村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

米国政府のテンセント軍事企業指定の深刻さを考える

米国防総省、テンセントとCATLを「軍事企業」に指定

結構相場へのインパクトは大きそう。

上記記事は米国政府が中国大手ネット企業のテンセントと電池製造大手のCATLを軍事企業に指定したというニュースであるが、ニュースの字面以上に実は投資的インパクトが大きいのでまとめていきたいと思う。

CATLは元々本土株でしか上場していないのでそこまで影響は大きくないが、テンセントの軍事企業指定というのは、グローバルに投資家に影響が大きい話になるのではないかと思っている。
なぜかというと軍事企業指定されると海外の機関投資家はアンチマネーロンダリングの観点から投資について強制売却を迫られる可能性があるからである。
昨今アンチマネーロンダリング規制というのは非常に厳しく、米国政府からそういった指定を受けた企業や国というのはいきなり米ドルのアクセスを断ち切られる可能性がある。
もし投資を続けた場合、アンチマネーロンダリングにかかわったとして、米国政府から厳しい罰を受ける可能性があり、海外機関投資家は本社コンプライアンス部から保有状態についてヒアリングされ、今後の対応策について協議をしなければいけなくなる。
場合によっては強制売却などの措置さえ行われる可能性があるのである。
株というのは常にフレッシュな資金が入ってくる必要性があるわけで、軍事企業指定によって海外投資家が一切新規で投資できなくなるということは

これが本当にバリュエーション激安企業ならともかく、テンセントはPER20倍近くある普通のバリュエーションの企業であり、しかも海外投資家の保有比率は非常に高い。
そのため、どちらかというと売り圧力が強まる可能性の方がずっと高いのである。
このことを察知してか、だったら今まとめて売っちゃった方がええやろという先回り売りが既に活発化しているし、そもそも中国株自体がオワコンになっている中でこれまで中々売る理由を見つけられていなかった投資家もこりゃあかんわという形で売りに入ってしまっているということだと思われる。

【テンセントの株価チャート】
タイトルなし

ただでさえ、一度中国政府の見掛け倒し金融政策と財政支出のテンションで株価上昇したあとにだらだら下げていたわけであるが、そこにとどめを刺す形で下落して全戻しを食らっているわけで、ファンダメンタルズもスマホゲームが認可されない・スマホゲームやる若者のお金がない・習近平からにらまれている・米国政府から軍事企業指定ということで、中国ネット企業は一切なにも支援なくだらだらファンダメンタルズが悪化し、株価も下がる展開が継続しそうである。

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70平米1.5億円が普通のマンションの実需価格の限界か



タワマンはちょっと別だけどね。

ここもと、東京の住宅価格においてもSUUMOを見ていると、タワマンはともかくとして、やや駅遠の普通のマンションについては伸びが鈍化しているというか価格が止まっているように見えるし、特に山手線外だと下がってはいないモノのそういった鈍化傾向は顕著なように思える。
そういった中で、文京区の住宅を見ているXのマンクラから70平米1.5億円あたりで成約が上手くいっていない物件がちらほら見られている物件があるという話が出てきており、なんとなくだが1.4~1.5億円らへんに実需が払える壁がやはりあるように思えるので、それについてまとめていきたい。

以前に東京で快適に暮らしている層(年収が統計で第七区分の最上位に位置する世帯)というのは月収で税引き前で170万円ぐらい世帯収入があり、年収でいうとほぼ2000万円というのは下記過去記事で書いてきた。

【過去参考記事】

東京で快適に暮らすにはいくら投資で稼ぐ必要があるのか?


共働きが多いということも考慮して税金や社会保障の控除を考慮し、ざっくり手取り年収1500万円(月収125万円)ぐらいだとすると、1.5億円という物件は大体10倍ぐらいの金額になる。

さて、1.5億円の物件を頭金なしで35年変動金利ローンで借りると月々の支払いが修繕管理費込みだと返済39.6万円+修繕管理費4万円=43.6万円ぐらいになる。

【1.5億円フルローンで購入した場合】
タイトルなし

43.6万円の支払いはボーナス含めた手取り収入の1/3におよび、さすがに負担感がやや大きい状態にある。
しかもこの第一階層の人はボーナスの比率が高く、景気や所属している企業の業績の変動によっては大きく変動する可能性があるわけで、実質的な毎月入ってくる定期的な収入の1/2ぐらいの負担感になるように思う。

個人的には手取り月収の半分が住宅関連費用に消えるのは結構心理的にも圧迫感があるように思う。
ボーナスを除いた手取り月収に対して住宅ローンの返済金額が20%以下だと超余裕、20~30%以下ぐらいだとまあそんなもんかなと思えるが、40%ぐらい増えてくると目に見えて心理的負担感が大きくなるように思う。
50年ローンに伸ばすと、おそらく毎月の住宅ローン返済30万円+修繕管理費4万円=34万円の支払いになるので、これで概ね許容できる範囲になるかと思う。

