村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

一筋縄ではいかない米国インフレ率

米消費者物価、1月3.0%上昇 4カ月連続で加速

インフレの世界は続く。

注目の米国インフレ率統計の発表があったので、結果と市場内容をまとめていきたい。
個人的にはインフレーションナウキャスティングの数値見てたらそんなに荒れないでしょと思っていたが、なかなかそう簡単にはいかない感じであった。

【インフレーションナウキャスティングのデータ】
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https://www.clevelandfed.org/indicators-and-data/inflation-nowcasting

結果として、総合CPIは市場予想前年比+2.9%に対して、結果は+3.0%と若干上ぶれする形となった。
百歩譲ってこちらの総合CPIの上振れだけであればよかったのだが、どちらかというと問題はコアCPIの方にあったと言ってよい。
コアCPIは市場予想前年比+3.1%に対して、結果は+3.3%と比較的大きめに上振れした。
特に注目される家賃動向も引き続き粘り強い上昇を見せており、容易にFRBは利下げできんですわなあということで、年内利下げ織り込み回数も1回にまで現状減っている状態となっている。
直近雇用統計も概ね堅調という動きを見せている中で、下記過去記事に書いた通りデフレからインフレれ世界がレジームチェンジしたばかりでは容易に思うようにインフレ率は下がらんですねというのがあらためて示される内容となった。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?  

ただし、その当日にパウエル議長は「良い数値や悪い数値が1・2回出たところで一喜一憂しない」とあらためて示唆しており、統計は常にでこぼこして出るんだから勝手に金利上昇でオーバーシュートさせんなと釘をさした。
そういった意味で、今回の米国CPIはネガティブであったものの、何か根本的にFRBの金融政策が変わるものではないし、今後も統計次第で市場の姿勢はすぐ変わるということは頭に入れておくべきだろう。

市場の反応としては金利は当然だが上昇で反応して、大体8~10bpsぐらいの上昇となった。
この反応はさすがにもうしょうがないので、TMFとか触っている人がダメージを受けるのはしょうがないだろう。

しかし、それ以外の反応は意外と冷静であった。
まず為替の方はドル円だけ見ると円安・ドル高なので、ドル上昇しているように見えるが、ドルインデックスは大して上昇しておらず、前日比ほぼプラマイゼロで着地している。
ゴールドとビットコインも統計発表直後はかなりマイナスで動いていたが、米国市場の終わりごろにはほぼマイナスを取り換える展開となっていた。
さらに株も見ていくと、ナスダックは寄りに1%近くマイナスでスタートしていたが、結局引けたらプラス転換で引ける劇的な動きとなった。
しかし、プラス転換したのはナスダックだけで、金利上昇がネガティブに見られているセクターが複数あるのかS&P500は若干マイナスになっている他、特にネガティブの影響が強く出そうな中小型株で構成されているラッセル2000は結局1%近くマイナスのまま引けてしまっており、以前に当ブログで記載した通り大型株>小型株という構図が継続しており、インデックス勢は比較的無傷だが、個別選別するアクティブファンドマネージャーにとっては苦しい相場になった。

というわけで、金利は一旦上昇で反応したが、それ以外は比較的冷静であり、あと以前から金利上昇したらお前苦しいだろという銘柄を避けていけば概ね投資的には問題ないだろうと思われる反応であった。

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米国株は大企業が大規模リストラを実施するのを待っているのかも

【米国のlayoffとワード検索しているグーグルトレンドの推移】
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ここもとの相場は非常になんとも言えない状態が続いている。

最近の相場は非常になんとも言えない状態が続いている。
その理由は株と金利がお互いを参照し合っていて、身動きが取れなくなっているように思うからである。
株価が上がれば、それは景気が堅調な証拠として金利が上がるが、今度は金利が上がると景気抑制理由になるので株価が下がるということで、お互いが相手の値動きを参照しているがために、非常に自主性がない状態となっている。

