村越誠の投資資本主義

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セクター投資アイデア

関連他社決算を見ていないのかと呆れるエヌビディア決算に対する市場反応

エヌビディア利益769%増、見通しも予想上回る-AIに飽くなき需要

お前ら一体今まで何を見てたん?

注目のエヌビディア決算について、もうあらゆるメディアや投資関係者が言及しているので、当ブログでは細かい決算については言及しないが、いわゆる市場予想を上回る決算で、株価も高いところからさらに高みへとなりそうなアフターマーケット数値となった(この記事自体を木曜日夜に書いているので、木曜日の米国時間の動きはまだ見ていない。)
しかし、個人的にはエヌビディアの決算前で今さらこんなお祭り騒ぎになっているのは、AI産業の動向を理解していないという人がまだ大多数であることを意味しているなと感じたのでまとめていきたい。

そもそもこのAIバブル相場というのは、一番早く気付いた人はChat GPTが登場した時点で気づいていたはずであり、当ブログでもChat GPTを触った時点で普通に気づいて、それについて記事を書いている。

【過去参考記事】

ChatGPTなど対話型AIバブルがスタートの予感


そしてこれまで複数回の決算を通じて、実際に旺盛なAI需要でエヌビディアの株価はここまでたどり着いてきたわけである。

確かにここまでAI関連の株が一本調子で上がってきたわけで、値ごろ感だけで高いと思う人も多くいることはわかる。
しかし、今回の決算シーズンでは、わざわざエヌビディアの決算を迎える前にいくらでもエヌビディアの事業は好調に推移していることは他社の決算をきちんと見ていれば気づけたはずである。
エヌビディアが製造を委託しているTSMC決算でも確認できていた。
GPUの一大需要家であるマイクロソフトの決算でも確認できていた。
ARMの決算もAI需要で好調であった。
いずれの関連他社決算が終わったところでAI需要が確認でき、その度にエヌビディア株は上昇してきた。
つまり、今回の決算シーズンでは少なくとも3回エヌビディアの株をエヌビディア自体の決算前に買うチャンスは存在したのである。
なのにエヌビディアの決算の前になって「エヌビディアの株を買うべきかどうか」とか言っている人は、一体今まで市場の何を見てきたのだろうか?という感想しか出てこない。

なので、エヌビディアの決算を見て「この決算はすごい!株価はまだまだ上昇する!」と興奮気味に語る人は、決算発表の表層的な数値と目の前の株価動向しか見ていない浅薄な知識しか持たない人と判断すべきだろう。
きちんとファンダメンタルズと他社の決算を見ていれば、まあこんなもんでしょというのが普通の反応であるわけで、わざわざエヌビディアの決算でドキドキ興奮する前に既に相当安値で仕込んでいてぼやっと眺めているだけで良いという自然体な態度だろうと思う。

【エヌビディアの株価チャート】
タイトルなし


もちろんここからエヌビディアの株価は上下にそれなりな値幅は生じるはずで、想定よりも下落するというシーンもあるだろう。
しかし、AIバブルにおいては根本的に投資ポジションを保有している人が根本的に全員死ぬような下落の仕方というのは当面しないだろうと思う。
では、ここからエヌビディアの株価がバブルピークを迎えて株価が下落するにはどういう状況になればよいのか?
それはやはり下記考え方に基づいた

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?


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SMCI株の乱高下の背景と先行きについて考える

スーパー・マイクロ株、9連騰後に急反落-急激な動きは「カジノ心理」

オプション市場に注目すれば需給わかりやすいかも。

ここもとのAIバブル相場で、色々な株価が高騰しているが、中でもミーム的に動いている株として有名なのがスーパーマイクロコンピューター(SMCI)である。

【SMCIの株価チャート】
タイトルなし


米国でのこのようなミーム的な動きをするような銘柄の特徴として、2021年以降多くなっているのがコールオプション買いによるところが大きい。
特に個人がオプション売買を気軽に行えるようになったロビンフッドの影響が大きく、明らかに実態より過大評価される形で短期間で上昇する中小型株にはオプション売買が十中八九絡んでいる。

実際にSMCIのオプション売買動向はどうなっているかというと、下記の図のようになっている。

【SMCIのオプション売買動向】
タイトルなし
https://www.cboe.com/us/options/market_statistics/historical_data/

2023年に1000単位ぐらいしか売買されていなかったのが、これが2024年1月19日にコールオプションが買われる形で株価が上にジャンプした。
ちなみに、なぜ2024年1月19日に一気に売買が活況となったかというと、TSMCの決算が好調であったことから買われたと推測される。

一度コールオプションで大きく上昇したが、この時点ではAIサーバーの組み立て屋としてのファンダメンタルズに基づいたものであったことから、株価の上昇は持続性を保っていた。
(この時点での株価は400ドル程度)

その後引き続きコールオプションが連打買いされることによって上昇を継続したが、そこにいきなりARMが決算発表と同時に株価が大幅高したために、ARMのコールオプションが爆儲けすると同時に二匹目のドジョウはどこにあるのかと探す動きが活発化した。
こうした流れでSMCIが注目されて、一気に400ドルから1000ドルへと駆け上がる展開となった。

