村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2021年07月

ソフトバンクの現金化の順番に注目

夢がない順に売るのは当たり前の行為。


昨日の記事の中で、今回の中国株騒動で最も被害を受けるのはソフトバンクだと記事にした。

<過去参考記事>

中国株下落に影響を受ける範囲を考察


そうしたことを考えている最中にソフトバンクがDIDIの穴埋めのためにUBER株を大量売却したというニュースが入ってきた。

<UBERの株価チャート>
タイトルなし


決算においてあまりにもひどい決算を出してしまうとただでさえ比較的高い金利で金を借りているソフトバンクのクレジットラインが崩壊しかねないので、他の株を売却して損失を穴埋めするというのは至極当然な話である。
しかしここで考えなければいけないのは、ソフトバンクが株を売却するということの意味である。


上記の通り、ソフトバンクは目の前の経済指標だとか金利だとか為替だとかはほとんど気にしておらず、構造的に飛躍する産業に投資するというのをお題目として掲げている。
構造的に飛躍しそうな産業にガバっとでかい網を投げ込んで、うちいくつかが当たれば他の損失を穴埋めしても余りあるリターンが得られるという考え方だ。
そのような考え方を持っているソフトバンクが売却するという株というのは、裏を返せば孫正義氏が考える構造的な飛躍が見込みづらくなっている銘柄と考えることができる。

つまりソフトバンクが相場の下落によって現金化圧力にせまられた時には、含み益の大小もあるが、メインは保有銘柄のうち構造的にこれ以上の飛躍が他の銘柄と比べて劣後する銘柄から順に売却するということである。

今回のDIDI株の損失を穴埋めするためにUBER株を売ったということは、UBER株はこれ以上の構造的な飛躍が他の銘柄に比べて劣後すると孫正義氏は考えているということを意味している。
また競合他社のやっていることが皆おんなじようなものであれば、その産業自体の構造的飛躍が落ちてくるということを見ていると思われる。
そう考えるとUBER株売却はUBERだけでなく、配車アプリビジネスというもの自体に一番でかい投資資金を投げ入れてたプレーヤーが抜けたことが意味することは深刻に考えるべきだと思う。
しかもソフトバンクは大口投資家として常に企業トップと会談しているわけだから、他の投資家と比べて明らかに持っている情報の質が異なるはずである。
そういった限りなくインサイダーに近い人間が株を売却するのだから、そういった銘柄・産業はもはや出涸らし・夢なしというのは当然の話だと思う。

もちろんソフトバンクが間違って有望株を売ってしまうという可能性もなきにしもあらずだが、それは市場の流動性がひっ迫して、ソフトバンクがなんでもいいから現金化しなければいけないという本当に切羽詰まった状況でなければ起こりえないだろうと個人的には考えており、現在のような未だに流動性じゃぶじゃぶな状況ではそういった超有望銘柄を売るということは基本的にはないと思っている。
まだまだ中国株相場が不安定な状況が続きそうという中で、現金化圧力に迫られたソフトバンクがどの順番で株を売却するのかは注目すべきところだと思う。

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中国ハイイールド債発行企業がクレジットクランチ一歩手前


これも習近平政権のやりすぎ行為の被害者。

上記のツイートでは中国USD建てハイイールド社債の利回りが8%から12%に急上昇しており、中国ハイイールド銘柄のクレジットクランチの一歩手前まで追いつめられていることがわかる。
ただ、これについてきちんとした補足解説が必要だと思うので解説しておきたい。

いわゆる新興国では自国の金融機関が未発達で大きなロットでの資金調達ができないことが多々あり、またまだ自国通貨の信用力が低いことや債券市場が未発達ということもあって自国通貨建て債券を外国人に買ってもらうことが難しい地域の民間企業ではハードカレンシー(USD・EURがメイン)で社債を発行して資金調達をすることがある。
その際はムーディーズ・S&P・フィッチの3大グローバル格付け機関のうち1-3社程度格付けを取得し、それをもとにハードカレンシーを保有している外国人投資家に評価してもらってUSD or EUR建て社債を発行する。

