村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2021年05月

一番悲惨だった航空関連業界も回復の兆し

Airbus prepares to increase A320 production

先を見据えて一部航空会社が動き始めているということでしょう。

上記FT記事ではエアバスがA320の生産についてコロナ禍以降抑制していたが、航空業界の見通し改善に伴いいよいよ生産を引き上げる時に近づいているのでサプライヤーに準備をするよう指導しているとコメントしている。

ご存じの通り、今回のコロナ禍で最も悪影響を受けているのは、国際的な人の往来が完全に制限されてしまっている航空会社である。
コロナ禍初期はもう国際線も国内線もグローバルにズタボロになり、もれなく全員大赤字で政府救済要請や銀行へのつなぎ融資のお願いなどに駆けずり回る形となった。
足下でも国際線しかないような航空会社は引き続きひどい状況にあるが、少なくとも国内線需要が厚い国の航空会社はそれなりにマシな状況になった。

米国の航空会社の1Q決算を見ると、例えばデルタ航空ではまだ利益自体は純損失状態だが、営業キャッシュフローは黒字に転換している。
営業キャッシュフローが黒字に転換しているということは少なくとも資金流出は止まっており、つなぎ融資さえもらえれば資金状況は回るという状態になっている。
この状態まで米国航空会社は状況が改善したが、上記エアバスのコメント記事を見る限りは、もう2022年や2023年の国際往来の復帰を狙って溜まっていた航空機の受注消化状況の再開に向けて動き始めたことを意味している。
IATAが国際線の復帰は2023年か2024年に復帰するのではないかという見通しを示していて、まだ2年も先の話で、生産引き上げも2023年2Qをターゲットにしているが、航空機は製造に時間がかかるため、それを狙って動くにはこの時期ぐらいから生産再開要請をする必要があるということだろう。

この報道で素直にエアバスの株価は9%上昇し、ボーイングも連想的に買われている。
エアバスはとうとう3年間移動平均線(750日平均移動線)より上の位置になってきた。

<エアバスの株価チャート>
タイトルなし


一番最悪だと思われていたセクターがこの発表で素直に買われていることを考えると、よっぽどもうデフォルト見込みとかでなければ、3年移動平均線より下にある銘柄(基本バリュー銘柄になるだろうが)は買ってもいいみたいな状態が続きそうだ。
まあようは、よっぽど無理なバリュエーションの銘柄で無理したポジションを抱えていなければ、とりあえずバリュエーション的に無難な銘柄をてきとーにそれなりに持っておけばそんなひどいことにはならないでしょうという話だと思う。
(コロナ禍前の値段に戻るかどうかはまた別だけど)

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銀行が余った預金を活用した有価証券投資のおさらい②

知っているだけでマーケットの予測の仕方も変わる。

以前に銀行は貸付に回らなかった預金を有価証券投資しているという話をした。

<過去参考記事>

銀行が余った預金を活用した有価証券投資についてのおさらい①

これについて、今までどういう変遷をしてきたのかを解説したいと思う。

アベノミクス以前から日本の銀行は貸付先不足で預金が貸付先に対して余るという状態となっていた。
ただアベノミクス前は預金コストがほぼゼロな中、10年国債とかは1%の金利とかついていたので、デュレーションリスクだけを気にしながら日本国債を中心に投資をして利ザヤを稼ぐ構造になっていた。

劇的に状況が変化したのはいわゆる黒田総裁からである。
異次元量的金融緩和によって銀行が余資運用を行う際にターゲットになる日本国債10年未満の金利がゼロに近づいていった。
特に2016年に実質10年をターゲットにしたYCC(イールドカーブコントロール)によって10年未満の金利が全てゼロ以下になったことから、余資を10年国債で運用するのが難しくなっていった。

ここから銀行の余資運用は国債だけでなく、まずは円で発行されている社債組み入れを行うようになった。
しかし、社債についても日銀が社債オペによって買い入れを行うため、玉確保が難しくなっていった。
JREITや私募REITでの運用も行っているが、こちらはリスクウェイトの関係で無節操に入れるわけにはいかない。
そのため、次に銀行が余資運用として拡大させていったのは海外先進国国債である。
その中心はやはり米国債である。
米国債銀行ば流動性は豊富にあり、あとはドルでの為替ヘッジを行うだけでよい。
ただ、米国は2016年~2018年に政策金利を引き上げていき、これによって短期調達金利と長期米国債の利回りがどんどんなくなっていき、米国債運用では満足に利ザヤを稼げなくなっていた。
(ちなみに金利が上昇した時に度々金融庁から横やりが入ってポジションを解消させられたりしていた)

そこで、日本の各銀行の余資運用はさらに手を広げていくことになる。
まずはユーロ建ての国債になる。
しかし、一番安全なドイツは既にマイナス金利に没して使えなかった。
フランス国債はまだマイナス金利深堀が進んでいなかった時は多くのプレーヤーが投資していたが、こちらも満足に利ザヤが取れなくなってしまった。
そこでよりリスクを取る形でスペイン・イタリア国債への投資を拡大させていった。

