村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2021年03月

弱小アフリカ・南米国家は最後の金づるである中国を失う

China cut lending to Africa in 2019 as debt fears grew

まああんなゆるい資金融通してたらそうなるよねと。

上記FT記事は中国がアフリカへの貸出が債務残高の大きさを背景にコロナ前から既に減少傾向であったと報じている。
これが意味することは多くの弱小アフリカ・南米国家にとって最後の金づるが消滅したことを意味する。

リーマンショック前は米国の爆輸入によって多くの新興国が経常黒字国家であったことから外貨で資金を借り入れていても余裕で返済することができていたので問題なかった。
一方、リーマンショック以降はリーマン前の勢いで新興国が消費を途中まで増やしていく一方で、先進国が以前のような輸入を行わなくなったことから外貨バランスの帳尻が合わなくなり、続々と多くの新興国が経常赤字国に転落していった。

資源価格の下落とともに多くの弱小新興国がこの時点で多く借りすぎた外貨建て借金の返済に苦しみ始め、先進国の多くの投資家はこうした経常赤字状況を見てやはりリーマン前のようにほいほい金を貸すことはなくなってしまった。
そこに目をつけたのが中国であり、ここから本格的な資金援助外交である。
資源開発やインフラ開発で自国企業の進出こみこみで多くの資金を援助するという形で弱小新興国の取り込み目的で中国は金をばらまいた。

ただこうした自分のテリトリーから遠く離れた国家との金銭やり取り込みの国際外交というのは中国は1970年の対外開放を進めて実質的には初めての試みであったはずであり、回収見込みとか費用対効果というのはかなり二の次的な貸出であった。
先進国の経済援助を追い越すために相当ゆるく資金を融通してきたことは明白で、既にいくつか金を返す気がない国は中国に対して返済はできないと言った上に、さらに追い貸ししてくれないかとまで図々しいお願いをする始末である。

その筆頭格は南米ベネズエラであり、反米国家で資源もあるので南米の進出足がかりとして使えそうと目論んだロシアと中国がこぞって資金を融通したが、結局全ての金は無駄に使われた挙句、ロシアがかなり早い段階で手を引いたものの中国はそれにさえ出遅れて何回か余計な追い貸しをしてしまったと手痛い勉強代となった。

基本的にかなりの割合の中南米国家とアフリカ国家というのは外貨で金を借りるが、大半が汚職で政治家やそこに癒着している企業に金が流れてしまい、外貨獲得のための投資に回らずに消えていくというのがよくあるケースだ。
しかも借りた側は途中から開き直って口八丁でごまかしながら厚顔無恥に追い貸しをおねだりする始末だからやっかいだ。
追い貸しできない場合はこれまで借りた資金は一切返せないと脅してくる。

上記FTの記事を見てもわかる通り、もうコロナ前時点でこうした中国の援助外交は尻すぼみになっていったことは明白となっている。

これから中国の援助外交はあくまで地理的に近い国と一帯一路上にある国に限定され、それら以外は中国は捨て金としてこれまでの融資は諦める方向に向かうだろう。
いくら面子のためとはいえ、これ以上回収見込みも立たない国にさらに金をくれてやるほど中国もアホではない。
それ以外の国は今後は再度最後の砦であるIMFに泣きつくしかないが、その際は厳しい条件が課されるはずで、このコロナ禍ではたしてどこまで耐えきれるものなのかはかなり微妙な気がする。

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事故・災害系での株価下落は普通は長続きしない

離礁 スエズ運河の通航再開

事故・災害系の話で株価に恒久的に影響が出るパターンは普通は稀。

スエズ運河で大型コンテナ船が座礁して通行止めになったということが話題になっていたが、これに伴う株価や原油価格の影響は確かに瞬間風速ではあったものの、個人的には相場としては長くフォーカスするような話ではないなと感じていた。
特にこのスエズ運河の封鎖での原油価格への影響なんていうのは、言うほど目立つ話ではなく、交通再開目処が立てばそこまで原油価格を上昇させるような話でもないだろうなと思っていた。

こうした事故・災害といった本人達に責任ないものについては、普通はよっぽど企業バリュエーションからかけ離れた株価でなければ大体株価は戻る。
例えば2012年(だったと思うけどあやふや)タイの洪水で日系自動車メーカーの工場が多数水没して株価もかなり影響を受けたものの、洪水が引いて工場稼働復帰とともに株価はすぐに回復した。
海運会社の株価下落はスエズ運河だけの要因であるならすぐに回復するだろうが、単純にこのニュースをきっかけとした利益確定の可能性もあるので、この二つの要素の天秤になるだろう。