ということを考慮すると、ランドマーク的なタワマンを除くと、普通の70平米マンションというのは1.5億円というところに一つの壁があるように思う。
まあとはいっても、おそらく次回の春闘でも最低3%のベースアップは発生する見込みであり、その分は住宅価格に反映されていくはずなので、今年後半になると3~4%ぐらいは許容できる価格が上昇すると思うので、そこらへんは念頭に入れながら住宅を購入する人は考えてもらいたいところである。
また、そもそも論だが、日本の中古住宅についても徐々に住宅ローンを完済しない前提で購入する傾向が強まる(ようは中途売却ありき)ことも頭に入れておく必要性はあると思う。

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暴落を全部回避してスマートに投資をしようと考えることは投資の基本ではない

【参考書籍】
世界の天才に「お金の増やし方」を聞いてきた

結局大半の投資家は暴落時は顔面から着地してるんですよという話。

上記参考書籍はグローバルに著名な機関投資家のインタビュー書籍であるが、読んでいくとオルタナ系のプレーヤーは相場が暴落した時の話をあまりしないが、一方で大きい資産をリスク資産に張っているプレーヤーなどは株価暴落にぶつかった時の話について言及しているケースが多かった。
そして、大体は株価暴落については「あれほど下がるとは想定外だった」と言及すると同時に「その暴落の中では我々はこういう風に立ち回って、その後の相場回復まで耐えきり、十分なリターンを生み出すことに成功した」と書いてあることが多く目についた。

つまり大抵の投資家というのは株価が暴落した場合スマートに切り抜けられてるどころか顔面から着地しているケースの方がよっぽど多いのである。
もちろん扱っている投資金額が非常に大きいし、約款上株をロングしていなければいけないといった縛りがあるから顔面から着地せざるを得ないという事情はあるにせよ、そもそも投資金額が大きかった場合瞬時に売り捌くとかは無理なので、結局株を大量に保有したまま暴落を食らっていることには変わりはない。
どちらかといえば顔面から着地した後にどのように立ち振る舞って相場が回復していった時に全て取り返した上で、お釣りがさらにくるレベルのリターンを叩き出すかということにフォーカスしているということがわかる。

こういうのを読むと、そもそも暴落をスマートにノーポジにしたりネイキッドショートして他人が暴落で苦しんでいるところで大儲けして脳汁ドバドバを狙うというのはやはり間違っているし、大抵はそう思い通りにはいかないんだよなあと思う次第である。
実際に2022~2023年は「ナスダックが6000に行く」とか「月足で下落トレンドが続いているからここで買うのは馬鹿」とか「逆イールドになっているから株価は最高値奪還できなくて暴落」とか「S&P500の絶好の買い場はPER13倍」と言ってスマートに投資してノーポジを貫いたり、挙句の果てには「ナスダックの下落で儲けましょう」といってネイキッドショートで儲けようとした人達は全員絶好の買い場を全逃ししたわけである。
(様々な暴落煽りYoutuberの欲張り名言セット)

【2022~2023年のS&P500のチャート】
タイトルなし


ということで、健全に株価の調整・下落を恐れる心は必要だが、過剰に暴落を恐れてインフレ下で現金の価値が日々目減りする世界でスマートに株式市場から金を抜き取ろうと考えてノーポジ決め込んでいたら、その間ずっと上がり続けて単なる大マヌケじゃんとなるだけなので、それなりに株価の下落が起きても十分に対応策を練れるポジション程度ぐらいは常に維持し続けることが重要ではないかと思う。
インフレが当面長引きそうな理由については下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

もちろん、逆に信用二階建てとか3倍レバETFで全力というのは、そこそこの下落でも破滅したりするので、そういう過剰レバポジションで挑み続けるべしというのとは話が違うので注意してもらいたい。

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厳しい反応になったものの、色々ピークが見え始めた米国雇用統計

【米国市況】強い雇用統計で株下落、国債利回り上昇-円は157円後半

我慢のしどころ的な感じ。

注目の米国雇用統計が発表されたので内容と市場の反応をまとめていきたい。

結果としては非農業部門雇用者数について市場予想+15.4万人に対して結果は+25.6万人増と市場予想を上回る形となった。
しかし、内容をよくよく見ると、うち増加寄与のうち、3/4はパートタイムであり、そのせいもあって時給伸び率は市場予想4%から3.9%と少し下回った。
失業率は市場予想4.2%から結果4.1%とやや強含んだ。
パッと見では市場結果は強く見えるが、寄与度の3/4がいつでもクビを切れるパートタイムで構成されていて、数字通りに劇強と捉えるのも少し違和感がある内容となった。

今回の雇用統計についてはいくつかきちんと見ておくべき市場の反応があったように思う。
金利については長期ゾーンぐらいまでは7~10bpsの金利上昇となったが、30年についてはほぼ往ってこいという形になった。
このことが意味するのは5%より上というのは分岐点っぽいところになっていると思われる。
また、既に逆イールドが解消されている中で、短期で資金を借りて長期債にぶちこんでも利ザヤが獲れる形になっていることから、金利上昇となったものの、
これまで当方ではTMFはもしかして狙えるかもしれないけど株に劣後しそうだから触る必要性はなさそうとも思っていたが、逆ザヤも解消しているし、ぼちぼちいいのではないかと思う。

