村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

ココア価格の再暴騰で被害を受ける製菓メーカー

Uncertainty Over Global Cocoa Supplies Pushes Prices Higher

別にお菓子食べなくても死なないから、これ以上値上げされるなら買い控えされる可能性もありそう。

ここもと農作物系コモディティは全般として中国の景気鈍化で非常に低迷していて、3大農作物コモディティである小麦・とうもろこし・大豆はぐだぐだな状態である。
しかし農作物系コモディティをつぶさに見るとところどころは暴騰していたりして、その中でも強烈なのは上記ニュースにある通りココア価格である。

【ココア先物のチャート】
タイトルなし

ココア価格については今年3月も暴騰で非常に話題になったが、その後も中々価格が下がらない中で再度高騰する兆しを見せている。
価格高騰要因は主要生産国であるガーナ・コートジボワール・ブラジルの天候不良(干ばつ)が続いていて、これが未だに続いているようである。

このココア価格上昇は直接的にチョコレートの製造コストに跳ねる。
メーカーはこのコストは消費者に転嫁するしかなく、ここにきて日本のメーカーも再値上げせざるを得ない状態になっており、下記日経新聞ニュースの通り値上げ予定となっている。

【参考ニュース】
グリコ・森永値上げ 「ポッキー」「チョコボール」

しかし、今年話題になったばかりなのに再値上げに踏み切るのはなかなかハードルが高く、本当に利益水準を維持できるのかの不安さが漂う。
実際に米国菓子大手のモンデリーズは一番ココア消費量が多いメーカーとして有名なわけで、株価がダイレクトアタックを受けている状態である。

【モンデリーズの株価】
タイトルなし

ドル高になりながらこれだけココア価格の上昇に対してネガティブな反応になってしまっていることを考えると日本の上場している菓子メーカーも厳しいことが想定される。
ざっと挙げれば、明治HD・森永製菓・森永乳業・江崎グリコなどが挙げられるだろう。
一般的にはこれらは景気が悪化した時にディフェンシブ銘柄として人気化しやすい銘柄であり、日本の景気が悪化するならこういうディフェンシブ銘柄の株価が上がると思いきや、実際はこういう原材料価格上昇が来るとなんとか値上げして耐えるしかないと意外と耐久力が低く、少なくとも株価は明らかに他のディフェンシブ系より劣後したりする。

今年のココア収穫が非常に厳しいことを考えれば、来年になるまでは原材料価格の高止まりを覚悟する必要性があり、これがチョコをメインで取り扱う菓子メーカーの業績を当面圧迫し続けることが想定される。
そう考えればこういったところの株はとりあえず来年後半までは投資検討から除外しておくのが賢明だろうと思う。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

韓国の戒厳令で韓国株は底抜けな雰囲気

【解説】韓国 非常戒厳なぜ? 日本への影響は 今後は

新興国株の巨星堕つ。

12/3の深夜にいきなり韓国で非常戒厳令が出て大混乱となったことについて、個人的に韓国株はもう当面触れない存在になってしまったなと思ったので、それについてまとめていきたい。

非常戒厳令の内容はともかくとして、ここまで強権的に行動を起こさざるを得なかったということは韓国政府の政策の行き詰まりを象徴するものだと感じている。
経済が順調に言っていればこのような過激な博打的政治行動に移す必要性はなく、経済発展が半導体一本足打法に偏り、不動産が停滞して次のネタが見つからず、韓国にとってマイナスな地政学リスクの上昇だけが生じていて、国内のうっ憤が溜まりつつある中、大統領への支持率はひたすら低下するばかりで、どうにもこうにもということなのだろうと思う。
経済の行き詰まりは政治の行き詰まりにつながりやすいが、新興国は積み重ねが少なく国民文化の成熟度合いが不足しているがために、この連鎖によってスパイラル的に投資家心理が悪化しやすい。

これに対する投資家の反応は非常に冷淡なものとなった。
韓国株の代表的指数であるKOSPIはただでさえ低迷している中で、もうこりゃ上がらんわというように昨日もマイナスな値動きとなった。

【KOSPIのチャート】 
タイトルなし

現地通貨(ウォン)ベースで見るとまだ底抜けてないように見えるがドルベースで見ると普通に2023年の水準にまで沈み込んでおり、既に下落傾向にあった株価はさらに先行き厳しい見込みとなりつつある。
韓国自体が地政学的に非常に微妙な位置にいるがために韓国向け投資というのを外国人投資家か尻込みしやすい中で、さらに政治が揺れに揺れてしまっているがためにどう考えても韓国向け直接投資なんてのは検討されないという状態になることは火を見るより明らかである。
さらに仮にロシア・中国・北朝鮮寄りの姿勢になった場合は米国政府は韓国政府に対して冷淡な態度を取る可能性が非常にあるわけで、ブロック化する経済の中で仲間外れになる可能性が高い。
ちなみにブロック化する経済については下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
フラット化する世界の終焉とブロック化する世界

