村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年04月

コロナウイルス倒産によって銀行の不良債権比率はどれぐらい増加するのか

どこもかしこもお茶濁すコメントばっかりしていてうんざり。

今個人的に気になっているのは、現在のコロナウイルス不況で一体銀行の不良債権がどのぐらい増加しそうなのか、どれぐらいの企業が返済に苦しんでいるのかということである。
そのために欧米などの主要銀のカンファレンスや資料を確認したり、さらには念のため新興国の銀行の決算資料まで確認したりしている。
ただ実際にどれぐらい不良債権比率が出てきそうなのか、主要銀行の決算カンファレンスを聞いてもみんなお茶を濁すように「まだ精査中」「適切に不良債権引当金を積む」といったコメントしか出さず、具体的な数値的な見通しを出してこず、現状把握がかなり難しいと感じていた。
現状ではまだ不良債権としても認定しておらず、開示資料見ても何の役にも立たない資料ばかりではてどうしたものかと

そのような中でインドネシアの銀行が 爆弾みたいな開示資料を出してきているのを発見した。
まあ正直なことは良いことだと思うがちょっとこの数値は引くなあと思う次第だ。
下記がその資料である。
誰でも見られる開示資料なので、見たい方はリンク先に飛んで見てもらいたい。

<インドネシア大手銀行のコロナウイルス影響による不良債権比率>
開示資料のアドレスはこちら
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一応この銀行はコロナウイルス前まではグロスで2%ちょっとぐらいの不良債権比率だった。
それが今回のコロナウイルスの影響で不良債権確定なのが7.3%にジャンプし、潜在的不良債権をカウントすると19%にのぼると開示が出されている。
これはかなり想像を絶する数値だろう。
しかもこれは4月24日時点の数値で、アジア国は全体的に5月いっぱいはロックダウンを継続する見込みであることから状況は6月いっぱいぐらいまで悪化が続く可能性が高いと見込む。
インドネシアでこれなら、インドネシアより脆弱な経済を抱えている新興国はより状況がひどいことは容易に想像ができるし、欧米の銀行でもゲロ吐きたくなるような不良債権開示してくるところも出てくるかもというのは想定の範囲に入れておくべき事項だろう。
ちなみにシンガポール大手銀もコロナウイルスの影響受けている貸出について開示しており、これを見てもやはり10%ちょい影響受けているのは世界平均かもしれないねと感じている。

<シンガポール大手銀の開示資料>
リンク先はこちら
タイトルなし


ただ、もちろんここから状況の深刻化に伴い財政支出によるサポートが出現してくるので、これがどれだけこの不良債権比率の上昇を止めてくれるのかというのはアンテナを高くして考えておきたいと思う。
企業の資金繰りがサポートできない国は景気が回復してきても銀行のバランスシートに大量の不良債権が残るので、貸出ではなく不良債権処理に追われて景気回復は他国比劣後することを念頭に置きながら余剰資金振り向け先は考えていきたいと思っている。

暴落の爆心地になった資産にはすぐに飛びつかない

食虫植物に捕らわれる虫みたいなもん。

自分は相場が暴落した時には一体どこが爆心地だったのかを意識し、そこに関連した資産へ資金を突っ込むことは避けている。
それについて今日は少し書いておこうと思う。

爆心地になった資産というのは最初に強制損切りや追証みたいなのが大量にかかりとんでもない下げ方をする。
そこに途中から短期リバ狙い勢や底値狙い買い勢が突撃してきて一旦は反発が見える。
この時点ではあまりにもその資産が過去と比べて安く見えるので、非常に魅力的な資産だと思ってしまい、引き寄せられる人が続出する。
しかし、その反発が見えても実際は以前の高値に全然届かない範囲で止まってしまう。
なぜなら持続的な相場上昇にはやはり機関投資家の買いが継続して入るというのが必須だからである。
機関投資家だって一サラリーマンなわけで、爆心地の資産を買って変にやられたら失職する可能性すらある。
だから、負けたとしても言い訳ができるところに資金を投じたいわけで、少なくとも爆心地に資金を投じて負けた場合は言い訳ができないので、継続的な資金を投じることができず、相場の持続的な上昇が見込みづらいという事態が発生する。
機関投資家の継続的な買いが重要なのは下記書籍を読めばいやというほど理解できると思う。

<参考書籍>

ミネルヴィニの成長株投資法

だから途中から短期リバ狙い勢が利益確定を始めてしまい、しょぼいリバに留まるならまだいい方だが、切るのが遅れた人達が後から戻り売り参戦してきて底値を割れて底値買い勢を焼きつくすとんでもない値動きを見せることさえある。