【30年債金利のチャート】
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さらに言うと、一般的に金利上昇に弱いと言われているゴールドについては普通に上昇して引けたし、同様に金利上昇に弱いビットコインも上昇して米国時間は終了した。

【ゴールドのチャート】
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そういった意味で、金利上昇についてはここから上はたかが知れているでしょというのが見え始めているように思う。
さらに言えば、為替についてもこの金利の反応であれば円安ドル高にさらになっても不思議ではなかったが、円高ドル安で引けていることからそこまで持続性の強そうな金利上昇であるようにも思えない。
(ただ円以外の通貨に対しては結構ドル高)

株については、さすがにこの金利水準は実体経済に対してマイナス影響があるとして下落させる方向に作用したわけであるが、中でも金利上昇に弱い余裕のない中小型株の動きは非常に悪く、既に大統領選分の上昇を全部吐き出している。
大型株も下落したが、中小型株ほどではないので、この中小型株が金利低下に効いてくれば中小型株を踏み台にして上昇する期待も出てくるだろうと思うので、慎重に買い足していけば特段問題はないだろうと思う。

以上を総合していうと、なかなか我慢が必要な状況ではあるものの、ノンレバであれば十分に耐えられるし、なんなら株買い増ししてってもどうにかなるんじゃないかなあと思っているが、まあ無理せず行こうやってところではないだろうかと思う。

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金利高止まりが米国株の下落トリガーになるのか?

【米国株】利下げ期待後退で金利上昇リスクに直面するマグニフィセントセブン、ナスダック100の見通し

一度擦ったネタで大幅下落って可能性は低いんじゃないかなあ。

ここもと再度米国債金利が上昇していて、この金利上昇を材料として米国株は下目線という人が増えつつあるように思われる。

【米国10年債金利のチャート】
タイトルなし


しかし、今回の金利上昇ではたして下落目線の人達が期待するほどの下落がはたしてあるのだろうかと個人的には疑問に思っているので、これについて今回は書いていきたい。

まず金利上昇による株価下落というのは2022年に起こった下落相場の大きなトピックであった。
インフレの高止まりからいきなり先進各国が金利引き上げに一気に舵を切り、特に米国FRBの金融引き締めが非常に苛烈であったことは記憶に新しい。
それを乗り越え2023~2024年は2022年に我慢して投資していた人達は全員報われお祭り的な上昇相場となったわけである。

しかし、2024年後半に入って、それまでFRBの利下げは一気に中立金利までいくかと思いきや、なんと2025年はたった2回というところまで利下げ予想幅が削減され、その中で米国債金利が上昇し、再度2022年のような相場下落があるのではないかと示唆する人はXやYoutubeで多い展開となっている。

しかし、個人的にはこの考え方については非常に懐疑的である。
まず2022年に既にそのネタは擦り切っているわけで、企業側も馬鹿ではないので金利上昇に対してどのような対応をするのかというのを2022年に学んでいる状態にある。
加えて、2022年の時はFRBはとにかく何が何でも利上げという方向であったが、今回は様子見しながらゆっくりと利下げをしていきたいということで、2022年の時と比べて経済をクラッシュさせに行くという向きでは全くない。
(まあ2022年の時もあくまでFRBは経済をクラッシュさせたいと思って動いていたわけではないが)

また投資家側も、そもそも金利上昇が怖いと思っている投資家なんてのは2022~2024年の相場では一切取れていないわけで、ここまで踏ん張ってきている投資家は金利上昇に対してもかなり耐性がある。
そういうことも考えると、FRBが別に追加の金融引き締めを意図しているわけではない中で、金利上昇をネタにあらためて売るんでしたっけという話である。
どうしても株価が暴落するほど下落するには、フレッシュなネタが必要なわけで、既に擦り切ったネタでは売り崩れる可能性は低いと思う。

以上を勘案すると、金利上昇で米国株がみんなが騒ぐほど下落するとは思えない。
むしろ、これは健全な状態なのではないかと思っている。
なぜなら株価が上昇しようとすれば金利が上昇し、過度に上昇することをけん制する。
これに対して株価はすかさず反応し、ファンダメンタルズが弱いセクターは下落し、金利低下を促してくれる。
そのため、常に市場では不安がつきまとうわけだが、これが過度なバブルになるのを抑止してくれる。
過度なバブルが抑止されるということは安定した金融政策が期待できるわけで、自力でEPSを伸ばせる企業はひたすら株価が上昇してくれることが期待できる。

なので、個人的には金利高止まりネタによる米国株下落は2022~2023年に擦り切ったネタであり、いまさら暴落ネタにならないし、むしろ健全な相場形成をして長期間にわたる株価上昇を演じてくれるのではないかとさえ思っている。
下がるとすれば、もっと新規性のある別なネタだろうと思う。

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