村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

コモディティ

米国がシェールガスを鉄道を使って運び出す作戦を計画中

Trump administration nears decision on LNG shipping by train

少しコストをかけてもいいから輸送最優先ということですかね。

米国州政府がどうやら天然ガスの輸送について、今まで許可をしてこなかったLNG化しての鉄道輸送を許可するという報道が出てきている。
現在米国シェールガスは天然ガスの輸出がパイプライン不足の問題で輸送ができず、これにより米国内において強烈な天然ガス価格安を招いてしまっている。
米国内の天然ガス価格については下記のようなヘンリーハブ価格を見れば一目瞭然だろう。

<ヘンリーハブガス価格>
タイトルなし


原油価格は緩やかだがその価格平均値をあげてきているにもかかわらず、米国内天然ガスはたった2.1ドル/BBUとこれじゃあシェールガス業者は採算保てませんなという感想しか出てこない。

そこでこれだけ天然ガス自体が安いなら、多少コストをかけても輸送してアジアに輸出できるようにすれば採算とれるんじゃないかという動きが米国で見え始めており、これがLNG化して鉄道に積んで輸送するという発想に至った背景だろう。
それにどうにか生産した天然ガスをどうにかこうにかして売らないと、デフォルトしてしまうというシェールガス生産業者もわんさかいるわけで、そういった苦境にあるシェールガス業者の食いつきそうな話である。

個人的には少しこの動きには注目しており、全く今まで考えてこなかった相場材料が出てくる可能性を感じている。
この文章だけ読むと
・米国の鉄道輸送需要の増加、それに伴う鉄道エンジンの需要増加
・LNGタンク需要の増加
・米国内天然ガス価格の一定程度の割安是正

こういった新しい投資テーマ的なのも生まれてくるのではないかと少し感じている。
ただし、留意点としてはじゃあいつ許可が正式におりて、いつ積み出し可能になり始めるのかということ、そもそもLNGタンクは昨今の景気減速や中東の緊張感の高まりで全体需要が弱含みしていること、エンジン自体が世界的には貿易不振や中国の不動産販売が従来よりゆるやかであることから、投資テーマ自体の示現性やファンダメンタルズが弱い。
一番可能性があるとすれば米国内天然ガス価格の割安是正かなとも思えるが、結局は本当に許可がおりるのか、それがいつになるのかということ次第だと思われる。
あとはやむを得ず的な対策ということもあり、シェールガス業者の利益体質が上記施策がすぐ実行できたからといって改善するかどうかというのもすぐには判断しづらいところだ。
本当にシェールガス業者の利益体質が改善してくるならば、CCC格付けにいる利回り10%超のシェールガス企業の社債にさえ投資チャンスがあるということになるかもしれない。
利益体質改善が見えるならば、こうしたシェールガス業者がどこかに身売りするという米国お得意のM&A手法だって駆使しやすいわけで。
 

景気はスローダウンしているが原油価格は底堅い理由

シェール企業、来年も設備投資を削減 生産の伸びも大幅鈍化へ



需要動向は弱いが、供給サイドはより弱い

ここもと原油価格は景気スローダウンな中でも不思議なほど安定的な推移をしている。
WTIベースで見ると50ドル/バレルが割れそうで割れない。

<WTI原油価格のチャート>
タイトルなし


需要は弱いはずなのにというところはあるが、実のところは供給の状況はもっと弱い。
ご存知の通り、OPECは増産する気なんてさらさらないし、ロシアも増産して値段を崩したくないと思っているのでやる気がない。
ベネズエラは国として崩壊していてどんどん原油生産は減少しているし、イランもあまり制裁状況に変化はない。
とここまではいわゆる既に投資家も知っているという情報だが、もう一つ大きな材料として先行きの米国シェールガス増産量が鈍っていくのではないかという新規材料がある。

米国シェールガス企業は2014年までの原油ブームの時にばかすか金を借りていくらでも借金していいから規模拡大に邁進してきた。
しかしその後の原油価格の暴落により、瞬間風速的にほぼ全シェールガス企業が採算とれない状態に陥り、2016年のWTI原油価格が20ドル台をつけたときには元チェサピークのCEOが自殺するなど凄惨な事件があったのち皮肉にもボトムアウトしていった。
しかしそれでも50ドル台だとまだ採算が取れていない企業は多く、例えば直近のジャンクボンド市場ではドベシェールガス企業の社債の今年度リターンはマイナスに突っ込んでいる。

