村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

東京で快適に暮らすにはいくら投資で稼ぐ必要があるのか?

東京23区内に住んで余裕のある暮らしができる年収は?

統計から語るとこれぐらいという数値の話。

よく東京での生活はコストがかかるとして、イメージ論的な年収語りがネット上で多いが、いわゆる余裕のある生活という概念自体が比較を交えた議論であるわけで、比較を交えるのであればきちんと統計に基づいて語るべきだろうと思うところがあったので、今回東京で快適に暮らすためにはいくら必要なのかというのをまとめてみたい。

東京都では都民の暮らしぶりという統計データを取っており、ここに勤務労働者世帯の年収というのがデータとしてある。

【統計HP】
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/seikei/2023/sb23qf0002.pdf

この統計データの中に勤め先収入についてのデータが下記のように掲載されている。

【労働者世帯年収】
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収入を7分位階層で分けており、一番下が第一階層、一番上が第七階層となっている。
快適に暮らすとすれば、やはり第七階層だよねということで、第七階層の世帯年収を見ると月174万円(税引き前)となっている。
第二階層と倍弱程度の水準感があり、特に賞与のでかさが目立つわけで、第二階層とはそもそも就いている職業が違うことがわかる。
さらに言えば、配偶者の収入も月30万円ぐらいあり、本人の月収150万円+配偶者月収30万円という組み合わせのようで、そういうことを考慮すると東京で快適に生活するには月に150万円稼ぐ必要がありそうだという結論になる。
月150万円稼ぐということは年収で1800万円となる。

これに対して東京都平均世帯月収は72万で、年収で860万円程度となる。
つまり、一番上の階層年収には1000万円ぐらい足りないことになる。
東京で快適に暮らすにはどうやら年収1000万円では足りないという議論はやや現実的である一方で、2000万円以上必要とかいう暴論ぶち上げるやつは頭がおかしいとしか言いようがないといったデータである。

そしてもう一歩議論を進めるとすれば、単に働くだけでは稼げない部分は投資で稼ぐしかないだろうということで、一番上の階層に対して他の階層が足りない部分の稼ぎを投資収益で埋めるというのが一つの目安になるだろう。

投資収益を年1000万円稼ぐには一体いくら投資資金が必要だろうか?
昨今積み立て投資で多くの人が投資している米国株(S&P500)は過去の収益を年平均すると大体11%ということが実はわかっている。
なので、単純にこれを続けられると仮定すればざっくり9000万円の投資資金があれば年1000万円を稼ぐことが可能ということになる。
つまり結論としては9000万円の投資資金を確保できれば、東京での暮らしぶりは概ね快適になるという結論ができる。

ただ、実はこの投資収益には住宅不動産を持っている人は住宅不動産を入れるべきではないかと個人的には少し思ったりしている。
現在東京23区の70平米程度の住宅不動産は場所にもよるが、平均賃貸利回りは3~4%ぐらいなように思う。
そして、東京都の平均中古マンション価格が6000万円ぐらいというデータがあるので、そこに対して賃貸利回り4%を掛け算すると240万円という数値が出る。
よって、住宅不動産を持っている人は暗に240万円の投資収益が生まれていることになるので、年1000万円も投資で稼ぐ必要がなく、ざっくり年750万円程度稼げばよくなる。
すると、別途用意すべき投資資金は7000万円程度で済む。

よって東京で快適に暮らすためには、勤務先収入が都平均ぐらいであれば投資資金7000~9000万円をめざす必要性があるということだろう。
これを40歳ぐらいまでぐらいに確保できれば、投資で過剰なリスクを取らずに概ね東京での生活で何か金銭で困ることはなくなるだろうという話である。

