村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2021年09月

中国PBOCが異例の5営業日連続リバースレポ資金供給

中国人民銀、短期資金の供給を2兆円に拡大-恒大で市場動揺後

点滴だけでどこまでごまかせるか。

中国の中央銀行であるPBOCは金・土・水・木・金(今週月・火は祝日)と毎営業日連続でリバースレポで資金供給を行った。 
こんなに連続して資金供給するのは久方ぶりで、しかも前の連続リバースレポは春節前の資金需要の高さを補うものであったため、現在明らかに中国の短期金融市場にはエバーグランデはじめ多くの民営不動産デベロッパーの資金繰りが苦しくなっていて圧力がかかっているということがわかると思う。

<PBOCリバースレポ資金供給の状況>
タイトルなし

このリバースレポを入れている効果もあり、市場に資金が入ることで相場はまだ完全には崩れておらず中国株はなんとかぎりぎり体裁を保っている。
(上海総合指数だと国営が多いのでCSI300よりややチャートはまし)

<CSI300のチャート>
タイトルなし


ただ、このリバースレポでの資金供給は例えれば入院患者に対して点滴を打っている行為と同じである。
入院患者が回復方向に向かっていたり、そもそも病状が軽いものであれば点滴でも十分回復するだろう。
しかし、現在中国景気は習近平の共同富裕政策の下ひたすら民営企業が痛めつけられている。
そこに中国景気の要である不動産に対しての規制圧力で広範な民営デベロッパーの業況悪化は止まっていない。
短期で資金供給を行っても社会融資総量の残高の伸びは最新で前年比10.3%と伸びの低下が止まらない状態になっている。
日に日に資金繰りが苦しいデベロッパーの名前が増えて行っているのも承知の通りだと思う。


病状が悪化している入院患者に対して点滴だけ打ったところで最初は回復期待がでるが、実際は回復しない。
つまりPBOCがリバースレポでの資金供給は短期的に市場のカンフル剤になるものの、根本的なマクロ環境の悪化に対しての治療にはなっておらず、資金供給行った日こそテンションが高くなるもののこの資金供給に効果がないことや市場に飽きられた場合には効果がなくなる。

実際に米国でもリーマンショックの時はFRBがリバースレポ資金供給を随時行ったものの、マクロ経済環境悪化の大波にはそれでは対処できなかったことはポールソン回顧録を読めばすぐにわかる。

<参考書籍>

ポールソン回顧録

なので、一時的にハイレバレッジでショートふるようなイカれたプレイヤーのポジションはこのリバースレポ効果で切れるものの、中長期でリスク資産にベットするようなプレイヤーの買いを誘うことは難しいように思う。
個人的には引き続き腰を据えて押し目を待つ形を取っている。
 
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FOMCミーティングで金融正常化が進展し始める

米長期債利回り急上昇、FOMC後に市場の利上げ時期予想前倒し

休日挟んでいたので、今さらですが。

22日にFOMCミーティングが行われ、ここでパウエル議長はテーパリングは今の経済進捗状況であれば11月開始になるだろうと発言し、概ね市場が事前に織り込んでいたものとなった。
テーパリングは来年半ばには完了予定ぐらいだというのもほぼ市場のコンセンサス通りだったと思われる。
そしてドットプロットでは2022年中に利上げが開始されるのが18人中9名と増加し、市場の予想では2022年末には1回利上げするのではないかというところまで織り込みが早まった。
パウエル議長自体はテーパリングは利上げが早まることを示唆するものではないと発言しているものの、そんなわけあるかというのが普通の投資家の反応だろう。

ただミーティングの中でも何回も強調している通り、経済に変調が予兆されれば方向性はいつでも転換させる姿勢を見せており、そういった意味ではパウエルプットが株価の下支え要因になっていることは確かだろう。 
ただ、変調といってもエバーグランデの問題ごときでは方向性を転換することはありえないと前回ブログ記事では記載しており、軽々しくすぐにFRBが再度おかわりをくれると考えるのは間違っていると思う。

