村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年07月

米国失業者保険統計は改めて景気V字回復シナリオを否定

GDP Makes History As Jobless Claims Show Recovery Stalling; Dow Jones Falls

予想は外したが結果オーライ。

米国新規失業者保険申請数についてシーズナルファクターを考えると滑りそうと予想したが、結果は予想145万件ぐらいだったのが、季節調整で143万件と意外にも 滑らなかったという、全く自分の予想は外れる形になった。

<過去参考記事>

次回米国新規失業者保険申請数統計は天王山


一応季節調整前では新規失業者は減少しているが、季節調整をかけると二週連続で増えているというような言説が多かった。
ただ、こちらは統計結果としてはまだマシな方かもしれない。

一方で問題は継続失業保険受給の方にある。
こちらが今回はド滑りしている。
予想1620万件ぐらいだったのが、実績1700万件とド滑りした挙句、さらに失業者が増えていることを示唆することになっている。
新規失業者はほぼ予想ベースなのに、一方で継続失業保険受給者数が予想外に増加しているということは、新しくクビになる人は予想の範疇に入ってきたが、新規で雇われる人が予想を下回ってきているということを意味している。

そうなると連鎖的に次の雇用統計の非農業雇用者数が滑る可能性が高いし、失業率も高止まりしそうというのもほぼベースシナリオになってくるだろう。
ということはこの時点で雇用増加による改善が止まっていることを意味しており、現在市場はそれ自体がネガティブなのではないかという判断をしているような動きを見せている。

<米債30年利回りのチャート>
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赤丸で囲った部分がTMFを追加したタイミングだが、とりあえずリスクオフ対応時のTMF追加作戦は上手くいった。
問題は利益確定ポイントだが、とりあえず米債30年金利1.15%ぐらいを一回目の利益確定ぐらいで考えておこうと思う。
こちらは多少のリスクオンが来ても次回雇用統計が滑る可能性高いことを考えれば、まだ引っ張れると考えている。

貴金属ロングは昨日ブログ記事にした要因でしばらくお休みするのが吉だと思う。
特にパラヂウムは中国人による買いが上昇寄与の大半だったように思えるので、追加するにしてもゴールドかシルバーのどちらかを狙うのが無難かと思う。

<過去参考記事>

中国の貴金属取引規制強化で銀価格は一旦調整入りへ


株ショートで一つ難しいと感じているのはまだクレジットが崩れていないことである。

<クレジット類ETFの7/30の場中価格変動>

タイトルなし

FRBが買い介入策を揃えているということもあるが、ここをどう解釈するかで各自投資判断が変わってくる。
下げ目線で考えているならば、クレジットの下げ方が甘いのはクレジット投資家が油断しているからで、クレジットが下がるまではガンガン色んな株ショートを積み増せるという考えのもと戦略を組み立てるべきだろう。
一方で、いやクレジットが耐えているということはこれは単なる株の押し目だと考えることも一理あり、何かしら鉄火場スケベロングするというのも戦略の一つだ。
ここは各自が取りたい戦略と見通し次第になるだろう。

なお、こうした米国統計の読み取りについては下記記事を参考にしてほしい。

<過去参考記事>
投資の役に立つ統計から米国経済の状況を読み解く方法

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中国の貴金属取引規制強化で銀価格は一旦調整入りへ

中国当局と銀行、「金爆買い」抑制へ 取引口座新設を禁止

犯人はお前だったのか。

ここまで貴金属類の上昇は個人的には先進国でのETF買いと機関投資家の買いが中心だと考えていたのだが、上記ロイターの中国当局が貴金属取引口座新設禁止ニュースを見て中国人が途中から参加していたことが確認され、完全にその要素を失念していたと思った。

特に銀が金より爆騰していたのは、20世紀まで銀本位制の通貨制度を持っていて、銀投資になじみのある中国人が殺到したことによるものだというのがなんとなく想起される。

<中国の貨幣の歴史>

中国の貨幣制度史 - Wikipedia



一般的にバブルというのは普通はなんとなくはじけるというケースは少ない。
どちらかというと金融当局が途中でバブルが発生していることに気づいて、規制強化に向かう。
ただし、一回目の規制強化ではじけるかどうかはわからず、規制強化とバブルが同時進行して、最後の最後で規制強化の影響が上回り価格が暴落するというのが一般的なケースだ。

一般的には先進国は貴金属に取引規制を用いることは少ない。
あまりにも変動が急だと先物市場で証拠金引き上げによる規制強化はあっても、上記の中国のような新規取引口座開設禁止みたいな極端な策はしてこない。