外国人にとってはカントリーリスクを背負う必要性はあるものの、USDといった為替リスクを気にする必要性がないor簡単にヘッジ可能な上に、自国通貨建てと違ってデフォルトした場合にグローバルな資金調達の道が閉ざされるということもあり発行体が頑張って返済する度合いが高いということもあり、新興国ソブリン・準ソブリン・一部大手企業にとっては比較的ポピュラーな資金調達方法である。

中国では不動産市場の巨大化によって、無数の不動産デベロッパーが誕生した。
しかし、まだ自国の金融機関が民間企業に積極的に融資してくれず、しかも金利が高いということ、加えて2015年まで元高が進んでいたこともあり、為替で金利分をチャラにできるという皮算用で多額をUSD建て社債を発行して資金調達をした。
しかし、USD建て社債を発行するわけでムーディーズ・S&Pのどちらか+フィッチの格付けの取得が必要で、格付けを取得すれば一部最大手・国営系を除いては軒並みBB格以下という格付けとなった。

そのため中国USD建てハイイールド社債市場というのは、米国ハイイールド社債のように様々な業種の企業がいるわけではなく、大半が中国の不動産ブームに乗っかって資金調達をしまくった不動産デベロッパーで構成されている。

今まで何回もドベ不動産デベロッパーは盛大にぶっ潰れると言われながらも、中国人の旺盛な住宅需要を背景に2015年の人民元切り下げ・2018年の米国金融引き締め+米中貿易戦争を潜り抜け、2020年のコロナ禍も切り抜けたように思われていた。
一部デフォルトした中国ハイイールド不動産会社もいたが、規模間が非常に小さいところ(カイサなど)だったうえ、何やら特殊事情だったということもあり大きな影響はなかった。

しかし、昨今習近平政権の社会格差を是正するという名目の下、不動産規制が大幅に強化されており、不動産会社の前契約金額が落ちてきている。
現在話題になっているエバーグランデの6月前契約金額は716.3億CNYと前年6月760.5億CNYから-7%とひどい状態になっている。
そのような中、財務レバレッジ比率が高い不動産会社の融資も絞られている上に、ドル債調達は直近のエドテック非営利化事件で政府に目をつけられている民間企業は外貨建て資金調達の道がとざされたため、資金調達もできない。

不動産デベロッパーという業種は常にキャッシュが自転車操業なので、今までYoYで+50%とかいうレベルで在庫を積み上げていたエバーグランデにとって前契約も駄目・リファイナンス環境も駄目という中でもうどうしようもない状態になっている。
既に建設会社への支払手形の支払いが遅延していると訴えられており、これまで何度もリファイナンス危機に直面してきた同社もいよいよチェックメイト寸前の状態と今まで見てきたことがないレベルで追いつめられている。

<参考ニュース>
Evergrande sued by China state-owned builder over $62m bill

しかし、グローバルに見れば住宅需要の引き合いは非常に強く、住宅デベロッパーなんてのは需要あまたなので日本ではオープンハウスが絶好調なのを見ると、なんで中国の住宅デベロッパーはこんなひどい状態になっているのか不思議に思われる人もいると思う。

結局、これも習近平政権の「社会格差を是正する」というお題目が多くの不動産デベロッパーを破滅の淵にまで追いつめる斜め上の方向に向かっているということになっている。
エバーグランデがデフォルトすれば、その他同様なハイイールド不動産銘柄が連鎖的に大規模にデフォルトすることは目に見えており、早急に政策変更を行わなければ大変なことになるのではないかと感じている。

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中国本土株下落を受けて、形だけは火消しを入れた中国当局

China Convenes Banks in Bid to Restore Calm After Stock Rout



一応火消しが入った。

昨日の米国時間帯の中国関連ETFの値動きは下げた分の単純反発となった。
背景としては中国証券当局が外資投資銀行の現法トップとオンラインミーティングを行い、直近のエドテック企業規制は教育政策に基づいたものであり、他の産業まで狙ったものではないと話したりするなど、足下の本土株下落でとりあえずできる対策からやろうとトップコミュニケを行ったようである。
じゃあDIDIとかMeituanとかTencent Musicとかの規制についてはなんなんだとツッコまれると苦しいところだが、とりあえず現法トップはそれを本国に伝達するしかないだろう。

