村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2019年08月

狡猾なSBI、おおまぬけな東海東京証券

証券、熱帯びる地銀囲い込み SBIが共同持ち株会社構想
やっぱりこういうの見るとSBIはめざといなと思う。
証券会社にとってはいかに預金を証券口座に振り込ませるかというのが重要なビジネス課題であり、ここのラインを抑えたものが他の証券会社より優位にたてる。
SBIは住信SBI、楽天証券は楽天銀行、カブドットコムはMUFGという預金を融通してくれる有力なパイプラインが存在する。
SBIはこれに加えて、地銀がじゃぶじゃぶに余らしているお金を融通してもらうべく、様々な形で金融商品仲介を請け負うなど、自分の証券口座に利益のもととなる預金が流れ込んでくる仕組みというのを確立している。
これによってSBIはまだまだ自分のところの証券口座の残高を伸ばすことが可能だし、それがなくても地銀で余剰になっている預金に自分のところのサービスを提供するためのパイプラインを確保できるわけだから、相当やり手だなこれはと感心するばかりだ。

一方でおおまぬけなのは東京東海証券だ。
ロボットアドバイザーのお金のデザインやスマホ専業証券のワンタップバイなどに出資と書いている。
しかしこれらは既にSBIが自社にとって脅威となる前にぶっ潰してしまおうと自ら損失することを覚悟で全くの類似サービスを打ち出している。
VCなどに出資してもらって大赤字ぶっこく中資金繰りを食いつないでいかないと続かない新興企業VS年間700億円近く税引き前利益を出してくるSBIでは体力は桁が違う。
SBIはワンイシューだけで、かつよくよく見ればビジネスモデルを誰でもすぐ真似できるような競合に対して容赦なく攻め立てて、競合として大きくならないうちの芽を引っこ抜いてしまおうという気が満々だ。
東海東京証券はこのような背景がありながらまあどぶに金捨てるような出資をしているわけで、東海証券も本業が死んでる中で貧すれば鈍するという行為に及んでいる。
まあそもそも東海東京証券自体が野村證券の悪いところを濃縮したような会社で、中小対面証券の中では断トツに回転売買を顧客にさせるのとはめ込むのだけは上手い証券だ。
そんな前時代の脳死ゴリラビジネスばっかり続けてきた無能経営陣だからこそ成せる無駄金使いと言えよう。 
普通に考えてもう既に死にかけで、続々と後発やらSBIが若い芽をつぶすために投入してくる類似サービスに本気でお金のデザインのTHEOやワンタップバイみたいな情弱投資サービスが勝てると思っているのだろうか?
そりゃ前時代的な経営を続けてきた無能経営陣だから、なんか凄そうとか思って雑投資してしまうんだろうと容易に想像がつく。

このように対面中心で来てしまった旧来型の証券会社は、大手を除けば本当に瀕死に近く、必死に今まで考えてもこなかったネットサービス証券スタートアップに出資しているが、その判断能力も中小証券の経営陣にはないので、無駄な金を永遠に赤字解消の目処が立たなそうなスタートアップに突っ込んでいくばかりだろう。

ドイツに対する財政刺激策拠出の圧力が増大している

Christine Lagarde urges eurozone to reform budget rules

IMF総裁からECB総裁へと華麗なる転身を決めているラガルド氏からユーロ圏の財政規律ルールに対するリフォームが必要という発言が出ている。

この発言は今のドイツが各国に統一的に押し付けている財政規律がそもそもユーロ圏の景気の落ち込みに拍車をかけていると言わんばかりの発言である。
それでもラガルド氏の発言は至極真っ当なものであろう。

そもそも政治は統合しているのに財政は統合されていないという時点でちぐはぐなのに、一番金を持っているドイツが景気落ち込みに対して財政支出が一番最後というのが枠組みとしては終わっている。
もちろんユーロ圏で一番経済が強いのはドイツであり、だからドイツが財政支出拡大による景気刺激を打ち込んでくるのは一番最後というのは理論的にはそうだが、それでは景気の悪い同じユーロ圏国家はドイツまで景気悪化が波及するまではひたすらドイツに虐められながら財政緊縮という不景気策を押し付けられることになる。
ラガルド氏はギリシャショック時にIMF総裁として対応してきたということもあり、このままのEU財政ルールでは次の景気落ち込みに弱小国が耐えられないというのもあるし、そもそもこれだけユーロ各国の国債がドボドボマイナス金利に落ち込んでいるのも、根本的に金が余っているドイツにお金が滞留していて、その他に全然お金が回っていないことを意味している。

