村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年02月

今回の売りが収まるまで冷却期間はどれぐらい必要なのか

米国株急落、16.5兆円相当のシステム的な売りが原因ーJPモルガン



調子乗って買い越した人達への天罰。

現在相場で起こっている変調は、その最中ではわかっていても止まることができない人が大半だったが、調子に乗ってQEバブルだあああとかいって バリュエーションガン無視で米株を買っていた機関投資家が顔を真っ赤にしてぶん投げているだけである。
それもFRBのマネーマーケット対策だあああとか意味不明に積み上げた人と最近流行りのクオンツやらAIなどが判断するファンドが変に金余り市場の中で無理くり相場を上げてきた。
本来はどこかの途中でまぬけな個人投資家にこの玉をパスしていくことによって最終的なバブルを仕上げにいくのだが、ブラックロックの開示情報を見る限り個人は非常に白けた雰囲気で相場を見ていて、高値玉をパスする先が足りない状態になってしまった。

<過去参考記事>

ブラックロックの決算から見る投資家動向(2019年4Q編)


そこに一部大口投資家が積み上げてきた大手IT銘柄に利益確定玉を飛ばしている最中にコロナウイルス感染拡大懸念が真っ向からぶつかってきたことから、一日して一気にボラティリティが跳ねる事態になった。
以前にも記事にしたがボラティリティは全てのクオンツ・AIファンドの根源にあるものであり、最も活用されるものだ。
ボラティリティが一気にジャンプしたら、もうそのファンドは無理くりポジションを落とすのを自動でやるしかなく、これが売り爆弾となって市場に強烈なアンワインドを起こしている原因になっている。
だが米国株も相当ピークから下がってきたことから、段々とここでいっちょ押し目買いという動きがちらほら見えるが、本当に今の段階で正しいのかどうか検証したい。

一つ実験として皆がロングにロングを重ねてきたナスダックからそれを検証したい。
ナスダック100を代表するETFであるQQQを検証に使ってみる。

現在の株価位置は11月8日の位置まで下落しており、つまり11/8~2/19まで新しくこのETFを買ってしまった人を全否定している。
この間の出来高はどれぐらいか?
自作したpythonのプログラムでデータをエクセルにダウンロードして計算してみた。

合計出来高は16.57億株だ。

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もちろんこの中で複数回に渡って取引している人もいるが、ここではそれを仮定するとキリがないので、一旦この16.57億株は全員別の人間が取引してロングしているポジションと仮定しよう。
上述した通り、現在は機関投資家が調子乗って買ってしまったものの全否定になるわけで、その反省として強制的に売らされているわけである。
つまり保有している16.6億株を底値で買いたいと思っている人達にパスしきるまでこの不安定な相場は続くことになる。
しかし現在2/20-2/27の間の出来高はどれぐらいか?
グラフを見ればわかる通り、現在緊張感上がって無理やり売らされている人が続出していることから出来高は急増しているが、未だ4.9億株である。

<QQQのチャート>
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つまり、まだ11.7億株の買いが捕まってしまっているのだ。
ここまでボラティリティが上昇した状態だと、この買いも投げ切るまで厳しい動きをする可能性があると感じる。

ではあと残り11.7億株が売り手から買い手にパスされるのにどれぐらい時間がかかるのか?
27日の出来高は1日1.2億株とまさに緊張感マックスな状態だったが、ここから少し引いて一日1億株パスされると考えよう。
そうなるとパスされきるのに12営業日かかる。
つまりパスしきる時期は3/16である。

ただ上記は少し甘めな予想だ。
機関投資家の無駄買いが全否定となると、そのスタートは10月1日からである。
そこからカウントすると売られる運命にある玉は22.5億株存在する。
そうなるとまだ回転しきっていない玉は17.6億株だ。
そうなると回転しきる日数は18営業日。
3/24まで回転しきらないということになる。

個人的にはこの考えと期間から少なくとも売り第二波までは出現すると考えている。
その際に価格位置はどこになるかは正直予想しづらい。
ただ、少なくともそれだけの冷却期間を置く必要性はあると感じている。
第一派の底を狙ってやる人はあくまで一時的な戻りを取るという意識で素早く回転させることを前提に考えた方がよいだろう。
少なくともわけもわからず短期間に調子乗ってロング積み増して自爆したアホ投資家の脱出口になる気なんて到底なれない。
気になる人は自分で出来高ダウンロードして計算してみよう。

