村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

米国の消費を支える住宅含み益関連ローンの活用

Home equity loans will keep US housing market tight

地味に米国消費を支える要因。

上記FT記事は個人的に読んでいて足下の米国景気を考える上で非常に重要だなと思う内容だったのでまとめていきたいと思う。

上記記事では、米国でシニア層が住宅を売却せずに住宅含み益を活用したローンで資金を引っ張ってきて消費しているという話が書いてあり、なるほどこれが米国消費を支えている要因の一つだなと思った次第である。

米国ではリーマンショック以降、金融機関は基本的には安全性が高い個人にしか住宅ローンを提供してこなかったし、住宅ローン金利はすごく安かったしそこからは住宅価格は順調に上昇していったということもあり、リーマンショック以降10年ぐらいは住宅を購入した人は現在残債と比べて非常に高い時価の住宅資産を保有している。

そして米国人の生死観というのは宵越しの住宅なんて持てないよねという考え方があるわけで、この住宅含み益をどうにか活用したいという考え方が普通にあるし、それをサポートする金融商品もあるわけである。
一般的にこの住宅含み益を引き出そうと思うと住宅売却が米国以外では一般的であるが、これはそれなりに税金が発生するわけである。
この税金支払いを回避する目的としてホームエクイティーローン、つまり住宅含み益分を貸し出しましょうという金融商品も一般的に出回っている。
この住宅含み益引き出しローンは結構色んな形態があり、一旦一括返済資金を貸し出すケースから、既存のローンは維持しながら上乗せで貸し出す形など形態も色々あり、金利動向によってこの辺は嗜好が変わるようである。

足下米国ではリーマンショックで住宅購入する際にぎりぎりで買っている人はおらず、基本的には余裕を持って住宅購入しかしていないこともあり、多少インフレで生活が苦しくなったところですぐさま住宅を売却しなければいけない人はほとんどいないのが現状である。
さらに、そうした人達は上記FTの通りシニア層が多く、シニアはもはや住み慣れた地域・家を無理やり売却して引っ越す気がないし、売り出していたとしても自分が満足いく価格で売却できないのであれば別に急いで売る必要性はないと売却案件を引っ込めてしまうのが足下の状況のようである。
そのため、

こうしたことを背景に、住宅含み益を引き出すローンを活用したファイナンスが活用されているようである。
そしてこの住宅含み益を活用した借入コストは他の個人向けローンと比べて利率が低いことも魅力の一つである。
記事の中で、個人向けローンは全米平均12%ぐらい、クレジットカードローンは20%近く利息を払う必要性がある一方で、ホームエクイティーローンは8%ぐらいで済む。
ホームエクイティーローンで引き出したお金はそのまま消費に使うケースもあるが、その資金で住宅リフォームを行ってさらに住宅価値を高めて住宅価格を上昇させるということもあり、十分こうしたローン借り入れの妥当性があったりする。

そして、これは足下では米国の経済を支える要因の一つになっていることは容易に想像できるわけであり、こういう要素をしっかり考慮していないと雇用が落ちているから米国景気はもう駄目だから株も終わりみたいな頓珍漢な結論にたどり着いてしまうのだと思う。

また副次的には中古住宅がなかなか売買成立しないということで、堅実な新築住宅需要が続きそうということも視野に入るので、米国住宅関連株は意外と顕著う推移するのではないかと思ったりもする。

【ホームデポの株価チャート】
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相場的には若干嫌なECB次期総裁の利上げ前向き発言

シュナーベル氏、ECB次期総裁に就く用意-「次が利上げ」違和感ない

ちょっと嫌な発言。

金利について、米国はまだ金融政策が基本的には利下げ方向動いているという状況であるが、一方で先進国の中ではいくつか金融政策の方向性についてこれまで利下げをしてきたが反転させる可能性について匂わせるような動きをしているところが生じ始めている。