そして韓国株が弱くなることは新興国株インデックス投資にとって非常に都合が悪い。
新興国株の代表的指数であるMSCIエマージング株指数の構成国のうち韓国は15%近くを占めているわけで、これがどうにもこうにもならないことが決定しているわけで、新興国株指数自体の足を大きく引っ張るわけである。
そうなるとリーマンショック以降ひたすら先進国株指数に劣後してきた新興国株指数は引き続き劣後し続けることが決定しているわけで、

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

日銀の利上げはあってあと2回と予想

アングル:日銀、追加利上げへ地ならしか 身構える市場

3回目は現状では難しそうだ。

日銀の利上げが12月あるかないかというのが市場の注目点になっているが、個人的には12月というより、とりあえず日銀の利上げの現状見えている終着点の方が気になっているので、

ここまでの日銀の利上げについては、一応説明上は想定通りに日銀の金融緩和効果が経済に効いているということで、調整的に利上げをしているという説明を植田日銀は行っているが、実際のところは為替見ながら行われていますよねというのが多くの人が思うところであり、為替が一つの金融引き締めのキーファクターになっている。
しかし、足下の円相場を見ると徐々に為替プレッシャーは少しずつ落ち始めている。
理由はここにきて急速に欧州の景気・政治状況が不安定化しており、ECBの利下げ織り込み回数が急速に増え始めており、だったらJPY売るよりEUR売った方が手っ取り早く金が稼げるということで皆が目移し始めている。
また、米国の利下げが中々進まない中で、日本の方は景気的に耐えている一方で新興国がグダリ始めていて、特に人民元が急速に売られ始めていて、新興国通貨売りというのも為替プレイヤーから狙われている。
そういった意味で、口先でも実際に実弾を投入する形でも利上げカードを持っている日銀は為替プレイヤーから見ると段々と他と比べるとアタックをかけるメリットが薄らいできており、そういった意味で実は徐々に日銀への利上げ圧力は前よりは低くなっていると思っている。

ただ、インフレ率が引き続き2%を超えており、為替もまだ150円前後の数値となっているため、利上げができる余地があるうちになるべく日本経済に大きな悪影響を与えないレベル程度は利上げしておきたいというのが日銀の本音だろうと思う。

【ドル円のチャート】
タイトルなし


既にOIS市場では来年3月までの間までに1回の利上げを織り込んでいて、25bpsの利上げは確実に行われると見込まれている。
またOIS市場では2025年中にもう一回程度の利上げまではありそうと織り込まれている。
しかし、その先は非常に不明瞭である。
2~5年債の金利が0.6~0.75%で収まっていることからも2回利上げした後に3回目の1%という政策金利は今のところ時期尚早ということを市場は織り込んでいる。
さらに言えば日銀の利上げは既に経済にじりじり影響を与えており、特に住宅不動産価格に影響を与え始めている。
これは別の日に記事にしようと思うけど、東京23区のタワマンならともかく、東京以外の住宅価格は既にグロス価格の高さと住宅ローン金利の上昇によって実需層が追いかけられなくなってきていてさらにここから複数回利上げされればさらなる直接的な冷え込みが生じる可能性が十分にある。

こういった諸々を考えたところ、あと2回の利上げまではありそうだが、その先はそう簡単ではないでしょという考え方で良いのではないかと思う。
細かいところまで見る必要性のある債券村だとこの2回についてどういうパスなのか真剣に考える必要があるが、それでも実質金利は大幅にプラスになるわけではないので株のところはこの2回という数値をざっくりだけ考えておけばよいと思う。
 
日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

逆イールド解消で暴落という話はなんだったのか?

【コラム】逆イールドの急速な縮小、米経済に危険な兆し-オーサーズ

金融市場を型に嵌めて考えても、まず当たらない。

この2年半ぐらいの苛烈な先進国の金融引き締め環境下において、多くの暴落論者が煽ってきたこととして逆イールドはいつか株価の暴落を引き起こすというものであった。
あるいは逆イールド中は株価は暴落しないが、逆イールドが解消すれば、それは景気後退を意味するので逆イールドが解消され次第株価は暴落するという煽りが決まり文句であった。

