村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

コモディティ

ゴールド爆買いから考える中国のドル覇権挑戦と投資家への恩恵

中国の金保有が5カ月連続で増加、外貨準備高も増える-3月末

中国のドル覇権への挑戦は、あらゆるリスク資産にとってプラス要因。

ここもとゴールドの価格上昇が顕著なことは多くの人が認識していることだろう。

【ゴールドの価格チャート】
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ゴールド上昇要因は買い手の性質を考えればすぐにわかる。
ゴールドの主な買い手は新興国政府が外貨準備高補充目的で買うか、ETF経由で先進国投資家が買うかが主要な投資家である。
今回はETF経由での保有者が増えていないことから、新興国政府が買っていることがわかる。

【WGCの地域別金ETF保有状況】
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https://www.gold.org/goldhub/data/gold-etfs-holdings-and-flows

そして、もちろんこのどの新興国政府が買っているのかというと中国であり、中国人民銀行が開示している外貨準備高のうちのゴールドの金額を見れば一目瞭然である。
去年の11月から新規購入を続けており、今年3月時点でもまだ購入を続けている。
買い始めた時期は3年移動平均線を下回ったところから買い始めているが、新高値更新しそうな中でもまだ熱心に買っており、もはや値段関係なく買ってるのではないかとも思わせる流れだ。

なぜここで中国がゴールドを買っているかと考えると、やはり外貨準備高の中身においてなるべくドルを増やしたくないという思惑が強いことにあると思われる。
特にロシアのウクライナ侵攻で、ロシアのドル外貨準備高が凍結されたことから、ドルでの外貨準備高保有にリスクを感じていることは中国だけでなく、一部新興国も感じているところなのは、普通に考えると合理的な話である。
だからこそ、一部原油産油国は人民元決済を容認するなどの動きが出ており、また中国は中国で外貨準備高を何で保有するかを考えた時に、ゴールドを増やすという選択肢が出てくることも至極当然の話である。

一般的に言えば、こういった流れは世界的に脱ドルの流れ・挑戦が生まれていると考えることができる。
もちろんいきなり完全ドルからの離脱というわけでなく、少なくとも現在生きている人間がドル覇権終焉を見る可能性はほとんどないだろうが、確かに挑戦的な動きを中国は見せている。
これだけ聞くと、このニュースは相場にとってマイナスと捉える人が多そうだし、実際に報道やYoutubeではまるで相場に悪影響を与えるような言いぐさが多い。
しかし、個人的な見立ては全く逆で、あらゆるリスク資産相場に対してプラスであると思っている。

覇権通貨争いをするということは、それだけ利用者に対してその通貨を使うことの利便性を示さなければいけない。
つまり便宜をはからなければいけないのである。
習近平が人民元を覇権通貨にしようと思えば、相当な便宜を利用者にはからなければいけない。
また、これにドルが対抗しようと思ったら、そこも利用者に対して便宜をはからなければいけない。
つまり、かつて日本の中で起こっていたQRコード決済を各社が立ち上げる段階で、還元ポイント競争をしていたように、利用者が利益を得る形での便宜がはかられ、その競争が激しければ激しいほど、利用者の利益は増えるのである。

このことは準通貨的な位置づけであるゴールドにまずプラスであることは間違いないだろう。
また、もう一つは決済できる資産に恩恵があるわけで、仮想通貨関連がここもと元気なのはこの辺の要因があり、回り回って相場全体にも好影響を与えていると見るべきだろう。
別に覇権通貨がドルだろうが人民元だろうが、お得な方を使えばいいわけだし、そのお得度争いに乗じて我々は利益を稼げばいいだけであるので、中国は習近平の政治的メンツのためにぜひともバラマキを行って、我々の財布を潤してほしいところである。
ゴールドについては、この中国政府のゴールド買いが続いている間は上昇が継続していくと思われるが、どこで買いが途切れるかは中々予想しづらく、これから買うのであれば中国の外貨準備高買いニュースをチェックしながらどうポジションを取るのかを考えていかなければいけない。

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色々な思惑が重なったサウジアラビアなどOPECの原油自主減産と相場への影響予想