他の国も国債を追加発行して景気刺激策に回したいと思ってもEU財政規律ルールで発行ができない状態だ。
しかもECBはQEで国債を買っているが、この状態だと需要は増加しているが供給側が足りないということが明白なわけで、そりゃ銀行が困るほど国債利回りがマイナス突っ込みますわなという話だ。重債務国ならいざしらず、財政黒字も経常黒字もじゃぶじゃぶに余っていて、そして10年国債利回りが-0.6%にもなってしまっているドイツは少なくともちゃんと財政支出をやれや、さもなければ各国がもっと財政支出増やして景気刺激策に回すというのを許容しろやという意味合いがラガルド氏の発言には含まれていることは間違いないと考える。

これは先立ってドイツが景気刺激のために財政支出を打つという発言をしていることも背景にはあるだろう。
ドイツがより強い財政刺激策を打つためのプレッシャーをラガルド氏は与えているのかもしれない。 

人民元安は全ての新興国にとって脅威となる。

人民元に下押し圧力
今の新興国通貨にとっての脅威は人民元安だ。
よく米国が「中国は為替を操作している」と言っているが、現在中国ははっきり言うと「人民元を高めに誘導している」というのが実情だ。
おそらく操作をやめれば人民元は安く推移すると思われる。
現在の中国は自国民がかなり豊かになってきたことから、国内の消費が大きくなってきており、昔と比べて経常黒字対GDP比は大きく下がってきた。

また中国人自体が中国国内に多額の資産を置いておきたくないと思っている節がある。
一党独裁でかつ人治国家なのでどういった理由で自分の財産が没収されるのか全くわからないので、とにかく資産を一定程度必ず資産が保護される先進国に移しておきたいというインセンティブが強く、中国の資産流出規模は莫大なものになっている。
こういった観点から現在の中国は人民元高に誘導させ続けるという余裕がないのが現状だ。
そして昨今の米中貿易摩擦に伴い、現在の水準の人民元の対ドルレートを守ることが難しくなりつつあるため、なるべく過剰な資本流出が起きないように気を配りながら徐々に人民元を自然な適正範囲レートまで安くする方向に促していく方向に舵を取り始めた。
しかしこれは多くの新興国にとっては大きな脅威なのである。

基本的に多くの新興国は国や企業がドル建てで金を借りている部分がある。
そのため為替が安くなるとこのドル建て借金の負担感が大きくなる。
それに経常収支が赤字な国が多いので、基本的に為替が安くなると自国のインフレ上昇およびそれに伴う金利上昇が発生してしまう。
そのため自国通貨が安くなることは基本的に新興国にとっては悪いことである。

さて、新興国でもっとも大きい通貨とはご存じの通り人民元だ。
中国は資源以外なら米国へあらゆるものを輸出している。
そのため人民元が安くなるということは、ほぼイコールで他の新興国の輸出競争力が落ちることを意味している。
また中国自体も一部資源は自国自給できるということもあり、人民元が安くなると資源輸出型新興国に対しても
そのため人民元が安くなることは他の新興国にとっては非常にネガティブな事象である。

<人民元の対ドルレート>
タイトルなし

中国政府は一気にクラッシュしないように人民元安に誘導している。
正確には人民元安に誘導しているのではなく、人民元高介入をやめて適正範囲まで緩やかに安くなるように介入を減らしている。
おそらく中国国民自体も人民元がどれぐらい安くなるのかわからず、投資計画を立てにくい状態になっている。
中国国内でドル建て収入がないにも関わらず、ドル建てで大量に金を借りている企業は借入の増額をやめて、返済に集中するしかないだろう。

そして市場参加者は一体どのぐらいの期間、そして一体どこまで安くなるのかということについて非常に不安を感じている。
その範囲がどれぐらいなのかによって他の新興国通貨がどれぐらい安くなるのかが決まってしまう。
人民元はもはや新興国通貨にとって大きなバロメーターとなってしまった。
だから中国と比べて多額のドル建て負債を保有している、財政赤字が大きい、経常収支が悪い、政治リスクが大きいなど問題を抱えている新興国はさらなる為替安ファクターが増えてしまったということだ。

インドで不動産関連がバタバタと倒れ始めた

HDIL share hits all-time low as NCLT admits insolvency resolution plea

インド本当に大丈夫なのか・・・ 

当ブログで以前から話題にしているインドのプチ金融危機、今度は不動産会社のデフォルトにまで影響が波及してきた。インドの中堅不動産会社ハウスデベロップメント&インフラストラクチャー(HDIL)の債務について銀行が再編依頼を裁判所に通告した。
まあようは実質的な民事再生ということ。

