村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2021年05月

銀行が余った預金を活用した有価証券投資についてのおさらい①

銀行、苦肉の国債回帰 昨年度、保有残高5年ぶり高水準 コロナ下で預金急増

貸出先がなければ、市場有価証券への投資を増やすしかない。

ここで銀行のビジネスモデルをきちんと知っておきたい。
銀行は預金を集めて、それを別のどこかに貸し出してりざやを稼ぐビジネスモデルである。
この時に貸出金額が預金より多い状態をオーバーバンキングと呼ばれて、足りない分を市場で社債を発行することによって埋める必要性があるため、一般的には構造的に問題があると見られるため、通常銀行は貸出量が預金より少なくなるように調整する。

しかし、 逆に預金が貸出量を大幅に上回るということもある。
日本の銀行はこの状態が常態化している。
しかし、預金を受け入れるのを拒否することはできず、預かった分の預金については金利コストを支払う必要性がある。
なので、この預金が貸出量を上回った分の余りについては一般的な個人投資家のように市場へ投資をして銀行は利益を稼ぐのである。
ただ、銀行には金融当局から規制をかけられており、自己資本に対していくらまでしかリスクは取ってはいけないというルールがある。
なので投資といっても無暗にリスクの高いものに投資を行うことはできず、例えば株にも投資をするが、リスク掛け率が大きすぎるため無暗にできるものではない。
なので、まず資金が余った銀行が投資をするものは国債になる。
日本の銀行なら日本国債・米国債・EU通貨を使っている欧州国債・英国債・オーストラリア国債などがその中心になる。
銀行は時と場合に応じて国債よりリスクの高いものにも投資をしており、国債に次いで量が多い投資として社債・CLOが挙げられる。
その次はREITで最後に株やその他仕組み商品となる。
銀行はバランスシートと規制の特性上、満期まで持てば利益が計算できる債券をポートフォリオの主体としている。

そして上記日経新聞の記事では結局コロナ禍で集まった預金の貸出先がなく、国債などの有価証券に資金が集まっていることを報じているのである。
ちなみに日本国債に買いを回しているということは、米国債にも投資を回しているだろう。
米国債の場合為替リスクがあるじゃないかと思う人がいるかもしれないが、それは為替リスクをヘッジすればリスクゼロで投資できるため、日本国債と同様銀行は大量に米国債を保有している。
為替ヘッジしても十分利ザヤにおつりが来るのであれば喜んで銀行は積み増しをするだろう。
現在米国債10年の金利が1.6%、為替ヘッジコストが米ドルで0.2%でも払えばいいことを考えると、日本国債10年0.07%に投資するよりその時点だけを見ればリターンが高い。
もちろん米国債に投資する際には日本より金利上昇リスクがあるため、今後の米国の金融政策動向や経済動向・為替ヘッジコストの動向のそこそこ先の未来のシナリオを想定しなければいけない。
ただ現状で米国債については手前の金利調達がすごく安くて、一方で後ろ側のイールドカーブが立っていて、歴史的に比較するとかなり厚い利ザヤが取れる環境であることを考えるとインフレが懸念はされているが、普通にみんな米国債ポジションを積み増していることが想定される。

このように債券の金利や社債の利回り動向の予想を行う際には、金融機関(銀行だけでなく、生保なども含む)がどのようにポジションを振り分けようとしているのかを知っておくことはプロなら常識中の常識であるので、知らなかったという方は一度調べてみるといいと思う。
このブログでももう少し、銀行の自己勘定運用については整理がてら記載しておこうと思う。

ちなみにこうした債券周りは株と比べて市場規模は圧倒的に大きく、機関投資家がメインプレーヤーであることから、債券市場の揺らぎは大手機関投資家のポジションが揺れている最中であり、金融市場に大きな変動を起こす一要因になりがちである。

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実力のない米国企業経営陣の高額報酬にNoを突き付けるケースが増加し始める

US investors revolt against executive pay in record numbers

単に運がいいだけのくせに高額報酬せしめるな馬鹿という話なんでしょう。

米国では経営陣が株主に対していくらの報酬をせしめるかを株主決議をかける制度があり、これに対して直近せしめる報酬額が上昇しているのに対して運用会社がNoを突き付ける割合が増加しているという話である。
これについてはいくつか考えられる背景がある。

直近米国の景気回復には政府とFRBによるフルパワー支援が要因であり、大半の企業の業績回復は決して経営陣が有能だからとかそういうわけではない。
にもかかわらず、直近の業績回復と株価上昇を背景に調子こいてこれが自分達の実力だと言い張って経営陣の報酬を引き上げようという動きに対して、運用会社はどう考えてもお前の実力じゃないんだからてめーにそんな報酬与えられるわけないだろと経営陣の報酬提示(say-on-pay)に対してNoを突き付けるパターンが増えているようだ。
それに加えて、高配当銘柄だが徐々に配当原資が苦しくなってきていて配当の持続性について問題がありそうな企業に対しても記事を見る限りはNoを突き付けられるパターンが増加しているようだ。