またシェールガス企業が銀行から借り入れできなくなりつつあることもシェールガス生産の伸びが鈍化していくとも思われている原因の一つだ。
米国地銀勢がシェールガス企業に多額のローン融資をしてしまい結構不良債権を積んでいるという話もあるほか、ESG的にシェールガス企業への融資は手控えるというグローバルな動きも出ている。
こうした理由からシェールガス企業は外部資金へのアクセスが以前より細ってきており、リグの新規建設はおろか稼働維持も難しい案件が増加しているように思われる。
その証拠にベーカーヒューズロータリーリグカウント数が減少傾向で推移している。
(ただしベーカーヒューズ自体が今イケてないだけではという意見もあるだろう)

シェールガスは未だ増産は続いているが、もう少し先を見据えた生産成長率を考えると鈍りそうなことは明白になりつつある。
そうなると、よっぽどの景気クラッシュや先物ポジションの意図的な投げがなければ原油価格はそう簡単に底値割っていくというのは考えづらいのではなかろうか?
逆に景気(特に新興国)に回復が見られてきたとき、供給が弱いがために原油価格に上昇圧力かかる確率の方が高いのではないかとも考えている。
ただ今の段階で新興国の景気回復まで見通すというのはいくらなんでもあほらしいので普通に考えればレンジ内推移でテンションの上がらない相場状況が続く可能性が高いだろうとみている。
 

ドローン技術の進化がサウジアラビアを脅かし続ける

拡散する“現代のカラシニコフ” 中東ドローン戦争



地政学リスクのレベル感は変わった。

サウジアラビア政府は公に原油生産状況についてテロ攻撃によって失った処理能力のうち半分は速やかに回復、残りも9月末までには回復するという見通しを出したことによって、オイルショック危機というのは避けられた。

サウジアラビアの石油生産、月内復旧の見通し

しかし原油価格は今回のテロ攻撃によって上昇した分の半分ほどしか下がらなかった。
これはサウジアラビアの原油処理施設に対して常に攻撃を受けて被弾するリスク分が織り込まれていることを示している。

<WTI原油のチャート>
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サウジアラビアの原油関連施設というのは、サウジアラビアだけでなく世界経済の大動脈でもあるため、サウジアラビア軍だけでなく米軍も配置して警備している。
もちろん人を張るだけでなく、ミサイル撃墜設備など対空警備も最新鋭を揃えているし、それはサウジアラビアがどれだけ米国から兵器を購入しているかを調べれば一目瞭然だろう。

しかし、今回の原油処理施設の爆破テロはこうした世界最高峰の厳重警備システムを掻い潜って目標の攻撃に成功したということだ。
この攻撃が成功した背景にはドローンの技術革新によるコスト低下が大きく絡んでいる。(記事一番上のリンク記事参照)
ドローンの進化によって小さな飛翔体を遠方に飛ばすことに対するコストは大きく低下している。
しかもアマゾンのドローン配達事業などを見てもわかる通り、プログラムを組めば自動で指定したところにピンポイントで飛ばすことができる。

そして昨今の調査で民間企業が販売している部品をかき集めれば、誰でも千キロ以上飛ばせるドローンを一基当たり原材料コスト数百ドルで製造することができる。
DJIのドローンが普通の人でも10万円ぐらいで買えるのを見れば納得のいく話だと思う。
ではこのドローンに爆弾を搭載して数十体同時にピンポイントに巨大建造物に向かわせると考えると、かなり防ぐのが難しいのではないだろうか?