米国債金利は短いところから上昇する形で反応しており、債券市場では明らかに将来の利上げ機運が動き始めている。

<米国5年債利回り>
タイトルなし


まあこうなるとリスク資産はやはりなんでもかんでも上がるというステージではなく、相当程度真剣に吟味をして選ぶ必要性があるように思える。

米債イールドカーブはベアフラットの形で反応しており、ここからイールドカーブが潰れていくという典型的な金融引き締めサイクルに向かう様相となっている。
一般的には本格的な景況感のダウンサイクルはイールドカーブが潰れ切ったところから起こると言われており、今の超長期金利の位置だと単純に利上げを7-8回するとその領域に到達する。
長いところはもっと反応しても良いように思えるが、欧州・日本の投資家は当面利上げなんてなくてとにかく金利がある資産を買いに行く方向性にある上に、現状ヘッジして十分な利ザヤが取れるということもあり長いところは水準的には低いままの状態になっている。
単純に利上げをしていっても2-2.5%の間が限界じゃないのかねという見方をしているとも捉えることができると思う。
 
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米国の住宅市場は堅調さを取り戻し、テーパリング延期は見込めない

米住宅着工、8月は3.9%増と予想上回る 一戸建ては低調

米国住宅市場はバブル一直線。

火曜日に米国では新規住宅着工と建設許可件数が発表された。
前月までの指標内容は住宅価格の上昇・資材の高騰や確保難・建設労働者の確保難・ペントアップデマンドの消失で軟調な状態が続いていた。
しかし、火曜日に発表されたものはどちらも市場予想を上回るものとなり、低下から増加に転じてきた。

上記ニュース記事では未だに資材確保や労働力確保難で戸建ては低調さが続いていると記載があるが、件数事態が増加に転じたことは段々影響は軽くなりつつあるものと思われる。
これによって今の住宅価格の上昇だけでは米国住宅の需要の高さは留まることがないということがわかった。
資材も木材中心に大分落ち着いてきたことに加えて、中国が不動産の総量規制で自爆する中でコモディティの多くが下落に転じてきたことも後押し材料だ。
労働力確保もこれまでネックだと言われていたが、失業保険の上乗せが切れたということもあり、この雰囲気は徐々に労働者確保が進み始めているように思える。
ペントアップデマンドは消失したものの、その影響も一巡しサイクルとしては正常化したことを意味する。
米国経済にとって最も重要性の高い住宅市場環境は金利が低い中で作れば作るだけ売れるという状態が続いており、足下中国ネタで相場が揺れる中で特段米国経済は揺れ動いていないということがわかると思う。

なので、これを見て米国経済が失速していると考えるのは難しいと思われる。
それと同時にテーパリングの実施開始が来年にずれ込むという可能性はこれでほとんどなくなったと思われる。
中国のエバーグランデの問題は今のレベルだと中国国内の問題の範囲からまだはみ出ておらず、国外の材料・しかも自爆ネタで金融引き締めを遅らせるような理由はFRBには一つもない。
中国経済は悪化する一方で、米国経済は堅調さが続くという形でダイバージしていっているのは雰囲気として2015年の夏に雰囲気は似ているなあと思っている。

つまり米国経済自体は堅調なものの外部要因で株価が揺らされるという話である。
さらに言えば、もしHYGやLQDなどのクレジットに波及まですれば2015年にもあった通り、本当に金融引き締めが後ろ倒しになるだろう。
逆に言えばそこまでせっぱつまらないとテーパリングスケジュールがずれることはまずない。
 
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エバーグランデのデフォルト懸念は100%人災

Credit rating agencies take the axe to China Evergrande

足下のエバーグランデのデフォルト懸念については、はっきり言えばほぼ100%人災であった。
その人災とは中国政府の不動産政策において習近平思想の基に緊縮の危険性を無視して強烈に締め上げたことにある。
これによってエバーグランデの物件販売が急速に芳しくなくなった。

中国不動産デベロッパーで過激なところは大体年率20-30%ぐらい前契約販売を増やすのとを掲げている。
(昔はもっと過激だった)
さらに前契約でもらった前受け金は手元に置いておくなんてしみったれた発想は世界共通だがいけいけどんどんの時は 考えもせず、全部投資に回してしまう。
少しでも販売につまづけばあっという間に資金がショートしてしまうのでまさに自転車操業で、全力で自転車を漕ぐような経営を続ける。
3年ぐらいで売上高が倍みたいな企業はザラであったが、それに比例して有利子負債も倍々ゲームであった。
中国人は住宅を持っていないと結婚できないと言われるほど需要が高いということもあり、作れば作るだけ売れるんだから野放図的に拡大してきた。