そうなると、相場が動くには何かしら新しいニュースが入ってくる必要性があるだろう。
特に足下で最もネックになっているのは金利の動向であり、金利を押し下げるニュースが必要だ。
足下で金利動向の材料となっているのは、もはやインフレではなく雇用の勢いであることは何回か過去記事で書いてきたわけで、その辺の説明は今回は割愛したい。
金利を押し下げるには、やはり大規模リストラのニュースが必要だろうと思う。。
そう考えた時に、過去の記事を読み返していると、2023年1月のアルファベットの大規模リストラの件を思い出す。

【過去参考記事】

IT雇用最後の牙城であったアルファベットが大規模リストラを発表

2023年頭はFRBが苛烈な金融引き締めを続ける中で、業績も逆風となり、もはやリストラしなければ2023年のオーガニックグロース的なEPSを示すことができないとして、メガテック各社がリストラしていた時期であり、これが株価底打ちの起爆剤料となった。
実際にアルファベットの株価が底打ちしたのは、まさにこのリストラ策を発表した時である。

【アルファベットの株価チャート】
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リストラを行う時というのは大体発表した業績目標が市場から物足りないと認識され、売上アップサイド狙えないなら、まずリストラしてコスト削減して株主に還元できるお金を増やせよと市場から圧力を受けるのが米国の常である。
これに従わなかった場合、米国大企業のCEOは自分がクビになるので、必死になってリストラをするわけで、これが米国企業のダイナミックさを維持している。
(雇用される立場から見ると非常に不安定ともいえるが)

なので、なかなか大企業が大規模リストラに踏み切ってくれないので金利が下がらず、逆にそれが企業業績のアップサイドを縛っている要因だと市場参加者は考え始めているように思う。
そう考えると展開的に2022年と同じになるんですか!?と早合点する人もいるかもしれないが、今回は金融引き締めをズンズン進めているわけではなく様子見姿勢であり、そもそも上述したようにずっと微妙な感じのリストラがじりじり進んでいるように思われるグーグルトレンドの状況であることを考えると、エポックメイキング的なリストラニュースさえあれば金利低下・米国株は最高値を更新する可能性が高まっていくと思う。
経済環境的には最悪なように思えるが、下記過去記事の通り、まさにこういう時が株価底打ちのタイミングなのである。

【過去参考記事】
なぜ株価は傍から見れば最悪な経済状況・タイミングで底打ちするのか

というわけで、相場は個人的な非常に曖昧な考え方であるものの、追加的リストラニュース待ちといった相場ステータスなのではないかという考え方を持ち始めている。

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日本の中古住宅不動産市場動向(2025年1月)

http://www.reins.or.jp/library/2025.html

↑中古住宅不動産市場統計を出しているレインズデータライブラリーのHP

何が起こっているのか推察するのが結構難しい感じ。

毎月レインズデータライブラリーで発行されている首都圏の中古住宅不動産市場動向の2025年1月データを今回は確認していきたいと思う。

概況だけみると、なんだいつもの感じかと思う内容であり、成約件数が意外と伸びている以外は、単価は一桁半ばちょい%の伸び率となっていて、日銀が利上げして住宅ローン金利上がっている割に強いじゃないのと思ったりする。

【中古マンション市場の概況】
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しかし、地域別の成約価格の動向を見ると、景色は大きく変わってしまう。

【地域別の成約単価動向】
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東京区部以外全員死んでて、首都圏全体で見た統計と全然印象が変わるのである。
しかもこの東京区部もきちんと区部の細かい内訳見ると、都心3区が前年比+30%とアホ馬鹿みたいな数値を叩き出してて、他はせいぜい前年比5~10%の上昇率になっていることから、もうこれまじで山手線内駅近タワマンをいくらでもいいから買うみたいな意味わからないムーブになってるなという感想しか出なかった。
そして東京区部以外は価格が停滞していたり、マイナスになったりと、これは明らかに日銀の利上げの影響が出ていて、売り手と買い手の望む価格がマッチングしていないように思われる。

