村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2019年10月

参入障壁のないお手軽BtoCモバイルアプリは中長期投資が難しい

グラブハブ株、4割超の急落-競争激化と「移り気」顧客が成長の重し

参入障壁がないに等しいお手軽起業は真似されやすい

米国のオンラインデリバリーサービス会社グラブハブの決算がド滑りしたということで一夜で4割下がるとかいうロング勢全殺しみたいな下がり方をしている。
というよりドピークから既に株価は1/5ぐらいのレベルになっている。
ドピークで株価掴んでしまった人はあっという間に資産が80%減少するというのは中々衝撃的だ。

<グラブハブの株価チャート>
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最近特に思うところがBtoC向けのモバイルアプリサービスを行う会社はよほどじゃないとかなり差別化は難しいのではないかと感じつつある。
昨今のBtoC向けモバイルアプリサービスは自らなにか大規模な設備投資をしているわけではなく、AWSでサーバーを借りて、既存のBtoCあるいはCtoCのビジネスを仲介をする情報を集めるプラットフォームになって手数料を取るというビジネスがメインだ。
しかし、このビジネスは大規模な設備投資をしない分かなり真似されやすい。
多少投資額がかかるとしてもPEファンド・VCの投資姿勢がゆるゆるな昨今は起業家に情熱さえあればかなり金を引っ張ってくることが可能だ。
そのうえ、最初に個人客を捕まえるために多額の宣伝コストをかけるのに、後から人気がある分野については続々と競合が出現し、個人客がアプリを乗り換えてしまう・あるいはどちらが安いかを値踏みして使う。
しかもそのスイッチングコストはかなり低い。

上記グラブハブのオンランデリバリーなんてまさにスイッチングコストなんてないに等しく、利用者はよっぽどあれな事件さえ起きなければ基本的には安い方にスイッチングしていく。
BtoC向けアプリでスイッチングコスト低そうだなあと思うのは、フードデリバリー・配車・出会い系マッチング・中古オークションなどが挙げられ、これらは未公開株から投資するという選択肢はあるかもしれないが、上場してからだと上場できるほど儲かるんだとみんなが気づいてわらわら有象無象が湧くのでどんどん利益状況が悪化していくのが目に見える。

こうしたことを考えればBtoC向けアプリを行う会社の株価バリュエーションは相当気を付けて考える必要性があるし、はっきりいうと中長期投資には向かないメンツが多いというのを認識せざるをえないと思う。
特に一度成長軌道にのって途中まで株価がうなぎのぼりに上昇したが、その最中にタケノコのように次々と競合が出現し、一気に利益率が下がって株価が爆死するということが往々にあるため、いかに参入障壁という生垣を作っていくかというのは株式の中長期投資にあたっては非常に重要な要素となることが上記では痛感させられる。
というより、今一度自分のポートフォリオを見て、ポートフォリオ銘柄は参入障壁という生垣をきちんと作ってあるのかどうか確認してほしい。

 

米国株が最高値更新してきたので、足元のポートフォリオを再確認

米国株・国債・商品】S&P500が最高値更新、米中協議合意を楽観

とりあえず適切にリスク資産にベットしてきた人は報われている。

米国株が最高値を更新してきたということで、現在自分の手元ポートフォリオを確認したいと思う。
ここまで6月頃に一旦ポジションを落としていたが、8月に入り中国での株の信用買いポジションが反転したのを見て余りにもポートフォリオが保守的すぎると思い、通常レベルにまでリスク資産のポートフォリオウェイトの積み上げを行った。
以下は過去記事でもわかるが、改めてここまでのポジション取りを確認したい。

①ナスダック
これはもう至極単純で、一番EPSが回復するのが一番早いであろうと思われる米国グロース・ITエクスポージャーを取りにいくという馬鹿でも考えつくような戦略だ。
でもこれが一番安心して取れるリスクポジションではなかろうかと思う。

