村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

米国経済

一旦ブル派の後退を余儀なくさせた米国CPI統計

米消費者物価指数、1月3.1%上昇 市場予想上回る

一旦ブル派は後退せざるを得ないかも。

注目されていた米国CPI(インフレ率)であったが、予想外に上振れた形で相場も一旦後退を余儀なくされているということで、所感をまとめていきたいと思う。

まず統計結果としては総合は市場予想前年比+2.9%に対して+3.1%、コアは市場予想+3.7%に対して+3.9%と全体として上振れとなった。
上振れの大半が家賃だったこともあるが、家賃除きのスーパーコアも上振れたことが全体としてインフレ率の鈍化進捗は遅そうだということを想起させざるを得ない内容であった。
この辺はおそらくもう色々報じているところもあるだろうということで、鈍化が市場が思っているより遅いというところだけおさえておけばいいと思う。

問題は市場の反応である。
相場はこれまで全面的ブルなところから当然だが冷や水を浴びた形になった。
米国債金利は全面金利高で、市場が予測していたFRBの利下げパスが後ろ倒しになった分株も下げざるを得なかった。
株も順調に立場の弱い中小型株が一番ひどい下げ方をし、大型株もこれまでかなり勢いづいて上昇していたこともあり調整を余儀なくされた。

【ラッセル2000のチャート】
タイトルなし


とはいえ、ここでうぎゃーとか言っている人は2月になってから買い始めている超出遅れ組であり、去年時点でポジション構築している人は、この辺で調整するなんて当然だろと思う位置であり、昨日の下げ方は投資家それぞれの立ち位置でかなり感じ方は違っただろうと思う。
(個人的にもこの辺で調整するのはまあ当然だろと思う次第)

総合的に見ると、当ブログのような比較的ブル派の見方については一旦後退を余儀なくされる展開になったと感じた。
3月どころか5月利下げも危ういとなると、相場に対して強気に望むべきという論拠が一定程度薄れることは確かである。
まあそうは言っても12月以降は買い増しせずポジション引っ張るのが吉と考えていたので、この辺で小休止的な形になるのはまあやむを得ないだろうなと思う。
中長期ポジション前提で持っているポジションは引き続き引っ張れると思うが、短期狙いでレバレッジかけてるものとかは欲張らない方が無難ではないかと感じた次第であり、一歩退いて相場の押し目を狙いたいと思う。
まあもしかしたらここから押し目なしで上に行く可能性はあるかもしれないが、その時はしゃあないと思って押し目狙うのは諦めるぐらいの開き直り姿勢で良いように思う。

特に今回のCPIで泣く泣く米国超長期債3倍ブルのETFであるTMFを我慢できずに損切りする人が出始めていることを考えると、金融引き締めで相場が完全にぶっ壊れるというところまではないんではないかなと思う。
インフレ率関連であらたな進捗が見られるデータが出てくるまでは相場としては停滞するかなというイメージを持って取り組みたいと思う。

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意外な米国雇用統計結果に意外な株価上昇となった背景を考える

米1月雇用35.3万人増と予想大幅に上回る、賃金の伸び約2年ぶりの高さ

意外な雇用統計結果から意外な株価動向になった。

注目されていた米国雇用統計が金曜日に発表されたので、結果と市場動向をまとめたい。

雇用統計は様々な疑問や憶測はあるが、まさかのびっくりな内容となった。
非農業部門雇用者数の増加(季節調整済み)は市場予想18.5万に対して35.3万人と大幅上振れであった。
ただこの人数増加だけであれば、この数値は結構ぶれるので気にされなかったかもしれない。
問題は時給の伸び率が市場予想前月比0.3%増加に対して0.6%の増加と、こちらが市場を驚かせた結果となった。
しかし、いくつかつぶさに統計結果を見ると本当なのかと思える部分もいくつかある。
まず週平均労働時間が34.3時間から34.1時間に減少している。
ただしこれは冬の天候が影響しているかもという話はある。
また、正社員は削減され、パートタイムの増加が数値を牽引している。
JOLTやADPがそこまで強くなかったうえに、ADP雇用の転職者と非転職者の給与伸び率も普通に低下している。
さらにグーグルトレンドでもLayoffの検索数が増加している。

