村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年06月

楽観投資家にパンチを食らわせたIMFの世界経済見通し

IMF、世界経済の見通し下方修正-新型コロナの「容赦ない拡大」で

足元の株価は期待持ちすぎな感じではなかろうか。

IMFは毎年4回世界経済見通しを発表しているのだが、6月調査分にて世界経済見通しを2021年のところまで下方修正かけてきたということもあり、一部楽観投資家にパンチを食らわせるような形でリスクオフに傾かせつつある。
ここまではコロナウイルスの影響なんて今年いっぱいで経済はバラ色にすぐなるだろうし、給付金ももらったことだし株買いボタン連打すればいいんでしょという単純なやり方をしていたが、本当にそれでいいのかと考える人が増え始めてきたということだろう。

ちなみにIMFワールドエコノミックアウトルックは原著は誰でも無料で見れるので見たことないという方は一度自分の目で見てほしい。

<最新リリース分>
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2020/06/24/WEOUpdateJune2020

そして問題の表はこちらになる。

<IMFの各国・各地域経済成長率予想>
タイトルなし

(小さいのでクリックして拡大して見てください)

これを見る限りまず2020年は余裕の下方修正である。
先進国ではやはり感染拡大が厳しかった欧米での下方修正が目立つ。
特に南欧州国家はEUの救済支出がやはり全然足りないということもあり平気で2%以上の下方修正が当たり前になっている。
一応その分2021年分を少し上方修正しているが、2年間トータル見ても下方修正ですよねというのがうかがえる。
新興国もどえらい下方修正で2020年は3%以上下方修正している国がどかどか出ている。
インドとかは2021年も下方修正になっており、2年以上影響が続くとIMFが見込んでいる。
こう見ると感染者の抑え込みが上手くいったアジアはまだ下方修正幅はマシではあるものの、他の地域があまりにも駄目なので貿易的観点から見るとこりゃ当分あきませんわという話になる。

そうなると当初コロナの影響なんて2020年中にぶっ飛ばせると楽観的に動いていた投資家もさすがにちょっと色々考えた方がいいんじゃないかと改めて気づく頃ではないかと思う。

それに無駄に株を買い上げていったせいか、やはり全体的に市場参加者が薄くなっているように感じる。
特に下記ニュースに対する反応が顕著にそのことを物語っている。

<参考ニュース>

米国、英・EU製品に新関税検討-31億ドル相当に最高100%も



普通に考えると、いやいや米中貿易問題の時は2000億ドルとかの規模だったじゃないですか、31億ドルなんてゴミみたいな数値でしょというのが普通の反応なのだが、市場はこのニュース出てから株価中心に比較的大きめに下げで反応した。
そういった意味では買い手層が薄くなっていて、ちょっとしたネガティブニュースで反応しやすい地合いに変化しつつあるように思える。

別にショート入れろ、全部現金化なんて極端なことは自分は言わないが、少なくともフルポジ・全力二階建てなんていう場面でないことだけは確かだと思う。

マイナビ 金融AGENT

社債ETFの価格はどう決定づけられているのか解説

ツイッターでLQDなど社債ETFの見通しについて聞かれたので今回解説してみたいと思う。

そもそも社債価格というのはどういう風に決定づけられているのかの解説が必要だ。
例えばアップルが社債を発行しようとした時どのように市場に出てくるのか?
社債は発行時は大抵償還価格と同じ100で値付けされる。
(ゼロクーポン債などの特殊債は除く、また99.〇〇みたいな値付けのされ方もある)
発行時に問題になるのは価格ではなくてクーポンになる。
クーポンの決められ方は同年限国債+その銘柄のリスクプレミアム分ということになる。
アップルがドル建て10年債を発行しようとしたときにクーポンは、
米国債10年金利+アップルの10年分信用リスク分のプレミアム
で決まる。
足元の米国債10年が0.7%でアップルの10年分信用リスクが0.8%なら1.5%のクーポンで発行できる。