サウジアラビアなど主要産油国が追加減産 5月から23年末まで

このタイミングでというのはまあわからなくはない。

月曜日の朝っぱらから上記ニュース記事の通り、サウジアラビアを始めOPEC加盟国が自主減産を発表し、合計日量100万バレル近くの減産となる内容となった。
これについてはなぜこのような決定が下されたのか振り返っておきたいと思う。

一つは原油価格がサウジアラビアなどOPEC各国が財政均衡させるための80ドルを下回っていたことにある。
産油国全般として、多くの国は一定程度余裕を持った財政運営をしようと思った時に、現状はやはりどうしても原油価格80ドル程度は必要というのが市場の一般認識になっている。
足下で先進各国の利上げに伴った景気鈍化+クレディスイスベイルインで原油デリバティブ絡みの信用供与が縮小されたことから、OPEC各国がやや許容しづらい原油価格動向していたのはチャートを見ればすぐわかる話である。
また、現状は米国シェールガス生産や石油メジャー各社はESGの潮流もあり、油ガス生産の投資を増やすわけにはいかないということで投資金額はあまり増えておらず、減産すれば容易に原油価格を持ち上げやすいということもあって、単純に財政的な理由で減産したというのが一つだろう。
これは至極簡単な話で、特段疑う部分もないだろう。

二つ目の理由として米国が戦略石油備蓄(SPR)を梯子を外す形で後ずれさせたことに対する不満があるかもしれないということだ。
FTなどの外国記事ではサウジアラビアは米国から2023年初め頃ぐらいにはSPR補充で買い入れを行って原油価格を上昇させるからという話をしていたのだが、ものの見事に梯子を外されたということで、じゃあこっちだって原油価格を本来SPR補充分で引き上げる予定だった分はやっても構わんやろというような態度を取ったのではないかという話である。
(どこまで真実かわからないが)

三つ目の理由はイランとの国交正常化に伴う話である。
個人的にサウジアラビアがまさかイランと国交正常化させるとは全く予想外であったわけだが、さらにサウジアラビアはイランの核開発については核爆弾を作らずに平和的使用法(原子力発電)にとどめるのであれば許容するといった大胆な発言をしている。
昨今サウジアラビアは米国との関係が悪化しているということもあり、自主的に地域の安定化をやらざるを得なくなったと見ることができるかもしれないが、これによってイランが場合によっては原油マーケットに復帰してくる可能性があるわけである。
復帰してくるとそれだけ原油需給は緩んでしまうため、そのために予防的に減産したという可能性もまことしやかに噂されている。

こうした3つの理由がありつつも、今回のOPEC自主減産によって確定したことは、原油価格はWTIベースで70~80ドル近辺で米国はSPRを補充したいし、産油国は財政を均衡させるために減産したいという思惑が発生し、さらに油開発投資資金は引き続き絞り込まれてて容易に供給が増える見込みはないことから、この価格帯にフロアができているということである。
この辺の考え方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

単純に原油銘柄にプラスな一方で、ややこのニュースを受けてここまでしゃかりき的に上昇してきたIT銘柄は少しお休みとなる可能性が出てきたのではなかろうか。

【WTI原油価格のチャート】
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【米国エネルギー株ETF(XLE)のチャート】
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ただ上限価格は景気の鈍化具合を考えるとせいぜい100ドル手前ぐらいだろうというのもなんとなく見やすい話であり、米国のインフレ率に強烈に上昇に寄与する話かというと、まあまあそのぐらいならという程度の話なのではないかと思うので、そんなに相場に弱気になる話でもないだろうと思う。

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米国戦略備蓄補充見通しが出て、原油価格は安定化

US could buy back oil for strategic reserve late this year

今年後半買い入れなら、もう相場には影響が出始めていいような気も。

上記ニュースでは、これまでロシアのウクライナ侵攻以降に原油価格の上値を抑制するために米国が必死に戦略的石油備蓄(SPR)を市場に放出していたわけだが、放出した分はどこかのタイミングで買い戻さなければいけないよねということで、市場参加者はまだかまだかと待っていたわけであるが、ようやく今年の後半には買い戻しをしたいといった示唆が米国政府高官からなされた。

去年時点ではこの戦略備蓄放出は2022年9月までとしていたが、ロシアが減産をぶつけてきたことからエクストラ的にさらなる戦略備蓄放出を2月に行ったこと・そこからSVB破綻などの金融不安が出て景気先行きの不安や、先物を活用するための資金が引いたことから原油価格はもう一押し下に行く展開となった。

