村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2019年06月

米国企業は金のためなら政府規制網もすり抜ける

米マイクロン、ファーウェイ向け出荷を一部再開

民間企業の金を儲けたいという考えは政治では根本的に邪魔することができないということの証左ではなかろうか?

マイクロン・インテルがファーウェイへの商品出荷を始めたようだ。
どうやら米国外の工場から出荷するようで禁輸措置にも該当しないことを確認しているようだ。

結局民間企業は目の前に商売チャンスがあれば、いくら政治に邪魔されようがそれをかいくぐるための努力をいくらでもするということを意味しているのだろう。
独裁国家で禁じられている商売をすれば経営者を逮捕・拘留して拷問をかけるとか、その企業自体を接収するとかいう話であれば別だろうが(実際ベネズエラはそれで民営企業が死に絶えた)、すべてが法律で決められていて、法律の範囲内であれば歴史的にも公権力と戦うことが可能な米国の企業であればこういった動きも出てくるのは当然だろう。
特に今回のファーウェイとの取引禁止措置は米国しか行っていないことであり、他国は及び腰であることから抜け穴的なものがたくさん生じるのはしょうがないといったところだろうか。

そして、これはトランプ大統領が自分の政策に期待しているような中国企業への圧力効果が薄くなることを意味しており、一度流出した米国企業の米国回帰というのはやはり望みにくいのではなかろうか? 

利下げ頼みでPERを維持している米国株

FRB議長「過剰反応しない」 早期利下げ観測けん制

昨日の相場はいかに足元の相場が不安定かを象徴する雰囲気であった。

FRBのパウエル議長が市場の過度な利下げ期待に対してけん制するような発言を昨日したということもあり、米株相場はだらだらと下がる展開となっている。
あれだけ前回のFOMCで利下げ期待を煽っておいて、ここで市場のとらえ方を微調整しようと試したのだろうが、その試みはかなり難しくなっているということだ。

足元で米国企業の利益状況はまあほぼ横ばいから本当に若干だが微減益ぐらいという予想が市場の見通しだ。
ただ、株価は基本的にEPS×PERで決まるため、景気に対する懸念があるならばPERは下がってしかるべきところだ。
しかし足元はFRBの金融緩和期待でこのPERを支えている状態にあるが、現在は利下げ期待でこのPERがめいいっぱい高い位置で維持されている状況にある。
逆に言えば少しでもFRBが隙を見せてしまうとこのPERが下がってしまうという難しい状況にある。
EPSとPERについての考え方は下記書籍を参考にしてもらいたい。


全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦

トランプ氏からも1%の利下げという圧力を受けており、パウエル議長はどの程度まで利下げ期待を織り込ませればいいのか苦悩している状況にある。
またトランプ氏からはやはりパウエル議長をクビにして誰かもっとハト派な人間に切り替えようという動きを見せており、まさかのブラード理事に議長職を打診していたという話まで飛び出しており、FRB人事も混迷を極めるようになりつつある。
やはりここは一回PERを維持できるだけの利下げ期待が裏切られ一度PERの低下を見る必要性があるのではないかと個人的には考えている。 

インド中銀のメンバーは全員ハト派に入れ替えが完了

インド中銀のアチャリャ副総裁が辞任、政府と対立 政策ハト派に

インドの中央銀行はモディ政権以降バタバタと人事が入れ替わって、続々と政府からハト派が投入されるという事態が発生しており、ここまでに2回中銀総裁が変わっている。
そして理事メンバーの中で比較的タカ派であった副総裁であるアチャヤ氏がまたもや辞任になるようだ。

まあ辞任というよりは政府からクビと言われたのだろう。
どうやらご本人はニューヨーク大学の職に戻るそうだ。これでインド中銀からはタカ派の人間は全員追放が完了し、ハト派に入れ替えられたことから思う存分利下げができるという状態になっている。

一応今年はあと50bpsぐらい利下げするんではないかと市場では予想されている。
インドは足元は原油価格の低迷や食料インフレが低い状態にあることから利下げがまあこれぐらいなら許されるかというレベルにあるので、今のところ利下げについて大きな問題だとは認識されていない。
しかしインドの場合はまだ一人当たりGDPが低くて、インフレ率が食料品や原油価格で大きく動いてしまうことから、中銀が後手に回るとあっという間にインフレ率が高騰して為替がはちゃめちゃに売られて沈むというパターンがある。

