村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

日本個別銘柄

アパレル関連を直撃する暖冬効果

ファーストリテイリングが通期業績予想を下方修正

季節に影響もろに受ける業態は要注意

今季の冬はアジア全体(日本・中国・韓国)でかなり暖冬傾向にあり、暖冬関連ニュースがかなり見られる。

さてそういうことを考慮するといっちゃん厳しい状況に追い込まれるのがこうした気温によって需要が左右される産業だ。
中でも暖冬で厳しい状況にあるのはご存知の通りアパレルだろう。
さっそくファーストリテイリング(ユニクロ)の決算が出てきたが、営業利益前年比二桁減となんとも厳しい第一四半期決算が出てきた。
韓国での不買運動の影響も多少あるが、メインはやはり暖冬により冬物がさっぱり売れないというところにある。
日本でもヒートテックが大量に余っているのが店舗の棚見ても感じ取ることができ、これが足元株価が伸びてこない理由となってしまっている。
そして在庫を値引きして捌く必要性が出てくることから少なくとも次の四半期までは確実に影響が出てくるだろう。
ユニクロでこれだけの影響が出るんだから、他のアパレル銘柄なんてのは推して知るべしであり、既に株価には影響でているものの、まだ下に走る余地はかなりあるのではないかと思われる。
(H&Mぐらいうっすい服売ってるとこなら関係なさそうとかいう激寒皮肉はNG)

<ユナイテッドアローズの株価チャート>
タイトルなし

その他気温で影響を受ける業態は思いつく限り挙げていくと百貨店(アパレルに絡む)・GMS(自前衣料やっているところ)・エアコン・コンビニ・一部食品(サーティーワンとか)・アウトドア娯楽・農業関連といったところだろう。
特に今回の暖冬はアパレル・百貨店・GMSはかなり大きな影響があることを想定しておかなければいけないように思われる。
しかも上記3つは消費増税の影響もあるので、想像よりひどい決算が出ることを覚悟しておく必要性がありそうだ。
エアコンについてはダイキンが代表銘柄だが、グローバルに販売しているということもあり、影響度は他よりはましだろう。
アウトドア娯楽はスキー関連は雪不足で厳しい一方で、その分他に客がシフトするのでそこを見極めておきたい。
一部食品ではアイス関連は暖冬のおかげで伸びるかもしれない一方、おでんやなべ物系が弱くなる傾向になるだろう。

この影響は繰り返しになるが季節の移り変わりまでに、場合によっては在庫損が出てくるのでその分だけ斜め上の業績下方修正が出てくるということだけは想定しながら投資するかどうか考えてほしい。
(個人的にはわざわざ足元でそんな銘柄取りに行くインセンティブはなく、単純にもっと魅力的なセクターへの投資を考えるけど)

投資拡大で兵站が伸び切っているところで本丸事業が沈むと株価は壊滅する

メルカリ株がストップ安、見えない「メルペイ」の針路

<メルカリの株価チャート>
タイトルなし


ブログタイトルだけ見ると当たり前のように見えるけど、投資だと気づかなくて死ぬパターンが散見される。

実はメルカリとバイドゥの株価下落は本質は全く一緒だ。

<過去参考記事>

苦しいバイドゥの競争環境とその背景


どちらも飽くなき事業拡大のため・加えて競争に勝つためにキャッシュカウ事業で稼いだ金を、さらにレバレッジを聞かせて投資を行っている。
当の本人達もITビジネスの移り変わりが速いことを知っているし、今のキャッシュカウ事業で金が稼げている間になんとか新しい事業領域を作りたいと思っている。
メルカリなら米国事業とメルペイだし、バイドゥなら動画ビジネス・AI・自動運転だ。

