村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

日本個別銘柄

投資拡大で兵站が伸び切っているところで本丸事業が沈むと株価は壊滅する

メルカリ株がストップ安、見えない「メルペイ」の針路

<メルカリの株価チャート>
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ブログタイトルだけ見ると当たり前のように見えるけど、投資だと気づかなくて死ぬパターンが散見される。

実はメルカリとバイドゥの株価下落は本質は全く一緒だ。

<過去参考記事>

苦しいバイドゥの競争環境とその背景


どちらも飽くなき事業拡大のため・加えて競争に勝つためにキャッシュカウ事業で稼いだ金を、さらにレバレッジを聞かせて投資を行っている。
当の本人達もITビジネスの移り変わりが速いことを知っているし、今のキャッシュカウ事業で金が稼げている間になんとか新しい事業領域を作りたいと思っている。
メルカリなら米国事業とメルペイだし、バイドゥなら動画ビジネス・AI・自動運転だ。

しかしこうした新規ビジネスが中々目を出さず、ただいたずらに資金を垂れ流している。
そこに新規参入者が一気に本丸事業を侵食しはじめ、キャッシュカウ事業が稼げなくなる事態が発生してきている。
メルカリならPaypayと楽天が殴り込んで客と出品者の取り合いを繰り広げている。
バイドゥも検索ビジネスにおいてアリババが殴り込みをかけていることに加えて、Tiktokにも広告ビジネスを取られ始めている。

投資家はこうした落ち目の企業に対してはどのように株価バリュエーションを行うのか?
一番の肝は出血を止めるためにどれぐらい損失を出す必要性があるかということだ。
例えば元々のキャッシュカウ事業の頑強さが強ければ、多少大きめの損失を出しながらの撤退でも投資家はその株価の適正なバリュエーションはこれぐらいだろうという算段をつけやすいので、株価は1/10とかひどいことにはならない。

しかし以下の2点の場合には株価は平気で1/10とかの水準になることには注意したい。
・本丸のキャッシュカウ事業が他社に食われ始めているか急速に縮小している
・元のキャッシュカウ事業に対して投資があまりにも大きすぎる(これはライザップが当てはまる)
なぜなら投資家が本当に企業として立て直しができるのかどうか全く自信が持てず、どこがバリュエーションの底なのか計測することもできないし、下手するとデフォルトという憂き目にあう可能性でさえ否定できない。
事業からの撤退においては手を広げすぎてバランスシートにのっかっているクソみたいな資産の減損が必要になる。
その減損に耐えるために必要なのが、元々のキャッシュカウ事業の利益であり、これがないと減損のたびに大幅に資産が痛み、最終的には誰が見ても立て直し不能レベルのBSの状況になる。

ここで同様にラインとも比べてみたいところだが、状況的にはラインの方がいくらか状況がましだ。
ラインはキャッシュカウ事業のところで侵食されているのが今のところは見えないので、変に手を広げている超絶センスないFintech分野から撤退しても、おそらく企業体を維持できる。
そう思っている投資家も多く、今のところラインは上場来横ばい程度の株価を維持できている。

一方でメルカリはどうだろうか?
未だ米国事業は収益化できる目処はほとんど立っていない。
メルペイも赤字を垂れ流しているだけで、こちらも〇〇payみたいなのが乱立する中で数年以内に黒字化するのも目処が立たない。
そんな中本丸事業がやられ始めている。
どこかのタイミングで無駄に高い社員給料についてメスを入れざるをえなくなる。
メルカリは業界では非常に先端技術の取り込みが速く、技術的には超一流と言われている。
しかし、問題はネット西成とも呼ばれる非常に小さい市場かつ参入障壁がほとんどないに等しい領域でその技術が効果をだせていないことにある。
個人的にはそれだけ技術力があるならEコマース開発下請けみたいなビジネスやればとりあえず潰れることはないんじゃないかなと思う。
しかし、それでは現在の超高給で雇っている社員のモチベーションを維持するのは難しいし、優秀な社員から人が辞めていく可能性が高い。
そうなったらもう企業体として体を成していない状態に陥り、あっという間に根本から崩壊しかねない。
そうした危険を察知している投資家が適正なバリュエーションを計算できないことから株価がいつまでたっても底打ちしないのだ。

そもそも最近の勘違いIT企業がちゃんとビジネスモデル考えずにあらゆる方面に手を出して、お前それほんとに黒字化させるストーリー作れてんのかよというものが増えており、こうした兵站が伸び切って足元もろとも燃え尽きるタイプの企業の増加が懸念される。

 

必要な時に必要な会社を買収してくるスタイルが日本企業にも浸透し始める

IT人材争奪戦(3)技術も人も…会社ごと買う


この記事をみてまだまだ日本の中小M&Aビジネスは続くんだなあと考え始めた。

上記記事では大企業が自社ビジネスに対して新規IT技術を導入していくにあたって、もはや自社の社員を育成していくという手ではビジネス競争についていけないということで、もう丸ごと自分達が欲しい技術を持っている中小IT企業を買収していくという手段に出ている大企業が出始めているということだ。
これは米国では既に一般的な流れである。
米国企業は社員を一部エリート以外は一から育成しようなんていうのは端から考えておらず、必要な時に必要な企業を買収しに行くというスタンスが一般的だ。
そもそも米国人は日本みたいな転職時とか辞職時とかに引き継ぎさえしていかず、いきなりクビになったり辞めたりしていくということもあり、自社育成で一から積み上げていくというのは非常に苦手としており、だからこそ必要な時に必要な企業を買収するという昨今の変化の速い時代に適合した経営スタイルになっているとも言える。
(それについては下記書籍を参考にしてもらいたい)