【Layoffのグーグルトレンド】
タイトルなし


こういったことを総合すると、この1月の統計結果は本当か?と疑いたくなることは確かであり、個人的にもまだ素直に受け入れられていない(これは普通は負けフラグであるが)。
実際にこの雇用統計が真実なのかどうかは少し時間が経ってみないとわからないが、これで個人的には予想していた3月利下げはなくなり、5月利下げがベースシナリオに移行した(泣)

これに対する金曜日の市場動向を確認したい。
予想外の雇用統計の強さは本当なのかという疑問はあるが、それでも無視できない流れと言うことで米債金利は上昇せざるを得なかった。
上昇幅もどの年限も15bps前後ということで、FOMC後で株より米債買ってた方がええやろって考えてた勢は手痛い打撃を受けた。
特にTMF購入勢は未だ逆イールドであり、TMFはレバレッジの関係で金利が下がらないと損失が増えていく傾向にあるわけで、本当にTMFのポジションは大丈夫だろうかという疑念がわく。

一方で株の方は寄りこそ弱かったものの、引けにかけて大型株中心に大幅上昇する形となり、これは多くの市場参加者にとってさらに予想外のことである。
S&P500は普通に最高値更新であり、雇用統計で金利上昇だから株価は駄目だろうと考えていた人には大きなショックとなったと思われる。
一部ではこの上昇は騙しだと色んな理屈をこねて自分がロングポジション持っていないことを正当化する理論をXでだらだらとつぶやいている人もいるが、これは逆に買っている側はどういう論理で買っているのかを後解釈でもいいので考えることが重要だ。

【S&P500のチャート】
タイトルなし


ここで買っている人の論理を考えるといかのような形だと思う。
確かに雇用統計は強いが、2022~2023年は雇用統計が強いと株が下がっていたのは、雇用が強いがためにあとどれだけ政策金利が引き上げられてしまうのかという恐怖感があったからだ。
しかし、今は前回FOMCで利上げ可能性は完全にゼロになり、ここからはいつ・どれだけ利下げするかというだけの話である。
つまり、これ以上金融政策が景気を邪魔することはないというわけである。
これに対して雇用が強いことは素直に米国がソフトランディングに向かっている証左であり、現在業績が堅調な企業(つまり大型ハイテク株)は買いで問題ない上に、今株に対して弱気な人間の論理は「ここから米国景気は厳しくなる」と言っている人(ガンドラックなど)中心である。
つまり2023年の弱気派は米国景気が強すぎて金融引き締めにより株がクラッシュするという論理であったが、2024年の弱気派は既に金融引き締めは強すぎるので米国は不景気になり株価が下がるという論理が中心になっている。
そして今回の雇用統計はこれを否定するものである。
こう考えるのが自然だろう。
つまり、もう株のプレイヤーは「ソフトランディングするのかしないのか」ではなく、「もうソフトランディングした」という前提で、ここからは景気がマイルドに強いことは是であると判断しているということである。
そういった意味では、下記過去記事の通り、ソフトランディングするかどうかの考え方をきちんとできていたかどうかで現在の投資パフォーマンスは決まっていると考えるのが妥当だろう

【過去参考記事】
景気のハードランディングはどのように発生するのか?米国景気はハードランディングするのか?

当ブログでは11月ぐらいまでは押し目買いでいいでしょうという論理で進めてきて、12月以降はひたすら底や押し目で拾えたポジションを引っ張ることを是としてきた。
もしかするとさらに倍プッシュでポジション追加すべきだったのだろうかとも思うが、どうせ上値目途なんて当てられないんだから、十分な量のロングポジションを引っ張るだけでも合格点だろうと個人的には自分に言い聞かせており、仮に金曜日の株価上昇が騙しだとしても、その後の押し目を拾えば良いと考えている。

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5月利下げが基本路線になったFOMCと相場動向の振り返り

FOMC声明要旨、目標達成リスク「良いバランスに移行」

3月利下げは否定して、5月利下げに誘導する形。

注目されていたFOMCが開催されたので、中身と相場の動きを振り返りたい。

声明文は単に利上げ文言がなくなったということで、若干タカ派的に捉えられた。
その後、記者会見では雇用需給はまだタイトながらも、ここもとの6ヵ月のインフレ動向は望ましい動きをしていること・2%のインフレターゲット達成を確信しつつあることなどに言及されていて、大分ハト派じゃないですかということになった。