今回中国はなぜ貴金属取引の規制強化をしたのか?
特に中国の場合は自国通貨が外貨に流れるケースには非常に敏感である。
貴金属についても中国は一般的には外貨同等物と認識しているので、あまりにも貴金属へ資金流入が起こると、それは元安圧力および外貨準備高の減少につながる。
そのため今回金もそうだが、その他貴金属が金を上回るスピードで価格上昇したところに人気が殺到したということもあり、元から貴金属への変換が大量に生じることになった。
中国政府はさすがに足元の動きは許容できないということでいきなり新規貴金属取引口座開設の禁止を各金融機関へ通達することになった。

金は市場厚みが大きいが、どうしても銀以下になると市場規模が小さくなることから、この中国の規制強化はそこそこインパクトが大きいものになるだろう。
少なくとも個人的には銀価格は一旦22ドルぐらいまでの調整はあってしかるべきだろうと思う。
 
<銀価格のチャート>
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ただこの一回の規制強化だけで一気に貴金属上昇がはげるとは思えないので、自分がここらへんかなと思うラインを決めてゴールドやシルバーには再参戦してみたいと思う。
あと景気盛り上がりに期待するならパラジウムでもよいように思える。
一方でプラチナはゴールド・シルバーとパラヂウムの両方の中間みたいな中途半端な位置づけ感が強いので、こちらは別に触らなくてもいいかなと感じている。

ちなみにあまりにも巻き戻ると連動でドル買いが発生するため、相場全体へ悪影響をおよぼす可能性も考慮しておきたいところだ。

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保管コストが高い商品先物は投資資産になり得ない

まあ当たり前の話なんですが。

今自分が検討している投資の一つに天然ガスに逆張りするETFであるKOLDである。
ただ、まだふわふわとコモディティ関連に景気V字回復や供給削減による需給マッチ期待があることからヘンリーハブガス価格が思ったより堅調に推移してしまっていて、なかなか手を出すタイミングが生まれてこない。
じゃあ逆に天然ガス買ってみたらどうなんだろうと思い、天然ガスをロングするETFであるUNGを見てみたが、超長期で見るとドン引きするような動きしかしていなかった。

<UNGのチャート>
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まあこのチャートを見るといくらロングでの投資チャンスありそうとは言ってもよっぽどのあれじゃないとやる気にならないということは確かだと思う。

ではなんでこんなチャートになるのか?
こういう商品系ETFは先物をロングしてポートフォリオを構築している。
だからロングしている先物が限月を迎えそうになったら期先にロールさせる必要性がある。
つまり期近売りの期先買いを行う。
しかしこの過程で商品先物カーブが順ざやだと安い期近を売って高い期先を買うことになる。
そしてこの期先が期近になるにつれ安くなっていくので商品系ETFは無限に価格が下がっていく。

ではそもそもなぜ順ざやになるのか?
それは引き渡される可能性が高まる分、価格から保管コストが引かれていく期限が迫ってくるからである。
これは原油や天然ガスだけでなく、非鉄資産・農産物においても同様な事象が起こる。
こうした物質を保管するのに巨大タンク・サイロ・土地・船舶が必要になるのでコストが馬鹿高くつくのは当たり前である。
トンあたり値段が低いものの宿命である。
唯一の例外は貴金属(金・銀・プラチナ・パラヂウム)・ダイヤモンドぐらいでこれらは持って移動できるレベルのものということもあり、保管コストを最小限に抑えられることから古来から資産としても好まれてきた歴史がある。

だからどうしてもこういうコモディティにダイレクトに投資したいなら、やはりコモディティそのものではなく、それに関連した企業の株を買うしかないだろう。
関連した企業は自前でこうした保管できる設備を保有している。
だからこうした順ざや時は期先を売って、最終的に限月を迎えたら保管しているものを差し出して決済を行える。
そしてその利益を株主に還元してくれる。
しかし一般人はそういう設備を持っているわけがないので、中長期投資なんてしていたらあっという間に保管コストですってんてんになってしまう。

そういった意味で、素人が商品先物をやるなと言われているのはこういう中長期投資が効かず、梁山泊的な血も涙もないハイボラティリティかつ予想の難しい短期投資をせまられるからだと思う。

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機関投資家マネーが少し入っただけで市場が壊れる銀投資市場

一部機関投資家が少し資金を入れるだけでこういう動きになる。

通常大きな金額を扱う投資機関(年金基金とかSWF)などはポートフォリオにおいてゴールドやシルバーを入れるということはごく一部に留める傾向にある。
それはゴールドやシルバーは市場規模が小さく、自分達の買いで簡単に値段が動いてしまうからだ。
加えて利回りがないということもあり、年間リターン目標を合理的に決める必要性のある機関投資家にとっては価格上昇という運否天賦にベットするような資産は主要投資対象物としてはなり得ないという事情もある。