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大手エネルギー会社でも腰が引け始めた再生可能エネルギー事業

bp and Shell decides to reduce investments in electric power industry

再生可能エネルギー黄金時代の低金利+補助金時代はもう来ない。

これまで石油企業は今後再生可能エネルギーの拡大に伴って石油需要が減少することを見越して、再生可能エネルギーへの投資を進めてきた。
しかし、いくら投資しても採算性に乗る気配がなく、一旦再生可能エネルギーの拡大ペースについて石油企業は一旦見直す必要性に迫られているという記事内容が上記ニュース記事であり、これについてまとめていきたい。

なぜ再生可能エネルギー投資が採算に乗らないのかを考えるといくつか理由がある。

まず一つ目は政治的に無計画な再生可能エネルギー偏重は安定的な電源供給という面でマイナスであり、政治的にプッシュ姿勢が以前より熱心度が下がっていることにある。
風力・太陽光発電の最大の弱点はその発電不安定性にあることは多くの人が知るところである。
そのため、欧州各国も再生可能エネルギーを増やす際はバックアップ電源との見合いで調整していく必要性があり、欧州はその議論をきちんとしないまま進めてしまったという問題がある。
そのため、足下では引き続き熱心ではあるものの、以前よりは少し一歩退いた姿勢であり、そのため補助金拡充も増えていないことから、採算について問題が生じ始めている。

二つ目に再生可能エネルギーバブルだった時代から経済環境が激変したことがある。
再生可能エネルギー発電が大幅に拡充されたのが2020~2021年のまだインフレが本格化する前+低金利だったこともあり、その時代を前提とした採算性でこれまで事業拡大してきた。
しかし、インフレ上昇により工事費が大きく増加した上に、プロジェクト投資のための借入金利が大幅に上昇したためにいきなり採算が成立しなくなってしまった。

こうした要因から以前のような計画では再生可能エネルギーは採算が取れず、石油企業は引き続き再生可能エネルギーには取り組むものの、一旦そのペースについては見直しをしようという機運になっている。

これは多くの再生可能エネルギー企業にとっては厳しい話である。
2020~2021年にみんな業容を拡大させたがために供給体制ばかりが拡充されて、需要は上記の通り絞り込まれているわけで、各業者ともになんとか自分達が生き残るために安値受注するしか生き残る手段がなくなっているのである。
そうなると利益なき繁忙となるわけで、将来のキャッシュフローも期待できず、割高PERは正当化できなくなる。

例えばクリーンエネルギー関連銘柄のETFであるICLNの原指数のPERは27倍とかという数値があるのだが、需給状況がゆるゆるな状況で利益なき繁忙でこのバリュエーションが正当化できるかというと、できるわけがないのである。
なのでICLNはもう天井から大分株価が下がっていてトランプ砲でさらに下がっているわけであるが、じゃあこれが値ごろ感だけで買えるかというと無理であり、まだ下がり続ける可能性があるわけである。

【ICLNのチャート】
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クリスマス休暇前までにナスダックをてきとーに買っておけばいいのかも

【米国市況】株上昇、インフレ抑制で-ドルは対円で一時156円割れ

過剰反応ポジションの消滅。

今週はFOMC前あたりから相場はやや軟調推移となっていて、NYダウが9連続陰線みたいなめずらしい状況となっていて、これは不吉な予兆ではないかと見られていた。
ここにさらにFOMCでタカ派的メッセージとなったことや、今後の利下げ回数予想が2025年2回までに減少し、中立金利も3%に引き上げられたことから、これまで相場は利下げ期待込みで動いていたということもあり株価指数が軒並み1日で3~4%近く下落する展開となり、相場の不安感が高まる展開となった。

しかし、以前のブログでも書いたが、これこそ市場が望んできたソフトランディング・ノーランディングの証左であり、過去に書いたハードランディングが起こるメカニズムを考えれば結局起こらないというオチでしたということになる。