エネルギー株を保有していた投資家がブチギレて損切りを開始する

<米国エネルギー株ETFのチャート>
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残念ながらエネルギー株はお星さまになりそう。

月曜日の米株は大荒れの展開になり、VIXは25に一気に跳ね、どの株もぐちゃぐちゃに売られる展開となった。
まあそうはいっても指数でみれば月曜日時点でS&P500がかろうじて年初来ぎりぎり割れているぐらい、NDXにいたっては未だ年初より高い位置にいるわけだから現物しか触らないような市場参加者にはまだそこまで緊迫感はないように見える。
(オプション勢は全く別)

一応各セクター状況を見ても2019年初頭よりずっと高い位置にいて、まあ米国株ですからねえといった牧歌的雰囲気がある中、一つだけすごい緊迫感を漂わせており、市場参加者の強制損切りが見えてきているセクターがある。
それがエネルギーセクターだ。
例えば情報通信銘柄は単なる利益確定売りで、ここまで上げてくれたんだからちょっとポケットに利益しまっておくかぐらいの動きで緊迫感はない。
一方でエネルギーセクターは千切れ方を見ると明らかな損切りの動きである。
エネルギーセクター全体で見ても、2018年終わりの米中貿易戦争+金融引き締めショックで下げていた時期を明確に割ってしまった。
ここを割ると、残っている防衛ラインは2016年頭の原油暴落+ドイツ銀AT1ショックしかないが、月曜日引け時点で既に若干割れているという頼りない防衛ラインな上に、一切の慈悲がない大陰線なところが非常に緊迫感を漂わせている。
(上記チャートは分配金が出ているETFなので2016年頭の水準を割っているように見えるが、指数ベースではほぼ同レベルぐらい)

<エクソンモービルの株価チャート>
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また個別銘柄でもあの格付けAAAで高配当銘柄信者の信仰集めているエクソンモービルが、これまた一切の慈悲がない千切れた形での損切りが発生している。
こちらは2016年頭のレベルをとっくのとうに割っており、そこからの窓上げ大陰線であることから今まで耐えてきた人の心が完全に折れてしまい、強制損切りに合ってしまったという解釈が正しいように思われる。
これは以前の記事でシェールガスの減損損失が未だ出尽くしていないことを危惧している動きだと解説したが、これがまだ出尽くしていないことが改めて確認される動きだ。

つまりエネルギーセクターについては総じてバンザイ、諦める動きが出始めているのだ。
そうなると気がかりなのはハイイールドセクターだ。
ここは困難な資金繰りでのたうち回っていた債務者が多かった上に、直近で調子のって高利回りを求めた一部市場参加者が新しく買い向かっていた。
ここに大きなしっぺ返しが発生する可能性はある。
それにESGファクターによる売りも加わっている。
そしてWTIの先物カーブ見ていると再びコンタンゴになってきており、先物トレーダーの追証が見えてきているのが非常に怖い。

この緊迫感の高まりは今回の下げを見極める上では一つ重要な材料になりそうな気がしている。
 

クオンツファンドの人間味のない売りに用心

クオンツを責めるな、米国株急落は人間のせい-新型ウイルス恐れる



人間のように温かみある投資行動なんて一切ないですから。

足元の相場でひとつ怖いなと思うのはVIX指数が一気に 16ぐらいから25に跳ねたことにある。
何に警戒しているかというとクオンツやAI系のファンドが後ろから追撃売りしかけてくる可能性があるのではないかということだ。
なぜそのようなことが言えるのか?

クオンツ系やAIファンドというのは一般的には数理を使って自動的にポジションを決め、それに基づき運用指図をするといったファンドになる。
また扱う資産カテゴリも株だけでなく、債券・REIT・為替とマルチアセットを扱い、しかも先物・オプションもかませながらトータルで買っていくというのが大体共通したコンセプトになる。
そしてこういった数理系に基づいて資産配分を決めるファンドで最重要ファクターになるのはボラティリティである。
投資に関わる数学の中で最も取り扱われるのはボラティリティであり、それはオプションのブラックショールズの方程式を見ても理解することができると思う。
そう、クオンツ系・AIファンドは突然のボラティリティ上昇に弱い。
ボラティリティがじわじわ上昇する過程ではそれに合わせて微調整できるのだが、VIXが窓開けするレベルで跳ね上がると後手に回る可能性が非常に高い。
なぜなら突然ボラティリティが上昇した翌日に前日のボラティリティがいきなり跳ねたデータを数理処理して資産配分を決めることになるからだ。
しかもファンドによってそのボラティリティに反応する日程はちがく、一日で反応するファンドもあれば、一週間後に反応するファンドもある。
つまり突然ボラティリティが跳ねる形で一日大下げした後に、あとからクオンツ・AIファンドの売りがだらだらと出現してくるのだ。