その中で、特段影響が大きそうなのはやはりユーロ圏である。
上記BBG記事は次期ECB総裁と見られているシュナーベル氏が次にECBに動きがあるとすれば利上げだという発言をしているのである。
これは足下でユーロ圏はインフレ率2%で落ち着いている一方で、景況感が底堅く推移しているということもあり、この流れでいくと利下げはありえなく、次に動くとすれば利上げだという趣旨を発言したわけである。

次に動くとすれば利上げというのはなんとなく可能性として視野には入るが、いくらなんでも言及するのが早すぎるのではないかと思っている。
まだ米国景気は関税影響で個人消費が減退している中で、最後の利下げ着地点がどの辺かというのをきちんと見定められていない上に、ユーロ圏経済も財政支出の拡張レベル次第で全然景況感が変わりやすいだろうと思える状態の中で、もうサイクル的には経済上向きっぽいから利上げ含みの発言をするというのはちょっと何もかもが上手く行く前提で

まあこの発言もまだすぐに利上げをするというわけでもないし、状況変化すればECBも馬鹿ではないのですぐにてのひら返すだろうが、この発言はそれなりに債券市場に影響を与えていて、ドイツ10年国債利回りは高くなってしまっている。

【ドイツ10年国債金利のチャート】
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このようにいくつかの先進国は金融政策が実際に反転するかどうかはまだよくわからないが、反転しかねない状況になっていることを考慮すると、価格上昇が金利低下頼みの資産は勢いが退潮する可能性が高いように思う。
具体的にはそういった資産は仮想通貨と貴金属類だろうと思う。

また、変に利上げに前向きなような発言をしてしまったせいで、少なくとも欧州株はこれまで財政支出拡張による景気押し上げ期待を前提に上昇してきたわけであり、それが剥落しかねない発言でもあり、欧州株の上値は今後重たくなるだろうと思う。
日本株は日銀の利上げ姿勢がどちらかというとしぶしぶやっていて、引き続き緩和的な金融政策は続けそうという見通しがあるからこそ好調推移しているわけで、あまり拙速な利上げ前向き発言は金融政策の転換点とも捉えかねないので、少し個人的にはこの発言後の市場反応に注意していきたいと思う。
    
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財政制約からグローバルな防衛株に暗雲

More government bonds as deficit grows

財政制約がネックになってきている。

2022年のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、これまで国防費の削減を続けていた西側諸国も国防費積み増しで自国の安全保障を高めないといけないということで防衛株関連はこの1~2年非常に好調なパフォーマンスを出してきており、個人投資家の注目度も高いように思う。

しかしこの防衛株の動きが最近ちょっとよろしくない。
実際に防衛株のETFを見ると主要株価指数に対してここ1~2ヵ月ぐらいは明らかに劣後し始めている。

【欧州防衛株ETF(EUDF)のチャート】
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今回はこの理由についてまとめていきたいと思う。

理由として一つ目は世界的に超長期の政府債の需給動向が芳しくなく、防衛予算に充てるための資金集めが市場が防衛株に夢見るほど受注が活発になるほど十分でない可能性が高まりつつあることにある。
ご存じの通り、防衛というのは政府からの発注が全てであるので、お客さんの発注は財政次第的なところがある。
一般的に防衛費というのは短期的にどうこうという話ではなく、長い目線で国防をどうするんでしたっけという話になるので、一般的に防衛費に充てる財源は長期債や超長期債で賄うのが一般的である。

しかし、2022年以降、グローバルにインフレ率がデフレから脱却して高い水準にある中、デフレ時代に続けていたQE(中央銀行による国債買い入れ)がなくなり、超長期債需給動向が大きく環境変化した中で、超長期債が出しづらくなっている。
これは何も米国・日本・英国など国債需給動向絡みでニュースになっている国だけでなく、ブログ記事冒頭のニュース記事のようにスウェーデンでも国債発行計画が市場予想よりも多かったために超長期債の金利がばーんと跳ねたりしているわけで、これでは当初掲げていた国防費大幅増大に対する手当が少なくともさらに防衛株にテンション高く買いで突っ込めるほど超長期債出せないんちゃうかという懸念が生じ始めているように思う。
実際に一部米国防衛株では決算コメントで政府閉鎖で米国政府の支払いが遅れていることを理由に業績についてやや保守的に見積もらざるを得ない企業がでていた。