ただし、先々の利下げについては、やはりフリーハンド的な余地を残したいのかミーティング毎にどうするか決めることの強調をし、ソフトランディングするかどうかも明確に回答しなかった。
3月利下げについても現状のベースシナリオではunlikelyという言い方で、仮に大幅下振れ統計などが出た場合の保険をかけながら、PCEコアデフレーターの数値が前年比ベースで2%に限りなく近くなる5月のFOMCに向けての利下げ方向に誘導する形となった。

QTについては、冒頭説明では触れられなかったが、記者からの質問でQTどうなん?と出たのに対して、次回に議論を深める準備があるとして、3月にQT減速させるというより5月にQT減速させるという雰囲気が妥当な形に誘導していた。

というわけで、3月利下げというのはプッシュバックされたが、5月からはさすがに利下げされるでしょというのが明確化したFOMCだったとまとめたい。

相場の動きはFOMC前から前回ショートを踏まれまくったことに加えて月末要因というのもかさなり、米国時間寄りの時点で大幅米債金利低下で進んでいった。
記者会見中もその低下幅は変わらなかったが、途中で3月利下げ可能性についてプッシュバックしたこともあり一時的に低下幅を縮小させたものの、その後株価の下げ幅が大きくなったことから結局下げ幅MAXのまま米国時間は引けた。

【米債10年金利のチャート】
タイトルなし


株については11月の底値からこれまで一本調子で上がってきたところに、マイクロソフト・アルファベットが生成AIへの投資を先行させたことによる費用が嵩んだことから調整がかかっていたが、手掛かり難ということで調整幅を大きくした。
債券金利は概ね問題がないため、株は単純に上がりすぎなので休憩をはさむ必要性が生じているというのが妥当なところだろう。

【S&P500のチャート】
タイトルなし


現在の政策金利水準は景気を抑制していることを考えれば、手掛かりは3月FOMCまでなさそうであり、それまでに米国株は押し目を作ると個人的には予想している。
その幅はどれぐらいかというと、金融相場であることを考えれば10%調整なんてのはちょっと考えづらく、5%前後ぐらいの押し目になるかなと思うが、そこはVIXやプットオプションのデルタなどを見ながら、天井でロングした馬鹿が投げざるを得なくなったポイントを探りたいと思う。

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米国のインフレ率2%ターゲットは既に達成されている

Fed’s favorite inflation gauge rose 0.2% in December and was up 2.9% from a year ago

FRBのインフレターゲット2%は既に達成されている。

先週金曜日に注目されていた米国PCEデータが発表されていたのでそれを今回はまとめたい。
統計データとしてはPCEコアデフレーターは市場予想前年比3%に対して結果2.9%、前月比では0.2%予想に対して0.2%であった。
前月比については小数点が丸められているため、実際の数値は0.17%となっている。

PCEコアデフレーターについては前年比では確かに2.9%とまだ2%に達していないように見える。
しかし、これはまだインフレ率が高かった1~5月の数値を含んでいる。
下記データがFREDから元数値を入手して前月比を計算したデータになる。

【PCEコアデフレーターの前月比】
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https://fred.stlouisfed.org/series/PCEPILFE

これを見ると1~5月のまだインフレが残っていた時期の数値がすさまじいことがわかる。
ではインフレが正常化した6月からの数値を掛け算していき、7か月分を12ヵ月に換算するとどういう数値になるのだろうか?

【計算結果】
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結果は1.88%である。
インフレターゲット2%をクリアしているのである。
さらに言えば、木曜日に発表されていたGDP発表におけるコアPCE価格指数の四半期の前年比データも2%であった。
これらを総合すれば、やはりFRBが金融政策において最大の指標としているインフレ率は2%に既になっており、スティッキーもくそもないし、ラストワンマイルなんてものもなかったのである。
これこそFRBが待ちに待ったものではないか。
それに12月の前月比+0.17%という数値も2016~2019年と同じ数値である。
そしてここで思い出してほしいのが、この2016~2019年で同じコアPCEデフレーターの数値であった時の政策金利の数値はいくらであったかといえば、2.5%なのである。
いわゆる、FRBメンバーの大多数が予想している中立金利なのである。