災害系で株価が恒久的に影響を受けた事例としては東日本大震災での原発事故で電力銘柄全体の中期経営計画が狂い、また稼働コストが安い原発を動かせなくなったことによるコスト増・原発に対する災害準備コストの増加によるコスト増といった事例がある。
また直近だとテキサス州の寒波でクリーンエネルギーが使い物にならないことがわかり、クリーンエネルギーの評価が下がったことも入るだろう。
災害に伴う株価への影響は、災害自体というよりもそれに伴う法律や政策のフレームワークの変化の影響度が高く、法律・政策が変更される場合には該当銘柄には注意が必要だろう。

一方で今回のスエズ運河の話は普通に考えれば1-2年とか影響を受ける話ではなく、長くて半月程度みたいな話であることはまあそんなもんじゃないかなとは思っていたが、やはりその程度だなという話に落ち着きそうだ。
あとはなにか法律・政策で変化があるかと言われると、あまり思いつくところがなく、そうなると恒久的に影響を受けるような銘柄はないように思える。
もしかすると損保会社とかは再保険コストが高くなるとかいう話はあるかもしれないけど。

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中国テック売りの主犯が追証を食らったと報道される

Traders brace after fire sale of stocks linked to Archegos

これも通常は犯人がわかれば底打ちっぽい動きになると思うけど。

FTにてArchegosというブローカーがマージンコールをくらって一部米国銘柄と中国テック銘柄について強制売りをかけたことにより、該当銘柄が大幅に下落したというニュースがあった。
一部米国銘柄については名指しでバイアコムとか記事に掲載されていたが、中国テックについてはもっと幅広く売っていたのではないかと報道されている。

このArchegosのチョンボのせいで信用供与をしていたクレディスイスと野村證券は200億ドルの損失を受けることになったと報道されており、その規模間は久々にでかいレベルだなと感じた。

<参考ニュース>
Credit Suisse and Nomura warn of losses after $20bn stock fire sale

通常クレジットクランチが起きていなければこういうどこのプレイヤーがマージンコール(追証)食らって破産したとか逃亡したとかいうニュースが出た時というのは該当銘柄の急落局面は大体ほぼ終了していて、あとはその該当銘柄の実力値に沿って株価が仕切り直しになる。
急落が続いたとしても数日レベルで、一旦これは普通はおさまるし、大体取引していたブローカーが既にArchegosがやばいというのはすでに知られている話で、それに先回りしてブローカーがポジション削減を進めていたはずなので、そこが既にもう売るものが尽きている今はここからは逆にそこまで企業バリュエーションを無視した売りを心配する必要性はないように思える。
実力があれば株価は再び上昇軌道に乗るし、そうでないならだらだらゆるやかに下がる、そんな感じになる。
(まあそういった意味ではここからようやくきちんとした企業分析がパフォーマンス向上の役に立つように思える)

ここらへんは中国テック銘柄だけでなく、クリーンエネルギー銘柄でも同様のことが言えて、クリーンエネルギー銘柄については過去にも言及させてもらった。

<過去参考記事>

単なる量産クリーンエネルギー銘柄はやはり旬が終了


過去にもこういった急落しているものが底打ちした例として思い出されるのは急落した原油価格がチェサピークエナジーの元CEOが自殺したり、あとは2018年のところでは中国国有石油大手シノペックのトレーディング部門が大量の買いポジションをしこらせて強制売りをかましたことによって原油価格が大混乱に陥ったものの、結局そこがボトムとなったことが思い出される。

リーマンショックの時はクレジットクランチがかさなってしまったので、企業バリュエーションを無視した売りがあとからあとから積み重なってしまったが、クレジットクランチが起きていない中での特定セクター売りはさすがに大幅に真のバリュエーションを下回るといったところまではいかないと思われる。

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中国の白物家電需給バランスが限界を迎えて業界に暗雲

中国家電TCL、敵対的買収へ 白物の奥馬電器株20%取得 市場飽和、多角化急ぐ

ろくなことが起きない典型パターン。

中国の白物家電メーカー間で単に白物家電の量産・中国国内の需要を満たすだけでは利益成長に限界が来たということもあって買収や国際展開への道を進み始めているという報道がされている。
これを見ると、もう白物家電に関連した株投資というのは避けてしかるべきという事態にまでなったことが読み取れる。