経営陣が有能で、経営陣の力で業績が上がっているなら運用会社も経営陣が提示する報酬に対しては普通はNoは言わないので、Noを突き付けられた会社は基本的に足下の業績回復は自力ではない・政府の補助に依存している・シクリカル性で回っているだけで誰がやっても大体結果は同じみたいなそういうことになる。
プロの運用会社も業績が経営陣の努力によってなされたのか、誰がやっても同じような結果だったのか、現在の企業バリュエーションと今後の伸びと提示された報酬額のバランスは合っているのかを精査してこの株主報酬提示に対してYesかNoか決めている。
なので、報酬提示に対してNoの多い会社は足下株価が伸びていても、あくまでそれは米国財政支援と金融緩和によってなされたものであり、実力値ではないことが想定される。
これは企業利益がやっとコロナ前程度に戻った程度なのにPERが以前であれば想定できないようなありえない位置にいることも要因であり、実力EPSが増加せずにPERだけ切り上がっただけなのに、それで高額報酬せしめるなという抗議の意味もあるだろう。
近いうちに米国財政補助が継続されなくなる議論が出てくるので、それが実際に切れれば業績はパッとしなくなったり、やや無理な配当の継続性に疑念を持たれたりとかあるし、そもそも運用会社が経営陣が報酬する提示に対してNoを出している時点でその企業の株価に対する企業姿勢に不満を持っていることを意味しているのでパフォーマンスについて今後劣後していく可能性が否定できず、そういった米国株を保有する際には本当に保有継続していいのかどうか今一度考える必要性があるように思える。

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ひふみファンドと同じ流れになったARKファンド

キャシー・ウッド氏のアーク、大量保有銘柄が減少-投資集中見直しか


だいたいひふみファンドと同じ流れになった。

上記ニュースではARKが大量保有報告を出している小型株のポジションをひきさげているというニュースになっている。
つまり特色ある小型銘柄のネタはほとんど尽きて、リスク削減のために安全な大型株にポジションが移ってきているということである。
この流れはほとんどここ3-4年のひふみファンドと同じ流れになったことを意味する。

ひふみの時を思い出してほしい。
ひふみファンドも中小型株に大量保有報告をバンバン出すレベルで投資し、ファンド基準価額上昇と残高の爆発的な増加を起こした。
しかし2018年に中小型株ブームが終わると同時にファンドはTOPIXを上回らなくなり、ファンド規模の無節操な拡大で最初からとは言わないものの、残高規模の爆発的な拡大中のファンドパフォーマンスは実力ではなく、単にブームに乗っていただけ、場合によっては自らの買いで相場を押し上げていただけということが判明した。

残高ピークから2年ぐらいは信者は減らないのだが、特色ある小型株を減らして大型株を厚めに持ったことと、ファンドで資金流入しなくなったことによる自らの力で投資対象銘柄の株価を押し上げる力がなくなったために全然インデックスファンドのパフォーマンスと大差ないパフォーマンスしか出せなくなったことにより徐々に注目度が下がり資金流出に転じていく。
そしてファンドが適正サイズに戻った頃にようやくまともにパフォーマンスを再度上げることができるようになる。

ひふみファンドではこのサイクルが完了するまでに約2年半かかった。
しかもひふみファンドの場合はベンチマークTOPIXに対して米国株や中国株買ったりとズルをしてのアウトパフォームで、海外株インデックスのMSCIコクサイインデックスにはやはり負けている状態が続いている。
そのことに気づいている人が大多数で、だから一応TOPIXはアウトパフォームしてるけど残高は増えずむしろじりじりとファンド乗り換えで残高を減らしてきている。

なのでARKの今回のやらかしもこの例に照らし合わせると流れはほとんど同じで、ファンド規模の爆発的な拡大からのファンドパフォーマンスは単にブームに乗っただけ・やらかした後の後処理には時間がかかるものと思われる。
再びナスダックやSP500などのインデックスファンドを上回るようになるまでにはひふみファンドより条件が厳しいことを考えると最低でも2年程度の時間はかかることが推察される。
そしてその頃にはもうみんなARKファンドのことは話題にもしておらず、じりじりと残高が減っていく流れになるだろう。

まあ大体資金流入を制限せずにファンド運用して人気化して爆発的にファンドの残高が増加すれば、最後に辿り着くところはみんな同じということだろう。

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米国住宅着工件数と建設許可件数の統計を見れば、過度な相場下落悲観は無用