ただ、成約件数も見ると、山手線内駅近タワマンをすっ高値で買ってるという言説はいくらなんでも乱暴な評論のように思える。

【地域別成約件数の推移】
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成約件数は意外にもどの地域も伸びているのである。
これが意味することは都心3区はアホ馬鹿価格でも買っている人間がいる・それ以外の東京区部はぼちぼちの価格では買う・東京区部以外では値引いてくれれば買うという構図が確立しているように思う。
東京区部以外は成約価格が停滞・下がりながら成約件数が伸びているので、実需自体の需要意欲はあるが、住宅ローン金利の上昇もあるので値引いてくれれば買いますというお客が多い一方で、手元在庫が重たくて早く捌きたい業者の間でつばぜり合いをした結果的な感じがうかがえる。

ただ、一方で在庫動向を見るとまたしても景色は異なる。

【在庫水準】
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全体だけ見ると横ばいやんけとなるが、在庫水準でいうと都心3区は徐々に在庫が増え始めている一方で、それ以外の東京区部は在庫水準の低下が続いていて、東京区部以外では在庫がなかなか減らないというでこぼこな状態となっている。
都心3区はさすがに成約価格がアホ丸出しなので、馬鹿に売りつけたれという流れが発生しているのか、ここにきてとにかく売りたいという在庫がばーっと増えているように思う。
一方でそれ以外の東京区部は成約価格の上がり方がマイルドだし、実需層がメインなので慌てて売り出している人も少ないことがわかる。
一方で東京区部以外は、上述したようにリノベ業者などが早く捌かないとやばそうという考えから動いているが、同じようにみんな動いていて在庫が重たいという状況が続いている。

というわけで、今回の日本の中古マンション統計はカオス極まる内容であった。
投機筋が都心3区を馬鹿みたいな価格で買っている一方で、それに売り玉ぶつけたれと業者が動いている一方で、それ以外の東京区部は買った実需が物件を放出しないし、業者も慌てて売っているわけでもなく需給環境がしっかりしているので、春闘で実需層の給与が伸びるのを待っており、それ以外では業者の在庫負担がクソ重くなっていて値引いて販売するのを優先しているという、地域によって大きく様相が異なるといった事態になっていることがわかった。
 
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トランプ大統領は無差別狂犬ではなさそうなことを示した日米首脳会談

【詳しく】日米首脳会談 共同声明を発表

少なくとも敵対国でなければ、きちんと対応すればそれなりにディールできる相手ということかも。

就任直後から関税でわーわーと多くの国とバチバチやり合っているトランプ政権であるが、日米首脳会談が開催される中で何かやばい要求を日本に突き付けてくるのではないかという懸念があった。
しかし、蓋を開けてみるとほぼ穏当な要求しか出てこず、どちらかというと日本としても歓迎すべき協力内容もきちんと盛り込まれており、関税でぐちゃぐちゃに影響されている国から見ればなんであんなんで許されるんだよという内容で、日本にとってはほっと一息な内容となった。

これは色々トランプ政権との付き合い方やトランプ政権の性格が色濃く出た内容だと言えそうだ。
よくよく考えれば、これまで関税について脅迫を受けている国は何かしら米国との外交について真面目に取り組んでいなかった節がある。
メキシコ・カナダは不法移民+フェンタニルなどの薬物を米国に輸出する拠点として、当該国のチェックがザル状態で米国にその対応のコスト負担をさせていたし、EUはそもそもロシアがウクライナ侵攻しそうという米国の忠告も無視してロシアとの関係性を深める自爆などをしていて、米国を侮る姿勢が垣間見えていた。
一方で、日本は対中国・北朝鮮という大きな敵国がいる中で、米国と連携した安全保障体制は必須なので、それなりに米国の要求に対して真面目な交渉と対応をしてきたし、薬物も不法移民も輸出していない。
以上を考えると、わざわざ日本と喧嘩するよりもお互いがwin-winな関係になるようなところに落としどころをつけようとするのはビジネスマン的な観点からいうと妥当だったんじゃないかという話になる。

つまり、 トランプ大統領自体はアメリカファーストと過激な発言をぶちあげているものの、ビジネスにおいてもそうだが相手を一方的に理不尽にぶっ叩くことは得策ではないと考えておるい、きちんと協力する味方については優しくすることを見せて、他国にもお前ら真面目に米国から要求しているものが理不尽なものなのか真摯に対応すべきものなのか考えろよというシグナルを送っているわけで、同盟国についてはそれなりに色々勘案してくれていることがわかる。

