村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年03月

ナスダックの追加と今考えている投資方針

相場の冷却期間をすぎて、色々どういう投資戦略を組むか考えているが、書き散らす形で今考えていることを整理しようと思う。

個人的に考えていた相場のどたばた期間がすぎて、強制売り玉が減少してきたことからだんだんと冷静さを取り戻してきた相場に対して

一つはやはりナスダックの買いだ。
今回の下落相場はITバブルがはじけたのではなく、コロナウイルスによって無理やり経済が止められたというイレギュラー現象であり、やはりIT・ヘルスケアが成長産業ということには依然として変化はないと考えている。
むしろ今回のコロナウイルスで最も駄目な産業としての烙印を押されたのはエネルギー・素材産業であり、足元でも一番値持ちがいいのはやはりIT銘柄である。
また、この急速な経済シュリンク状況においては、米ドルというゼロから信用創造できる米国というのはやはり他の先進国より強みがあることは間違いないだろう。
また、足元の玉動向は明らかに変化しており、今までは下げている時にどかどか強制売り玉が出て出来高が増加するという現象だったのが、金曜日は下げている割には出来高が少なく、明らかに売り圧力が減じているというのがうかがえる。
なお玉読みについては下記書籍を参考にしてもらいたい。


ミネルヴィニの成長株投資法 

ということで月曜日にナスダックを追加してみた次第だ。

<QQQ(ナスダックETF)のチャート>
タイトルなし


ただし、今はあくまでFRBの金融対応と米国政府の財政による下支え効果によるリバウンド相場ということもあり、本質的にはまだ上昇トレンドに完全に回帰しているとは思っていない。
そういうこともあり、ここより上は一旦追うのはやめ、どこかで利益確定して再度二番底を狙う計画を立てている。

もう一つはJREITだ。
JREITは不動産投資信託ということもあり、基本的には安値ナンピンをしていけば少なくとも大損するという可能性が低い金融商品だと認識している。
残念ながら個人的にはそこそこ高い値段で過去JREITを保有してしまったことから、今回のJREIT投資はナンピンということになってしまうが、基本的にREIT関連は配当金を合わせていけばそのうち損益元通りになりますよねという若干不本意な形の追加になる。
こちらは毎月積み立てる形での追加投資になるだろう。

なお、新興国については残念ながら当面出番がない。
新興国は米ドルを手に入れなければ成長することができないが、米国が輸入を拡大し、先進各国マネーが新興国への投資を再開しない限りにおいては日の目を見るのは大分先になるだろう。
なお、新興国への投資において重要な概念は下記過去記事を参考にしてもらいたい。

<過去参考記事>
 新興国経済を見る上で重要な「国際収支の天井」という概念

仮にどうしても新興国ポジションを取りたいというのであれば、やはり一番耐久力のある中国に投資するのが一番無難ではなかろうか?
少なくとも南米・アフリカは医療体制・経済構造を考えるととても投資に回せる雰囲気ではなくなってしまっている。

一声対GDP比10%の財政支出が求められる展開

いくつかの国で財政支出に関するアナウンスが出ている。

今足元で政府が無理やり経済活動を止めているわけで、そうなると如何に政府が財政支出をひねり出して経済をサポートするのかというのが非常に重要になる。

<過去参考記事>

都市封鎖による損失は政府が負担しなければならない


ぽちぽちとそういった財政話が出てきているので、ここで数値が出てきている各国情勢を見ておきたい。

「米国」

米、2兆ドル景気対策が成立 企業や個人に「安全網」



米国については大量に失業者が既に発生していることから、かなり早い段階で手を打ってきた。
2兆ドルというのは米国のGDPがおよそ20兆ドルちょっとなので、
対GDP比10%を打ち出してきたことを意味する。
このレベル感でとりあえず相場の下落が止まっているのを見ると、対GDP比10%刺激策というのが
コンセンサスになるような気がする。

「ドイツ」

ドイツ経済対策、GDP比2割 7年ぶり新規国債18兆円



ドイツについて残念ながら18兆円では不足していると思われる。
欧州は財政通貨によって域内為替変動機能が効いておらず、
ドイツが他の地域に大量にモノを輸出することによって収奪しているというのが現状だ。
だか
ら本来はドイツが他の欧州国の分も負担するような形で追加支出を出す必要性がある。
しかし、18兆円という対策では国内GDP比たったの5%しかない。
現在の周辺国の医療体制の貧弱さも一つに無理やりなドイツの緊縮財政押し付け策が
原因にもなっていた。
残念ながらこのドイツの姿勢
はまだ続いていることがうかがえ、個人的には非常に失望している。
もっと大規模なものがドイツから出てこない限りは欧州の苦境は続くものと考えている。

