村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

日本経済

日銀の金融政策修正と市場反応の振り返り

日銀、金融正常化へ一歩 総裁「緩和的な金融環境継続」

長く苦しいデフレの闘いに終止符。

注目されていた日銀政策決定会合があったので、内容と市場反応を振り返りたい。

もう1週間ぐらいかけてちょこちょことマスコミにリークする形で情報を流していたのか、マイナス金利解除・YCC撤廃・ETFおよびJREIT買い入れ停止というのが報道でもうバンバン報道されていたことから市場は既に十分に織り込み切っており、実際にこの過去の負の遺産的な金融政策については全て取っ払われることになった。
社債オペについても1年後に停止になり、月間6兆円程度を目安とした国債買い入れのみという伝統的量的金融緩和にまで金融政策は調整された。
(国債買い入れにおいても年限による買い入れ金額の調整が入っていた)

ただし、日銀としてはこれは金融引き締めではなく、金融緩和を持続的に行うための措置であることを強調し、長期金利が日銀想定より上昇した場合は機動的な買い入れを行うとして、変に外人勢がアホショートしないようけん制を入れた。 
2%の持続的物価上昇についてもまだ距離があると言明しているし、特に中小企業の賃上げ動向もヒアリングをかけていると説明していることから、企業の継続的な賃上げというのに相当気を使っており、この雰囲気は賃上げの確認ができるタイミングでしか利上げやバランスシートの縮小は検討しなさそうということがうかがえた。
日本の場合賃金改定はほとんどが春闘・年度明けなわけであり、年度中に改定される可能性は低いことから、年1回程度の何かしらの金融引き締めがあるぐらいの考え方で良いだろうと思う。
そう考えれば、0.25%の利上げはあっても来年3月になる可能性が高く、そのペースの利上げ速度であれば概ね経済には今のところ影響はないだろうと想定される。

市場の反応は明らかに緩やかな金融政策調整見込みを好感した。
円安反応になったことから輸出系企業や高配当大企業銘柄中心に株は高騰、賃上げ期待から内需も上昇と半導体と銀行以外は満遍なく上昇したように思われる。
半導体はやや行き過ぎ、銀行も行き過ぎなところだったので、この2業種はややマイナスになった。
より上昇は目立ったのは、金利上昇に弱い不動産株とJREITの高騰だろう。
これらはあれだけ日銀が相当コミュニケーションに気を使っていたにもかかわらず、なぜか連続利上げみたいな意味不明な金融政策見込みが一部参加者であったことからひたすら弱い動きをしていたが、あらためて持続的金融緩和が表明されたことから+3%みたいな暴騰になった。
JREITはそもそも2月末頃に入ってからは仕込み時だろうと書いてきたが、これは概ね当たったと評価できそうだ。

【過去参考記事】

JREITはセリングクライマックスを越えたか


【東証REIT指数のチャート】
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国債金利も発表後は材料出尽くしでそんな利上げを予想できる範囲で4回も5回もせんやろということで、普通に10年金利とか買われて0.7%台で落ち着いていることから、特段市場には何も影響を与えず、これまで早くやめるべきと言われてきた金融緩和策は撤廃することに成功した。
まだインフレが見えていなかった時代では、YCC撤廃やマイナス金利解除なんてしたら市場がぶっ壊れるとまで言われてきたが、経済環境が変わればあっさりやめられるもので、これは2022年に入って欧米各国があれほどもう政策金利は上げられないと言われていたところからあっという間に過去対比と同程度の利上げしたことと同じような風景となった。
こう考えるとインフレ対策よりデフレ対策の方が100倍難しいことが分かった次第で、下記過去記事の通りだと思う。

【過去参考記事】
なぜデフレをやっつけるのはインフレをやっつけるのより難しいのか?

これで正式に日銀の30年に渡るデフレとの苦闘は終了したわけであるが、その道のりは全く平坦ではなかったのは下記書籍を読んでもらえればわかる話である。

【参考書籍】
ドキュメント 日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀

過去30年にわたって多くの金融政策当局者や政治家が苦悶しながら行い、多くの企業経営者が耐えてきた苦労がようやく報われ始めたと表現できそうで、引き続き日本株には強気で挑みたいと考えている。

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日本の中古マンション市場動向(2024年2月)

http://www.reins.or.jp/library/2024.html
↑中古マンション市場統計を出しているレインズデータライブラリーのHP

マンションから戸建てシフト起きてる?