さて今回のコロナウイルスの爆心地はどこだっただろうか?
過去記事を振り返るとまずボラティリティが急上昇したことを思い出すとVIXショートはその一つだ。
その後にサウジアラビアの最悪のタイミングでの原油増産仕掛けにより原油が相場暴落の爆心地と化した。
原油自体がとんでもない動きをしているなら、原油に関わりそうな銘柄も全部爆心地に近いリスク資産であり、化学銘柄・原油施設銘柄などはこれに該当するだろう。
ツアーリズム・航空会社・航空機関連銘柄も爆心地に限りなく近いので、これも正直なるべく触るのは避けたい。
少し考えるだけでもこれだけ避けた方がよさそうなカテゴリが思いつく。
 
それでも爆心地に近いリスク資産を触りたいと思ったら、一度だけ自分が許容できる範囲の分だけ資金を投じるぐらいに限定した方がよいだろう。
それで失敗したらまあそんなもんだよねぐらいの感覚で損切りすればよい。
間違ってもずるずるとナンピン買いして破産一直線になってはいけない。

原油ETFで大損した人は投資対象に対する知識不足が問題

<東証>ETFの野村原油が安い 「期先物へのシフト反映」

まず自分が投資しているものに対する知識を持つことから始めよう。

原油が値ごろ感だと考えた投資家が多かったのか、4/20から1671の原油ETFに大量に買いが出現して出来高が爆増した。
これは日本だけでなく、米国でもUSOという原油ETFの出来高が爆増し、個人投資家が買いで殺到しているというのが話題になっている。
しかし、個人投資家の思いとは裏腹に1671もUSOも見るも無残な価格下落をしている。

<USOのチャート>
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今回1671の原油ETFに突撃した人達は相場観が悪かったのだろうか?

期近原油価格だけを見れば、いやいやこれを買っている人達は本来相場観的には合っているはずだし、大勝利じゃないかと思われるが、結局投資している商品の基本的知識が欠如しているということが今回の損失の大きな原因になっている。

<原油期近価格のチャート>
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なぜかといえば、直近反発している期近原油価格は既に1671もUSOも保有しておらず、逆にこうしたETFの売りが期近原油価格の猛烈な下落を促した側面がある。
そして期先価格はどちらかというとだらだらと反発もせずに下がっている上に、強烈なコンタンゴが解消されていないことから時間が経つにつれさらに減価を食らうというパンチを受けている。
これらの情報はそれぞれのETFを運用している運用会社のページや、証券取引所の適時開示資料を読めば情報が提供されている。
そして1671でいうとこのETFの基準価額とマーケット時価が大きく乖離し、マーケット時価が大幅な割高になってしまっており、原油が多少反発しようがそもそも基準価額がマーケット時価のレベルに戻らないということもあり、この数日で壊滅的なダメージを受ける結果となった。
ETFの基準価額についても日次で証券取引所に適時開示情報が出ており、読めばこれも理解できる情報である。
こうした自分が投資する金融商品のリスクをよく理解せずに、しかもきちんと開示されている情報を読まずに投資したために、こうしたひどい事態が起きるのである。

相場で買っていくには相場観云々というのもあるが、そもそも自分が投資しているものに対する基本的知識を持つということも相場で勝っていくには必須だと個人的には思っている。
今回のこうした動向を見ると下記のような商品については、きちんと自分がどういった性格のものに投資しているのかをまず知っておくべきだろう。

・先物を活用したETF・ETN
・レバレッジ活用した投資
・複雑なデリバティブが絡んだEB債などの商品

もしこうしたことの理解が無理だというのであれば、もっとシンプルで自分が理解できて、損失も自分で計算できるような商品にだけ投資対象を絞るべきだろう。
今回はそれを知るいい薬になったのではないだろうか。

我慢するアジア、我慢できない欧米

イタリア都市封鎖、5月4日から段階解除 伊首相意向

我慢できる国、我慢できない国。

ここもとの動きを見ていると、中国は国内経済活動は復帰させているものの、外国からコロナウイルス持ち込みを警戒して国際便を大幅に減らしたままの状態を継続している。
シンガポールも一ヵ月のロックダウン延長を決め、5月いっぱいは経済活動が低調な状況が続く。
マレーシアもロックダウン延長を検討していると報じられている。
日本もおそらく十中八九緊急事態宣言が同様に数週間ほど延長することが予想される。
かなりアジア勢は警戒感を維持したまま、もう少しコロナウイルス感染者数の確実な減少を見極めたいと考えて動いている。

しかし感染者数・死亡者数および死亡率の面でもアジア勢よりどひどいことになっている欧米各国は、上記記事の通りやっとピークアウトが見えたという段階でもう我慢できずにロックダウン解除に向けて動き始めている。
この違いはどこからきているのだろうか?