しかし2/16はオプション売買高を見ればさすがにやりすぎであることははっきりしているだろう。
これまで平常時でオプションが1000~5000単位ぐらいしか売買されていない銘柄で10万単位で、しかも何のニュースフローもなしに売買されているのはさすがに現実が見えていない。
おそらく上手な投資家はコールオプションの異常な出来高を見て、これらがストライク価格になって行使されると大きな売り圧力になることは想像に難くない。
そうしたことを予想した先回り組が売りを大きくぶつけたために、2/16は阿鼻叫喚の大幅陰線となった。

今後SMCIの株価動向がどうなるかは現時点で非常に読みづらい。
一旦どこらへんか落としどころかは結局オプション売買が落ち着いた時に株価がどの位置で需給が釣り合って安定するかにかかっている。
少なくとも、一旦はこの馬鹿コールオプション買いの人達が諦めなければ先行きの安定を取り戻すことができないので、ここからSMCI株に買い参入するとすれば、まずオプション売買が落ち着くのを見てからでも遅くはないだろうと思う。

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ルノーEV部門上場見送りから考えるEV関連銘柄への関心低下

ルノー、EV新会社の上場見送り 「市場環境適さず」

冷えっ冷え。

上記は以前から話題になっていたルノーのEV部門をIPOさせようという計画について、ルノーが市場環境がよろしくないとして上場見送りになったと報道されている。
そもそもは、EV部門はエンジン車製造を含む元会社から切り離せばバリュエーションが高くなるという論理で計画されていたIPOであったが、このタイミングで上場見送りを決定した背景と、それが意味することをまとめていきたいと思う。

一般的にIPOを行う時は主幹事証券会社がどれぐらいのバリュエーションで上場できるかというのを慎重にマーケティングする。
証券会社にとってはIPOによる手数料は重要な収入源なので、成功させられるものは絶対に成功させて稼ぎたいものである。
しかし、投資家需要があまりにも低く、さらにIPOしようとしている会社が想定している最低募集金額にさえ満たなそうとなればIPOは断念せざるを得ない。

こうしたことを考慮すると、以前から市場の話題になっていたルノーのEV部門のIPOに対する市場投資家からの需要は冷えに冷えており、IPOしようとしてもド滑りするだけだということで上場見送りせざるを得なくなっている。
これは既に多くの投資家がEVに関連したポジションを持ってしまっており、しかもそのパフォーマンスが最悪な上に損切りできていないということも意味しているだろうと思われる。

このように投資家のEVセクターに対する関心は無関心どころか拒絶レベルになっているにもかかわらず、未だにEV関連の投資はもう社運をかけてしまっているみたいな企業が多く引くに引けないところが増えている。
まだフォルクスワーゲンなどはEV一辺倒は駄目だということで、ここでトヨタと同様にマルチパワートレーン戦略に切り替えようとしており、それぐらい企業体として余裕があるところは軌道修正をしようとしている。
しかしBYD以外の全く余裕がない中国勢はEVしか選択肢がないし、電池メーカー・その素材提供業者はもうEVに社運をかけてしまって後戻りができなくなっている。

【過去参考記事】
LGエネ、EV失速で減収 車載電池伸び悩み、中国勢攻勢響く 強気の増産計画で遅延リスク浮上

そのため、ここで手を引くことはシェアが尻すぼみになって死ぬことを意味するため、ひたすら手元の資金を設備投資と生産に突っ込むわけである。
つまりもう最後の生死をかけた戦いが実質始まっているということである。

しかし、需要が既に設備投資増加による生産拡大に対して全く足りないとなれば、運転資金を馬鹿みたいに食う自動車業界で大量在庫を抱えることは致命傷にならざるを得ず、それが明らかになった時点で生産調整さえうまくできないような企業は真っ先に株価が暴落して資金ショートするわけで、そうした地獄のような展開が見えない限り、EV関連の需給バランスが整うとは考えづらい。

そうしたことを反映して、EVおよびバッテリー関連銘柄を集めたETFであるLITは暴落を決め込んでおり、現状その下落の流れは止まらないように見える。

【LITの株価チャート】
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プロでもきちんと認識できていない生成AIバブル

生成AI投資には乗れません(苦瓜達郎)

プロでもこんな程度の認識しか持っていないもんです。

エヌビディアの株価は決算前なのにバンバン最高値を更新し、生成AIが具体的に業績に寄与し始めているマイクロソフトも決算後多少押したが再び上昇基調にあり、AI関連銘柄は絶好調な動きをしている。
当ブログでは去年Chat GPTが登場した時点で、これはすごいものが出たもんだなと思い、積極的にAI関連は良さそうだと述べてきた。

【エヌビディアの株価チャート】
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しかし、上記日経新聞記事で、中小型株を得意とし、いくつか投資関連書籍も出版している有名ファンドマネージャーである苦瓜氏がAI関連銘柄についてコメントしていたが、これを見てプロもこんな程度の認識しか持っていないもんだなと思い、これをまとめたい。

