村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

クレディスイスの経営不安は今のところは自業自得な固有の問題

クレディSの債務保証コスト過去最高、株価も安値更新-市場動揺

日頃の素行の悪さがここにきて経営の足かせになってしまった。

市場ではクレディスイスの株価暴落・CDSコストが爆騰していて、もしかしてクレディスイスいきなり倒れるんじゃないかといわれるような不安心理が生じている。
ただ、今回の話は限りなくクレディスイス単独の問題ということと、まだ実際に倒れるかどうかというよりも集団心理的なヒステリックに近いというのが個人的な見立てである。
ただ、今後のクレディスイスの対応や当局が対応を間違えたりするともう一押しクレディスイスの状況が悪化する可能性があるかもということで、なぜこのような事象が発生したのか・今後どうなるかを書いていきたい。

外資系金融として有名なクレディスイスであるが、昔からその素行の悪さとリスクガン無視の経営姿勢については問題視され続けていた。
リーマンショック前ではよくマネーロンダリングに関係している金融機関として悪名を轟かせており、マネロン規制が強化されている昨今、過去の飯のタネがつぶされていった。

【参考書籍】

マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで

マネロンで稼げなくなっていったクレディスイスはウェルスマネジメントとトレーディング主体で稼ぐといった姿勢を続けていたが、ここで問題になっているのがトレーディング事業にある。

クレディスイスのトレーディング部門は非常に顧客審査および与信枠の提供審査がザルであることは昔から言われてきたが、いよいよ年貢の納め時という状況になっている。
2020年に入ってからはARKバブルを崩壊させた犯人として有名なアルケゴスキャピタルに多額の信用トレード枠を使わせたために多額の損失を出したし、その後流動性の低い資産に投資しまくって爆死したグリーンシルといったところでも損失を出した。
ようは超ハイリスクを取るような客が馬鹿みたいな巨額損失を出すと、真っ先にクレディスイスの名が出てくるぐらい当たり前の状況になっていて、顧客審査というのがまともに機能していないと市場では認識されるようになった。

こうしたハイリスクを取って爆死する客ばかりを掴みまくってしまったことや過去からの不正の連発によって金融当局からはコンプラ体制の見直しが急務と釘を刺された。
これによって、クレディスイスは事業を拡大することができない+コンプラ強化コストによって全く収益を生み出せない金融機関と成り下がった。
そして副次的であるものの、ESG投資というのがどのファンドでも多かれ少なかれ評価させるようになった中で、ESG的にクレディスイスへ投資し続けるのは問題があるのではないかという話になる。
ただ、市場がやや弱く推移する中でいきなり社債の売りを大きくぶつけるとやばそうと投資家が思ったのか、まずはCDSでヘッジしてからどうするか考えようとしたら、みんな一斉に同じ方向に走ってしまったために唐突にクレディスイスのCDSが急騰してしまったというのが今回の事情である。

一応は金融当局認定のCET1比率が13%あるので、本当の経営危機と認識される9%半ばまで距離はまだあるものの、前述したように儲かる事業がない+コンプラコストやリストラコストがしばらくかかるということで当面厳しい利益状況が続くことは確かであるが、他の金融機関にはほとんど関係のないクレディスイス単独の問題というのが今のところの状況である。
ただ事業会社と違い金融機関の動揺というのは行き着く所までいくとリーマンショックのように広範な影響を与えてしまう。
なので、金融当局とクレディスイスは今後信用を回復するために、どれだけのリストラをして収益の悪化を止めなければいけないか・発表しようとしているリストラ策は十分なのかを裏で現在行っていることは確かだろう。

状況としては2016年のドイツ銀行と非常に似ていて、先行きもう一発でかいやらかしをするとシニア社債はともかくとしてAT1債とかの資本性社債は元本償還本当にできるのか(あるいはコール見送り) という不安に駆られて動く、そしてその噂自体が市場での資金調達を阻害するというにわとりが先なのか卵が先なのかという事象に追い込まれており、金融当局とクレディスイスイはどう市場の動揺を落ち着かせるかを現在策定中という段階だと思う。
金融当局が絶対に市場に動揺を走らせたくないという姿勢が見られれば、クレディスイス単独の問題で落ち着くものと思われる。

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9月が世界的に株のパフォーマンスが悪い理由

【参考書籍】

アノマリー投資

今回はアノマリー的な話。

投資において季節性というのについてよく検証データを挙げている人がいるが、その中で総じてデータとして出てくることは「9月の株価パフォーマンスは悪い」というデータである。
これはググれば大体日本語でもどこでも検証した人や投資サイトが出てきて、実際にデータとして計算されたものとして出てくる(特に米国株で顕著)話なので、疑いようがない事実である。
その中で疑問として、なぜ9月がそれほどまでに株価パフォーマンスが悪いのだろうかという話になる。