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

その後金曜日にPCEが発表されたが、ほぼ市場予想通りの動きとなり、別にインフレ率もいきなり予想外に上に跳ねるような展開ではなく、過去30年と比べればやや高く粘り強いインフレ率は見られるものの、では金融緩和方向を完全にひっくり返すほどのものでもなく、本当に緩やかではあるが2%への道が見えていることから相場に安心感が戻り、VIXも大幅低下して相場は上昇した。

総合的に見ると、景気は利下げを一気に進める程は弱くなく、かといって利上げに転じるほど強いものでもなく、過去30年では見たことのない非常に緩やかな景気鈍化が進捗するイメージである。
雇用は増えそうで増えないし、クビ切りも増えそうで増えない、インフレ率も上がりそうで上がらないし、一方で下がりそうで下がらないという全てが中途半端な状態であり、しかもそれが長引いているという過去に例を見ない動きである。
そのため、FRBの金融政策も現時点よりわざわざ景気を追加的に冷やすような行動には出ないだろうということが推察される。
非常に緩やかな利下げがダラダラ続くような形で、2025年だけで利下げは終わらず、おそらく2026年に至ってもダラダラと非常に緩慢なペースでの利下げが続きそうだ。

一気に利下げが来て盛り上がりそうと期待されていたセクターは利下げが来なくてがっくりと肩を落とすしかないが、逆に言うと自力でEPS増加をする力のある企業は金融政策がわざわざ景気を致命的に阻害するような金融政策は2027年までは起こらない見込みなので、淡々と事業拡大をしていくことが可能になる。
なので、2024年はどちらかというとなんでもかんでも上昇するような相場であったが、2025年は利下げ期待の剥落で実力のない利下げ頼みの企業の株価は伸び悩む一方で、EPSが実力通り拡大する企業は株価上昇の期待度が高い。
ということを考えると、米国株でいうとナスダックが優位になる方向性になるだろう。

そしてFOMCショックでばーっと米国株は下落したが、その背景は12/20にオプションのSQを控える中で一気にプットオプション需要が出たがために過剰反応した感がある。
(おそらく米債金利も若干その気が強い)
オプション市場が相場動向に与える影響については下記過去記事を参照してもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する

しかしSQ越えた後はPCEの数値も市場から大きく外れることもなかったわけでオンコースな動きになっていることから冷静さが戻り、冷静に買い戻しが始まったと考えるのが妥当だろう。
金曜日は若干日足で見れば上ヒゲで引けて見えるが、週末で上昇したところを短期的に利益確定で動く向きもあるわけで、テクニカルしか見れない人の言う上ヒゲだからまだ相場は不安定だというのは願望に近い分析だと思っており、今年も残り少ないがクリスマス休暇に入る前にババっと買い足しておけば今年の仕事は概ね完了なのではないかと思う。

【ナスダック100のチャート】
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米国医療保険関連会社にトランプ砲がぶっ刺さる

トランプ氏、製薬業界「中間業者」たたきつぶす-CVSやシグナ株安

米国民の不満が溜まっているセクターは危ない。

足下でさっそくトランプ大統領の口先介入を受けて株価がぐちゃぐちゃに下がっているセクターがああるので、そのことについてまとめていきたい。

今回トランプ氏のターゲットとなっているのが米国医療保険会社である。
具体的に銘柄をいうと、ユナイテッドヘルスなどが挙げられ、S&P500にも複数銘柄存在する大きなセクターである。
しかし、この米国医療保険会社というのは調べると中々やっかいなセクターで、他の先進国では一般的に国民皆保険な中で、営利目的にしている中で、医療保険会社自体が営利企業ということもあり、保険請求に対する拒否率が高まりつつあるなど、国民生活に直結する形で構造的な問題を抱えていたり、国民が不満を溜めてきていた。。

元々不満が溜まっていたところに加えて、直近になって最大手のユナイテッドヘルスの子会社幹部が射殺されたことから、潜在的に不満を持っていたことが表面化されてしまったのは、多くの人が想像しやすいところである。