昨日はこの動きを評価したため、逆にベア3倍ETFのYANGなどはかなりきつい下げとなった。
(これだからベアレバレッジETFは難しい・・・)
上記ブルームバーグ記事はそれに加えて、昨日はやはり本土株市場は国家隊が入っていたのではないかという噂があるとも報じている。

<中国3倍ベアETF(YANG)のチャート>
タイトルなし


ただ中国株はここからすんなり全面的に回復して上値追いとなる見込みは薄いと見ている。
なぜなら機関投資家にとって私有資産接収という御法度中の御法度をやらかしたわけで、ポジション積み増しした挙句今回のエドテック規制のような事態に再度直面したら顧客への説明責任を全うするのは難しく、まず間違いなくファンドマネージャーは会社をクビになる。
 また私募の顧客側もそのような資産がゼロになるリスクを取ることは絶対にできない。
なのでショート買い戻しなどの単純反発は一定程度あるものの、積極的に上値を追うという動きは期待しづらいし、諸外国株価にアンダーパフォームを続ける可能性は非常に高いと思う。
絶対におとり潰しにはならないだろうと思われる国営系企業は、発行しているドル債に投資するならまだいいが、基本的に経営が雑・でたらめということもあり単純反発の短期は狙えるが中長期はとてもではないが触る気にはならない。

一方で一応は中国当局は本土株市場は気にしているというシグナルは発しており、形だけでも火消しは行ったということで、習近平政権が大チョンボをもう一発やらかさない限りはシステミックに全部がメルトダウンするというところまではいかないだろう。
(やや本土人の資本逃避具合は気になるところだが)

以上を勘案して中国との関連性が薄くて自分がそれなりに調べて自信があるという銘柄については残しておいても問題はないだろう。
今後の自分の戦略としてはなるべく中国から遠い銘柄・あるいは中国売上比率があっても規制できない銘柄(アップルやマイクロソフトはその類)にフォーカスしていく流れになると思う。

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中国株下落に影響を受ける範囲を考察

ここ数日相場にクリティカルな影響が出かねないということで中国株相場について解説してきた。

<過去参考記事>

中国の習近平政権にドン引きした外国人投資家


ここまで株価が下落してくると中国株以外も悪影響を考える必要性があるだろう。
その中で直接的に今回の中国株下落でファンダメンタルズも変化しかねないところはどこなのかというのを少し考えている。
下記は自分のざっと考えた限り影響する範囲になるが、中国株外だとやや予想が当たるかどうかは微妙な範囲だと思っている。

・半導体銘柄
中国では大量のデータを活用したネットサービスが主なグロース銘柄の中心であった。
単純にクラウドの伸長やスマホの半導体の積む数が増えたことによって半導体需要が増加してきたということもあるが、中国もその一翼を担う部分であった。
しかし、ここにきてテック系に対して共産党が強烈に規制をかけてきたことやエドテック企業の実質的な接収によって、中国IT企業は外国から実質的に投資するための資本を獲得することができなくなった。
これによって半導体需要の伸び鈍化がやや見え始めていることは個人的に気がかりなこととなっている。

・ハイブランド銘柄
単純に中国株エクスポージャーのリスクが見直されると考えると、欧米ハイブランド銘柄は中国売上高比率が高いということもあり、やや危険なように思われる。
実際の売上高や利益に多大な悪影響が発生するというレベルにまではならないとは思うが、元安が発生するとやや心配される銘柄が多いように思われる。