しかしこうした新規ビジネスが中々目を出さず、ただいたずらに資金を垂れ流している。
そこに新規参入者が一気に本丸事業を侵食しはじめ、キャッシュカウ事業が稼げなくなる事態が発生してきている。
メルカリならPaypayと楽天が殴り込んで客と出品者の取り合いを繰り広げている。
バイドゥも検索ビジネスにおいてアリババが殴り込みをかけていることに加えて、Tiktokにも広告ビジネスを取られ始めている。

投資家はこうした落ち目の企業に対してはどのように株価バリュエーションを行うのか?
一番の肝は出血を止めるためにどれぐらい損失を出す必要性があるかということだ。
例えば元々のキャッシュカウ事業の頑強さが強ければ、多少大きめの損失を出しながらの撤退でも投資家はその株価の適正なバリュエーションはこれぐらいだろうという算段をつけやすいので、株価は1/10とかひどいことにはならない。

しかし以下の2点の場合には株価は平気で1/10とかの水準になることには注意したい。
・本丸のキャッシュカウ事業が他社に食われ始めているか急速に縮小している
・元のキャッシュカウ事業に対して投資があまりにも大きすぎる(これはライザップが当てはまる)
なぜなら投資家が本当に企業として立て直しができるのかどうか全く自信が持てず、どこがバリュエーションの底なのか計測することもできないし、下手するとデフォルトという憂き目にあう可能性でさえ否定できない。
事業からの撤退においては手を広げすぎてバランスシートにのっかっているクソみたいな資産の減損が必要になる。
その減損に耐えるために必要なのが、元々のキャッシュカウ事業の利益であり、これがないと減損のたびに大幅に資産が痛み、最終的には誰が見ても立て直し不能レベルのBSの状況になる。

ここで同様にラインとも比べてみたいところだが、状況的にはラインの方がいくらか状況がましだ。
ラインはキャッシュカウ事業のところで侵食されているのが今のところは見えないので、変に手を広げている超絶センスないFintech分野から撤退しても、おそらく企業体を維持できる。
そう思っている投資家も多く、今のところラインは上場来横ばい程度の株価を維持できている。

一方でメルカリはどうだろうか?
未だ米国事業は収益化できる目処はほとんど立っていない。
メルペイも赤字を垂れ流しているだけで、こちらも〇〇payみたいなのが乱立する中で数年以内に黒字化するのも目処が立たない。
そんな中本丸事業がやられ始めている。
どこかのタイミングで無駄に高い社員給料についてメスを入れざるをえなくなる。
メルカリは業界では非常に先端技術の取り込みが速く、技術的には超一流と言われている。
しかし、問題はネット西成とも呼ばれる非常に小さい市場かつ参入障壁がほとんどないに等しい領域でその技術が効果をだせていないことにある。
個人的にはそれだけ技術力があるならEコマース開発下請けみたいなビジネスやればとりあえず潰れることはないんじゃないかなと思う。
しかし、それでは現在の超高給で雇っている社員のモチベーションを維持するのは難しいし、優秀な社員から人が辞めていく可能性が高い。
そうなったらもう企業体として体を成していない状態に陥り、あっという間に根本から崩壊しかねない。
そうした危険を察知している投資家が適正なバリュエーションを計算できないことから株価がいつまでたっても底打ちしないのだ。

そもそも最近の勘違いIT企業がちゃんとビジネスモデル考えずにあらゆる方面に手を出して、お前それほんとに黒字化させるストーリー作れてんのかよというものが増えており、こうした兵站が伸び切って足元もろとも燃え尽きるタイプの企業の増加が懸念される。

 