上記例のようにアップルが10年社債をクーポン1.5%で発行できたとしよう。
市場ではこの米国債10年金利とアップルの信用リスクの上下で社債価格が変動する。
米国債10年金利が0.7%から1.0%に上昇すれば、0.3%の金利上昇分債券価格は下落する。
10年債のデュレーションは概ね7-8年ぐらいなので7×0.3%=2.1%社債価格は下落する。
(逆に0.3%金利下落すれば2.1%価格が上昇する)
もうひとつの価格ファクターであるアップルの信用リスク分0.8%が、例えばアップルの信用力が上昇したり市場自体がリスクプレミアム圧縮の動きになり0.6%になると、0.3%金利が下落する。
これにより7×0.2=1.4%価格が上昇する。
(その逆もまた然り)

米国債金利については下記トレーディングビューで時系列で追えるので見てほしい

<参考サイト>

無料株式チャート、株式相場とトレードのアイデア — TradingView



信用リスクプレミアムについては一日ディレイだがFREDで開示されているのでそちらを確認したい。

<参考サイト>
ICE BofA US Corporate Index Option-Adjusted Spread


以上の仕組みを理解したうえでLQD価格はどうなるだろうか?
まずLQDのプロファイルの確認が必要だ。

<LQD運用元サイト>
https://www.ishares.com/us/products/239566/ishares-iboxx-investment-grade-corporate-bond-etf

タイトルなし

デュレーション9.5年、最終利回り2.26%である。
残存年数が13.5年とあるので、この最終利回りの構成は
米国債13.5年+13.5年分信用リスクプレミアム
(概ね0.8%+1.5%アラウンドぐらい)
という構成になっている。
 LQD価格が上昇すると思うのであれば、米国債の金利低下or信用リスクプレミアムの低下のどちからは最低でも必要になる。

ここから一部個人的な見通しも含めるが、そこまで強いビューがないので見通しというよりは材料提供レベルの言説に留める解説をする。
個人的にはこれだけ株価がブルになっているのであれば、さすがに米国債金利が劇的に低下する可能性は低いと見ている。
ただFRBが急激な金利上昇には断固対応する姿勢も見せていることから、驚くような金利上昇もとりあえずは見込めず、そうなると当面現在レベルの水準が続く予感がするので、米国債金利低下による価格上昇はそこまで期待できないと思う。
信用リスクプレミアムはコロナ前は1%しかなかったのが、一度流動性クラッシュで3.5%まで上昇したのが足元1.5%まで下がってきている。
これはFRBを中心とした社債買い入れ対応と米国政府の大型財政支出で市場の安心感が戻ってきて流動性が戻ったことと、大半の大手企業はちゃんと借り換えができそうだという安心感からきている。
加えて国債の金利が全然ないことから、金融法人が余資の運用先に非常に困っており、少しでも利回りがあるものに飛びついており、その代表格が投資適格社債であることを考慮すると、この信用リスクプレミアムは縮小せずとも拡大可能性はそこまで高くないように思える。

<過去参考記事>

利回りを求めて米ドル社債市場に殺到する投資家達


逆に景気が改善していくにつれ1.5%→1%にプレミアムが圧縮される可能性の方が高い。
そうなると0.5%のリスクプレミアム圧縮が働くので4%ぐらい価格上昇が見込める。
あとは為替ヘッジをせずに米ドルのままの投資ならこの2%(信託報酬控除後)の年間利息がもらえるのでそれもリターンに入れておける。

ということで米国債13.5年金利動向、13.5年分信用リスクプレミアム、年間利息収入の3つの要因を考えて読者各自もLQD価格やトータルリターンについて考えて見てほしいと思う。

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いよいよロビンフッダーが航空株から脱出し始める

<米国>アメリカン航空が大幅安 公募増資とCB発行で希薄化懸念

懸念していた現象がいよいよ発生し始めている。

昨日はアメリカン航空株が公募増資とCB発行で株価が-6%と大幅安になった。
今足元でコロナウイルスが直撃している業種については、こうしたエクイティ調達による既存株主価値の毀損が懸念されているし、だからこそ一回買いエントリーで航空株触ったバフェット氏は途中で航空株をぶん投げたと思われる。