2010年頃からずっとこの中国不動産デベロッパーの経営姿勢については問題視されていて、そのたびに中国政府はバブルをつぶすために様々な手を施してきたが、中国経済への影響がでかすぎるということもあり、介入途中で経済が揺らぐと同時に規制を緩めて結局何もなかったみたいな形になるのがお決まりのパターンになっていた。

しかし、2021年になり習近平が米国にて頻繁に喧嘩をしかけてくるトランプ政権が消滅したことと国内の基盤固めが済んだこと、コロナ禍はあったがコロナバブルと呼ばれるほどの世界的な財政支援・金融緩和で余裕が出たことから、ここにきて社会格差是正というお題目で不動産規制を強化したことが、今回のエバーグランデのデフォルトに直結した。
習近平はデレバレッジに駆り立てられていて、ここもと経済への影響を無視したレベルでのデレバレッジ策を強硬している。
そしてここにきて独裁の弊害として、この無謀な試みの修正が行き着く所までいかないと止まらないという状態になっている。

今回のエバーグランデのデフォルトはもしこのまま放置されれば買掛金込みの負債総額は30兆円におよぶレベルだし、他の不動産デベロッパーも連鎖的に不安視される可能性があるので、ただでは済まないだろう。
ただし原因は人災なので、中国政府が過ちに気づき巨額の財政支援・大規模金融緩和・不動産規制の撤回という方向に転換すれば需要サイドの問題ではないので問題は迅速に解決方向に進むだろうと思われる。
問題はどの時点で中国政府が態度を改めるのか一本に絞られている。

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欧米投資家がようやくエバーグランデ(恒大)の問題を真剣に認識し始める

NYダウ614ドル安 中国恒大不安、リスク回避広がる

今さら認識するとか2015年から何も学んでない。

金曜日まではエバーグランデや中国不動産セクターについてのニュースフローは増えていたものの、そこまで劇的には増加していなかった。
しかし月曜日になって香港株が爆落すると同時に一気にニュースフローが増加し、欧米人がようやく事態の深刻さに気付いた模様だ。
おそらく初めてエバーグランデ問題について聞いたみたいな人もいるとかいうレベルの欧米投資家も相当程度いるように思える。
ただし、まだLQDにまで波及していないところを見ると、認識が初日ということもありまだまだ甘いように思える。




欧米人は基本的に中国情報をキャッチして真剣に考えるまでにタイムラグが生じる。
中国がGDP世界2位になったにもかかわらず、相場全体に与える影響については欧米投資家の認識は2010年前半とほとんど認識が変わっていない。
2015年の中国株暴落と人民元切り下げなんてまさにその典型例であった。
2015年に中国株はプチバブルになっていたところから当局の引き締めで何日も多くの本土株銘柄の値がつかなくなるというまさに無制限メルトダウンみたいな現象が起きた。
さらに天津で化学工場が大爆発して流動性ひっ迫が加わったところで人民元安もぶつかってきた。
しかし欧米株は最終局面の人民元安がぶつかってくるところまではほとんど中国材料を無視して推移し、最後の最後で短期間で織り込みに行って顔を真っ赤にしながらリスク資産をぶん投げていた。
そして事態の深刻さが認識されてから1か月半~2ヵ月程度グローバル相場はひどい状態になった。
(そのあとドイツ銀行AT1ショックはあったがおまけみたいなものであった)

2015年の時も中国で起こっていたことはクレジットクランチであり、今回のエバーグランデの件もクレジットクランチである。
当ブログでは何回も言及している通り、相場が大崩れする時というのはクレジットクランチが起きてリスク資産を投げざるを得ない人が増加することだと説明している。
今回リスク資産を投げざるを得ない人達というのは中国国内プレイヤー・中国と関係が強いアジアPE・生保といった面々であろうか。
リスク資産を投げざるを得ない人がいる時というのは需給が全てであり、テクニカル分析なんていうのは関係なくゲロ吐くほど売られるので、はっきり言えば比較的長い目線の移動平均線以外のテクニカル分析はほとんどあてにならなくなる。

ちなみに欧米人がぎゃーぎゃーいったところで習近平上層部は動くことは決してない。
そういった外とのやりとりはほとんどしないのが中国共産党の特色であり、中国の政治家が長生きと言われるのはこうしたストレスの溜まる中国外とのやり取りが全然ないからである。

<参考書籍>

超大国・中国のゆくえ2 外交と国際秩序

中国政府が動く時は唯一国民が一揆を起こしそうな時と共産党絡みの国営企業に悪影響が出てきた時である。
 
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