②JREIT
これはしばらくやってこなかったが、2019年に入り自分の投資判断が間違っていたということで慌ててポジションを取りに行ったものだ。
2019年上旬以降急速に米国利上げ機運は失われ、逆に利下げに転じていった。
そうした中で日本の機関投資家勢は日本国債の金利が上昇してポジションを取り直すチャンスというのが当面こないことを痛感したうえ、円資産で利回りが取れる資産がJREITしかないということから、あとから見れば結果的に買わざるをえない資産と化してしまった。
途中で気づいてやばいと思い慌ててポジションは取りにいったが、それでも十分に間に合ったものと思われる。
一応個人的な利益確定ターゲットは2400pt(配当利回り3%割れあたり)周辺を考えており、足元の2200pt台はすごく高いように見えるものの、下に下がれば買いそびれた人達が買いたくて買いたくてしょうがない状態で待っていることを考えれば、よっぽど日本国債か米国債の金利がスパイクしたり、株が〇〇クラッシュみたいなものが出てこないと下がりそうもない雰囲気になっている。
もちろん日経新聞で全員が買いに回ってて危険という報道が出ているものの、どちらかというと今の高値に懐疑的な記事が多く、またその記事を見た金法お偉いさんが買いは待てとか言っていることは想像にたやすく、少しこの水準でぐだぐだしてくれていた方がまだ積み増しチャンスはあるのではないかと思う。

③先進国株
ナスダックだけだとあれかなということで念のためバリュー的な取り方ということで、先進国株も追加。
ただしナスダックやJREITと比べると積み増し分は少なめといったところだろうか。

というわけで全体としてポジションを増やして、投資比率50%ちょっと程度と通常運行レベルで現在相場に取り組んでいる。
(毎月投資可能資金の投入をしているため放置しているとこの比率は下がっていくようになっている)

<足元のポートフォリオ>
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今後のリスク資産動向の先行きだが、世界的に貿易動向が不安定な状態を鑑みると、新興国株が先進国株アウトパフォームするというターンはまだ来ないと思っており、新興国株には引きつづきネガティブなので積み増しを見送っている。
特に独自要素で景況感が悪いインド株および国民を怒りが爆発しがちな南米はより一段ネガティブな見方をしている。
また、5年以下の年限の米国国債金利が一瞬1.35%まで下がったことから、米国政策金利がここからあと3回どこかのタイミングで下がりそうというところまで織り込んだ。
しかし、じゃあ3回目以降どうなのというところに市場参加者の迷いが生じ始めており、3回目以降の利下げが見えないならスティープニングだろという意見もあり、ここがJREITにとってネガティブにならないかどうかだけは注意が必要だ。
利上げとかはまだ考えられる段階にないので、さすがにいきなり金利高・JREIT安にはならないだろうとは思うが。

あとは最高値を更新した米国株がどのような上昇の仕方と下落の仕方をするのかを見ていく必要があるのと、株価が最高値更新していく中できちんと経済指標類の回復が見えるかどうかも重要な要素になる。
足元米国株はPER的には2016年半ばごろ程度しかなく、そう言われるとあのころの景況感って結構悪かったよねという感想が出てきて、EPSが減少しないなら株価もまあ耐えてても不思議じゃないですよねという話になる。
ただEP来年3月頃ぐらいまでにはEPSの上昇も見えてこないと、この株価本当にこのPERでいいんだっけという議論が徐々に出始めることは頭の中に入れておきたいと思う。
市場は何が起きるかわからないので、現在はいつでも下落すれば出動できるように4~5割の現金ポジションを維持しながら相場に臨んでいこうと思う。

<S&P500のチャート>
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インドの通信業界はリライアンスジオ一強になる

インド最高裁、移動通信8社に支払い命じる-政府に計1兆4100億円

ここでそういう判決もってきますか。

インドではここ20年の間、通信会社の電波使用料について政府と企業の間で認識の食い違いがあり、長きにわたって裁判となっていた。
インドの電波使用料はユーザー数によって決まるシステムになっているのだが、通信と関係ないユーザー課金についても政府は電波使用料の請求を要求していた一方、企業側は通信に関係している顧客だけの課金が正当ということで、長らく企業側は政府の命令額より少ない金額しか払ってこなかった。