<過去参考記事>

既存株主にダメージを与える形で債務再編を強行する航空セクター

上記参考記事でも書いているが、まだ公募増資やCB発行なら希薄化はましなレベルで、DES(デットエクイティスワップ)を食らうパターンがデフォルト以外で最も既存株主価値が希薄化される事象になると個人的には推察している。
特に航空株は普通の有利子負債以外に巨額の航空機リース債務が存在しており、航空機リース会社に対してDESを実行するというケースが出始めていることも気がかりだ。
カンタス航空などが国際線の再開延期などしているのを見ると、本当は公的支援を何かしらの形で受けられればいいのだが、おそらく公的支援を受ける前提条件にこうした既存株の希薄化を伴うエクイティ調達を強いられる可能性は相当程度高いというのがアメリカン航空株のニュースから読み取れるかと思う。
(あるいは公的支援受けたけど資金が足りず、調達おかわりせざるを得なくなった時など)

こうしたニュースを背景にいよいよロビンフッダーも航空株から足抜けし始めているのがデータでは見え始めてきた。

<ロビンフッダーのアメリカン航空株保有口数増減>
タイトルなし

<ロビンフッダーのデルタ航空株保有口数増減>
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投機的なロビンフッダーが買わないならば足元航空株を買う人はいるのかと考えると、個人的には誰も思いつかない。 
このタイミングで航空株を触れる機関投資家はほとんどいないだろう。
もし今航空株触って逆をつかれた場合は担当者が失職するリスクがあるからだ。
例えば今IT株を触って逆をつかれた場合でも顧客への説明においてはまあしゃあないですねぐらいの話で済むだろうが、航空株だったらなんでお前まだ持っているんだと詰められることは確実だからだ。
ロビンフッダーの保有口数増減を見ると、まだ保有口数上位ツートップのフォードとGEは買い増ししているものの、第三位のアメリカン航空株から脱出し始めているのを見ると航空株は一足先に反発相場は終了したという認識でいいんではないかと思っている。

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ロビンフッダーは本当にオプション市場に熱中しているのか

US youth, 20, commits suicide after thinking he lost S$1 million trading options on Robinhood

ロビンフッダーはコールオプションの裸買いをしているのかもしれない。

上記ニュースは米国の20歳の収入のない若者がオプションで70万ドルもの損失を出して自殺したというニュースで、ロビンフッダーの一部の人はかなりオプションを軽いノリで触っている人が多いことを示しているのではなかろうか?
確かに金曜日のオプション動向データを見るとVIXオプションがあまり動かない中で、個別株オプション市場で再度出来高が増加してきており、不穏な動きを見せているのは気になった。

<個別株オプション市場の日次出来高>
Ea69JoWU4AECGyf

6/5のコール急増と金曜日のコール出来高急増がいわゆるロビンフッダーによる影響が大きいということになるのだろうか?
そこまではデータ材料が辿りつかなく推察するしかないが、少なくとも影響がゼロではないと思う。
そして問題はロビンフッドでオプションを触るような個人投資家の投資姿勢にあると思う。

一般的ににわか投資家がオプションを触るというのは非常に危険な行為である。
例えばだが、手元に1000万円資金があったとして、リスク管理がガバガバなにわか投資家は株1000万円を買うノリでオプションを1000万円買ったりする。
さすがにどんなに素人の一般投資家でもオプションの売りは非常にリスクを伴うことを知っているはずだし、売りという言葉に対しては知識浅めの投資家ほど恐れるはずなので、コール売り・プット売りから入るという可能性は除外してもよさそうである。
プット買いも普通は下落に賭ける方向の取引であり、足元のGAFAMに突撃しているようなロビンフッダーが取りそうな行動でもなさそうだ。

<参考ニュース>
ロビンフッダー3900万人、GAFAM怒とう買い 南海バブル再来か

そうなるとおそらくはコール買いというのがロビンフッダーのメインオプション売買動向になるだろう。

<小口投資家のコール買いが急増しているツイート>
タイトルなし


しかもそれはヘッジとかそういうのではなく、いわゆる裸買いだろうと推察される。
裸買いオプションは量を間違えるとあっという間に自分が賭けた金額がゼロになるのである。

では次にそんなにロビンフッダーは軽いノリでオプションを触れるインターフェースなのかどうかも気になった。
残念ながら自分は米国在住でもないためロビンフッドの口座を開くことはできず、しょうがないのでとりあえずマニュアルだけでも見ておこうと思い、下記ロビンフッドのオプション取引のマニュアルを確認してみた。