米住宅着工件数、4月は予想より減少-サプライチェーン逼迫示唆

資材と人材集められないから建てられないという話は普通はあまり見ない現象。

火曜日夜に米国の住宅着工件数と建設許可件数の統計数値が出ていた。
統計結果は住宅着工件数がやや大きく市場予想を下回る一方で、建設許可件数は市場予想程度の堅調な推移となった。
住宅着工件数が市場予想を下回った要因としてサプライチェーンのひっ迫が理由として述べられており、建設許可が取れているのに建てられないという状況のようだ。
 つまり新築需要が強く、業者も今すぐ建てたいと思っているのに建築資材と人員が揃わないために建設許可は取っているのに建てられないという奇妙な状況が生まれている。
通常はあまりそういう事象は見られなく、米国政府の過激すぎるバラマキ効果がここまで波及していることがうかがえる。
(インフレ率上昇も運輸中心で発生していることも整合性が取れる内容)

そうなると想像がつくのは新築が建たずに買えない分はおそらく中古物件の購入に回ることが想定される。
なので本日発表されるであろう米国中古住宅販売は堅調な数値が出てくるだろうと思われる。
住宅価格についてもモーゲージ金利の低下は止まったものの、こうした新築買えない分の中古需要で強い統計数値が出てくることが想定される。

そう考えるとまず考えなければいけないのは、やはりここから過激に米債金利が下がることはまずないということである。
先日のホームデポの記事でも書いたが、住宅購入増加は補助金ではなく金利低下効果の方がずっと大きい。

<過去参考記事>

ホームデポ決算から考える米国バリュー株の下落要因


現在のモーゲージ金利の位置でこれだけ需要喚起できている時点で、さらにFRBが超長期金利を押し下げるインセンティブは皆無なので、ツイストオペを期待している人は今すぐ考えを改め直した方がよいだろう。

一方で相変わらず新規失業者保険関連統計は失業者が徐々に低下していることを示しているとはいえ、水準はまだ高く、これから米国財政効果が薄れおかわりも期待できなくなることも当然と言え、現在の市場はこの剥落効果分を織り込みに行っていることによる調整が主要因だ。
テーパリング騒ぎ分で余計に下げた分は短期間で回復すると思われるので、とりあえず建設許可がばりばりに強く、実際に米国財政拡張策がなくなっても米経済は問題ないですよねというのが確認されるまでは相場暴落を過度に心配する必要性はないだろう。
粛々と丁寧な投資積み上げでなんら問題はないと思う。

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ビットフライヤーの鯖落ちでとりあえず仮想通貨は底打ち

イーロン・マスクよりも強い中国の一言…ビットコイン3万ドルまで急落

まあとりあえずはこんなもんでは。

この前の水曜日はテスラがビットコインでテスラ車を買えるようにはならなそうとコメントしたことや、中国が仮想通貨への規制を強めたりなどのニュースによって急落する形となった。
どれが一番の原因だったかという議論はほぼ不毛で、複合的に絡んで売りたいと思ったプレーヤーが増えたから急落したと軽く考えるぐらいでよいと思う。

水曜日時点で念のためビットフライヤーのアプリにログインして取引状況を確認してみようとしたところ、ログイン数や発注数がとんでもないことになったせいなのかサーバーダウンして全く取引できない状態に陥っていてメンテナンス中と表示されるなんともお粗末な状態になっていた。
(ちなみに証券会社でこれをやらかすと一発金融庁案件行き)

一般的にはこの事象が起きている時は異常な売りや追証に追いつめられたプレーヤーが強制的にポジションを投げさせられたりしていると見ることができる。
特にレバレッジをかけて取引をしてしまい、とんでもない孫をかかえて恐怖にかられたプレーヤーは何が何でもログインして売りたいと操作するが、そもそもログインさえできず何回も同じ試行をする人が大量発生することにより、該当仮想通貨取引業者のサーバーに大量にアクセスが集まりダウンして、何もできなくなるというのが鯖落ちの原因のほとんどだろう。
その間に買い注文ができなくなることでさらに下げは加速するが、売り注文・追証が一定程度処理されてトランザクションが落ちてくればサーバーが徐々に復帰するので、買い注文が入り始めてボトム打ちする可能性が急速に高まる。
そのため、ビットフライヤーのアプリ落ちを見たので、とりあえずはこの前の水曜日が仮想通貨的にはやや弱く推移していたところのボトムだったと言えると思う。

仮想通貨が本格的に崩れるのは前回の動向も考慮すると経済再開でいろいろ金融緩和の縮小が見え始めてしばらく経ってからになるだろうと思っている。
今後も平気で瞬間風速半値とかいうボラティリティが続き、冗談みたいなものが平気で流通するが、金余りを背景にまだ崩壊というのは個人的には予想していない。

まあ金融緩和縮小・金利引き上げをしていって最終的には現金に時間価値が生まれ、変にレバレッジがかかっちゃった状態で金融ショック的なものが走ればほとんどのものはなんであんな値動きしてたんだっけみたいな無残な状態になることは十分考慮すべき懸念だろうと思う。

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村越誠

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