「東南アジア」

東南アジア、追加経済対策 新型コロナの打撃拡大受け



欧州と比べると実はまだ東南アジア各国の方が財政支出の重要性を十分に理解しているように思える。
財政に余裕があるし、こういうときのために蓄えてきたということもあり、一気にGDP比10%の対策を打ち出してきた。
マレーシアなどもこの10%ラインというのを超えるレベルの支出を出している。
しかしシンガポールを除いた東南アジア各国の難しいところは、財政支出拡張による格下げリスクがあるというところであり、ここをどうケアするのかも非常に悩ましい。

中国もアナウンスは出ているものの、まだ具体的な金額がわかっていないのでここは数値が出てから評価したい。
そういった意味では日本もやはり一声10%の対策を打つ必要性があるだろうが、はたしてその根性を出せるかどうかに注目が集まる。

短期流動性枯渇問題は解消され始めたが、それでもデフォルトするような企業は避けたい

NY円、続伸 1ドル=107円95銭~108円05銭、米景気懸念でドル売り

まず足元で円高米ドル安に転換したことは非常に良いことだ。

ここまで起こっていたことは突然のボラティリティ上昇に伴う各市場での流動性の枯渇が大きな問題となっていた。
それにより、ドルに対する需要が高まり、ドル高他通貨安という状況がここしばらく続いていた。
その緊張感は通貨ベーシスや米ドル短期金利、CP利回りなど見ても感じ取ることができるだろう。
しかし、ここまでなりふり構わぬ財政対策・金融政策対応をしてきたことから、まだ米ドルLiborは高い状態ではあるものの徐々にドル安に向かい始めてきた。
そういった意味では流動性目詰まりについては徐々に解消の目処が見えてきたという感じだろう。

ただし、だからといって何を買っても大丈夫だというわけではないだろう。
まず投資家は投資において投資先のバランスシートの状況を確かめてほしい。
最悪一年間今の状態が続いてもこの企業なら耐えられるだろうと思われるバランスシートを持つ企業に投資を集中すべきだ。
なぜなら、いくら将来性が高そうに見えても資金繰りが詰まってデフォルトや、借り入れができないので公募増資で希薄化して株価が二度と戻らなくなるというようなバランスシートしか保持していない企業は触るだけ損だろう。

次に業種選別だ。
デイトレ・短期狙いなら何を狙ってもいいのだが、中長期投資するならば避けたいセクターは決めておかねばならない。
避けるべきセクターはバランスシートを使う業種(不動産販売・商社・銀行)・人材・資源・素材も思わぬ減損が出る可能性を考慮する必要性がある。
特にリーマンの時に思い出されるのは新参企業が大量に出てきてバタバタ死んでいった不動産販売・人材系はまさに需要蒸発と影響長期化は避けられないので問答無用でさわるべからずだろう。
また、このような情勢において一番苦しいのは資金繰りについて調達できることを前提に動いているスタートアップ企業だろう。
以前購入した下記書籍を読むと、スタートアップは「外部から得た資金を一定期間で使い切って成長することを前提にしていて、使い切ったらさらに外部資金を調達する」ということを当然としたビジネスの進め方をしているのがわかる。

<参考書籍>

スタートアップ投資ガイドブック

読んでいて個人的に感じていたのが、その資金調達に対する考え方の危うさであり、今回のような流動性ない資産からバリュエーションが根幹から揺らいでいる状況で予定通りの外部資金調達が可能なのだろうか?
こうした観点からスタートアップ企業への投資があまりにも多い銘柄なども避けておきたいところだ。

とにかく当面はイージーマネーに頼りきりだった企業というのは基本的に全て切り捨てという前提で相場にあたった方が確実だと個人的には思っている。
 

ノンエージェンシーCMBSの流動性枯渇継続が悩ましい問題

インベスコ・モーゲージ、追い証請求応じられず

所詮リーマンの時の半額しかないが、いつ救済に乗り出すか注目。

あらゆるドル建て債券市場の流動性が枯渇し市場が崩れる中でFEDは対策をここまで打ってきた。
特に地方債・MBS・投資適格社債に矢継ぎ早にFED買い入れ対象にすると慌てて動いたことから、少なくとも買い入れ対象になった資産についてはかなりラリーして進み始めている。
しかしMBS市場において未だ売りが止まっておらず、まだリスクプレミアムが拡大している市場があり、今足元でそこが注目されている。

その市場とはノンエージェンシーCMBSである。
MBSの中でもCMBS(商業用不動産ローン)は一般的には比較的高いリスクのあるMBSと認識されている。
しかも元利金をギャランティーしてくれない(ノンエージェンシー)CMBSとはダイレクトに発行元の信用力変化にさらされる。
これが足元のコロナウイルスによる都市封鎖で大量にこげつく危険性があるということで買い手が消滅し、売りたい人は売ることもできず追証を受ける事態になっているのが、いくつかニュース記事を見てもうかがうことができる。
(記事一番上はインベスコが対象ファンドで追証払えないという話と米国REITが死ぬほど下がった理由)
そしてこのノンエージェンシーCMBSは残念ながらFEDの買い入れ対象に入っていないことから未だ流動性が戻っておらず、ここが崩れることを指して金融崩壊だという人もちらほらいる。