【参考ニュース】
米、保険業界への不満噴出 CEO射殺、背景に制度の問題 請求拒否増え改革求める声

これに目を付けたのがこうした国民の不満を丁寧に掬うのが上手いトランプ氏であり、米国医療保険・薬局でぼったくっているやつらを叩き潰すというお題目をぶち上げ、場合によっては将来利益が減少することを市場参加者は危惧する形となった。

最終的に落としどころがどうなるかは不明であるが、少なくともプラス要素はなく、マイナス要素しかない。
そしてこのマイナス要素はトランプ政権になってからスタートするものであり、少なくとも4年間はどうしようもない。
となると、関連した銘柄を保有する理由なんてものは存在しないわけで、UNH・CI・CVSの株はダダ売られする形となった。
特にその中でも財務が厳しいCVSの売られ方はよりひどく、お前ほんとうに米国株かよみたいな下がり方になっている。

【CVSのチャート】
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とはいっても消滅するセクターでもないので、いつかは逆張り買いはできるかもしれないがそれは今ではないし、今投資したとしてもより状況が良いセクターに対してパフォーマンスは劣後するだろうなと思っている。

またこのことが示唆することは、多くの米国民が不満に思っていることについてトランプ氏は目ざとく注目し、とにかくビッグマウスで威嚇・脅迫をする可能性が高いわけで、潜在的に国民不満が大きいセクターは避けるのが良いだろうと思う。

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結局春闘待ちな雰囲気が強い日銀

【詳細】日銀 植田総裁会見 追加利上げ見送りの背景は?

結局毎回春闘確認しないと利上げできなさそう。

FOMC翌日に日銀の金融政策決定会合もあったので、こちらも内容をまとめていきたい。
11月頃には12月利上げの可能性は高いと見る市場参加者が多く、当初利上げ確率がかなり高かったが、12月に入って火消し報道が増えたことから一気に市場参加者はフェードアウトしていき、1月・3月の利上げに向けて何かしらヒント的なものが記者会見で出来るのではないかと身構えていた。

しかし、蓋を開けてみると記者会見では春闘での賃上げ状況をじっくり見極めたいという発言が相次ぎ、市場参加者が考えるよりずっとハト派な内容となった。
この記者会見を受けてちょっと前まで来年3月頃までには100%利上げを織り込んでいたものが6月頃まで後ろ倒し予想になっており、結局春闘での賃上げ状況を見ないと利上げできないんですよねという考えが浸透したように思う。

もちろん今回利上げをペンディングしたのはまだFRBが金融緩和姿勢をやめていないということもありそうである。
為替的に一番危ないのはFRBが金融緩和姿勢をやめて金融引き締め姿勢に転じた時であり、変に日銀が利上げを進めた時にさらに利上げ催促される展開になると経済を壊しかねない利上げに追い込まれる可能性がある。
そういった意味でこれまでは景気が悪化した場合ののりしろ理論的なものがこれまであったわけであるが、現状日銀は逆の考え方をしている可能性があり、米国FRBが利上げに転じた時に日本経済を壊さない程度に利上げするのりしろを作っておく逆のりしろ理論的なもので動いている可能性がありそうだということである。
また米国以外の景気でいうと若干怪しさがあるし、特に輸出先としては影響の大きい中国の景気がもう完全に死んでいることを考えると、バシバシ利上げすることが本当に経済にとって良いのかどうかというのも結構悩ましいところである。

というわけで、為替は気がかりであるものの、まだ全体的なデフレマインドというのが続いていて拙速な利上げはしたくないし、FRBはペースは緩んでいるとしても利下げを継続させることを考えればそうそう住宅ローン破綻者が出るような利上げなんてできるわけないよねー・利上げするのであればきちんと賃上げ確認してからだよねという話だろうと思うので、これから住宅を購入するためにローン借りる人はさほど心配せずローン借りればいいんじゃないかなと思う次第である。

【ドル円のチャート】
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