利織り込みが早すぎるのではないかという期待感から買い先行の金利低下で始まったが、RBAが買い入れをしなかったことが発覚したところから木曜日と同様にバカスカ売られて短期~中期の政策金利動向に影響を受けるゾーンの金利中心に急騰した。
これまで2024年まで政策金利の引き上げをしない・3年金利を0.1%に留められるようにイールドカーブコントロールするという発言は完全に反故にされ、債券投資家を裏切る形となった。
上昇幅もかなり痛みを伴うもので、これは金融法人を中心とした債券投資家にはかなりきつい動きとなっている。
その証拠に豪州株価指数もさすがに金曜日は棒下げの展開となり、債券金利上昇の損失を埋める形で売られていることは想像に難くないだろう。
市場が許容できない金利上昇があればリスク資産が下落するという教科書的な動きである。

【オーストラリア200総合株価指数のチャート】
タイトルなし


この流れは欧州も木曜日に続いて継がれることになった。
特に欧州ではイタリア・スペイン国債金利がひさびさに売られまくるといった典型的なリスクポジションからポジションを落としているという展開になっている。

【イタリア10年国債金利のチャート】
タイトルなし


ECBラガルド総裁が政策金利は引き上げないと言ってなんとか牽制しているが、RBAのせいで口先介入効果が薄れており、実際に動きを止めるには中央銀行の実際の行動がどうなのかの誠意を投資家は求めている。
しかし、先進各国とも異常な不動産価格の高騰・予想外の賃金インフレや資源価格高騰・供給側の問題によるインフレ率の上昇による社会格差の拡大で追加での国債購入による金利抑制には動けなくなっている。
特にECBなんて国債買い入れにおいてもどの国の国債を購入するのかといった配分問題もある上に、インフレファイターのドイツが既に相当イライラしていることから現状で口先介入以上の行動を求めるのは難しいだろう。

現状この国債金利上昇を抑制できるプレーヤーがいるとすればFRBしかいないだろう。
さすがに米債は豪州国債と比べて市場規模が圧倒的に違うため、金利は上昇しているとはいえ、比較感では相当金利上昇はゆるやかである。
しかし既に来年の政策金利引き上げさえ見えている状態で現在ツイストフラットしているわけなので、長期側を売って短期側を買うというツイストオペをするぐらいしかできることはない。

結局現在先進各国の中銀は自然とリスク資産価格が下落し、自分達が動ける大義名分ができるまでは予防的に動くことは難しいだろうという話である。

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現場の状況悪化と習近平思想の板挟みに苦しむ中国当局の不動産市場救済対応

中国当局、恒大創業者に個人資産での債務返済を促す-関係者

正気じゃない。

ニュースで報じられているがエバーグランデに対して創業者許家印氏に個人的な所有資産で返済しろと中国当局は命令している。
これを見て当局の対応は非常にちぐはぐなものになっているという印象が個人的にはさらに強まっている。

ハンガリー政府より多く金を借りている企業の借金を一個人の所有資産で返済しきれるわけはなく、実質的には死ねと言っているのも同様である。
加えてこうした発言をしていること自体が中国当局自体が自分の腹を切って市場に介入する気が未だないことを示す最たる例だと思っている。
 
これまで中国不動産会社は大量にドル建て社債で資金を調達してきて、これが中国の外貨流出規制で実質的には中国本土内債務に対して後しているということもあり、個人的にはてっきり中国当局はこの返済について放置しても良いと考えているものと個人的には考えていた。
しかしいくら実質的に劣後しているとはいえ、USD建て社債がデフォルトした場合にはクロスデフォルト条項で中国本土内債務もデフォルトに該当することから、一度デフォルトすれば企業は新規の資金調達の道を当面閉ざされることを意味し、これがさらなる景気の悪化に発展することは中国当局は懸念し始めていることは確かだろう。
しかし、今の動きからすると習近平に対してデレバレッジ政策の撤回・住宅不動産購入の規制撤回・不動産デベロッパーへの直接的な資金投入などの根本的な解決方法を取らせるまでは緊張感がやはり高まり切っておらず、中国政府はとにかく自分の腹を切らずして責任を取らせきる方法を金が出せるところからなんでもいいので資金を出させるという作戦に出ている。

しかし、ドル建て社債を出している不動産デベロッパーは普通に1000億円単位で金を借りているわけで、基本的にこんなレベルの対応では焼け石に水であることは火を見るより明らかである。
加えてドル建て社債の債務履行について中国当局が厳命していることから、今度は本土内債権者が苦悩する立場になりつつある。

【参考ニュース】
中国当局、債務の確実な履行要請 不動産各社に

なぜならこれまでは実質的に回収劣後している外貨建て債務を無視することによって本土内債権者は想定よりも高い回収率が見込めるのではないかと思われていたところから、外貨建て債権者と同様にデベロッパーに残った現金の奪い合いに発展していることになる。
民間不動産デベロッパーが生き残るには償還されたドル建て社債分を銀行から借りるしか手段がないのだが、1シリーズ償還されるだけで100億円単位の借り換えになるわけだがそのような多額の融資を銀行が不良債権になることを覚悟して追い貸ししてくれるのかどうかである。