必要な時に必要な会社を買収してくるスタイルが日本企業にも浸透し始める

IT人材争奪戦(3)技術も人も…会社ごと買う


この記事をみてまだまだ日本の中小M&Aビジネスは続くんだなあと考え始めた。

上記記事では大企業が自社ビジネスに対して新規IT技術を導入していくにあたって、もはや自社の社員を育成していくという手ではビジネス競争についていけないということで、もう丸ごと自分達が欲しい技術を持っている中小IT企業を買収していくという手段に出ている大企業が出始めているということだ。
これは米国では既に一般的な流れである。
米国企業は社員を一部エリート以外は一から育成しようなんていうのは端から考えておらず、必要な時に必要な企業を買収しに行くというスタンスが一般的だ。
そもそも米国人は日本みたいな転職時とか辞職時とかに引き継ぎさえしていかず、いきなりクビになったり辞めたりしていくということもあり、自社育成で一から積み上げていくというのは非常に苦手としており、だからこそ必要な時に必要な企業を買収するという昨今の変化の速い時代に適合した経営スタイルになっているとも言える。
(それについては下記書籍を参考にしてもらいたい)


戦略プロフェッショナル シェア逆転の企業変革ドラマ

日本企業でも1990年代まではアナログの積み重ねが企業競争力の源泉であった時代に有利であった終身雇用制および引き継ぎの堅確性はスピードの速いデジタルビジネス領域では不利に働き、ようやく必要な時に必要な企業を買収するという経営手法が浸透してきたように思われる。
特にITは変化が速いということもあり、自社育成では到底追いつけない変化が起きているということもあり、中小ITベンチャー買収はまだまだ続いていくものと思われる。
またこうした中小ITベンチャーが大企業にEXITする手段が増加していくと、それだけでも起業インセンティブが増えるということもあり、大企業が買いたいと思えるようなIT技術を持った企業の立ち上げや投資というのは活発していくように感じる。

こういうことを考えればこうした中小企業M&Aを仲介する上場企業株というのは再度魅力的ではないかと思われる。
例えば日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズなどの銘柄はこうした現象の恩恵を受けられるような気もしており、一度落ちていた株価も元気になってくるのではないかと感じている。
以前も中小型株バブルの時にありえないレベルのバリュエーションになっていたが、ようやくまともなバリュエーションになってきたようにも感じる。
直近決算でもEPSは再び増加基調に転じてきており、決してビジネス分野全体が委縮しているという風にはあまり思えない。 

<日本M&Aセンターの株価チャート>
タイトルなし


重工メーカーの怖い採算割れ受注工事損失リスク

三井E&S、火力追加損失713億円 止まらぬ想定外

事前に投資家側が予測不能だし、場合によっては株価に致命的なダメージを与える。

三井E&Sがびっくりするようなレベルの赤字金額を決算で発表し、株価はストップ安間近・円建て債券も急落した。

<三井E&Sの株価チャート>
タイトルなし


なにで赤字を出したかというとインドネシアで受注したプラント案件において想定外のコストがかかる事態が発生していると説明。
想定より地盤が緩い、ダイバーの増員が必要になっただのいろいろ理由はかかれているが、まあようは入札時の事前のデューデリが全然できていなかったし、その後のリカバリ策も全然うまくいかなかったということだろう。
この案件だけで合計1400億円もの赤字を出しており、元々の年間プラント事業の売上高が700億円しかない中、2年分の売上高を吹き飛ばすような赤字となった。
自己資本比率はたったの一桁台まで落ち込んでおり、早急な自己資本拡充策あるいは劣後ローンの調達が必要になるだろう。

個人的に重工メーカー銘柄が嫌いなのはこういう事態がよく起こるからだ。
重工メーカーの大型プラント案件は想定外の事態や事故が起こると急速に採算性が悪化する。
事前のデューデリが甘いとかもあるが、不慮の天災、しょうもないポカミス、人材確保難による工事遅延、顧客の要求水準を満たせないなど、もうリスクだらけといっても過言ではない。
しかもそれは外部からはほとんど伺い知ることが難しく、発生して初めて認識されるものである。