その理由は大きく考えれば、株に資金が流入しない(or流出する)要因が何かあるはずだという結論に辿り着く。
ではなぜ9月においては株に資金が流入しない(or流出する)のだろうか?
ここまで考えると誰が株から資金を抜いているのかというところにも辿り着く。
その答えとしては9月というのは一般的に言うと、年内で一番まとまって企業が資金調達する月なのである。
特に米国では一番企業が社債を発行する時期でもある。
理由としては米国にとっては新学期という季節であることに加えて、レイバーデーが明けてサマーバケーション明けで、さて年末までの資金繰り手当てをつけようとする季節になるからである。
特に昔からある大企業は既に大昔に9月に社債を大量発行して資金繰りをつける癖がついてしまうと、慣例的にとか以前に発行した社債の借り換えとしてどうしても9月に社債発行に踏み切らざるを得ない形になるため、なんとなく容易に想像しやすいと思う。
グローバルにも新学期は9月のところが多く、まだ想像すれば新学期というのは何かとモノ入りであることも実生活を考えればなんとなくわかる話だろう。

そういった意味ではリーマンショックが9月に起こったことも、考えてみれば多数の金融機関は9月に米ドル建て社債での資金調達を行うわけであって、この辺で資金繰りが苦しい人達は資金調達ができなくなって倒れてしまうという話であることを考えると、なぜリーマンショックが9月に起こったのかが理解できる話だと思う。

以上から9月というのは相場の季節にとっては、色々な書籍に書かれているヘッジファンドの決算期に合わせた売りというだけでなく、年末に向けた利益確定売りや損切り売りという点と、企業が一斉に資金調達に動くために市場から資金を吸収してしまうという実務的な資金の動きがあり、これは相場にとって売り材料が多い月である鬼門的な月であり、今年はもろにこれが出てしまったという側面はあったなあと思う次第である。 

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証券リテールセールスという仕事を終わらせた仕組債販売停止

仕組み債、楽天証券も販売停止 三菱UFJ銀行も制限検討

閑話休題。

昔から証券のリテールセールスというのは顧客よりも自社利益を優先させてきたということがあり、様々な問題をはらんできたわけだが、ネットが発達した2000年以降、特にリーマンショック後は金融庁がこのリテールセールスの営業慣行に釘を刺して回る形となった。

まずは誰がどう見ても顧客の利益のためになっていない回転売買を禁止させたが、その後も顧客に対して手数料開示が曖昧な外貨建て保険も実質禁止にしたりと抜け穴的に営業員にとって利益幅を大きい金融商品が実質禁止に追い込まれていった。
そういった中で最後の砦とも言えた仕組債、ようはEB債の販売が実質的に禁止になろうとしているというのが上記の日経新聞の記事である。
EB債ってなんやねんという話だが、特定の原資産の値動きに対して一定程度の値下がりが生じなければ高い利率をもらえる債券だが、一定程度以上の値下げが生じた場合には値下がった原資産をそのまま手渡されるために大損するという商品となっている。
ようは実質的にややファーのプットオプションを売っているというものだが、まあ高齢の人にプットオプションの売りなんて理解できるわけなく、リテールセールスはこれを安全な債券と称して売って回ったという悪しき慣行となっていた。
主に原資産は株価や為替が対象になるわけだが、株価が上昇していたり円安になっている間は大きな問題は生じないのだが、一度下落相場になると様々なクレームが生じる商品であった。
ただリテールセールスにとっては非常に利益幅の大きいおいしい商品だということで、このリスクに目を瞑って販売していた。

今回の仕組債販売停止は実質的にリテール証券のセールスマンの死を意味している。
もちろんこれまで各証券会社は昔から回転売買が問題になっていて、これから金融庁からの締め付けが厳しくなることが想定され、顧客のトータルのポートフォリオ提案をする形で、残高拡大を業績目標とすることによって事業構造転換をしてこようとしてきた。
しかし、そんなことができる証券会社というのはトップ1-2位の野村證券・大和証券あたりまで(下手すると大和証券もできていない可能性は高い)で、それ以下の証券会社のリテールセールスの人達は手っ取り早く金を稼げる手段について両手両足縛られる状態となっている。
回転売買は倫理的にだめなことは明らかなのでこれは駄目だが、外貨建て生命保険も駄目、高額手数料の投資信託も駄目、EBなど仕組債も駄目となると、せいぜい持ち切り単位型の投資信託を提案するぐらいしか提案ができない。
(一部リテールセールスではIPO販売という必殺技もあるわけだが)

まあようは、証券リテールセールスなんて仕事に就職するなんて馬鹿げているからやめた方がいいよ、もうそういう時代じゃないよという話に尽きる。

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グローバル供給過剰体制が解消され、2010~2020年のデフレ再来は遠い

10年サイクルぐらいってことなんですかね。

足下の世界各国の高水準インフレは、コロナ禍影響で相当歪んではいるものの2010~2020年のグローバル供給過剰体制が解消されたことによる様々なモノの需給バランスが良い意味でも悪い意味でも解消されたことを意味している。