しかも攻撃する側は今までミサイル一機作って発射するコストと同じコストでドローンを千機以上作れるし、運用できる。
大規模に同時に破壊することはできないが、ゲリラ的に攻撃する分にはコストパフォーマンスは非常に高くなっていると言わざるをえないだろう。

こうした今後低コストドローンによる攻撃にサウジアラビアの原油施設が常に晒されるリスクが表面化したことが、足元の原油相場を3-5ドル程度押し上げる要因になっている。 

中国・インドの景気減速で真っ先に悪影響を受けるのは石炭

China slowdown knocks Asia coal price to 3-year low



中国とインドの景気スローダウンは基本的には資源価格にとってはネガティブである。
しかし資源によって需給の構造が違うため、そのネガティブ度合いは大きく異なる。

資源の中でも現在最も被害を受けているのは石炭だ。
例えば鉄鉱石を考えてもらうと、鉄鉱石は輸出供給が実質的にはオーストラリア・ブラジルの二択(ほかにも南アフリカとか少しあるが)で、しかも大手が寡占しているので供給が絞りやすく、比較的価格コントロールがしやすい部類の資源だ。
しかも中国がインフラ建設の推進をしていることから、まだ需要は底堅い。
銅は同じように中国のインフラ建設の恩恵を受けるが、一方で供給サイドは鉄鉱石ほどは集中しておらず供給が絞りにくいので足元でそこまで価格が盛り上がっていない。

さて石炭についてはどうだろうか?
石炭というのは実は基本的には大体一定程度国土のある国ではどこでも掘削して産出することができる。
例えば日本でもいざとなれば夕張の山を掘れば石炭を掘削することができる(採算は合わないけど)。
需要の伸びのほとんどを占める中国・インドも実は石炭は掘ろうと思えばいくらでも掘れるが、採算ラインの観点から輸入の方がお得な場合は輸入するといった形をとっている。
そう、石炭は掘ろうと思えばどこでも掘れるのだ。

しかも中国・インドの石炭消費量の伸びはあからさまに鈍化しており、昔は二桁%の消費量の伸びをしていたが、今や年率3%ぐらいしか増加していない。
また石炭消費というのは基本的には大気汚染と表裏一体であり、これ以上の大気汚染は中国、さらに言えばインドでさえ認められないレベルになっているということもあり、政府自体が石炭の消費をばかすか増やして大気汚染を拡大させることはまかりならんという態度を取っている。

そして中国・インド以外は石炭需要は減少傾向にある。
これは石炭火力発電所がどんどん閉鎖されていることによる。
以上から石炭は構造的に需要過小・供給過多という状態が継続的に続きそうなうえに、どこでも掘れるので需要の調整がどの資源よりも効きにくいという構造になっている。
これが昨今資源価格の中でも石炭価格の下落が顕著な理由だろう。
世界的にはどんどん脱石炭が進んでおり、石炭事業は自国エネルギー確保という名目以外には特段熱心になる理由を探すのは難しいように思われる。 

原油価格はOPEC減産延長が決まっても下落

OPEC、9カ月の減産延長合意を発表 ロシアも同調へ

原油はOPEC+ロシアで9カ月の減産延長を決定していたが、動きは全くといっていいほど冴えない。
もはやWTIベースで60ドルに戻る力さえないといったところだ。

<WTI原油価格のチャート>
タイトルなし



FTに改めてこの背景を書いているが、それも加えて私見も加えると 

・米国のシェールガス増産が継続している。
リグ数自体は増えていないが、どうやら今までの輸送のネックになっていたパイプラインの建設が進んでおり、これによって市場に放出される米国産ガスおよびコンデンセートが増加しており、OPECのシェアがじりじり下がっているようだ。
シェールガスプレーヤーも年々技術革新でコスト削減を相当頑張っているということもあり、なんの技術力も保有しておらずコスト削減なんて一ミリも検討できていない産油国とはガッツが違うところを見せつけられている。
これもシェールガス勢にOPECが押されていることの一つになっている。 

・純粋に需要面に不安感がある。
各国の製造業景況指数を見ればわかるが基本的には景気は設備投資を中心に減速しており、原油需要についても2017年や2018年に市場が想像しているより伸びは低いよねというのが改めて認識されてきているのだと思う。
これはブログでも何度も取り上げているが、銅価格も下がっていることを見ればコモディティプレーヤーは今の景気状況に対してコモディティ価格は高いと思っているということではないだろうか?
銅価格自体は過去3年平均より下に沈み始めているが、まだ原油は過去3年平均価格より上にいる状態で、それでいいんでしたっけという感覚がある。

原油はもうあまりポジティブ材料残っていないことを考えるともう少し下の価格帯に推移していくのではなかろうか。
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村越誠

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