しかし、一部機関投資家がもう投資先がないという形で無理やり投資資金をつっこむと貴金属市場はどういう動きになるのか?
特に市場規模が小さく、実需もプラチナやパラヂウムと比べて比率の低い銀はまさにそれを象徴する動きを見せる。
銀は市場規模が3.5兆ドル(価格によるが)しかなく、金の7.3兆ドルの半分以下しかない。
なおアップルの株式時価総額が1兆ドルというのをしると、金も銀もアップル10社分以内ぐらいのマーケットに収まる。
これは世界の国債市場・株式市場・不動産市場と比べると非常に少ない。

<銀の市場規模>

Size of the Silver Market



<金と世界の流動性資産との市場規模比較>
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<銀価格のチャート>
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今回の銀価格は20ドルぐらいまでは一旦ありうるかなあと思っていたら、それをはるかに上回る動きを見せ、これがバブルかと思わせるものとなった。
銀価格のこうした突発的な動きは大抵裏側に個人や公的機関だけでなく、顧客から資金をあずかった機関投資家系がいる。

銀価格のバブルから崩壊で有名な話といえばハント兄弟の話がある。
ここでは詳しく述べないので下記を参考にしてもらいたい。

投資の大家に学ぶ 銀買い占めて破産したハント兄弟|マネー研究



昔からゴールドやシルバーは資産価値を保全するものとして個人富裕層を中心に歴史があり、またゴールドは外貨準備としても蓄積される形で利用している。
しかし産業革命以降の爆発的な経済の拡大に伴って、金本位性・銀本位制では通貨の供給が経済の拡大に合わせることができなくなり、通貨としての役割を担わなくなり、いちコモディティとしての地位におさまった。
ゴールドならともかくシルバーが工業製品需要が停滞している状況や米国の経常赤字が膨らまないうちに爆発的に価格上昇するのは比較的短命に終わるものと思われる。

しばらく自分も銀市場に参戦をしていたが、米国の経常赤字が拡大しないうちにこういう動きをされるとさすがにそれはないんじゃないかなあという感想になる。

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米国の格差拡大がさらに鮮明になっていく

米失業給付、大幅減額へ 月6兆円特例、今月末に期限

引き続き二極化の加速。

ここまで米国政府は失業者に対して週600ドルの上乗せ加算を行って経済の下支えを行ってきた。
通常の失業保険が週370ドルということもあり、人によっては週1000ドルぐらいを受け取れていた。
しかしこの上乗せ特例も期限を迎えており、加えてやはり週600ドル大盤振る舞いはそう何回もできるものではないということで、上乗せ幅は失業前の給与水準の70%にまで圧縮ということで特例分は100-200ドルになるということである。
またもう一つ気がかりなのは失業期間が長引くと通常の失業給付金も切れていく可能性があるということである。

<参考記事>
米国の失業保険制度

上記PDF資料を読み込むと平均受給期間が16週ぐらいということもあり、大不況が始まった3月にクビになった人はそろそろ受給期間が切れる頃になる。
そうなると上乗せ云々の前にベースにある通常失業給付も切れることになるので、そうなると貯蓄がないという貧困層は相当苦しい状況に追い込まれ、小売売上高に圧力がかかることとクレジットカードの延滞率がぐんと上がりそうな気がする。
レッドブック小売り売上高も以前として前年比-7.5%アラウンドで推移しており、このまま給付が切れることを考えると簡単に回復するという考え方は少し難しいように思える。

一方でリーマンショックの時と違って高給層のクビになっている度合いが薄いということもあり、住宅は比較的底堅い動きをしている。
モーゲージ金利が過去最低ということもあり、金借りれるなら住宅買っておこうという層が動いているということだろう。

<参考ニュース>
米住宅市場にも緩和マネー ナスダックと並ぶ活況

ただし建設許可件数を見ると既に足元若干鈍くなっていることからこっからさらに無尽蔵に伸びていくかというと少し微妙だが、少なくとも市場急落みたいなことは起こらなそうな感じがしている。
期待はげおちはありそうだが、そこまで悲観的になることもないといったところだろうか。

このようにデータを見比べると地獄のような状況の貧困層と比べて、富裕層は金融ショックを受けなかったことから想像よりも経済状況は良いことがうかがえる。
またコロナウイルスについてもまだワクチン目処は立たない一方で、症状を緩和する対処療法は確立されてきており、未だ感染驚異は強いものの以前よりも医療体制への圧迫度は数ヵ月前と比べればはるかにマシになっているので、無差別ロックダウン措置というのも基本的にはないだろう。

<参考ニュース>
新型コロナが弱毒化しているという根拠はない

そういった意味では相場の調整下げは通常の下げよりも大きくなりそうなものの、慎重に買い場所を探すような感じでよいと思うが、二極化や選別色は高止まりしたままだろうということには注意したい。

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