Placing an Options Trade | Robinhood



<個別株売買ボタンの上にあるオプション取引ボタン>
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上記インターフェースを見てこれはやばいなと感じた。
株式の売買ボタンの上にオプショントレードボタンが存在する。
そしてこのボタンを押すと下記のオプションリストに飛ぶ。

<取引できるオプション一覧例>
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そして最後に買う量をペチペチタイピングしてオーダー通せば完了である。

<オプション取引の最終ページ>
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ほぼ株式売買と同じステップ数しかなくオプションの取引が可能になっている。
クリック数も3-4回でオプション売買完了にまでたどり着くことが可能だ。
このインターフェースは確かににわかトレーダーを誘引できるほど簡単に取引が可能であることを示している。
しかもロビンフッドは信用取引が可能で、その説明も下記ロビンフッドサイトに記載がある。

https://robinhood.com/us/en/support/articles/margin-maintenance/


ここで手元材料がないが、オプション買いを信用取引で建てている人間がいるのではないかということだ。

もしこの信用取引コール買いでマージンコールが多発した時に相場はどれだけアンワインドするのかは少し頭に入れておきたいと思われる。
その時はロビンフッドの信用担保掛け目があがったりなどして、ロビンフッダーの信用取引全体に悪影響を及ぼすからだ。
今はまだこれが相場下落の引き金になるかどうかは判断はできないが、少なくとも健全でないことだけは確かだ。

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コロナウイルス不況でも戻るものと戻らないもの

ハードデータを見ていると徐々に明らかになってきた。

コロナウイルスによる世界各地のロックダウン措置で大きく経済はがたついたが、徐々にコロナウイルス対策が進んできたこともあり、ハードデータ的に傷の浅いところと未だ多大なダメージを受けている業界と株式市場だけでなく、経済ハードデータでもわかってきた。

例えば米国の住宅市場は一般人が考えるよりは悲観的な状況ではない。
一般的に住宅建設市場の先行指標と言われている建設許可件数を見ていると、数値は下がったもののリーマンショックと比べるとかすり傷に近い。

<米国建設許可件数の推移>
タイトルなし

これを見ると、一番悪いところで2015年レベルまでバックしたものの、直近月では底打ちし2017年レベルに回復した。
リーマンショックの時はこの数字が2000から500までジェットコースターのように一直線に下がったのを考えれば、失業率が一応ピークを打ちつつある中では一応ボトムアウトした。
米国住宅市場は米国経済の中でも非常に重要度の高い指標であるため、なるほどこれを見る限りは株式市場がリーマンショックレベルで下がる理由はほとんどないように見える。
住宅市場がこのレベルのダメージで済むなら、生活必需品・ITなどはもっとダメージが軽いこともなんとなく想像しやすいだろう。

一方で例えば航空業界はやはり厳しい。

<参考ニュース>

豪カンタス航空、国際線の運休継続 本格再開、10月下旬以降


国際線の復旧までにはまだまだ時間がかかることは確実で、航空株はネットロスが続くことは確実だろう。
そして国際線が飛ばないならジェット燃料需要は低下したままなのだから、わざわざ石油株を買うこともないなという発想も至極当たり前になるだろう。
ツアーリズム・ホテルも国際線が飛ばないなら駄目なので、これもまだ投資の出番はやってこないだろう。

<参考ニュース>

都内の外食大半、深夜営業の再開見送り 感染「第2波」を懸念


飲食店も夜中が繁忙する時間帯に依存する業態は厳しいことは確実だ。
少なくとも企業が接待や社内行事飲み会について自粛する流れは当面続くだろう。

米失業保険申請なお週150万件 雇用の持ち直し遅れ

雇用も持ち直しには時間がかかるだろう。
企業側がコロナウイルスの影響でどう自社の活動を強制停止させられるかわからないので、基本的には防御姿勢を強めたままの状態が維持されるはずだ。
それを考えれば人材系企業の株が復活するのはまだまだ遠い未来になるだろう。

またこうした苦境企業は資金繰り自体が苦しくなるので、配当・自社株買いが滞ることに加えて、増資・デットエクイティスワップなど既存株主価値を破壊するような行為に及ぶ可能性も否定できない。
こうした事象が発生すると後からびっくりした投資家が売りに走ってしまうというリスクが大きく、もし長期投資のつもりで触るとしても財務指標を見ながらなるべく余裕のある会社を選びたいと思う次第だ。

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