しかしそんな裁判もようやく最高裁判所の判決が出て一件落着のように見えるが、裁判結果は政府の言う金額をキャリアは払えとのこと。
最高裁判決なのでおそらくこれをひっくり返すのはほぼ不可能だと思われる。
そしてキャリアは全員で合計130億ドルもの追加料金を払う必要性が生じる。
おそらくはユーザーシェア割で払うことになるので、通信大手バーティエアテルおよびボーダフォンアイデアの負担分はかなり大きいことになる。

ちなみにニュースではボーダフォンの負担が40億ドル、バーティエアテルの負担が30億ドルと予想されており、ただでさえ赤字なのに、ワンショットででかい負担をさせられるということだ。
分割払いにするなら、ここから金利負担などもする必要性があるので、より負担感は重くなるだろう。
一方で2016年からサービスを開始してのし上がってきたリライアンスジオの負担感は非常に軽いものになる見込みであり、ニュースではたった1800万ドルと競合他社と比べてゴミみたいな負担感しかない。

そうなるとただでさえリライアンスジオの安値攻勢のせいで赤字に陥っているバーティエアテルとボーダフォンアイデアが、遅れている4Gに投資するための資金を捻出することがかなり難しくなるだろう。
インドの通信設備は非常に遅れており、リライアンスジオぐらいしかまともに4G投資が進んでいないということもあり、ここから投資資金捻出できないならリライアンスジオ一強になることはほぼ確実だろう。
なぜこのタイミングで判決が出てきたかというと、おそらく政府は法人税カットして税収が足りなくなるので、ほかの収入で埋め合わせようと躍起になっており、裁判所に圧力をかけたという可能性も否定できない。
そういった意味ではこれら通信業界は政府の財布の状況から影響を受けた悲しき犠牲者という見方もできるだろう。

とにかくインドの通信業界シェアが大きく動きかねない話にまで飛んでしまっており、いくら税収欲しいからといってここで強引に進んでいいのかどうか個人的には少し疑問に思っている。 
ここまでインドの通信業界はリライアンスジオを除いて非常に不安定な状態にあり、かつ何社もデフォルトする自体に陥っているのだが、これが果たしてインド政府が望むことなのだろうか?
あまりにも通信会社を苦しめると自国のインフラ基盤を弱めるだけなので、将来的に問題が起きそうな気がするが・・・



韓国の富裕層や機関投資家はプラグマティックにJREIT投資を拡大

J-REIT大人気、日本製品ボイコットの韓国で-年初から投資急増

富裕層はいつだってプラグマティックに考えている。

未だ日本の輸出管理厳格化で貿易・旅行客・小売りといった類で韓日間のいくつかの指標に悪影響が出ているが、ことJREIT投資に限っては投資妙味ありということで韓国投資家は投資を続けている。
これは韓国も国内に投資機会がほとんどない上に、ソブリン金利もどんどん下がっていることから、資金を余らせた機関投資家の飽くなき高利回り投資要求を満たせるものを片っ端から探しており、JREIT投資というのはいわゆるその中の選択肢の一つとしてどんどん韓国からの資金が流入しているということだ。
特にここもとアジアでの金余りは米中貿易戦争に伴って拡大しており、アジアの機関投資家達はリスクリターンの良い投資機会が少しでもあればそこに大量に金を突っ込むということを繰り返している。

しかし、このニュースを見てなんだかなあと思ったのは、いわゆる韓国の富裕層はあくまで日韓の問題について感情的にならず、プラグマティック(実利的)に考えており、投資機会として要求するリスクリターンを満たせるならしょうもない政府やマスコミの煽りに騙されず、しっかりと投資をして稼いでいるということだ。