毎月レインズデータライブラリーで発行されている首都圏の中古マンション市場動向の2024年1月データを今回は確認していきたいと思う。

【中古マンション市場概況】
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実は今回はマンション市況は成約数の伸びが落ちている以外は大して見るべきポイントはない状況である。
成約単価とかはまあこんな伸び率じゃないですかねという中で、在庫も微妙な感じ・成約数もなんか微妙な感じとなっている。

【中古マンションの在庫状況】
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在庫増加は落ち着いている一方で、成約数が伸びていないので、なんとなくトレンドに変化が生じるようには見えない。
春闘で賃金上昇3%以上が見えていて、与信増加というイベントが控えているので、現状でも中古マンション市場においては崩れるような気配はないと思われる。

地域別成約では神奈川以外はまあそこそこの成約状況、成約価格は郊外奥地以外は概ね前年比+5~+10%で推移するといった、熱すぎず冷たすぎずでインフレ連動っぽい感じの動きとなっている。

どちらかというと今回注目したいのは中古戸建市場の方である。

【中古戸建市況概況】
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前月の市況では全体として中古戸建は良くないと書いてきたが、ここに少し変化が生じてきている。
価格とかは伸びていないが、明らかに成約数が伸びている。

【中古戸建成約件数】
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横浜・川崎は前年比マイナスだが、東京区部・埼玉と前年比+10%以上の成約件数である。
これは普通に考えると新築マンションは異常価格だし、中古マンションもなんとなく割高だよねえとなった時に、新築戸建てだと変に価格乗っけられてるけど、中古戸建なら指値チャンスあるし適正価格でしょということで成約が増えているように見える。

【在庫推移】
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在庫については中古戸建はまだ重たいものの、成約数が上にジャンプしてくれたおかげで、ようやく在庫の上げどまりが見えてきたように思われる。

これまで不動産悲観論を維持している人はマンション価格は高すぎて下落するという論調が多いが、現実論はマンション高くて買えなければ供給が絞られている中で他に選択肢がないかと探しているのが実需の動きである。
そして、実需の動きは適正価格で推移している中古戸建に着目されるようになっている。
多少駅遠でもええでしょという現実的な妥協をしているという点もあるだろう。

そう考えると、結局現在はマンションと戸建てでシーソーのように実需層は動いているだけで、特段業者や現在住宅を保有している人が投げ売りして市況を崩すといった兆候はないものと思われる。

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SQ越えのスケベコール買い消滅で踊り場になった日本株

日経平均株価、終値868円安 楽観相場に円高の冷や水

ぐだぐだ下がっている理由を説明している人もいるが、もっと話は単純である。

日経平均4万オーバーでお祭り騒ぎなところからブレーンバスター的に2000円近く下がったりして、これまで元気がなかった暴落煽り勢が俄かに元気を取り戻したり、変に買い気が強い人はこここそ絶好の押し目みたいに自分に言い聞かせたりしているのがXで散見されるが、現状の日本株市場のステータスをまとめていきたいと思う。

そもそも日経平均3万8000円オーバーのラインは明らかに調子に乗ったロング勢のやりすぎである。
理由は下記過去記事にも書いた通り、日本株が上昇する過程の中で乗り遅れたプレーヤーがワンチャンクズのファーコール(3万8000円越えでインマネするやつ)がインマネすればウハウハとばかりに大量に仕込んでいた。

【過去参考記事】

日本株急騰の小天井を示唆する日経VIの上昇


日経平均3万8000円越えは今年中旬~後半な雰囲気


そして、なんとこれがインマネしてしまったのである。
しかし、インマネした時点ではまだSQ日まで1ヵ月近く時間があり、もうワンチャンいけるんじゃないかというスケベコールオプション買いが続発した。
それに伴って日経インプライドボラティリティーが上がるというとんでも相場が生み出され、なんとなくで先物売りしていたやつは全員燃やされる形でなんと日経平均4万オーバーを達してしまった。