そのことは中国景気がメタメタになっているはずなのに世界がデフレに陥っていないことからもわかる。
実は自分も中国不動産が崩壊する→グローバル景気がやばくなると考え半分近くポジションを投げた場面があった。
ただし、それは1年前の2021年7月のエバーグランデのデフォルト懸念話とオンライン教育ビジネスの非営利化を発表した時であった。

しかし、どうもこの判断は中国株という範囲では正しい判断であったのだが、他国の株価にまでは全く波及しなかった。
特に中国不動産の崩壊によって懸念される金属系資源と鉄鋼銘柄は即死するのではないかと考えていたが、金属価格はずっと高いままだし、鉄鋼銘柄も高いマージンを取り続けていて何も問題がない状態が続いていた。
特に鉄鋼銘柄がずっと高い利益率を維持してきたことになんでやと絶叫したくなるような不思議な状態が続いていた。

最終的に辿りついた答えは中国で不動産が冷えに冷えているが、加えて供給側も冷えに冷えているので、結局中国内需分の減少は中国内の供給量減少で実は釣り合っている状態ではないかと思いついたわけである。
これは2000年以降中国が世界の工場という役割を梃子にモノの供給を爆発的に増やしていった。
しかし、リーマンショックによって需要側が止まり、それにもかかわらず過去の余波で供給がどんどん中国を中心に増やされていったことから壊滅的に様々なところでモノがあぶれる結果となっていった。
それにこりたのが2011年ぐらいになってからで、その後資源価格も崩壊して本格的にデフレが継続する流れとなった。
しかし、そのデフレの中でまず中国以外が採算が取れないということによって供給を増やすのをやめていった。
そしてブログでは以前に書いた通り中国も環境問題・国営企業のでたらめ運営を止めるために採算重視に切り替えていったということによって供給を増やせなくなっていき、最終的に習近平でとどめを刺された。

つまり次にデフレになるためにはモノの供給を増やすための投資が増えてこなければいけない。
しかし、様々な企業の設備投資を見ると、はっきり言えばEV以外はまともに設備投資を増やそうなんて考えているところはないというのが現状だ。
そのことを考えると、デフレ頼み・金利低下頼みの投資ではなかなかどうにもこうにもという環境が続きそうである。

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残りは労働者需給と家賃になった米国インフレの芽

米新規失業保険申請、前週から予想外の減少-5カ月ぶり低水準

ようやく労働者需給と金利水準が釣り合ったことを示しているように思われる。

昨日発表された米国統計で注目されていたのは労働者需給に関して速報性の高い新規失業者保険申請件数であった。
先週発表された数値は209Kと予想外に低下したことから金融引き締め加速を懸念した金利高が生じた。
そして昨日の193Kと新規失業者という点だけ見ると労働需給はタイトという数値となった。
しかし、これに対する金利反応はほとんどなく、英ポンドと英国債を巡ったドタバタ騒ぎで既に米国債が売られていたことで、十分金融引き締め効果が出ている分まで上昇していたものと思われる。
クビにされている人は少なくなっているものの、一方でコスト観点からは積極的に雇用している雰囲気も減退していることから次回雇用統計待ちという状態だが、新規失業者保険申請件数からはもう金融政策を変化させる材料は出てこないということになりそうだ。
一応は次回雇用統計で雇用者数の伸びが250Kと予想されており、今のところIndeedのJob Postingデータを見ていると、雇用者数の伸びが減速傾向であるのは間違いないと思う。

【IndeedのJob Posting統計】
タイトルなし

https://fred.stlouisfed.org/series/IHLCHGUS

総合的に見ると米国インフレはあとは労働者需給と家賃に限定されつつあるように思われる。

エネルギー価格は金利の大幅上昇によって期近を期先より大幅に高い水準で買うインセンティブが下がったことと、全体的な景気減速懸念から概ね異常な価格推移が見込みづらくなった。
欧州はロシアからのガス供給問題が生じているが、既にノルドストリームからの供給がゼロになっていて、はっきり言えばもう材料がない。
なのでエネルギー価格由来のインフレは概ね消える傾向が継続するのは間違いないだろう。
米国の貿易統計を見ていると輸入金額の減少も見えており、コンテナ港湾混雑といった物流面由来のモノインフレについても海運コンテナ船の運賃も大分下落してきていることからも沈静化が見えてきている。

なので、米国で残っているインフレの芽は労働需給と家賃インフレの2つに限定されつつあることが鮮明になってきている。
上記2つのインフレは一度起こるとスティッキーなインフレと言われており、いわゆる変化がゆっくりと生じるために金融政策で動かそうとすると相当タイムラグが生じるものとして有名なものである。
なので、現在の金利水準とインフレ動向はようやく釣り合いが取れた水準になってきたことを示していると思われる。
(問題は欧州の金利ではあるが・・・)

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