村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

コモディティ

原油のなんちゃってヘッジが次々と突破される米国石油会社

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そんななんちゃってヘッジでヘッジしてたとか言い張るのか。

普通のまっとうな会社はきちんと原油の引き渡し時期に合わせた売り建てかプットオプションを買うことによって将来売る原油の価格を固定し、先行きの経営を安定させている。
しかし、なんとかコスト削減して収益を引き上げたいという小賢しい企業はこのヘッジを疎かにし、3wayヘッジといういってみれば「なんちゃってヘッジ」を行い、コスト削減をしていたというのだ。

このなんちゃってヘッジの手法はこうだ。
例えば今原油価格が60ドルだったとしよう。
まず70ドルぐらいのコールを売り建てる。
そして50ドルのプットを買う。
ここまでは普通に行われるヘッジだが、このなんちゃってヘッジではここから40ドルのプットを売るのだ。
こうすることにより50-40ドルまでの原油価格の下落であれば、単純に50ドルのプットを買うよりも安いコストでヘッジできるというわけだ。
そしてこのプットを売る水準というのは「さすがにここまで一気に短期間で下がることなんてないだろう」というまあよくありがちな統計学用いた簡便的な計算のもと決められると思われる。
しかし、じゃあ40ドル以下に原油価格下落したらどうするんだと言われれば実質ノーヘッジ状態になるものの、少しレンジはずれるぐらいならそれでもコールの売り・プットの売りで一部は相殺が可能になる。
詳しくは上記リンク記事を見てほしい。

しかしご存じの通り、サウジの増産報道のせいで一気に41ドル→30ドルという突破のされ方をしたことから、そういう小賢しい考えを一切吹き飛ばすような動きをしてしまい、このことが一部米国エネルギー会社を苦しめている状態になっているし、名指しでその会社が批判されている(オキシデンタルとか)。

このなんちゃってヘッジは個人的にはいくつかの企業の財務情報を見ている中で見かけたことがある。
個人的に印象的だったのはインドネシアの不動産会社がやっている為替ヘッジ取引で、収入はほとんどインドネシアルピア建てなのに米ドルで金を借りているため、インドネシアルピアが強烈に下落すると対処法がなくなるためヘッジする必要性がある。
ただ、それでも普通にヘッジするとやはりそこそこコストがかかる。
そこで行ったのが今回の3wayヘッジの下側の部分だけのオプション取引みたいな、IDR10000-12000の間はヘッジされていますよというようなお前それヘッジしているって言えるのかみたいな取引を実行している。

<インドネシアの不動産会社が行っていたなんちゃって為替ヘッジ>
タイトルなし

https://www.lippokarawaci.co.id/investor-center/annual-reports

というわけで実はこの3wayヘッジみたいな取引というのは意外と市民権を得ており、多くの会社が利用しているように思える。
こういうのは平常時は概ね問題ないのだが、今回のような想定していないようなリスクが横からぶつかってきてボラティリティが跳ね上がると容易に木っ端みじんにされるケースが後を絶たず、色々ヘッジにビジネス状況が左右される企業については警戒して見る必要性があるだろう。

控えているリスクシナリオは米国の都市封鎖と原油の暴落

US gas prices expected to fall as coronavirus and failed OPEC

今回のコロナウイルス騒動でずっとなぜ米国エネルギー株が下げを先導しているのかというのが不思議であった。 
もちろんOPECプラスの交渉が破断してサウジとロシアが暴走して原油増産に走ろうとしているというのもあるが、それ以前から既に先導して売られていた。
ここしばらくずっと仮説検証していたが、一つ論理的には整合性の合う仮説を立てることができた。

今回のコロナウイルス騒動では感染者数が激増した地域が順に都市封鎖あるいは都市封鎖に近い対策をせまられることになっている。
既に欧州までその事態が波及しており、最終的には米国に辿り着く可能性がある。
米国が仮に都市封鎖を行ったり、在宅勤務が一斉に行われるようになったとき最も被害が出るところはなにか?
人の移動だ。
米国において人の移動の最もメジャーな交通手段は何かといえば自動車であり、みんなが自動車を使って移動するから米国は未だに世界の原油消費量の25%を占めている。
中国の1-3月の原油消費量の減少は4割におよんだ。

中国石油需要、4割近く減少か 1~3月 新型コロナで

もちろん中国は無理やり政治であらゆる活動を止めたのだから、米国で瞬間風速4割も原油消費量が減少するとは思っていない。
しかし米国でインパクトが出る前に既にWTI原油価格は年初64ドルから44ドルに下落しているのである。
じゃあ残り25%もの消費量を誇る米国で消費量がコロナウイルス騒動で減少に転じたらどうなるか?
しかもサウジアラビアとロシアが増産する中でだ。
そうなるとサウジアラビア増産ショックの瞬間安値である27ドルはどう考えたって割れる。
そうなったら米国石油株はほぼ壊滅に近いダメージを受ける。
この仮説に基づいて先行してエネルギー株を売っている人がいるのではなかろうか?
そうなれば今回の相場が真の意味で底打ちするにはエネルギーセクターでやはりド派手な象徴的事件が起きなければいけないだろう。
特に調子に乗っていた企業がどえらくひどい事態になるといった事件があればなおさら良い。
そこでS&P500銘柄のエネルギー銘柄の中で最も今危ない企業はどこなのか調べると一つ該当する企業があった。