しかし問題は日経平均4万オーバーの翌週にはSQ日が控えていることにある。
現在ワンチャンでスケベ買いされていたコールオプションの利益を確定するために、コールオプションロング勢が次々と先物売りをして利益を確定してきた。
一方で、もうSQ日まで日にちがないということで新しいコールオプション買いが発生しなかった。
これが先週の週初から日経平均が弱含みで推移していた背景である。
この辺は岡崎良介氏のマーケットアナライズの動画も見ながら、確かにそうだなと思った次第であるので、興味のある方は参考にしてもらいたい。

【参考動画】
https://www.youtube.com/watch?v=IYXtPV5fpNw

そしてSQ日を越えてオプション・先物が一旦消えた。
しかし、ここで思い出してほしい。
これまでの日経平均の想定外の上げというのは大量のスケベコールオプションの買いが実現してきたものであり、ここで利益をたっぷりとれた人達はしばらくコールオプションロングでの取引はしない。
残っているのは底値から現物を持っている人か、アホなド高値でロングしてしまった人達だけである。
つまり新規買い勢が圧倒的に足りないのである。
それがここもとの日本株下落の理由である。
色々ファンダメンタルズの変化で無理やり説明しようとする人がいるが、ほとんどファンダメンタルズが変化していないので、単に祭りが一旦終わったというだけの話なのであり、すごい長文で下がっている理由の講釈をたれている人は大した相場観を持っていないも同然だと思う。

ではこれで日本株は終わりかというとそうではない。
今の日本のファンダメンタルズを考えれば、アホロングが淘汰されれば再びそこからロングをしこもうという人はわんさかいるし、何しろメディアを見れば未だに日本株に悲観的な人が大量にいて、まだまだ潜在的にロングを構築する人は大量にいる。
少なくとも誰しもが資産の投げ売りに迫られるようなクレジットクランチではないと考えている。
クレジットクランチに関する考え方については下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株式投資において最も恐ろしいクレジットクランチとは何か?(リーマンショックなどの過去歴史の解説付き)

そう考えると1~2回程度SQ日を越えれば禊は済むだろうと思っている。
短期はともかくとして、中長期ポジションで追加したいというのであれば、少なくとも5月まで待ち・遅ければ9月まで待つのが吉だろうと思う。
ただ、普通はピンポイントで底を当てるのは難しいので、個人的には5月後半~9月の間でひーひーいいながら少しずつ買うしかないのではないかと思っている。
少なくとも1ヵ月半ぐらいは不用意な買いはすべきではないと考えている。

【日経平均のチャート】
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ワンルームマンション投資のオワコン化が一気に進む

マンション家賃、最高更新 1月 東京23区は前年比1割高 販売価格高騰、賃貸へシフト

さすがにこの時代でワンルームマンション投資を新規で始めるのはセンス×。

上記記事では都心マンション家賃がファミリータイプを中心に上昇しているというのが報じられており、記事の中を見てもらうと実際に家賃推移が掲載されている。
しかし、注目したいのはそこではなく、シングル向け物件の家賃がビタ一文上がっていないところにある。
ファミリータイプとカップル向けの家賃が上昇しているのに、シングル向けの家賃が上昇しないのはなぜか?

シングル向けというのは、もう一言で言えばワンルームマンションである。
そして日本市場においてはとにかくワンルームマンション投資が多すぎる。
ワンルームマンション投資は色々調べればわかるが、いわゆる年収が400-500万円しかない日本の平均年収程度しか持っていない人でも始められる投資としての代表みたいな感じになっている。
しかし、年収400-500万円程度の人がなけなしの与信を気軽に使う時点でこの投資はどうかしている。
しかも多くの人が現物を見ずにその投資を決定していたりと、そのプロセスは末期である。

【過去参考記事】
熱狂的バブル相場の天井を捉えるために見るべきモラルハザード・不正行為とは?

一方で、ファミリータイプの物件になると、都心だと少なくとも23区であれば現在は築25年以内のまともな物件だと4000万円以上は払う必要性が生じる。
(中心の区になると6000万円からスタートみたいな感じ)
そうなるとワンルームマンションの過剰供給の原因となっている年収400-500万円で頭金を持っていないような人は年収倍率10倍近くになってしまうため、投資ができない。
そういう手軽さがないファミリータイプにまでは都心での投資物件は進んでいないということである。
だからシングル向けは供給過剰で家賃が全然上がらないのに、供給が絞られている2LDK以上の物件の家賃上昇は進むわけである。