しかし、現実はどうだろうか?
下記米国10年債利回り-2年債利回りのイールド差を見てもらいたい。

【米国債イールドカーブの推移】
タイトルなし


https://nikkei225fut.jp/historical/bond/us/gyaku_yield

上記を見てもらえればわかるが、今年の8月~9月に逆イールドは解消されているのである。
しかし、現実は米国の株価は最高値の更新を続けており、いつの間にか逆イールド解消で相場暴落と煽ってきた人達はひっそりと消息が不明になっていたり、イールドカーブについては言及しなくなり別の暴落煽りをしたりと、あの意見はなんだったのか・そういった言説を信じた人は資産がインフレ負けして機会損失を受けている状態である。

結局〇〇が起きたら株価大暴落!と言っている人は過去に起きた事象をあまりにも単純にあてはめて今回も同じことが起こるという暴論を言っているにすぎないのである。
経済というのは一定程度は物理法則で動いている部分もあるが、人の心理が動かす要素も非常に大きい。
そして人の心理というのは決して法則に従うものではないのである。
もし人の心理が法則に従うものであるとすれば、ここまで人類経済が発展してくることはなかっただろう。
なので、様々な前提条件が変わっているがために暴落を引き起こすトリガーが変化しているのに、ただ単に過去に暴落を引き起こした時は〇〇が発生したから、今回も同じだという暴論を振りかざして多くの人を惑わしたりするのである。

まあこのように暴落煽りの人は相場を非常に舐めている・最初から当てるかどうかなんか考えてなくて扇動して商材売れればOKぐらいの考え方をしている人は、過去の事象から法則性があると言い張り、杓子定規にあてはめてそれっぽいことを語るが、テクニカル分析ばかり解説する人と一緒で人間というものを軽んじて考えた理論ばかりなので、聞くと一見してあっていそうな暴落予測はそんな発想もあるけど、なったらなったで上手く立ち回ればいいやぐらいの気持ちで相場に取り組みばよいのではないかと思う。

日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

EV関連銘柄はとりあえずポンチ絵だけで資金調達した企業は全滅

欧州電池ノースボルト、米で破産法申請 資金繰り悪化で

ポンチ絵企業は全滅したので、次は実際に操業している人達の番。

上記ニュースは欧州でEV車載電池の欧州代表企業になろうと様々な投資家が投資して設立された欧州肝入り企業であるノースボルトが電池生産に至らないまま資金繰りをつなぐことができなくなりデフォルトしたという話である。

結構このノースボルトのデフォルトについては、ノースボルト自体が欧州肝入りプロジェクトでもあったことからEV関連市場の話ではわりと衝撃的な話である。
このノースボルト設立にあたって投資してきた人達はそうそうたる面子で、GSやベイリーギフォードなどの有名金融機関も含まれていた。
しかし、ノースボルト自体はそもそもメーカーが要求する車載電池製造ラインを立ち上げることができず、BMWから契約を打ち切られる形でどうにもならなくなり、どこからもリファイナンス資金を調達できなくなり、あえなく沈没なったのである。

つまりノースボルトがデフォルトしたことはEV関連企業で青写真だけのポンチ絵で資金調達をしていたずさん企業が全員爆死したというだけで、これは実際のEV市場の底打ちには寄与しないと思われる。
現在のEV業界の逆風は供給の伸びが加速している中で、需要は補助金の打ち切りなどがひびいて世界的に鈍化、鈍化というより中国以外は微減しているというのが実情である。
なのでビジネスとしては供給過多であり、プレイヤー全員が右肩上がり成長を前提としている考え方を根本から見直す必要性があり、その見直し過程で大規模に関係している企業がデフォルトしていくことが相場底打ちに必要な局面になっているように思う。
この辺の考え方は下記過去記事を読んでもらいたい。

【過去参考記事】
なぜ株価は傍から見れば最悪な経済状況・タイミングで底打ちするのか

そう考えるとノースボルトのデフォルトだけでは生贄としては足りないはずで、やはり本命である中国メーカーの中でド派手にデフォルトする企業が出てこないとEV銘柄の株価メルトダウンは止まらないのではないかと思う。
個人的にはLi autoとかXpengらへんのデフォルトぐらいまでは必要だと思っており、そこまで逝けば大分需要と供給バランスも改善されるのではないかと思う。
実際に現在の中国EV市場は全面的な補助金で支えられており、現在不動産バブル崩壊による地方政府債務の持続不可能性を考えるとさらにやむなく補助金を打ち切られる可能性もあり、そうなると無い袖は振れないということで最後の最後はメルトダウン的な悪化をしていき、そこがまあ百歩譲って考えて投資できるタイミングかと思うので、引き続きEV関連銘柄については近寄るべからずという考え方が個人的な見立てである。

【EV&バッテリー関連ETFのチャート】
タイトルなし


日々金融市場で思ったことや金融データをつぶやいている村越誠のツイッターはこちらのリンクをクリック

記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください)
ツイッターで更新情報配信