ただこのノンエージェンシーCMBS市場の崩壊とともにリーマンショックだあああと騒ぐのはそれはそれでナンセンスだと思われる。
例えばJPモルガンの総資産がリーマンショック以降3割ちょっとぐらい増加する中で、所詮CMBSの市場規模はリーマンショック以来半分程度になっている。

<CMBS発行量の推移>

CMBS Volume - Commercial Mortgage Alert



そういった意味では大手金融機関が今回FEDの買い入れ対象になっていないノンエージェンシーCMBSにのめりこんでいるという印象は一切ない。
つまりノンエージェンシーCMBSがどん詰まっただけでは金融機関がバタバタ倒れるといった可能性は低いだろう。
ただもちろんここが対策なく放置されっぱなしだと同様にFED買い入れ対象にならない債券種類の資産、つまりハイイールド社債・CLOなどに失望的な売りが追加され圧力がかかることが想定され、これが巡り巡って相場全体の足を引っ張る要因になりかねない。

ここまで比較的FEDが早めに手を打ってきたのだからここを完全放置するという可能性は低いとは思うものの、ノンエージェンシーCMBSのリファイナンス対策について米国政府・FEDがどのような答えを出してくるのかを注視しておきたいと思う。
 

米国で大量に失業者が出たことは相場にとってはポジティブ

US jobless claims hit 3.3 million, quadruple previous record

米国人が大量にクビになっているが、逆に相場にはサポート要因。

コロナウイルスによる都市封鎖から既に大量に米国でクビきりが発生しているという話が出ていた。
ところが全体像がまだわからず、どれだけの人がクビになっているのか想像の範囲ができず、ニュース報道でもエコノミストが出す予想が100万人~400万人とほんとうにバラバラで全くあてにならない状態だった。

<参考ニュース>
Jobless claims expected to spike to a record-breaking number

実際に蓋を開けてみると、新規失業者はなんと驚きの330万人である。
ちなみにその前週は28万人なので軽くいつもの10倍以上クビになっている。
これは米国の総人口の1%、労働人口の2%に匹敵するので、単純に失業率が2%いきなり増えることになる。
これはリーマンショックの時期の単週でクビになった人数最高記録である60万人台をはるかに超えるとんでもない人数が一気にクビになっていることを意味している。
米国では好きなタイミングで従業員にクビを言い渡すことができるので、本当に大量の人が雇用主から「明日から来なくていい」と肩を叩かれて追い出されたわけだ。
米国ではこうしたクビになるタイミングが企業活動とほぼ一致していることから、実際の米国経済の体温をはかる指標として新規失業者保険申請数というのは経済指標として重要視されている。

<参考記事>
投資の役に立つ統計から米国経済の状況を読み解く方法

しかし、もはやこれだけ大量にクビになっている人間が出現しているということは、経済・雇用を重視するトランプ政権にとっては何が何でも対処する必要性のある問題になるわけだ。
あれだけ「メイクアメリカグレイトアゲイン!」と叫んで当選した大統領がまさか雇用の急速な喪失を無理するわけにもいかないことは確実だ。
特に今回は自然な景気サイクルではなく、コロナウイルス蔓延を防ぐために都市封鎖を行ったことによる景気下落とクビ切りであり、コロナウイルス感染時期を乗り越えれば再び米国企業は人を雇って企業活動を始めることは目に見えている。
(もちろんその間に対処間違うとやばいけど)

そのためにもうFRBは社債買い入れにまで到達しているし、トランプ政権は2兆ドル景気救済パッケージまですでにぶっこんできている。
2兆ドルパッケージは決まるまでかなり短期間だったことを考えると、これで足りなければ、まだ財政もおかわりがあるだろう。

そして今回は運がいいことに金融機関にレバレッジがかかっていないので、一部を除いては金融機関は持っているポジションを無理やり投げる必要性がない。
リーマンショックの時のようにパツパツに金融機関がレバレッジをかけてたらこの時点でもう皆総崩れで金融システム崩壊待ったなしみたいな感じだったろうが、今のところは政府が財政対応すれば大丈夫だろうというのが市場のコンセンサスになっているように思われる。

というわけで、過去に例を見ないレベルで失業者が出たことにより絶対にトランプ政権は底抜けしないように財政支出対応を継続させることがプラス材料として認識するということもできると個人的には考えている。
ただ一方でさらなる財政支出拡大というのが予想されるなら、それは単純にドル札を刷ることを意味するので、やっぱりドル安方向に傾きますよねというのもなんとなく想像がつくのではないだろうか。

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