もう一つ防衛株の致命的な欠点として再生産性がないということである。
軍備品は使ったらそれでおしまいという製品であり、民生品のようにそれを使ってさらに何かを生産するという再生産性がないために、一般的に軍事費がGDPに占める割合があまりにも大きくなると、その国の実質的な経済成長性は落ちると言われている。
株も同様であり、防衛株というのは再生産性がないために緩やかな株価上昇というのが妥当なセクターであるが、下記記事の通りフラット化する世界からブロック化する世界の中で一気に変に注目を浴びてしまったわけである。

【過去参考記事】
フラット化する世界の終焉とブロック化する世界

そのためにこの再生産性のなさというリスクが市場参加者の間からすっぽり抜けてしまっているわけであるが、財政が出しづらくなっている中で再認識され始めているように思う。

こういった2つの要因で防衛株については徐々に旬が過ぎつつあるかなあと思っており、今防衛株を持っているなら売るべきなのかそれとも安値で仕込んでいるから持ち続けるという決断を下すのか、新規で買おうと思っているならあまりリスクリターンが合っていないので見送りかなあと思っている。
    
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単なる補助金ビジネスの中国ロボティクス産業に当局からブレーキが

中国ロボット関連株に過熱警報、政府がバブル懸念-投資家に慎重論

中国当局も認めるクズセクター。

時々中国通的な人が中国のロボットセクターというのが次世代産業として動画と一緒にネット上で発言を投稿するケースがここ2~3年多い状態となっている。
しかし、実態は単なる補助金をせしめるビジネス的な側面が強く、さらに当局もどうやらそれに気づいてきた側面があるので、これについてまとめていきたい。

そもそも、二足歩行で人間を模したロボットである必要性があるのだろうか?
まず二足歩行となるとバランスを取って姿勢を取るだけで多大なエネルギーが損耗するわけであるが、その度に電池を入れ替えたり充電したりするのにどれだけコストがかかるのだろうか?
転倒して壊れた時に修理費用はどれぐらいかかるのだろうか?
これらを諸々考えると、二足歩行である必要性は何か産業の自動化みたいなところを考えるとほとんど必要性がないわけである。
さらに腕も別に人間の関節を模写する必要性がなく、多関節でもいいし何本でもつけてしまえばいいわけである。

しかし、中国のロボットを見るとどれもこれも人間を模したロボットを短時間動かすというこれのどこにニーズがあるのか不明という状況の中で、単に中国当局にご立派な姿を見せて補助金をせしめるみたいなビジネスに成り下がっているわけであり、それがためにそんなに社数必要ないだろってレベルの会社が存在する事態になった。

しかし当ブログでは既に何回も記事にしているが、現在の中国政府の財政はまだ中央政府は余裕があっても、地方政府については極めて財政状況が厳しく、いつまでも黒字化目途が立たないような夢物語にだらだらと金を使うなという雰囲気が強まっているわけである。
ただ、この辺の補助金というのは一般的には中央政府ではなく地方政府が決めており、地方政府高級官僚は次世代産業育成頑張っていますみたいなところを中央政府に見せて出世したいという意欲もあるわけなので、無節操に補助金を出してモラルハザードを助長している。

そうした中でさすがにこの中国ロボットスタートアップブームの背景が当局にバレ始めたのか中央政府から案件精査しろというお達しが出ているわけで、この補助金ビジネスの先行きに暗雲が生じているわけで、これが足下の関連株の原因になっているわけである。