そう考えると、もうFRBはいつ利下げしようかおかしくないわけである。
ただし、CME開示のOISによる政策金利予想を見ると、市場では利下げは前年比の数値自体が2%になる5月を100%としており、まだ3月については50%程度と見ている。
しかし、3月までにさらにもう一回PCEコアデフレーターの発表があるが、そこでもし下ブレしてしまった時に、伝統を重んじるFRBが1月FOMCで利下げ議論に入っていると言及しないと3月に利下げができなくなってしまう。
そう考えれば1月FOMCにおいて利下げ議論を始めていると言及する可能性は非常に高いと思う。
それさえ入ってくれば、利下げ開始時期が3月だろうが5月だろうがリスク資産にはほとんど関係ない話である。
また、上述したように2016~2019年程度のインフレ率に戻ってるとすれば、その時期の10年米国債金利3%前後であったことを考えれば、米国長期金利は3%に近づいていくだろうと思う。

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今年米国利下げ6回はOIS上は織り込まれているが、市場全体では浸透せず

米12月PPI、前月比0.1%下落 予想に反し 前年比は伸び加速

統計結果は見えてるはずなのに・・・

市場では引き続き注目はいつ米国が利下げを開始するかというところにある。
これまで当ブログでは3月利下げを前提とした考察をしているが、一方で市場はまだ3月利下げについて相当程度懐疑的であることをまとめていきたいと思う。

前回米国CPIについては当ブログでも触れたが、先行きはまだ引き続き緩やかに落ちていきそうな状況だが、市場予想を上回ったということもあり、今年の利下げ回数についてどうなのかと色んな意見が飛び交っている。
そもそもCPI自体が遅行指数で、この数値データ自体が実経済に対しておよそ2~3ヵ月近く遅行していることもあり、個人的にはそこまで問題ではないと思っている。
そして先週金曜日のPPI(特に食料・エネルギー除く)が市場予想から下ぶれて、普通に前年比+1.8%という結果で、この結果だけ見ると既にインフレ率2%は達成済みな上に、前月比+0%の時点で直近値だけ見るとインフレターゲット以下になっていてデフレの入り口に立っていることが判明した。
それもあり、CME開示の政策金利予想において3月利下げは2/3から8割に増加している。
日に日にどちらかというと3月利下げ確度は高まってきているはずなのである。

【CME開示の政策金利確率予想】
タイトルなし


このようにOIS上は3月利下げ確率が8割も織り込まれていて、3月FOMCまで2ヵ月しかない。
この間にCPI発表は1回、雇用統計2回、PCE発表は2回しかないわけで、利下げに関しては
「3月開始が濃厚だし、3月スタートで毎回25bps利下げなら6回利下げが当然」
という話になる。

しかし、報道やXのツイート・Youtube動画を見る限り、3月利下げについてはどちらかというと懐疑的どころか絶対にないと言い切る人さえいる始末である。
しかも統計を見ているはずなのにそういう回答が出てきているのである。
しかもこれは素人個人投資家だけでなく、プロの機関投資家でさえ同じように3月利下げはないと思っている人が多いように見えるのは、ブルームバーグ報道・ロイター報道を見ると感じるところだ。

なぜ3月利下げを信じられないかと言うと、FRBが12月のFOMCで2024年の利下げ回数について3回が中央値としていることや、複数FRBメンバーが市場の利下げ予想について3月を否定する(しかし拒絶的なプッシュバックというよりふんわりとしたもの)発言が出ているからで、それを信じている上に、遅行であるCPIはともかく、CPIよりは先行性があるコアPCE・PPIが既に2%の数値を達成しているかつ現在の金利水準が異常な政策金利水準であることを忘れていて、しかもインフレは収まらないという妄想に囚われていることが大きな要因となっている。
しかもOIS市場はきちんとそれを捉えているにもかかわらず、逆に一般的な債券市場はそれを捉えられていないという不思議な状態である。

こうした市場参加者間で大きな認知がズレている状況は個人的には非常にやりやすいと感じる。
金利面でも株面でもリスクオフ目線の人が多いが、表面的なところしか見えておらず、もう一段踏み込んだところにたどり着けていないわけで、考えが浅い人達が現在もっと深く考えている人達の思考にたどり着くまでは比較的安心してポジションを維持できる相場だろうと思う。

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