ただし、この論理はあくまで味方であればという条件が付く。
関税については、カナダとメキシコについては、フェンタニル対策や不法移民対策の強化を理由に交渉期間を設けるとして1ヵ月の延期をされたが、中国については普通に10%の関税をぶつけている。
(中国への関税も25%ではなく10%というところに、かなり自国経済に配慮している感がある)
ロシアに対しても、当初はウクライナ戦争について就任して24時間以内に停止させるとぶちあげていたことからロシア側は自分に有利になるように停戦交渉ができるのではないかと期待していたが、現実は徐々にロシア経済が物資不足で徐々に弱まっている中で弱っている敵対国に対して譲歩する必要性はないとして、ウクライナとレアアース提供をディールとしてウクライナへの支援を強化するような動きを見せており、言っていることとやっていることについては相当な差がある。
ようは言っていることはかなり過激でやばそうな雰囲気を醸し出しているが、実際やっていることはかなり理性的であると言えそうだ。

なぜ言っていることは過激でやっていることは理性的かと言えば、あまりにも理不尽なことをやりまくれば経済に悪影響を与えることは確実であり、トランプ自体はやはり経済については悪影響を与えたくないという考え方が色濃く出ているわけで、トランプ政権が自らの行動で相場を致命的に壊すような動きを警戒するのはちょっと違うんじゃないかなあと思う次第である。

【S&P500のチャート】
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マイクロストラテジーのビットコイン購入停止で停滞する仮想通貨市場

マイクロストラテジー、12週続いたビットコイン購入を停止 その理由は

クジラになってません?

ここもと仮想通貨の動きは一進一退の動きが継続している。
Xでは興奮して上値追い煽りが多いものの、実際は年末からビットコインはほとんど動いておらず、逆に下落している仮想通貨も徐々に多くなりつつある。

【ビットコインのチャート】
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その理由はやはり上記のマイクロストラテジーがビットコイン購入を停止したというニュースだろう。
以前の記事にも書いたが、マイクロストラテジーとビットコインは花見酒的な関係であり、マイクロストラテジーがビットコインを購入するからビットコインが値上がり、ビットコインが値上がるからマイクロストラテジーの株が上昇するという関係であった。
そしてマイクロストラテジーは上昇した株価を利用して転換社債を発行して、ビットコインを買うための資金を調達するという、傍から見るとポンジスキームっぽい動きであったわけである。

【過去参考記事】

マイクロストラテジーとビットコインの花見酒的な関係


ただマイクロストラテジーが調達できる資金というのは決して無限ではない。
転換社債について欧州大手金融機関が運用するファンドか何かに引き受けてもらった形跡はあるのだが、彼らもリスク分散の観点でマイクロストラテジーの転換社債を無限に買うことは無理なわけで、

それにマイクロストラテジーの転換社債計画を知った人が真っ先にビットコインを買ったということもあり、12週連続で購入した中で、実際に上昇寄与したのは最初の4週ぐらいで、その後8週は単に先回り買いしたやつらが大量出現した後に馬鹿高値で購入してしまったと評価できそうである。
そしてこの高騰を利用して、悪い大人たちが如何に馬鹿から資金を引き抜くかという画策が跋扈し始めたというのも下記過去記事で書いてきた。

【過去参考記事】

仮想通貨市場に資金をぶっこ抜こうとする悪い大人が続々出現


こうした情報を全て併せた答えは、とりあえず上値は非常に追いにくいよねという結論だろうと思う。
少なくとも、もう誰がこのビットコイン価格の押し上げをしたかがわかっている状態で、さらに現在の高値推移で資金を引き抜こうとする悪い大人が続出しているところで、わざわざカモとしてのこのこ市場に撃って出る必要性を感じることができない。

できれば、一度「これはあかん!」といってポジションぶん投げてくれるプレイヤーが出るエビデンスが見えないと非常に参戦しづらい市場になっているように思う。
 
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