【中国Humanoid Robotics ETFのチャート】
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当局から警戒シグナルを出されたことと、未だこの分野はEVと違って全く売上が立つ目途がないことを考えると、まともな産業になる前に補助金が絶ち切れる事態に陥りそうなことは明白であり、この分野の株価下落はこの程度の下げでは済まないと思っており、基本的には下記過去記事に沿った非常に厳しい値動きになるだろうと思っている。

【過去参考記事】
ブームからバブル崩壊したセクター・個別銘柄が最低でもピークから75%株価が下落する理由

まあ特段日本の個人投資家でこの辺を触りにいっているような投資家は少ない、あるいはほとんどいなさそうなので被害は少ないと思うが、自分がもし間違ってポジションを持っているならば即投げだろうと思う。
    
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長期金利と配当利回りを直接比較することはミスリード

「令和の利回り革命」が問う成長 還元より投資へ、変わる評価軸

これはちょっと違うんだよなあ。

引き続き日本株の上昇が継続しているが、一方で日本国債の長期金利も上昇しており、これまでずっと配当利回り>債券利回りであったのが配当利回り<債券利回りとなっており、評価軸が変わりつつあるという言説が上記日経新聞記事で論じられている。
しかし、これについては考え方が間違っているんじゃないかなあと思っているので、それについてまとめていきたい。

この配当利回りと債券利回り(大体比較は10年債利回り)の比較というのは度々報道や投資コラム系では論じられるテーマであり、これは何も日本だけでなく米国株でも同様な議論はいつもなされている。
実際2023年に米国金利が高止まりして10年債金利が4%以上ある中で、S&P500の配当利回りは2%しかないことを根拠に株価のバリュエーションは正当化できなく、株価暴落すること間違いなしと煽る人は相当XやYoutube上で多かったが、ついぞ当たることはなくその後S&P500ははるか高い価格へ上昇していき、当時暴落煽りを信じた人は一番の買い場を逃してしまった。

ではなぜ配当利回り<債券利回りなのに株価は上昇を長期間継続しているのだろうか?
これは配当というものの性格をきちんと捉えていないことに起因しているように思う。

配当というのは企業収益の増加率に伴って増加するわけであり、加えて企業収益はベースラインでインフレ率分増加するのは当然だという考え方があるので、配当というのはインフレ連動債的な側面があるわけである。
一方で一般的な米国債というのはインフレに伴って元本増加みたいなものはないわけなので、全くお金の支払われ方が異なるわけである。

なので、真に配当と比べるべきなのはインフレ連動債の利回りと比較するのが妥当なのである。
実際に米国10年インフレ連動債の利回りを見ると下記の通りになる。

【米国10年インフレ連動債利回りのチャート】
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https://fred.stlouisfed.org/series/DFII10

では日本の場合はどうなのかを日本10年インフレ連動債利回りを確認してみたい。

【日本10年インフレ連動債利回り】
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https://www.mof.go.jp/jgbs/topics/bond/10year_inflation-indexed/bei.pdf

これを見てもらえればわかるが、日本10年インフレ連動債利回りは0.13%と非常に低い。
つまりインフレ連動で増加する配当2%というのは依然として投資妙味があるわけである。

さらに言えば、株においては配当だけでなく自己株買いによる株主還元が見えていない利回りとして存在する。
日本株の場合はこの自己株買いが利回り換算ベースで1.5%ぐらいあったような記憶があるので、そうなると配当2%+自己株買い1.5%でトータル3.5%の還元利回りが存在するのである。
そしてこれらが一般的にはインフレ連動で元本が増えるのである。

そう考えれば、投資家は債券動向を無視して株を買っているわけではなく、きちんとインフレ連動債と比べた時に有利なのかどうなのかを確認して株を買っているわけで、あやふやな将来成長に全ベットしているわけではないので、まだこうした間違った言説でこじつけで株をこの位置で買うのは高すぎて難しいと正当化しようとしている間はまだまだ株を買えるし、持っているポジションも引っ張れるだろうと思っている。
    
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