オキシデンタルペトロリアムである。
ぱっと見ただけで一番破綻の危機に直面しそうなのはこの会社である。
元々は優良エネルギー開発企業だったのだが、何をとち狂ったのかシェールガス企業のアナダルコをシェブロンから奪いとる形でアホみたいなバリュエーションで去年の6月に買収した。
しかもバークシャーハサウェイから資本コストの高い優先株で資金を調達してまで行った買収だ。
支払った金額は元々の自分の図体と同じレベルぐらいであり、そのせいで格付けは元々A-あったのに3ノッチにおよぶ格下げに甘んじて買収を強行した。
今その巨額のシェールガス資産に押しつぶされる可能性が急浮上してきた。
もし上記の仮説に基づきさらなる原油価格下落があったらもうこの会社はリファイナンスができず、即死するだろう。
少なくとも企業としてバラバラにされることは避けられない。

このレベルの象徴的事件が起こることによって真の底打ちが見れるように思われる。

サウジとロシアの危険なチキンレース





なんなのこいつら・・・

ここでロシアがとりあえず緊急決定会合っていうのかと思ったら、なんと原油25ドルまでなら耐えられるだの、4月にこっちも増産してやるとか売り言葉に買い言葉になってしまい、サウジの暴走だけに留まらずロシア側も歯止めが効かなくなっている。
そうなれば市場の原油余剰はあふれてしまい、既にWTIベースで30ドル台なのにさらなる下落の可能性を孕むことになる。
もうこれはほぼ人為的な相場破壊行為で、両者のチキンレースに世界中が翻弄されているという状態である。
特に皮肉なのはサウジアラビアとロシアという両者独裁国家がトップダウンに泥沼にはまっていることに、あー独裁だと歯止め効かなくなるよなあという諦観を感じざるをえない事態になっている。
もうここまでくればほとんどOPECプラスなどというカルテル概念は崩壊していると考えるべきだろう。
 
原油の過剰な下げは前の記事でも記載したように米国クレジットの大幅悪化と中東SWFの人達の財政補填のためのポジション売りがセットで襲ってくるため、相場も皆が想定するより斜め上いくレベルで下がる。
既にもう相場はコロナウイルスによる景気低迷・高値で米株を掴んだクオンツファンドの投げ売りという悪材料だけでなく、原油価格崩壊によるクレジット市場崩壊と中東SWFのポジション投げという要素が加わってしまった。

このコロナウイルス騒動が始まってから一貫して最大の被害者はエネルギー関連資産だったので、やはりここが下げ止まらないと真のボトムは見れないと思われる。
つまり原油価格が一定程度持続的に回復するという目処が立たないといけない。
そのためにはサウジアラビアとロシアがどこかで妥協点を見つけるという努力を見せる、あるいは少なくとも見せようというポージングが見えないことには厳しいように見える。
またロシア側が25ドルまで耐えれるとかいう自殺行為なコメントしていることから、緊急会合機運は少なくともWTI原油価格が25ドルを割るところでないと見えないように思える。
それともシェールガス企業の破綻続出だけで果たして市場は許してくれるのだろうか?
個人的にはそこまでは予想できないので、とにかく相場の上下幅よりも調整の日柄を気にしながらエントリータイミングを見定めていきたいと考えている。

サウジとロシアの原油派閥争いに巻き込まれる米国クレジット市場

Oil price war spells danger for US junk bonds

原油価格は高すぎてもダメだけど低すぎてもダメ。

月曜日の市場の大きな動きはコロナウイルスというよりサウジアラビアの暴走が半分以上の要因だと個人的には考えている。
サウジアラビアがブチぎれて増産に転じたということで、それ自体が誰も予想していなかったブラックスワンだったが、原油価格も同様にブラックスワンな確率の領域に下落していった。
これにより米国のクレジット市場が大荒れすることを危惧した動きが月曜日朝から一気に台頭し始めた。

<WTI原油のチャート>
タイトルなし


米国は原油輸入国だし、ガソリンを大量に使うんだからポジティブじゃないのと思う人も多いかもしれないが、節度ある下落ならば確かにそれであっているのだが、強烈な下落においてはその考え方は間違っている。
なぜなら原油価格のあまりにも大きな下げは米国の社債市場やローン市場に大きなダメージを与えるからだ。
理由としては米国企業の中でも石油関連企業というのは一大産業であり、ITと並ぶ米国のグローバル産業の一つである。
なので株式市場・社債市場・ローン市場において石油関連企業は石油上流開発・中流パイプライン・下流精製と上から下までラインナップが揃っている。
特に格付けの低いところにはシェールガス採掘企業が多く、ハイイールド社債市場やレバレッジドローン市場では時期によって幅があるが1-1.5割の幅でシェールガス関連企業のエクスポージャーが存在する。