結局今回の日韓の外交問題については、支持率を維持したいがために条約無視という行為を繰り返してきてフェイクニュースを伝えてきた挙句、マスコミもPVを稼ぎたいからそれに乗っかっていく、そしてそれに騙される一般国民はわけもわからず不買運動を起こして、国内の小売・ショッピングモールテナント・貿易・ツアーリズムなどにダメージを与え、自ら自分達が得られるはずだった職を失っている。
ちなみに韓国の若者は学歴の需給ミスマッチで大卒の職のあぶれかたがひどいことから、日本へ就職に行くという人が相当多いが、昨今の日韓摩擦で日本企業の就職フェアが取りやめになったり、親から日本企業へ就職することを妨害されていることから、特に若年層へのダメージは大きい。
(日本企業はほんとは雇いたいんだけど、自分以外の要素で大きくダメージを受けている)

Labour pains: Japanese jobs for South Korean graduates dry up amid trade row


特に文政権は心情的にはわからなくもないものの、北朝鮮への肩入ればかりをしていて、その他重要な外交政策・経済政策が非常におざなりになっている
特に法相が辞任してからの派閥争いがより激化している中、文政権は今までの方向性を変えずらい状況に陥りつつあり(変えると対抗勢力にそこを責められる)、現在の反日方向性を切り替えることができなくなっている。

(韓国の革新派と保守派の争いについては下記書籍を参考)

韓国 内なる分断 (平凡社新書0917)

というわけで、煽られ騙され被害を受けるのはいつだって一般庶民であり、富裕層は至って冷静に金銭的な損得を考えて投資というのを行っていることがうかがえる。


自分の人生を補完するために投資をするというのも一つの戦略

投資というのはこういう考え方もできるんですよという話。

自分は株式投資は単に自分の資産を殖やすという目的だけでなく、自分の仕事キャリアでは得られない果実を手に入れる手段・つまり自分の人生のリスク分散(あるいはリターン源泉の分散とも言うだろうか)の一つとしても捉えている。

例えばあなたがどこか大手自動車メーカーに勤務していると考えよう。
自動車メーカー勤務では半導体やITセクターの成長による恩恵を受けられる可能性は低い。
自分の現在のキャリアではITセクターからの利益を得られないと考え、半導体やITセクターの株やナスダック指数に投資するというのは一つの自分の人生を補完する役割を持つだろう。
逆に自動車セクターの成長は直接的にあなたに給料増加やボーナス増加といった恩恵の受け方をするのでそれで十分と考えれば、自動車株を買うというのはキャリアと自分の資産において二階建てのリスクを背負うことを意味しており、適切ではないという考え方もできるだろう。
例を挙げればこういう考え方になる。

さらにいくつか例を考えて述べていこう。
あなたが住宅不動産を持っていないなら、JREITを買うというのは一つの人生補完戦略になるだろう。
日本の不動産は持っているけど、海外の不動産を持っていないというならグローバルREITを買うのも補完策の一つだ。
仕事ではまったく新興国にかかわりがないというなら、新興国債券や株を買うのも補完策だ。
一方で日本の大手会社に勤めているなら、TOPIXを買うのは自分のキャリアと資産のダブルレバレッジになってしまうので避けるという考え方もありだろう。
外資ITで働きながらITセクター株を買うのもリスク分散できていないと考えることができ、ITセクター投資を避けるというのも一つだろう。
超景気敏感セクターに所属しているなら債券投資を多めにすることで、不況時に減る給料やボーナスを補完することができ、人生補完策のひとつと考えられる。

もちろん投資でうん億円と稼いでスーパーリッチになるという目標を掲げて投資している人には関係ない考え方だろうが、投資というのはそういう考え方もできるんですよというのを少し言語化して述べたかったというのが今回の記事の趣旨だ。
投資の手法の仕方は人それぞれであり、自分に合ったやり方をぜひとも読者には探してほしい。


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プロフィール

村越誠

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