そしていよいよ国債では十分に利ザヤを稼げなくなっていったところで、CLO・外貨建て先進国社債、外貨建てカバードボンドなどクレジットリスクを取る形での余資運用が拡大していった。
特によく金融庁から問題視されているのはCLOで、米国で政策金利引き上げ時に変動利付の商品なので好まれて投資されるものの、政策金利引き上げで最後に景気に揺らぎが出た時に一番ダメージを受ける分野な上に流動性に問題があるということで度々クローズアップされる。

こうした形で足下、日本国債だけの投資では十分なリターンを得られない中で、為替ヘッジをした米国債・外貨建て投資適格社債の厚みを増やしながら預金を運用している。
現在米国債は歴史的にイールドカーブが立っている状態なので、銀行が手元の外貨建てポジションをぶん投げるには短期金利上昇あるいはドル円に対するベーシスの上昇がみられる必要性があるが、ドルはじゃぶじゃぶでベーシスはかつてないほど低コストになっているので、現状クレジットや金利から相場がひっくり返る状況にはないと思う。

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住宅購入数増加と密接にリンクする米国小売統計

狂騒の20年代か、戦後の消費ブームか:ロバート・シラー

普通に考えるとそうなるよねと。

現在米国では小売統計が好調に推移していて、住宅販売統計も好調ともうまるでコロナ禍の影響はなかったみたいな統計数値が出ている。
個人的には小売統計と住宅販売統計は密接に関係している状態にあると思われる。

家を購入して引っ越しした人があることはすぐに想像できると思うが、したことがない人は今一度想像してみてほしい。
家を購入して引っ越すにあたって古い家具や家電製品を捨てて、新しい家用に家具や家電を揃え直す。
テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン・収納家具・ベッド・机・台所用品・その他細々とした家電製品をはじめ、さらに水回りにリフォームをかければトイレやバス用品も買う必要性がある。
さらに新しい家にお気に入りのインテリアなどの雑貨をどんどん入れていけば必然と買うものが大量になる。
トータルすると普通に100万円を超えるような買い物になり、場合によっては200万とか300万円とかの買い物にもなったりする。
まあようは住宅購入をして引っ越しなしでは考えられないレベルで買い物をすることになる。

このブログでは何回も記事にしている通り、現在米国はモーゲージ金利が非常に低いため、バカスカ住宅が売れていて、在庫が枯渇状態にあるレベルになっている。

<米国モーゲージ金利チャート>
https://muragoeinvest.com/property

住宅が購入されると同時に米国全土で引っ越しに伴う買い物が大量発生しているということである。

なので単に補助金効果でモノが売れているだけでなく、新しく家を購入して新生活をするためにモノをバカスカ買っているというのも米国の小売統計を押し上げる要因になっている。
その他の国でも住宅統計が好調な国は同様なことが発生していることは想像に容易いだろう。
当面米国を中心に住宅販売統計と小売統計は密接にリンクした状態が続くと思われる。
住宅統計が落ち込まない限りは堅調な小売統計は続く可能性が高いと思うので、米国住宅動向を読むことが相場を予想する上で非常に重要な局面になっている。

ちなみに個人的には拡張的な米国財政政策をやめる前に金融緩和をやめることはできないため、新住宅バブルが来る可能性はやや高いと思っている。
これが行き着く所まで行き着き、皆が住宅を購入するにあたって積み上げる債務増加ペースが加速し、その後政策金利引き上げを含めて金融引き締めが起きた時点で積み上げすぎた債務が逆回転して最後は住宅ブームが破裂するというところに帰結すると思う。

不動産相場が逆回転し経済が足を引っ張られるのは、それまでにどれだけ過剰債務を積み上げたかどうかに依るので、住宅販売数の増加ペースと不動産債務の積み上がり方を両にらみしながら考えていきたい。
ちなみに上記の過剰債務と不動産相場の話は下記前日銀総裁の白川氏の書籍にも記載があるので、読んだことがない人は読んでもらいたいところである。

<参考書籍>

中央銀行―セントラルバンカーの経験した39年


まあもちろん今すぐ住宅バブルが破裂するなんて考えるのは愚の骨頂で、そんな考えを持っている時点でお前は副島隆彦かよというレベルに妄想に取りつかれていると評されるだけなので、まだ何かを心配するような段階にはないだろう。

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先進国石油開発会社はESGで開発コストが上昇する見込み

エクソン株主総会、物言う株主の取締役選出 気候変動対応へ圧力

原油価格にはプラス、先進国石油開発会社にとってはマイナス。

上記ニュースでは米国石油大手エクソンモービルに物言う株主が指名した二名の取締役が入ることになり、気候変動対応圧力が高まるだろうと報じられている。
この動くはエクソンモービルだけでなくシェルなどもそういったESGに対応するよう圧力がかかっていると報じられている。