上記日経新聞記事で苦瓜氏はひたすらに対話型AIについてディするコメントをしている。
結論としてはAI投資が社会全般に影響するような効果はないし、IT企業によるAIへの巨額の投資も続かないので、AI関連銘柄には乗れないと述べている。
しかも苦瓜氏はChat GPTを触った挙句、「こんな人間が実際に身の回りにいたら嫌だなあ」という謎の感想を述べている。
しかし、既にChat GPTやCopilot Proを毎日のように業務で駆使している人から見ればあり得ない感想であり、対話型AIを駆使している人とそうでない人でこれだけ認識の差が生まれていることを象徴している記事になったと思う。
まあ苦瓜氏自体がそもそも中小型株をメインとしており、大型株でマクロ動向でポジションをぶん回すというスタイルではないので、あまりにも大きい波が来るとついついそのインパクトを軽視してしまうという流れはあるだろう。
こういう認識を持っているのは主に中小型株でストックピッカー的なスタイルを取るプロであることはなんとなく想像に難くないと思う。

結局プロの投資家でも、きちんと情報をアップデートできなければ、このような的外れな考えしかできず、投資機会を大きく逃すのである。
(もしかするとドラッケンミラーのようにポジトークで他人に買われないようにするために言っている可能性はあるが)
逆に言えば、まだ市場参加者の多くがこの程度の認識しか持っていないということは、生成AIの有用性について正しい理解ができておらず、乗り遅れている人が大量にいることを意味しており、確かにAI関連株は高く見えるものの、押し目がありながらまだ上昇が期待できることが想定される。
投資では、こうした認識ギャップが多大な利益を生む源泉なわけなので、まだまだ一般経済紙でこのような言説が出てくることは、嘆かわしいと思うより、まだまだロングポジションを引っ張れるということで嬉しくさえ思う。

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銀行勢が次々と米国商業不動産のノンリコースローンで損失を出し始める事態に変化

あおぞら銀行15年ぶり最終赤字に 24年3月期、引当金増

さすがに監査法人を説得できなくなるレベルで悪化してきた。

上記はあおぞら銀行が米国の商業不動産向け債権で明らかな焦げ付きが発生し、引当金を積む羽目になり、赤字&無配に陥ったということで無能の烙印を押されて株価が暴落したニュースである。

具体的には米国オフィス不動産向けノンリコースローンの評価額が悲惨な評価額になっている

【あおそら銀行決算資料】
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なぜこんな数値になるかというと、ノンリコースローンといって、担保資産から生じるキャッシュフローのみを返済原資とするローンで、借りる側からしたら責任範囲を物件のみに限定することができるローンである。
ただし、もちろんだが貸し手側が相応に高いリスクを取るために、高い利率を要求したり、貸出当初のLTVに厳しい制限をつけたりなどしてリスク・リターンのバランスを取ってローン提供を行うわけである。
しかし、オフィス稼働率が下がり、さらに物件評価金額や売買金額が下がると全く回収率が見込めないタイプのローンなわけで、リモートワークの普及と金利上昇によるキャップレートの上昇と景況感の悪化で返済原資であるキャッシュフローは入ってこないわ、担保物件価値は下がるわでどうしようもなくなっているというわけである。

これが意味することは、現在の金利水準はやはり景気抑制的な水準であり、企業側は慎重な資金調達と、リモートワークの普及効果もあるが慎重すぎるオフィス拡張しかしないということである。
そういうことを背景に、これまでだらだらと米国オフィス価格は全般的に下がってきたわけである。
そして銀行はこれまで監査法人に対して、「当初LTV〇〇で融資していて、まだ市場価格はいくらぐらいで回収確度は高いので減損しなくて大丈夫です」と説得して減損や引当金の積み増しを回避してきたわけだが、とうとう監査法人から「いやあ、これ以上はもう擁護しきれないっしょ」という審判が下されたということである。
そしてニュースを見る限り、これはあおぞら銀行だけの特殊事案ではなく、ドイツ銀行・ニューヨークバンコープシティと有名どころから中小銀行まで幅広くヒットしているわけである。

【参考ニュース】
米地銀NYCB株、一時46%安 引当金急増で赤字転落

ドイツ銀、米商業用不動産に絡む引当金が4倍以上に-借り換えリスク

SVBの破綻においては、まだ商業不動産ではなく、単に満期保有が本来はできる上に時価がはっきりしている国債・MBSの逆ザヤ+預金流出という後から見ればスーパーテクニカル要因で破綻したわけで、結局FRBの金融政策に影響を与えるレベルには至らなかった。
しかし、今回の商業不動産関連融資損失は明確に金融引き締めによるキャップレートの上昇と景況感の悪化が原因にあるわけで、これは十分に米国に金融引き締めを緩和させる催促になるだろう。

現状は5月が利下げの基本シナリオになっているが、この商業不動産の悪化が広がれば、もはや25bpsの利下げなんてなまっちょろい話ではなくなり、一発50bpsの利下げなども出てくるわけで、FRBが米国の銀行がバタバタと倒れないように機動的な利下げをすることが望まれる展開にいよいよ変化してきている。

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