【参考ニュース記事】
米原油備蓄の放出、先物上値抑える ロシア減産を相殺


【WTI原油価格のチャート】
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加えて、今年は運よく欧州が暖冬で、ガスについては使用量節約効果もあり、予想よりはエネルギー需給はひっ迫しなかったということもあり、ロシアのウクライナ侵攻ピークからだけを見ると原油価格は相当程度下落してきたと見ることができる。

とはいえ、原油価格はようやく3年移動平均線上ということで、過去3年平均程度の価格に落ち着いたにすぎず、エネルギー開発会社にとってはまあ60ドル割らなければどうということではないという話は続くだろうと個人的には考えている。

現在米国政府は原油を68-72ドル/バレルで買い戻したいと言っているわけなので、ちょうど上記でいう3年移動平均線付近が価格フロアとして機能する形になるだろう。
それに直近になって欧州が2035年に新しく販売する車両について内燃機関は禁止としようとしていた案は結局廃案になって先送りになり、先行き原油需要については予想よりも減少幅は少ないだろうということもなんとなく見えてきた。

【参考ニュース】
EU、エンジン車の販売2035年以降も容認へ 全面禁止の方針転換

そしてエネルギー開発投資の増え方は緩やかであることはEIAのデータを確認したり、各メジャーエネルギー開発投資会社の決算を確認しても概ね確認できている。

こうした需要はこれまで何とか抑えてきて、さらに先行き景気不安で上値はそこまでというところな一方でSPRの補充見通しが出てきて、供給側は引き続き開発投資は抑制されていることを考えれば、本当に金融ショック的なものが来なければ、少なくとも原油価格が下がる方向という話にはならないだろうと思っている。

エネルギーセクターサイクルは基本的に長いわけで、まだ2020年ボトムから3年しか経っていないので、エネルギーセクターの投資寿命が終わったとは個人的には思っていない。
現在の世の中が全体としてデフレではなくインフレにレジームチェンジしている話ともつながっているので、この辺の見方を知りたい方は下記を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?


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仮想通貨の価格上昇と金融市場との関係性を改めて考察

米CPI発表後にビットコインが上昇した理由──米国債利回り上昇にもかかわらず

一番金融資産の端っこにいる市場が堅調であれば、根本にいる資産も大丈夫だろう。

週末にやや相場は荒れたが、最悪期と比べるとかなり相場は堅調推移しているという中で、ビットコインをはじめ仮想通貨の価格は回復基調で推移している。

【ビットコインのチャート】
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これについては、ただの泡沫Youtuberのように単にナスダック100とビットコインについて相関関係があるというだけでは芸がないので、金融の仕組みから仮想通貨と伝統的資産の間の関係について考えていきながら、何を意味しているのか考えたい。

一般的に伝統的資産の中心は債券にあり、最も古い歴史を持っていて、かつ全ての資産の根本にいるというのは下記過去参考記事を読んでもらえればわかると思う。

【過去参考記事】
債券金利をテクニカル分析だけで判断することにはほとんど意味がない理由

この債券の上に乗っかる形で存在する伝統的リスク資産というのが株・REITなど不動産が挙げられていく。
この債券の上に乗っかっている株・REITといったキャピタル系のリスク資産というのは、根本にある債券がぐらついていると株・REITなどの資産に投じられている資金のファンディングに問題が生じ、強制的な売却に迫られるためにリスク資産価格が下落していくというのが一般的な見方である。
個人的には仮想通貨はこうした伝統的キャピタルゲイン系資産のさらに周辺部にいる、言ってみれば金融資産ではもっとも端っこにいる資産ではないかと考えている。
仮想通貨についてはものにもよるが、代表的なビットコインは先物市場が出来上がっているなど、一定程度の市民権を得ており、金融資産として一つのカテゴリとして成立しているのが現状である。
金融資産の中心に債券があり、そこからあふれ出る余剰資金が株に流れ、最後の最後に仮想通貨に流れるという構図であり、逆に資金が引き上げられる時はその逆の流れというイメージである。
ちなみに金融資産の中心部にいる債券から離れれば離れるほど、一般的には価値があいまいになるので、テクニカル分析が効きやすいという話もある。