やはりまだ中国不動産デベロッパーの危機は終わっていないと見るのが妥当だと思う。

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先進各国の短期金利に圧力が加わり始める

カナダ中銀、早期利上げ示唆 経済成長堅固で量的緩和終了へ

これはストレスかかる動き。

昨日水曜日はカナダ中銀が早期利上げを示唆したことにより、これまで2022年いっぱいは政策金利上がらないだろうと思われていたところから来年4~9月の間の利上げになるという市場見通しに切り替わり、2-3年金利が崩壊した。

【カナダ国債2年金利のチャート】
タイトルなし


英国も下手すると11月に利上げがあるしということで、もはや先進各国は利上げ機運が急速に高まっている状態になっている。

特に現在注目されているのはオーストラリアの手前側の金利である。
オーストラリアは日銀と同様にイールドカーブコントロールをしており、3年国債を0.1%になるよう誘導すると言っている。

しかし、想定以上のコモディティ価格上昇・住宅価格上昇・インフレ率上昇・雇用のひっ迫から既に2022年3回の利上げが想定されており、この時点でYCCの前提が崩壊していると認識され、メタメタにオーストラリア国債3年は売られまくっている。

【オーストラリア3年国債金利】
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というか3年どころか2年も馬鹿売られし始めており、3年金利YCCが完全に形骸化している。

【オーストラリア2年国債金利のチャート】
タイトルなし

ようは先進国でいうと日本以外は政策金利の上昇という現実的な金融引き締めの想定スケジュールがどんどん進んでおり、手前国債金利は急速に雰囲気が悪化している。
一方で超長期側は早すぎる金融引き締めによる景気減速懸念により金利が低下するという大フラットニング祭りとなっている。
これまでコロナ禍で先進各国とも長い金融緩和を示唆していたのが、完全に裏切る形で動かざるを得ない局面に追い込まれており、債券投資家は疑心暗鬼に陥り始めている。
つまり債券投資家が各国中央銀行の発言を信用できなくなっているのである。
現在これが金融市場にストレスをかけている。

ストレスが緩和されるには現在起こっている短期の国債金利急騰スピードがおさまり、なだらかな動きにならないといけない。
しかし、それは経済見通しの変化を伴うものになるため、現実的にリスク資産の調整を伴って初めて各国中銀が動けるものである。
各国中銀はリスク資産のバブルのために金融緩和をしているわけではない上に、手前側金利はあくまで政策金利見通しに基づいて動いているため予防的に中銀が動くことはまず無理だろう。

以上のように現在の金利の動きを見ればこのまま能天気にリスク資産が上昇するというよりは、やはり二番底確率の方が高いと思っている。
特に短期金利上昇に弱いような脆弱銘柄には相当程度注意を要すると思うし、というよりこんな局面でそんな銘柄を持つ気にもなれない。
 
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米国住宅価格の伸びは早めのFRB金融正常化を促す

米ケース・シラー住宅価格、8月は前月比1.2%上昇 伸び鈍化

昨日は米国住宅関連統計では新築住宅販売とケースシラー住宅価格指数の発表があった。

新築販売はこれまでしばらく予想を下回る水準が続いてきたが、ここにきて予想を上回る伸びとなった。
ここもと報道を見ると金利が上昇する前に住宅を買おうという動きが増えているようで、これが直近販売を促進させているようにも見える。
金利が低い中で住宅を購入するのはインフレヘッジの効果があると考えて動いている人も相当程度いるように思う。
たださすがにサブプライムローンの時と比べて無茶苦茶な属性の人がむちゃくちゃなローンを組んで住宅を買っているという話ではないので、住宅市場が変な過熱の仕方をしているというわけではない。

【参考書籍】

サブプライムを売った男の告白―欲とペテンと無知!

ケースシラー住宅価格指数は前年比19.6%・前月比1.17%の価格上昇となった。
ニュース記事では伸び鈍化と表現されているが、この伸びが高原状態で何か月も続くケースがサブプライムローンバブルの時も見られているので、素直にこのまま放置していれば適正な伸び率に自然に収斂していくとは思えない。
現在米国の住宅価格は毎月1%近くの値上がりをしていることになるが、持続性云々は別として金融当局が価格の伸びを抑えるために動くべき水準であることは確かである。

日本でも東京区部中心に毎月1%近く住宅価格が上昇しているわけで、低金利下にあってしかも家賃上昇といった住宅購入を促進させるようなインフレ率上昇が起こっている米国ではさもありなんな状況だろう。

【過去参考記事】

レインズデータライブラリーから見る9月首都圏中古住宅市場動向

しかし現在の価格伸び率はあのサブプライムローンバブルを超える価格上昇率で、さすがにFRBとしてこれを放置するわけにはいかない水準にあり、雇用の改善が進んでいる中で住宅価格バブルを放置しながらの金融緩和の正当化が失われているため、やはりまだ金融引き締めが早まる可能性は十分にあるだろう。
この辺の米国景気の判断については下記過去参考記事を参照してもらいたい。

【過去参考記事】
投資の役に立つ統計から米国経済の状況を読み解く方法

現在個人的に想定しているFRB金融引き締めスケジュールは2022年9月に一回目、さらに12月にもう一回というスケジュールである。
三ヶ月に一回の利上げが何も外的ショックがなければ十分正当化されるので、短期債は時間が経てば経つほど金利上昇圧力にさらされることになると思われる。
 
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村越誠

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