最近の例でいうと、IHIなんかはトルコの橋のキャットウォークが誤って落ちたり、ボイラーの接合材料間違えたりとかして数百億円の特別損失を出して何回も連続で下方修正をたたき出したりとかしていて、よく株主切れないなと思ったこともあったり。
なまじ一度事故ると人材リソースを事故のリカバリーのためにつぎ込まなければいけなかったりするが、それのせいで別の案件が遅延するなど玉突き的に悪影響が広がったりすることもある。
その他三菱重工の客船の大型損失、千代田化工のハリケーンによる工事遅延、川崎重工も昔いくつかやらかしてとんでもない事態になっていたりした。

国内案件だと比較的取引先もさすがに無茶な要求はしないのでリスクは低いのだが、こと海外となるとまあそこらへんはめちゃめちゃ厳しい態度を取ってくる。
中国企業なんかは平気で受注した案件で完成見込み立たなかったりするととんずらしたりするけど、日本企業はなまじJICAの融資がついてたりとかして、受注側企業が逃げられなかったりする。
ということもあり、よっぽど株価がアンダーバリューされていない限り重工メーカー株なんて買うもんじゃないなと毎回思う次第。 

本当にソフトバンクはウィーワーク株をナンピンするのか

米ウィーワーク、リストラ資金確保へソフトバンクGと交渉=関係筋

やむにやまれぬナンピン。

ソフトバンクが保有するウィーワーク株についてここにきてリストラ費用に使うための追加出資ナンピンを行うかもしれないという報道が出た。
ここにきてなんでソフトバンクがナンピンするんだ、孫正義は本当に頭が狂ったのではないかと思う人もいるかもしれないが個人的にはこの判断は大人の事情でやむにやまれず追加ナンピンせざるをえない状況になりつつあるのではないかと想像している。

その想像の根拠として米銀との関係性を重視せざるをえないという点がある。
ウィーワークについてはソフトバンクは出資という形を取っているが、米銀も貸出という形でウィーワークのエクスポージャーを持っているし、ウィーワークのCMBSも手掛けている。
もしウィーワークがお星さまになってしまった場合米銀のローンも焦げ付くし、CMBSも毀損するため投資家からの信用も下がるだろう。
別にそれだけで米銀の信用が根本的に揺らぐということはないが、少なくともかかわった重役数人のクビが飛ぶことは間違いない。

ならば少なくともできることは全部やって立て直すしかないというのが米銀の考え方の基本になる。
でもこれ以上のエクスポージャーを取ることはおそらくリスク管理部から止められているので自社からは金を出せない。
ならばそもそもこの話を持ち掛けてきてそそのかしたソフトバンクに責任を取らせようと米銀担当者は皆思うだろう。
ではソフトバンクにどう交渉して責任を取らせるか。ソフトバンクは世界一ジャンクボンドを発行している発行体であり、資金繰りという面に弱点を抱えている。

特に最近ソフトバンクは外貨建て債券やローン調達が多くなっており、こうした外貨建て調達は米銀なしではマーケティングが難しい。
そのうえ、1シリーズあたりの債券調達金額がばかでかいので、そういう案件こそ米銀を使わなければ成立しないという側面がある。
まずは米銀担当者はウィーワークの尻拭いをしないなら今後外貨建て債券のマーケティングはやらんと脅すだろう。
またソフトバンクのビジョンファンドは良い投資先は長く保有する一方で、成長力に鈍化がみられたりバリュエーションの伸びに限界がみられる会社については次々とIPOさせてEXITするというのが投資戦略の中心になっている。
もちろん米国市場でIPOするには米銀の手を借りないとできない。
ならば米銀担当者はそこからIPOEXITの手助けもやらんぞと脅せる。
さらに今進めているスプリントとTモバイルの合併についても米銀ロビーがなければ成功に導くことが難しいので、ここも米銀にとってはソフトバンクを脅せる材料の一つになっている。

こう言われればもうソフトバンクは米銀の言うことをおとなしく聞くしかなく、尻拭いのための追加ナンピン出資をせざるをえない立場に追い込まれていることは想像に容易いと思う。 
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村越誠

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