・ ソフトバンク関連
個人的に相場全体への影響力として心配しているものの一つになる。
現在のソフトバンクは投資会社となっているが、ご存じの通りソフトバンクの信用力の裏付けとなっているのがアリババ株になっている。
アリババ株の含み益を担保に金を借り、その資金をビジョンファンドへの投資・ナスダック大手ハイテクグループへの投資に使っている。
アリババ株の含み益が減れば減るほどソフトバンクは手持ちの資産現金化圧力を受けることになる。
そのため、アリババ株がここからさらにもう一段下がっていく過程ではおそらく最強ナスダックも巻き添えを食らう可能性は高いと思われる。

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中国共産党のエドテック非営利化は外国人投資家は私有資産接収と捉えた

中国、「資本に乗っ取られた」教育産業見直し-モデル転換不可避

前日話題にした中国共産党の勘違い行政について引き続き相場に悪影響を与えている。

中国・香港・米国上場中国ADRの下げが続いているが、中国オンライン教育企業の非営利化政策が実質的に私有資産の接収だと投資家は捉えたことが原因にある。

この事態についてなんとなく同じような事態を思い起こさせるのはベネズエラのチャベス政権時代の私有資産の接収である。
1999年にチャベスがベネズエラの大統領に就任して以降、チャベスが次々と外国資本が保有する資産を接収していき、外国人投資家をドン引きさせたのは、やや年齢を重ねた投資家ならまだ記憶に残っているものと思われる。
これ以降ベネズエラの民間企業は外国から資本を獲得することができず、国営化された企業は次々とでたらめな政策を受けたことにより弱まっていき、最終的には今の貧民国家に転落することとなった。

今回の中国の上場私営塾の無償化は実質的に私有資産の接収とほぼ同義だと投資家は捉えた。
さらに、まだ裏では次々とADRを米国上場させている企業回りを中心に制裁をかけており、外国資本にダメージを与えている。
しかも、これまで多くの外国資本がこうした中国の急成長企業へPEやSWFを中心に投資を行ってきた。
外国資本が中国の私有資産接収に実質的に大規模に直面するのはほぼ初めてのケースで、これは鄧小平の開放改革から逆転する方向にあることを意味している。
しかもこれまでは米国政府に制裁を度々受けているという中で急成長しているからと我慢して投資していたところに対して、全く斜め上から投資を全損させるようなことを中国共産党が行ったことというのは非常に度し難い。
まず外国人投資家は香港・中国本土株・米国上場ADRについての投資戦略を抜本的に戦略を見直す必要性に迫られるだろう。
外国人投資家だけならまだいい方で、中国で真に怖いのは内側から攻撃を受けることにある。
中国は歴史的には広大な土地・大量の人口を背景に外国からの攻めに対しては粘り強い我慢を続けることにより、最終的に戦争に打ち勝ってきた。
しかし、少しでもトップが間違ったことを行った場合には内側から反政府などが湧きたつし、勝手に資本を逃避させるなど平気で行い、愛国心もクソもない自衛行動に移す。
今回のエドテック企業の締め付けは外国人からも内側からも資本を逃避させるような大失策であった。

そして最大の問題は現在習近平政権が交代する時期というのが不明なことにある。
今までは2期10年という制限が憲法に記載されていたが、2018年にこれを撤廃しているため、やろうと思えば習近平が死ぬまでトップを続けることが可能だ。

<参考ニュース>
中国、習主席の任期制限を撤廃へ 2023年以降も

中国の政治なんて面子が全てで、一度行った政策を撤回させることなんて不可能なんだから、当面このナショナリズムを受けた強硬政策が続くことは想像に難くない。
なので、習近平政権が終わって新政権が誕生して、このような私有資産を接収するという愚行政策を二度としないと誓約するまでは外国人は中国株投資に戻ってくることは基本的にはないだろうし、そもそも今外国人投資家が考えていることはどれぐらい中国株エクスポージャーを減らさなければいけないのかということにあるので、現在大幅安になっているからといって掴みに行くことは危険極まりない行為だと思っている。

個人的にも習近平政権が終わるまではおそらく中国株に投資することはないだろうと考えている。

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村越誠

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