村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2019年07月

一般的な会社が潰れるというのと銀行が潰れるというのは意味合いが違う

“欧州最強”ドイツ銀行、苦肉のリストラ 破綻すれば「リーマン・ショック」以上 ...

(上記記事は煽り例なのでクリックする必要性はありません)
最近真剣に「ドイツ銀行が潰れる!」と言っている人がいるが、おそらく投資に携わっていない人はニュースとかで流れている「潰れる」という意味を大抵勘違いしている。

普通の人がイメージしているのはリーマンショックの時のリーマンブラザーズのようないきなり会社が清算になって事業が停止するというイメージを持っていると思われる。
確かに一般的な事業会社が潰れるというときは、よくドラマなどである借金が払えなくなり銀行に資産を差し押さえられ、従業員は即全員解雇で閉店ガラガラというイメージで合っている。

しかし銀行についてはリーマンショック以降色々変わっているのだ。
リーマンショック以降、世界各国は無秩序に金融機関が破綻することは世界経済に大きな悪影響を与えることを認識しており、ではどうやったら金融機関が無秩序に破綻することを避けられるのかという制度を作ってきている。

それが足元でいうバーゼル3というものだ。
バーゼル3では銀行業務がどんなことがあっても継続できるように親会社がホールディングス経由の体制を取るか、あるいは法的に銀行が発行する債券について預金などの優先債務に劣後するように仕組み設計されている。
そして各国金融当局は銀行が業務ができないほどドン詰まる前に銀行の破産宣言、いわゆる「お前はもう死んでいる」と宣言をすることができる。
この宣言を受けるとベイルインと呼ばれ、債券を保有する人達の債券価値を金融当局の任意の下、価値を減損させていくことができる。
それによって実質的には銀行の債務を免除していくことによって銀行の自己資本を維持し、少なくとも銀行が通常の業務を継続できるように手当できるように制度化されつつある。

さて、今回「ドイツ銀行が潰れる」というのはこれに当てはめると「ドイツ銀行がリーマンブラザーズのように清算される」という意味ではなく、「ドイツ銀行がベイルインされる」懸念があるという意味合いが正しい。
だから実務的にはドイツ銀行が発行する社債価値が減損されるだけで、ドイツ銀行がいきなり業務停止になるというわけではない。
そもそもドイツ銀行は収益性がひどくて問題になってはいるが、資本については十分な金額を積んでいるため、今すぐ普通社債がベイルインされる可能性はほぼゼロだ。
だからドイツ銀行が潰れると騒いでいる人は基本的に実務をやったことがない素人ということになる。

ただし、一つ注意してほしいことは、一方で発行している債券の中にはこうした金融当局が「お前は死んでいる」と宣言する前に一定程度状況が悪化してきたら利払いを停止したり元本を削ったりできるCoco債というタイプの社債がある。
現在市場関係者が注目しているのはこのCoco債であり、これの利払いを停止するという可能性はそこそこ視野に入っている。
なぜなら株の配当を出している間はこのCoco債の利払いを停止することはできないが、株式の配当を停止すると言っていることから現実的にCoco債の利払いを停止できる状態にある。
投資家はこのドイツ銀行のCoco債の利払いが停止されるかどうかを注目している。 

金融緩和を示唆したが、わがまま投資家の期待には応えられなかったECB

米国株、売り先行 ECBの金融緩和への期待後退で

いくらなんでも投資家がわがまますぎるんじゃないかなという気がする。

ECB政策決定会合にてドラギ総裁が景況感見通しの悪化、インフレ率の見通し低下、金融緩和の強化を示唆し、次回9月の政策決定会合にて利下げなどの金融緩和措置を打ち出す雰囲気が出ており、すわ金融緩和だと最初の反応は欧州国債金利低下と欧州株高で非常にテンション高くスタートした。

ところが途中からドラギ総裁が具体的な緩和手法については言及していなかったことや今日の決定会合では利下げの話はなかったということや、とはいえリセッションにまで落ちるリスクはそこまで高くない・雇用や賃金の伸びは底堅いといった認識についても発言したことから、投資家の想像よりタカ派だと思われたことから相場は反転。
結局政策決定会合前まで金利は戻り、緩和頼みの株は-0.5~1%ほどの下落で引けた。

これはさすがに投資家側がわがまますぎるんじゃないかと思えるような相場の動きとなっており、次回FOMCについても一個でもタカ派なコメントが存在すれば投資家は満足できないと思われる。
なお、あわててスペイン10年国債を0.2%で掴んでしまった人はどうなるか知ったこっちゃない。 

ベリサイン株から見るITテック系へのポジション偏重

<ベリサイン株のチャート>
タイトルなし


ベリサインという会社はIT関連に携わっていないと知らないと思うが、米国のドメイン管理の元締めみたいな企業だ。

.comと.netの元締めとイメージしていただければいいだろう。
ただもうドメイン管理事業なんてもう随分昔からやっている事業でここが年率2割も成長するわけはなく、会社側の開示資料を見ても年率売上高および利益成長率はせいぜい一桁後半レベルかなと推察するし、ここから爆発的に伸びるということも考えずらい。