これより以前にも気候変動について、関連した業種について様々な議論があったが、実際に投資家が企業に対して働きかける場面というのはあまりなかった。
しかし、今回のESGは私募を中心に幅広く運用会社がコンセプトを取り入れたファンド運用を行っており、ESGに反している企業に対しては投資ポジションから除外したり、あるいは圧力をかけてESG格付けを引き上げるための方策を指導したりしている。
今回のエクソンモービルでの出来事はその一端を示したものである。

今後想定されることとして先進国石油開発会社は新規で油ガス田を開発するにあたって、開発分の二酸化炭素をオフセットするだけの社会貢献をすることが求められるようになるだろう。
 そうなるとそれだけ開発にあたってコストはかさむ。
また、このコストというのは短期的な話には終わらない。
ESGというのは元々ノルウェーのSWF年金ファンドが考え出したもので、巨額な運用資金で運用していて短期的なリターンではなく中長期のリターンが重要なわけで、その際に持続可能な社会作りに貢献できる企業を中心に投資することが中長期リターンを高めるものになるのではないかという考えを基に作り出された概念である。
その辺は下記書籍を読んでもらえればわかる。

<参考書籍>

ESG投資 新しい資本主義のかたち


運用会社がこれだけ本気でやっているわけで、短期的なコスト増加だけでは済まなく、先進国石油開発会社には重いコスト負担を強いられる可能性はかなり高いだろう。
また、これによって変に採算の悪い油ガス田の開発には着手しづらくなることから、無節操な油ガス開発が行われなくなる。
(なかなか米国シェールガス生産が復活しないのもここらへんの事情もあったりするだろう)

これが意味することは現在一時的に米国財政効果で原油需要が拡大していて、これはいつかは消えるものの、一方で供給については以前の原油バブル時代のような開発のされ方は先進国石油開発会社初では行われなくなる可能性が高く、これが原油価格の下値を固くするだろうということである。

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高騰する米国住宅市場で足下起こっていることと可能性のあるシナリオを想定

米新築住宅販売、4月は予想よりも減少-高価格が需要を抑制

住宅価格は市場予想を上回ったが、中古住宅販売件数も新築販売件数も建設許可件数も市場予想を下回るという状態になった。
ニュースでは価格の高騰に伴って顧客がついていけなくなっているのではないかと報じられているが、今一度起こっている可能性があることと、これから何が起こるのかを予想しておきたい。
おそらく米国経済の現在の回復の大きな要因がここにあるので、ここはしっかり考えておきたい。

まず現在何が起こっているかだ。
価格上昇が続いているが、成約数や建設許可件数が市場予想を下回ったことについて何が起こっているのか考えたい。

1、
単に市場にクソ物件しかないため成約数が伸びなくなっている。
現在米国の住宅統計を見ると、中古在庫はかつてないレベルで少ないことが示されている。
今市場に残っているのが通常時であれば買うに値しないクソ物件ばかりになってしまい、価格とは別要因で需要層が買い控えを起こしている。
これは日本でもSUUMOを見ているとわかるが、東京23区の特定地域ではまともに買いたいと思える物件さえ出てきていない地区が存在したりしているレベルで在庫がない。

2,
ニュースが報道するように、コストプッシュ型での不動産価格上昇に顧客がついていけなくなってきている。
モーゲージ金利の低下も一服し、これ以上借入金利の低下が見込めない中で、顧客は一旦様子見姿勢が強まっている。

この2つのシナリオのうちどちらが真なのかで、今後の投資スタンスは変わるだろう。

そしてこれから米国住宅市場に起こるシナリオも考えておきたい。

1、
新築は市場に販売できる在庫が極限的に少なくなっている中、作れば作るだけ売れる状態のはずである。
しかし木材価格を見てもわかる通り、高値になっている理由が原材料入手ができていないためや米国内で働いたら負けレベルの給付金によって建設労働者が集まらないために建設が遅れている。

<木材価格のチャート>
タイトルなし


<過去参考記事>

働いたら負け状態の証拠となる米国マクドナルドの時給引き上げニュース

ただ、資源が高値になっていることによって供給が徐々に増加していき、米国給付金が切れて建設労働者が戻っていくことによって建設件数が一気に増加し、不動産価格は高値を維持したまま新築物件が爆発的に売れていくことにより、米国は不動産バブルへ突入していく。

2、
既に住宅価格の急騰はやりすぎで、今の価格上昇に顧客がついていけなくなってきている。
在庫が少ない中のでコストプッシュ型で業者は不動産を値上げするが、在庫が少ないまま成約数が落ちていき、なんとも言えないバランスに落ち着く。
在庫が少ないため業者は損を出してまで投げ売る必要性がないため、成約数は伸びないものの不動産価格は上げ幅を失うとも下がらず、奇妙な安定に留まる。

どちらのシナリオになるかによって、今年後半の米国財政政策・金融政策・株価の伸びが決まっていくので、どちらになっていくのかは今後追加で出てくるデータを見ながら考えたいと思う。

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プロフィール

村越誠

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