だからインフレ率があがらないうちはインド資産については新興国の中では比較的ぶいぶい言わせることが可能だろうが、逆回転したときはここまで節操なくすすめてしまったため強烈なカウンターパンチを受けることを想定しなければいけない。 

中国の自己社債買いスキームは機能しなくなっている。


中国の社債市場が非常に不透明と言われている原因のうちの一つに、自己買いして需要を旺盛に見せかけて発行時の利回りを押し下げようという慣行がある。
仕組みとしてはこうだ。

債券を発行しようとしている会社は他社のアセットマネジメント会社に現金を送付し、自分は発行しようとしている債券の買い付けを行ってもらう。
これによりその債券の需要が非常に強いかのように見せかけ、発行利回りを押し下げていくのである。
こうした手法はStructured issuanceと呼ばれ、中国社債市場の8%を占める大きさになっていた。
またアセマネはこの債券をレポ取引の担保として貸して資金調達を行い、レバレッジをかけて事業を行うことができるので発行側にとってもブローカー側にとってもwin-winな関係にあった。
ところがこのブログで何度も取り上げているように包商銀行が公的管理下におかれて以降、担保毀損を避けたいというプレーヤーが多数になってしまったことから低格付け社債ではレポ取引の担保として扱えなくなってしまった。
そのためアセマネはStructured issuance取引を避けるようになってしまい、低格付け債の資金調達コストがじわじわ上昇しているといった記事だ。
包商銀行の件では大半の債権は保全されたはずだが、ごくわずかだが一部カットされたということもあり、債券引き受けした際に公的管理下に置かれて毀損されてしまってはかなわないと資金がドン引きしてしまっている状況は続いているようだ。

確かにそう考えると足元で納得いくのが米国のハイイールド社債とアジアのドル建てハイイールド社債の利回り差だ。
米国ハイイールド社債はすでにスプレッドが2018年の一番スプレッドがタイトだったレベルにまで回復している。
一方でアジアのドル建てハイイールド社債は中身に数多くの中国ネームが入っており、上記で述べたStructured issuanceのできる量が減少しているのかスプレッドが全く戻っていない。
もちろん米中貿易摩擦の影響もあるだろうが、それだけの理由ではないという感じはしていたが、上記のような自己社債買いスキームができないというのは大きな要因かもしれない。 

やはり実際の軍事攻撃はできない米国の対イラン政策

米国がイランにサイバー攻撃--石油タンカー攻撃への報復か

トランプ政権が無人機撃墜の報復としてイランのコンピューターネットワークにサイバー攻撃をしたとニュースで報じられている。
また、これにともないイランへの追加経済制裁も検討と米国政府は発表した。

しかしこれは米国政府が実弾を伴う戦闘はなにがなんでも避けたいという中途半端な対応にしか見えない。
イランに常に国の存亡を揺すられているイスラエル政府もここぞとばかりに先制攻撃して滅ぼせと言っており、おそらくイスラエルロビーも米国政府に対してそうした働きかけはしているが、現状トランプ政権はなんとしても正面衝突は避けながら、イランに圧力を加えて選挙アピールに使える合意内容を引きずり出したいと考えている。

前回のブログ記事でも偶発的な軍事衝突以外でイランと米国が戦争になる確率は非常に低いだろうという記事を書いたが、実際にこのニュースを見てほぼゼロだなという確信を持った。

<過去参考記事>

選挙を考えればイランと米国が戦争になる確率はほぼゼロ


イランと米国の対立についてはイラン側はイラン側で兵糧攻めに近い状態にあり経済的に苦しいが、米国側は米国側で絶対に実弾戦闘に発展してしまい支持率の大幅低下要因にはしたくないという苦しさがにじみ出ている。

この構図だとイラン側はこうしたちまちまと人命を伴わないレベルの実弾攻撃というカードを切っていくのが最善選択となり、一方米国側は経済制裁やサイバー攻撃といった実弾攻撃を伴わないソフトでの攻撃に終始するのが最善選択となる。

しかしいずれもこれという決め手になるような出来事が起こる可能性は低いだろう。
米国は現在の対イラン政策はオバマ政権時代に悪化したサウジアラビアやイスラエルとの関係修復がメインであり、決して多くの身銭を切りながらイランを滅ぼしたいと考えているわけではない。一方で、イランは米国と安易な妥協合意をしてしまうと、国内強硬派に突き上げられることや、サウジアラビアを中心としたスンニ派につけいられる可能性が増加し、国の存亡にかかわる事態になるのでそれもできない。
だからお互いの主張は平行線のまま、当面続くことが想定される。 
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