実際にSUUMOで23区の賃貸物件を見てもらいたい。
ワンルーム・1LDKまでは大量に賃貸物件が存在するが2LDKより広い物件になると途端に選択肢がなくなるのである。
それを見るだけでも、どう考えても低属性が行うような不動産投資に限界が来ていることがうかがえる。
それにネットサーフィンをしていると死ぬほどこの低属性マンション投資の広告があふれている上に、ワンルームマンション投資を押し込んでいる上場企業の株価が上昇しているのを見ると、引き続き賃貸ワンルームマンションの供給は増えていることがわかる。

【FJネクストの株価チャート】
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なのでこれから不動産投資を始めるとすれば、ファミリータイプしか勝ち筋はないと個人的には考えるが、それは札束自体を積む必要性があり、一般世帯で投資できるものではないと思う。
普通に住宅ローンで自分が住むファミリータイプ物件買うのが一番真っ当だと思われる。

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日本の実質GDPマイナスで外国人のJGBショート戦略が実質終焉

日本、予想外の景気後退入り GDPが2期連続マイナス

逆に相場落ち着きに貢献しそう。

上記はそこそこ前の話になるが、2月15日に発表された日本の実質GDP成長率がマイナスという話である。
これは普通の人が見ると、これで株価が上がるのはおかしいという話になってしまうが、個人的には逆にこれまで調子こいて日銀を崩そうと日本国債(JGB)ショートを続けていた外国人の戦略は完全に破綻し、市場の主導権を日銀が完全にグリップしたことを意味すると感じ、日本国債市場で市場の安定感が戻ってきたなと感じた次第だが、これについてまとめていきたい。

2022年後半から2023年中旬まではずっと欧米各国がインフレ対応最優先で従来では考えられないペースで利上げを行ってきて、国債ショートをしてきたヘッジファンドに多額の利益をもたらせていたが、同様にJGBショートで利益をあげようと狙った外国人が日銀アタックを続けていたのは記憶に新しい。
実際に日本のインフレ率も久々に高水準になったところでYCCアタックをかけまくったのは記憶にあたらしい。
そうした表層的な数値しか見ない外国人投資家から見た時に、この実質GDPマイナスというニュースは、これまで必死にJGBショートかましてYCCブリーチングを狙っていた戦略を再考せざるを得ないものとなるだろう。
普通に考えれば実質GDPがマイナスで、CPIについても徐々に日銀見通しレベルに低下しつつある中で、欧米のようなインフレ対応最優先の金融政策をする必要性があるのかと(今さら)気づくのである。
いや、正確に言うと、このニュースを見た時にこれまでのJGBショート戦略をしそうな人が減ることを考慮すると、明らかに分が悪い戦略となってしまった。
このことから、外国人によるJGBショートは2023年初めのような勢いはもう完全になくなったと言えるだろう。

そうなると、JGB10年の金利水準は非常に読みやすい動きをすることになるだろう。
具体的なレンジでいうと下限は0.5%で、上限は1%手前だ。
もっと細かくいうと、少なくともFRBが再度利上げに移行する時期にならなければ0.9%程度が上限だろう。
そして市場参加者は0.5~0.9%のド真ん中である0.7%に居座っている状態で、1月後半以降一切この水準から動いていない。

【JGB10年金利のチャート】
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これまでは非常に不透明な市場動向であったが、ここにきて非常にわかりやすい相場になったし、ボラティリティも非常に穏やかなのである上に、順イールドで市場参加者も順当に利益を挙げやすい状態であることから、JGBショートしている奴以外は全員ハッピーみたいな市場環境になっている。

10年債金利のフェアな水準が0.7%ということは、政策金利的に現在の経済環境を前提とするとせいぜいマイナス金利解除後に2回25bpsの利上げがあるかないかという話である。
そうなれば、企業も財務戦略を練りやすいし、個人も住宅ローンを組む際に過度に慎重になる必要性もなく、適度なインフレと融資拡大による景気好循環を日銀は応援しやすい地合いが継続するということである。

また、日銀の金融緩和継続が見通しやすくなったということで、これまで日銀も過度な金融引き締めに迫られるのではないかと怯えていた米国債や欧州債も金利は2/15の数値を基準としてそこまで上にはいかんやろということもなんとなく想像しやすい地合いになってきていると思われる。

【米国10年債金利のチャート】
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