<VIX指数のチャート>
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例えばその時のリスク資産のバリュエーションが高くなければわらわらと買いが生じてその売りをキャッチしてくれるので意外とその後の相場は徐々にボラティリティが低下して落ち着いてくる。
しかし今回のケースでいうと、米国株でいうとハイテク銘柄が過去最高レベルで高い位置にある。
そうなるとクオンツ・AIファンドの淡々と発注された売りを買いが吸収しきれなくなる。
そしてそこにさらにクオンツ・AIファンドの売りを誘おうと売りをかぶせてくる人達や、まだ含み益があって余裕がある人達が売りを出してくる。
この時点で需給が崩れてリスク資産に二波以上の売りが飛んでくる。
この流れが一番怖いと思っている。

さて今の米国株の位置は高いのだろうか?
単に移動平均線との比較を見ると、個人的には「高い」という結論を出している。
少なくともナスダックで100日線ぐらいの位置まで下がってこないと妥当なバリュエーションとは言えないのではないかと感じている。
そこまで人間味のない売りが出てくれるならば、現金を保持している人達にとっては大歓迎の相場になるだろう。

<NDXのチャート>
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中小型株受難の年が2018年から続き、今年も同様だろう

<日本小型株ETFのチャート>
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機関投資家がポジション増やさないんだからネガティブでしょう。

足元で日本株でいうと中小型株の下げ方がかなり厳しい。
一方で大型株はそこまでまだ悲壮感が出ていない。
この差は一体どこから生まれてきているのだろうか?
これを知るには2017年の状況を思い出したい。

2017年は日本株でいうと中小型株は割安度が強かったことや、ひふみ投信など一部投信が資金が大きくなるにつれ無理やり中小型株を買い上げてPERを吊り上げる(資金を運用しきるために買い上げざるを得なかったというのもある)という現象が多発した。
しかし、そうした売上成長や利益成長の裏付けなしで上昇した銘柄は足元では漏れなく最高値から3割安は当たり前という状況になっている。

足元起こっている相場の現象は中央銀行のバランスシート拡大による機関投資家の金余りとそれに伴う運用需要の増加だ。
機関投資家の運用主戦場は必然と大型株が中心になり、中小型株は後回しになる。
大型株はこうした機関投資家の買い入れによりEPSが下がるなどファンダメンタルズが悪化する一方で、先行き期待でPERが高めに維持されるという状態が続いている。
一方で中小型株はEPSが下がり、かつPERについても上記のような大型株のような恩恵を受けれていないことからPERが拡大しない。
そのため、純粋にファンダメンタルズが悪化した分だけ下落しているという状況にある。

実はこれは日本株に限らず、米国でも同様な現象が起きている。
S&P500とラッセル2000を2018、2019年と連続して比べるとさっぱりラッセル2000のパフォーマンスが冴えないことが見える。
以前に米国中小型株のパフォーマンスがさっぱりだと記事にしたが、この記事の要因に加えて、やはり中央銀行のバランスシート拡大による機関投資家のリターン追及姿勢が増幅し、これが大型株がEPSが上昇していないのにPERだけ持ち上がっていっている背景だ。
 一方でやはり中小型株はその恩恵がないのでファンダメンタルズ悪化分を素直に反映しているということだろう。

<過去参考記事>

米国中小型株が大型株と比べてパフォーマンスが劣後している背景について

コロナウイルス騒動でファンダメンタルズの良化は後ろにスライドすることが予想されるので、当面は中小型株はインデックスで投資する意味はあまりないだろう。
少なくともひふみ投信の解約が続いているのを見れば、中小型株から資金が抜かれ続けているんだからわざわざ売りたい人達の養分になることはないですねと思う。
特にマザーズ指数はそもそも売上・利益成長の裏付けどころか、そのビジネスに将来性はあるのかと疑問に思われる銘柄ばっかりなことからも、より値動きは厳しいことを想定せざるをえないだろう。
やるなら個別銘柄でピックアップしていくしかない。