自分が書いた記事を振り返ると去年10月頃から1月にかけて調子に乗ってこうした流動性のない債券市場へお金を流し込んでいるのが観察された。
こうしたところを見ると、期間は短いため致命傷には至らないものの、そこそここの流動性のない資産を流動性がない中で投げるというお決まりのプチ暴落パターンを描いていることは当然だろう。

<過去参考記事>

ババ抜き化を狙って動き始めたどべジャンク社債投資


特に今回は全く誰も予想していない事態が起こったことから、ただでさえ流動性がない中で何かしらの投資決定をしなければいけないということから調整しきるのに時間がかかることは目に見えている。
それに原油価格の問題が根本的に解決する必要性もある。
原油価格の問題はサウジアラビアとロシアが緊急会合を開いて、ロシアが減産するという妥協を見せるまでは全く慈悲が見える相場にはならないだろう。
その間にシェールガス企業がいくつかバタバタ倒れる可能性もあるが、サウジアラビアとロシア間での妥協が見えない限り底打ちだと思うのは間違いだと思う。

たださすがにロシアも原油価格20ドル台は耐えられるわけがないので、おそらくそう遠くない時期に緊急会合を開く可能性は高いと思っている。
その時に相場の状況を確認しながらエントリータイミングを見定めたいと思う。
 

サウジアラビアの原油増産の選択肢は相場にとって最悪の行為

Saudis plan crude oil output increase, begin price war: Report

意地がはれる人がいる間は状況は悪化する一方。

金曜日にここまで減産のさらなる拡大を交渉していたOPEC+ロシアであったが、ここで完全に交渉が決裂するという事態になった。
この交渉決裂背景はロシアにあり、なぜロシアが交渉を蹴ったのかは下記の過去記事を読んでもらいたい。

<過去参考記事>

OPEC+ロシアの原油減産会議は難航中


OPEC+会議の交渉決裂だけで金曜日の原油価格は激しい価格下落とともに、フォワードカーブがさらなるコンタンゴになっており、多くのプレーヤーのポジションがぐちゃぐちゃになってしまっている。

<WTI原油価格のチャート>
タイトルなし


サウジアラビアとしてはもうこれ以上自分の身を削って減産してたららちがあかないと考え、減産が解かれる前に増えるであろう増産分を先に自分だけでやってシェールガス企業を粉々に粉砕してしまおうと考えたのだろう。
この逆張りでシェールガス企業を淘汰するという一部目論見は達成するかもしれない。
しかし、そもそもサウジアラビアは大きな勘違いをしているかもしれないが、米国シェールガス企業は自然と立ち上がってきた企業が多く、原油価格やガス価格が上昇すれば再び筍のように続々と出現するだろう。
なのでこの一時点で殲滅することができたとして、それに大きな意味があるとは個人的には思えない。

一方でこれで傷つくのはどちらかというと中東SWFのポジションではなかろうか?
基本的に中東SWFは欧米株を好んで保有している。
しかしこうした無茶なサウジアラビアの意地のはりかたに巻き込まれて、あれもこれも売られる相場になったら目標達成のために財政以上に自分の貯蓄ポジションに大きくダメージが発生する。
その時中東SWFが同時にポジションを投げることによって第二波の下げが来ることが現実的に見え始めている。

今回の惨事はサウジアラビアのビンサルマン皇太子の問題のある性格にあると思っている。
サウジアラビアのビンサルマン皇太子は個人的には基本的に「待てない人」という評価だ。
今まで何不自由なく生きてきた人にありがちな性格の象徴的な人物だ。
自分が動けば全てが上手くいくと完全に勘違いしている。
それが端的に現れていたのがカショガリ氏殺害事件であろう。
特に今回は今までの失策からビンサルマン皇太子の人心掌握が上手くいかなくなっており、敵対する派閥の人を片っ端から逮捕していることから相当な焦りが見られる。
だから今回も我慢ができなくて、逆に増産してやろうという逆張り的な破壊行為におよんだと思われる。
しかし、これは周りだけでなく、自分自身でさえ不幸にする愚策だと個人的には思うし、下手するとビンサルマン皇太子自体がその地位を失うかもしれない危険な行為でもある。

もうここまでくれば原油価格の下落は何か象徴的な事件が起きないと止まらないだろう。
誰かが大きなポジションを投げた、どこかの企業が倒産した、誰かが自殺した、そんなショッキングな事件が起きないとこの流れは止まらないし、そうした象徴的事件が起こるまでは相場の方向性は基本的に悪いと考えるべきだろう。
他のセクターはもしかすると押し目買いが正解かもしれないが、少なくともエネルギーセクター保有ポジションは今すぐ投げる以外の選択肢はないと思われる。

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