つまり、仮想通貨が上昇するときというのは債券・株と伝統的資産に十分に資金が行き渡り、そこからしみでてきた資金が流れ込んでいる時ということになる。
2021年以降では世界各国で激しい金融引き締めが生じたことから一気に市場から資金が吸われたために、一番金融資産の中で端っこにいて、かつFTXなど馬鹿みたいにレバレッジをかけていたプレーヤーがぼこぼこデフォルトしていったことによって強制的なレバレッジ解消に伴う投げ売りで最悪なレベルにまで価格下落したが、FTX破綻でもうデフォルトすべきプレーヤーが全員一掃されたことから投げ売りが止まったというのがここまでの流れである。

足元の仮想通貨はビットコインやイーサリアムを見ると、FTX破綻で最悪な位置まで下落した後、足元でぴょこっと上昇し、木曜日に米国PPIが予想以上に高かったということもあり高インフレ長期化かといった形の懸念で債券が揺れたことから下落した分や金曜日深夜から日曜日にかけて結局下げた分をほぼ消す動きとなっている。
つまり、一番端っこにいる仮想通貨が揺れていないわけで、そうなると債券・株は根本のところは揺れていないということを意味しており、足元の相場に挑む際はあまり下の価格目線で挑むのは割に合わない、逆にまだ上目線で挑んでいった方が得策なように思う。

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ロシアの原油減産で安心感が出たエネルギーセクター株

ロシア、3月に日量50万バレル減産 日米欧制裁に対抗

エネルギー株は引き続き高還元利回りを享受できそう。

上記ニュースの通り、金曜日になってロシアがいきなり原油減産を決め込んできた。
背景としては引き続きウクライナとの戦争の戦費がかさむ中、世界的な景気鈍化を背景に原油消費量について先行きそこまで強くないよねという認識が浸透してきたし、欧州も暖冬で乗り切ったということもありじわじわと原油価格は押し下げられていた。
加えてロシアは先進各国から制裁を受けて、60ドル/バレル以上で原油を売れないということで、市場では20ドル近くのディスカウントを受けていて歳入減少+歳出拡大というダブルパンチで財政は中々に厳しい水準が続いている。
つまり産油国の中では一番弱い立場にいるということで、減産をしてなんとか価格切り上げを狙いたいという意図がある、まあ普通に考えれば単純明快な理由だろう。

このニュースが出てきたことによって、原油価格は上昇したが、それでもWTIは80ドル/バレルと底値72ドル/バレルから8ドル程度の上昇なので、世界経済に与えるインパクトは実はそこまで大げさに言うほど大きくはないだろう。

【WTI原油価格のチャート】
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どちらかというとインパクトが大きかったのはやはりエネルギー株の方だろうと思う。

一つはこれまでどこまで原油価格が調整するのかという恐怖感がややこのセクターには存在していた。
中国はリオープンしているといいつつ、不動産需要はほとんど喚起されておらず、資源に与えるインパクトは実はそこまで強いものではなかった。
そうした中で米国景気の鈍化というのが、これまで主に原油価格をゆるやかだが下に押し下げる要因になっていた。
しかし、今回のロシアの減産によって、産油国がどの辺まで価格が下落すると苦しいのか判明し、原油価格のフロアが明確になってきた。
それに、まだ米国政府の戦略的備蓄の回復も行われていない。
そしてロシアが減産した分は他の石油メジャーが増産穴埋めすることによって恩恵を受けられるだろう。
そうなると、引き続きこのエネルギー分野の銘柄は強い業績が続くだろう。

さて、ここまで考えると、では今の石油株のバリュエーションはどうなるだろうかという話だ。
これは以前のブログ記事に書いた通り、エクソンモービルなど石油株は配当と余剰キャッシュフローを使った自己株買いが大きく増加している。

【過去参考記事】

自己株買い+配当利回りで高還元な米国石油株


大体配当利回りで3%ちょい、自己株買いで4%ちょいということで、合わせると8%程度の株主還元利回りがあり、業績が横ばいでもこの8%の株主還元利回りを享受できるわけである。
直近のエクソンモービルの決算でも、この株主還元利回りについて自信を深めた経営陣の発言が見られるなど、まだエネルギー株については割高すぎるということはなさそうに思える。

【米国エネルギーセクターETF(XLE)のチャート】
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