このHDILは総資産2700億円におよぶバランスシートを保有しており、そこそこ大きい不動産会社だと言えよう。
しかし前年同期から4割におよぶ売り上げ減少(利益ではない)を食らってしまい、手元現金の乏しさ・資産の大半が在庫ということもあり資金繰りが回らなくなり、あえなく民事再生という状況に陥った。

元々株価を見ている限りやばいことが起きているんじゃないかと思っていた人はそこそこいるようで、どピークから既に株価は6-7割下がっているところから民事再生コンボが出ており、やっぱりというのが市場関係者の正直な感想ではなかろうか。
この報道を受けて銀行・不動産会社・ノンバンク企業の株価いずれも下落しており、まだ影響は広範囲におよぶのではないかと危惧される。

ここまでインドのノンバンク金融危機は

モディ政権の高額紙幣回収による預金大幅増加により銀行が預金をNBFCにてきとーに貸し付け→NBFCがずさん融資→IL&FSがデフォルト(インフラNBFC)→銀行がNBFC融資から引いたことと調達源であったMMFも凍り付く→デワンハウジングがデフォルト(住宅融資NBFC)→HDILデフォルト(不動産)

とどんどん状況が悪化しているとしか思えない流れが継続している。
これに対してインド政府と中央銀行はモラルハザードを危惧してあくまでNBFCには直接サポートをするのではなく、銀行がNBFCの資産を買い取る形でNBFCの資金繰り問題を緩和させるという政策をとっている。
ところがいざ銀行がNBFCから資産を買い取ったらNBFCからの開示がでたらめですぐ不良債権化してしまうという事例が多発しているようで、銀行のNBFCからの資産買い取りは全く進まず。

ようはインド政府はこのプチ金融危機に対して全く有効な手を打てていない状態だ。
すべてが後手に回っている。
既に不動産会社の破綻にまで影響は及んでいるのだから、早急に手を打たないと後処理のコストがどんどん増加するだけなのだが、動きの遅いインド政府のことを考えると行き着くところまで行き着くのではなかろうか。 

日銀考査で地銀がJREITの買いに出遅れているという噂

あくまでツイッター観測レベルの話ですが。

どうやら地銀が日銀考査でJREITの買いが出遅れているという噂のようだ。いくつかツイッターを抜粋しておきたい。


なるほど、確かに足元でJREITの大幅買い越し主体というのは生保であり、生保は中長期マネーを扱うということもありJREITに手を出すハードルは地銀と比べては低いということだろう。


そして日本国債の利回りがほんとに長いデュレーションリスクを取らないと利回りは取れないし、外債も米ドルについては長期金利が短期金利を下回る逆イールドが発生しちゃっているし、ユーロ建てもかなり金利が潰れてスペイン10年国債さえ0金利になろうとしている。

でも高配当利回り株といった株資産に手を出すにはリスクが高すぎる。
ということでJREITを金法が買わなければいけない状態になっているというのはかなり見えやすい状況になっている。

それにJREIT自体は実は諸外国REITと比べるとお得感がある。
REITの代表格はやはり米国REITだが、米国REITは実は足元で少し苦しい。
JREITの利回りは足元で3.62%、米国REITの配当利回りはおよそ4%と絶対値ベースでは確かに米国REITの方が利回りが高いが、対10年国債利回り格差でいうとJREITは3.8%、米国REITは2.5%とJREITに軍配がある。
さらに日本円から米ドルに通貨をヘッジするコストは2.46%となっている。
日本の投資家が為替リスクをゼロにして米国REITに投資すると1.54%しか利回りが残らないのだ。
しかも米国REITの最大の弱点はショッピングモールREITで複数の小売り業者がデフォルトを起こしており、空室リスク上昇懸念が生じており、ここ数年EPSが上昇していないことにある。
一方、JREITは堅調なオフィス需要を背景にまだEPSが上昇しており、配当金増額が見込める。
こういう諸々を考慮すると個人的なそろばん勘定と過去のバリュエーション履歴を見ると東証REIT指数は2200-2300の間ぐらいまでは上昇余地があるとにらんでいる。
(そこより上はちょっとどうなるかよくわからない)

なかなか押し目がなくてつらいところだが、押し目がないところは少額ずつ積んでいって押し目ができたところが大きめに金額を積んでいくという作戦に出ている。
それに冒頭のように日銀が地銀のJREIT買いを邪魔しているのであれば、最後地銀が買い向かうまでは十分に高い位置で地銀が玉を買ってくれるということもあるので、まだ自分の後ろに買い手がいるという安心感がある。
個人・外国人が売り越しというのが若干不安感があるので、一定程度の下落というのも頭に入れながら積み増しをターゲットプライスまで続けていこうと思っている。 
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村越誠

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