全体としてアジアは上意下達で動く国が多い。
日本・中国・韓国・台湾・シンガポールなどはこれに該当する。
また多民族国家においても昔から無理やり頭から不満噴出を抑えるために色々策をこなしているということもある。
また極端な資本主義社会ということでもないので、税金投入によって企業を救済することについて欧米より抵抗感が少ないというのも、アジア勢がコロナウイルスに対して粘り強く抵抗しているサポート要因になっている。

一方で欧米は米国中心に上意下達精神などというものはなく、多民族文化を法律と金で縛るというのが主な文化構想になっている。
特にEUはここまで国境の自由を掲げてきたこともあり、多民族文化の即位sンが進んでいた。
しかし上意下達のない多民族文化は、緊急時にはまさに自分の身を守ることが最優先されることを意味する。
なのでロックダウンによってクビ切りが横行し、国民の不満が急速に高まっている。
欧米勢ではせいぜい我慢強い国民性があるのはドイツ・ロシアぐらいで、あとは我慢なんてところから程遠い文化しかないところばかりなので、経済的にも文化的にも早期解除圧力が強い。

今回のコロナウイルスは感染から発症まで時間差があることに加えて、無症状感染者が大量にいることから、夏になって気温・湿度が高くなっても人間がウイルスの格納器になってしまってなかなか感染者数が減らないという危険性が危惧される。
そのような中、我慢できなくなった国民の圧力に耐えきれず早期解除はリスクが高いように見える。

中小企業株は需給以上に被買収プレミアム剥げが悪材料

日本電産・永守氏、新型コロナ「利益至上」見直す契機

既にSNSではいくつか上記記事を共有していろいろ議論や意見交換がなされているが、自分もこの発言から考えられる市場へのヒントを考えておきたくなったので、改めて考えてみた。

まあやはり一番印象的なのはこの発言であることは間違いないだろう。

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「今はキャッシュ・イズ・キング(現金は王様)。企業の買収価格が去年より3割下がっているとしても、現金の価値は5倍や10倍に高まっている。同じ1億円でも去年と今では価値は全く違う。先が見えるまで安易な投資はしない方がいい」
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これはもう投資をやめて全部現金にしておけばいいという極端な解釈も可能だが、それをいうと実も蓋もないので別の角度で論じたい。

当たり前の話だが、基本的に買収を行うのは常に買収される側より大きい企業になる。
(買収される側が買収する側より大きい企業である例もなくはないが、大抵失敗して大惨事になる)
この永守氏の態度は多くの有能な経営者が当面M&Aは控え、資金確保を優先させるということを意味している。
大きな企業は基本的には株価バリュエーションは買収されないことを前提とした数値である。
一方で小さい企業は大企業と違い、株価バリュエーションに「買収される可能性」というのが多分に含まれるケースが多々見られる。
実際に投資家の中では買収されそうな企業をターゲットとして株を買う人もいる。
大企業ばかり中心に投資しているとあまり実感わかないが、株がその企業の所有権を意味していることを改めて知らしめてくれる。

しかし、そうした買収する側の企業がする気がないとなれば中小企業の買収されるプレミアムというのは剥げた状態になる。
そして次に中小企業株が上昇するときというのは大企業が買収する余力ができ、実際にそれが行動に移され始めた時であることを意味している。
だから不景気から立ち上がる時にまずアウトパフォームするのは大企業からであり、その後買収プレミアムが乗るようになってから中小企業株が大企業株をアウトパフォームし始めるのだ。

しかも今回のコロナウイルス騒動は全世界一斉にパニックに陥ったことから、過去よりも大企業が再度M&Aに始動するまでに時間がかかるだろう。
これが日本でも米国でも中小型株が大型株にパフォーマンス劣後する幅が増幅している原因になっていると思われる。

中小企業株に投資するなら、どんなに損しようが自分はこの企業を絶対に応援したいぐらい好きで何年でも付き合うというぐらいの熱が入って、実際に損しようが気にならない企業しか触るべきではないだろう。
投資するなら誰もが知る大手企業で健全な順に限ると思っている。

また未公開株やスタートアップといったものも、ああいうのは基本的に買収される可能性というのが大きく企業評価に組み込まれているので、ここらへんも大減速といくつか畳まざるをえないところが出てくるだろう。

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