一方で株価を見てもらうとベリサインの株価はここ2年で一気に急騰している。
EPSが一年間で一桁後半%しか伸びないのにじゃあなんでこんなに爆発的に株価が伸びているかというと、理由はPERの急激な上昇にある。
2016年にPERが20倍だったものが、足元で46倍にまで劇的に増加しているのである。
もちろんPERの高低だけで株価を語るのは投資家として失格であり、その企業の潜在成長率や足元の利益成長率を鑑みながらPERの高低を語る必要があることは重々承知している。

しかし、ドメイン管理事業という既に旬は過ぎたビジネスで、実績としてもせいぜい一桁後半%の成長率の企業の株価評価がPER46倍というのは全くもって理解しがたい。
投資家はテックと名がつけばとりあえず買っておけとかいうそういう判断をしているのだろうか?
こういうのを見ても、ちょっと足元で株価に対して強気になれないと考えるファクターになっている。 

キヤノンの決算を見たら隔世の感があった

キヤノンの19年12月期、純利益37%減予想に下方修正 半導体装置が低迷

キヤノンの決算を見ると隔世の感があるなあと感じる。

前々からIT技術の進化で印刷需要は減少するといわれていたが、それでも2010年代前半ぐらいまでは緩やかな感じであったように思われ、実際数字として以前よりは成長率は下がってはいたものの複合機・プリンター事業は売り上げを伸ばしていた。
しかし2010年代半ばらへんから急速にペーパーレスが本格的に進んできた感じがあり、そこからキヤノンの複合機・プリンター事業は完全に頭打ちとなった。

またデジカメも2012年以降から趣味の写真ぐらいのレベルならiPhoneはおろか、Huaweiのスマホとかでも十分というレベルの写真が撮れるようになってきたことに加えて、伸びているミラーレスカメラの王座にソニーが鎮座したことから打開策が見えなくなってしまっている。

半導体や液晶装置関連も足元のシクリカル的な動きのせいで弱めな推移をしている。

キヤノン自体もこの危機感は昔から感じていて、だから医療分野とか頑張っていはいるものの、なかなかキヤノンの状況は難しいなと感じた。
そしてキヤノンレベルがそうだと競合先(リコーやニコン)とかはもっと苦しいんじゃないかなあと思い訳で。 

ベネズエラはマドゥロ政権下では電力さえ供給できなくなった

ベネズエラでまた大規模停電 「電磁波攻撃」と政府

これが私服を肥やし続け、かつ社会主義をめざした結末になるのかと思うと寂しいところだ。

ベネズエラで3月以来の全土におよぶ大停電が月曜日の夕方から発生したようで、未だに復旧していないようだ。信号も止まり、電車も走らず、すべてが電力供給を基礎として成立している現代社会の基盤から崩壊していっていることになる。

しかもマドゥロ政権は相変わらず「米国からの電磁波攻撃だ」と主張している。
3月も同じ主張していて、仮に真実だとしたら(真実ではないのだけど)4カ月お前ら何もせずにぼーっとしてただけってことになるような気もするが、とりあえずそういったツッコミは横に置いておこうと思う。

原因は明らかで、ベネズエラ政府はあらゆる民営企業・準国営企業を接収して政府管理下においたことにある。
そこでまだトップをその分野のプロに任せていればいいのだが、チャベス時代に大半をチャベスのお気に入りの人物をトップに置き換え、素人同然の経営をさせることになった。
もちろんチャベスお気に入りの人物がまともな経営をするわけがなく、チャベスの要請に基づく資金拠出と自分の私服を肥やすのにめいいっぱい会社のリソースを使い、会社の資産をすべて食いつぶした。
それがマドゥロ政権になってからはさらにそれが加速していき、ベネズエラに存在するすべての企業はなんの資産も技術も人も持たない空虚なハコとなってしまった。
ベネズエラの電力の8割はグリ水力発電所というところからきているのだが、おそらくメンテナンスなんてほとんどしておらず、配電設備周りも草がぼーぼーに荒れ放題になっている。
通常そういう状態だと火事にあったときや草木が送電線を切ってしまう可能性があるため、普通の電力会社は定期的な設備チェックおよび周辺の草木の刈り取りメンテナンスを行うのだが、もちろんベネズエラ政府の管理下に置かれた企業がそんなことをするわけがない。
そして火事が起こったのか草木が送電線を切ってしまったのかはわからないが、それが原因で大停電を起こしたというのが有力な説だ。

なぜ有力な説という言い方をしているかというと、誰も現地に入って調べることができないぐらい情報統制されている上に危険で、しかもベネズエラ政府が情報を隠蔽しているからだ。
ベネズエラはあとどれだけ文明が崩壊するのか、予想したくないことだが南米周辺相場を考える上では欠かせない要素である。 
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村越誠

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