大体中国の中で需要が飽和して、中国メーカーが海外輸出に力入れるとか言い始めた時は、もう業界としては限界領域・価格崩壊・血の雨が降るというのが前提になる。
中国13億人市場からあぶれた商品の供給を満たせる地域なんていうのは世界のどこにもないのが現状である。
特に多角化に失敗したメーカーが次に取る行動は、既存事業における供給力の拡大で現状シェアを維持してくるというパターンになるため、状況が深刻化するスピードが速まったりする。

これまで中国内で需給バランスが崩れて中国メーカーが輸出や国際展開に力を入れてきた業界で何が起こってきたか考えてほしい。
真っ先に思いつくのは鉄鋼で、まあバックに政府系メーカーがいくつもあったことが要因ではあったものの異常な粗鋼生産で中国の需要だけでは供給を捌ききれない事態が起きたため世界各地にダンピング的に輸出したらあっという間に世界の鉄鋼需給バランスが崩壊し、全員誰も儲からない事態に陥ったというのが2010年代前半の出来事として思い出される。
(今は鉄鋼はやや再編がなされて以前よりはましになっている)
造船もほぼ同じパターンで、中国・韓国・日本で全員儲からないという、なんで誰も得しないレベルで供給やっちゃうかなあというダンピングに陥って、未だ再編が終わっていない。

人口だけでいうとインドが中国の供給力を吸収するだけの需要ポテンシャルがあるように見えるのだが、インドも国産メーカーが存在し、中国の圧倒的な供給力によって国内メーカーが厳しい状況に追い込まれると平気で輸入禁止とかそういう策を講じてくるし、その上インドはまだ通常の世界での普及価格帯での家電普及が期待できる段階にない。
以上を考慮すると白物家電業界においては誰かがずばぬけて儲かるということは基本的にはない状態になっており、株投資対象としてもやる気の出ないセクターになることは確定的だろう。

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単なる量産クリーンエネルギー銘柄はやはり旬が終了

Texas wind power in disarray after winter storm leaves tangled mess of disputed payment

これはさすがに予想は出来てたことだと思う。

当ブログではテキサスの寒波による停電はクリーンエネルギーの評価を下げるものだと既に一ヵ月前以上の段階でブログ記事としては記載していた。

<過去参考記事>

米寒波による大停電でクリーンエネルギー銘柄の評価が低下


ほぼこの考察通りの話がいまさらながら実際にクリーンエネルギーに対する評価として出始め、これがFTに記事として出てきた。
その間に足が速い投資家はさっさと売り抜けている状態なこともほぼ相場の状況を見ればお察しというところである。
特にその中でやり玉にあがっているのがiSharesのクリーンエネルギーETFで純資産残高の大きいICLNであり、このETFが少数の銘柄の投資比率が高すぎるというのが問題視されている。
しかもこのETFの資金流出によって負のフィードバック状態でスパイラル的に対象銘柄が下落しているとのことだ。
(プラグパワーとか)

<参考ニュース>
BlackRock ETF may be forced to sell billions in energy stocks

さらにいえばICLNの銘柄の多くは単なる物量勝負・政策期待頼みの一体本当にどれだけの銘柄が生き残れるのかよくわからない銘柄が多い。
技術面などを評価して革新力のある銘柄を選んでいるARKKが組み込んでいる銘柄のうち、ICLNとかぶっている銘柄が少ないのを見てもICLNに入っている銘柄が単なる物量勝負銘柄だらけということもなんとなくわかる話である。
ICLNの銘柄群を見ればそうした物量頼み・売上成長なし・利益なし・財務メタメタみたいなぽっと出銘柄が多いことも調べればわかる話である。
よってこの事態を予想していた人はそれなりにいたわけでテキサスの大寒波による停電ニュースを見た時点で売りを開始した人は相当いたはずだ。

ただし、一般的にはこういうニュースがメジャー紙でかでかと報じられてきたところは既に大分売りがこなされてきた段階であり、コロナ底値から最高値までの騰落率の半分程度がお返しされたことを考えれば急落ステージ自体は後半ステージのように思われる。
じゃあこっから買い向かえるのはという話であるが、あくまで本格売りステージが終わったというだけで、じゃあ以前のように元気に回復するかどうかというのは別物であり、個人的にはまあ資金をこっから入れたいかどうかと言われれば別に入れる気にはならないかなあという感想しかない。
なんとなく新しいプラス材料きっかけがない限りはくすぶった範囲での株価推移が続くというのが個人的な予想だ。

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