<追記>
実はこの記事自体は何回か記事推敲を重ねて書いていたのだが、途中でひふみ投信からこのリリースが出てきた。

新型コロナウイルスの広がりとひふみの運用について最高投資責任者からのメッセージ

この記事にてひふみ投信が2000億円分銘柄を売って、現金を作っていることがはっきりした。
1月末時点ではほぼ現金を保有していなかったので、2月中という短期間の間に2000億円分の銘柄を売り捌いてきたのだ。
かなり大胆なことをしてきたなと思うと同時に、このひふみ投信の巨額売りのせいで中小型株指数が大型に比べて大きく下がったことが理解できた。
(個人的にはかなり自重に苦しみながら頑張って売り切ったなという感想)
それと同時に確認しなければいけないのが、ひふみ投信は一体どの中小型銘柄を売ったかということだ。
ひふみ投信が一度エントリーして今回抜けた銘柄はおそらく当面は二度と買い戻さない銘柄だ。
つまりもう二度とひふみ投信がお買い上げしてくれて株価をお焚き上げする現象が発生しない銘柄で株価が高い位置で取り残されてしまった敗残兵がいる銘柄ということになる。
そのような銘柄に一切の希望なんてあるわけないんだから、保有していればさっさと見切って売り、新しく買うなら絶対に買ってはいけない銘柄になる。
そのことに注意しながら銘柄ピックアップをしてもらいたい。

衛生管理ゼロな雑食動物を食べる文化が新型ウイルスを蔓延させている

Coronavirus piles pressure on China's exotic animal trade



やっぱりわけのわからない動物を食べる習慣はやめないといけないということだろう。

普通の感覚でいうと、食用に飼育されている実績ない陸上動物をとっつかまえてきて、それをオープンマーケットで売ろうということ自体が先進国の人達にとっては発想がない。
しかし中国の場合は可処分所得の増加によってより珍味を求めて違法に珍しい動物の収集というのが流行っていたようだ。
たしかに日本でも本格的中華店にいくとワニ肉やらうさぎ肉やらハチの巣やらつばめの巣など普段の洋食・和食などではお目にかかれないような食材が出てくることからもその文化はなんとなくわかる。
このFTのインタビューでは元々は農家だった人が儲かるからと野生動物を違法に狩猟してきて、それを市場で売りさばいて年間80万円弱の収入を得てきたという記事が掲載されている。
特に上記FTの記事ではジャコウネコを捕まえてきて販売してきたということもあり、四足の動物ならなんでも食べるんかいなというのが改めて浮き彫りになったということだ。
しかもこの報道の仕方を見る限り、よくわからない動物を食べているのは貧困層ではなく富裕層なのである。
中国の場合は普通の人が食べない珍味を食べることが自分が富裕層であり、勝ち組であることを示すツールとして成り立っており、これが衛生的に安全性が不明な動物捕獲および売買が成されている主原因である。
しかも中国政府は一応は全部違法にしているはずなのだが、それをすり抜けるように売っている人間もいるし、買っている人間もいる。
しかもなまじ金を持っているから海外旅行もする。
こうした習慣が今回ワールドワイドでパンデミックを起こした原因であることは上記記事を見てもわかるだろう。
日本ではそもそも食品衛生管理すり抜けて売られるような肉はどんなに珍しかろうが買う人はほとんどいないので、ちょっとここらへんの感覚はかなり理解が難しいように思える。

そういった意味では中国の違法動物採集と販売は今後取り締まりが大きく強化されるだろう。
また今まで後回しになってきた公衆衛生や食品衛生についても大幅に強化されることは間違いないだろう。
今のところWHOの報告ケース人数を見ると、確認数が日次ベースでゼロである省が増えていることから、とりあえず中国国内のピークは過ぎたように思える。
(ただし、これと足元のリスクオフは既にタイミングがずれまくっているので、だからリスクオンに転じるという結論ではない)
ただ、中国人の飽くなき珍味を求める文化は2003年のSARSがあっても懲りなかったことを見ると、そう簡単に駆逐できるものでもなさそうなので取り締まり強化状況によっては将来またいつか再び中国初の新型病災が起こることも想定していかなければいけない。
 
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村越誠

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