戦略プロフェッショナル シェア逆転の企業変革ドラマ

日本企業でも1990年代まではアナログの積み重ねが企業競争力の源泉であった時代に有利であった終身雇用制および引き継ぎの堅確性はスピードの速いデジタルビジネス領域では不利に働き、ようやく必要な時に必要な企業を買収するという経営手法が浸透してきたように思われる。
特にITは変化が速いということもあり、自社育成では到底追いつけない変化が起きているということもあり、中小ITベンチャー買収はまだまだ続いていくものと思われる。
またこうした中小ITベンチャーが大企業にEXITする手段が増加していくと、それだけでも起業インセンティブが増えるということもあり、大企業が買いたいと思えるようなIT技術を持った企業の立ち上げや投資というのは活発していくように感じる。

こういうことを考えればこうした中小企業M&Aを仲介する上場企業株というのは再度魅力的ではないかと思われる。
例えば日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズなどの銘柄はこうした現象の恩恵を受けられるような気もしており、一度落ちていた株価も元気になってくるのではないかと感じている。
以前も中小型株バブルの時にありえないレベルのバリュエーションになっていたが、ようやくまともなバリュエーションになってきたようにも感じる。
直近決算でもEPSは再び増加基調に転じてきており、決してビジネス分野全体が委縮しているという風にはあまり思えない。 

<日本M&Aセンターの株価チャート>
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重工メーカーの怖い採算割れ受注工事損失リスク

三井E&S、火力追加損失713億円 止まらぬ想定外

事前に投資家側が予測不能だし、場合によっては株価に致命的なダメージを与える。

三井E&Sがびっくりするようなレベルの赤字金額を決算で発表し、株価はストップ安間近・円建て債券も急落した。

<三井E&Sの株価チャート>
タイトルなし


なにで赤字を出したかというとインドネシアで受注したプラント案件において想定外のコストがかかる事態が発生していると説明。
想定より地盤が緩い、ダイバーの増員が必要になっただのいろいろ理由はかかれているが、まあようは入札時の事前のデューデリが全然できていなかったし、その後のリカバリ策も全然うまくいかなかったということだろう。
この案件だけで合計1400億円もの赤字を出しており、元々の年間プラント事業の売上高が700億円しかない中、2年分の売上高を吹き飛ばすような赤字となった。
自己資本比率はたったの一桁台まで落ち込んでおり、早急な自己資本拡充策あるいは劣後ローンの調達が必要になるだろう。

個人的に重工メーカー銘柄が嫌いなのはこういう事態がよく起こるからだ。
重工メーカーの大型プラント案件は想定外の事態や事故が起こると急速に採算性が悪化する。
事前のデューデリが甘いとかもあるが、不慮の天災、しょうもないポカミス、人材確保難による工事遅延、顧客の要求水準を満たせないなど、もうリスクだらけといっても過言ではない。
しかもそれは外部からはほとんど伺い知ることが難しく、発生して初めて認識されるものである。

最近の例でいうと、IHIなんかはトルコの橋のキャットウォークが誤って落ちたり、ボイラーの接合材料間違えたりとかして数百億円の特別損失を出して何回も連続で下方修正をたたき出したりとかしていて、よく株主切れないなと思ったこともあったり。
なまじ一度事故ると人材リソースを事故のリカバリーのためにつぎ込まなければいけなかったりするが、それのせいで別の案件が遅延するなど玉突き的に悪影響が広がったりすることもある。
その他三菱重工の客船の大型損失、千代田化工のハリケーンによる工事遅延、川崎重工も昔いくつかやらかしてとんでもない事態になっていたりした。

国内案件だと比較的取引先もさすがに無茶な要求はしないのでリスクは低いのだが、こと海外となるとまあそこらへんはめちゃめちゃ厳しい態度を取ってくる。
中国企業なんかは平気で受注した案件で完成見込み立たなかったりするととんずらしたりするけど、日本企業はなまじJICAの融資がついてたりとかして、受注側企業が逃げられなかったりする。
ということもあり、よっぽど株価がアンダーバリューされていない限り重工メーカー株なんて買うもんじゃないなと毎回思う次第。 

本当にソフトバンクはウィーワーク株をナンピンするのか

米ウィーワーク、リストラ資金確保へソフトバンクGと交渉=関係筋

やむにやまれぬナンピン。

ソフトバンクが保有するウィーワーク株についてここにきてリストラ費用に使うための追加出資ナンピンを行うかもしれないという報道が出た。
ここにきてなんでソフトバンクがナンピンするんだ、孫正義は本当に頭が狂ったのではないかと思う人もいるかもしれないが個人的にはこの判断は大人の事情でやむにやまれず追加ナンピンせざるをえない状況になりつつあるのではないかと想像している。

その想像の根拠として米銀との関係性を重視せざるをえないという点がある。
ウィーワークについてはソフトバンクは出資という形を取っているが、米銀も貸出という形でウィーワークのエクスポージャーを持っているし、ウィーワークのCMBSも手掛けている。
もしウィーワークがお星さまになってしまった場合米銀のローンも焦げ付くし、CMBSも毀損するため投資家からの信用も下がるだろう。
別にそれだけで米銀の信用が根本的に揺らぐということはないが、少なくともかかわった重役数人のクビが飛ぶことは間違いない。

ならば少なくともできることは全部やって立て直すしかないというのが米銀の考え方の基本になる。
でもこれ以上のエクスポージャーを取ることはおそらくリスク管理部から止められているので自社からは金を出せない。
ならばそもそもこの話を持ち掛けてきてそそのかしたソフトバンクに責任を取らせようと米銀担当者は皆思うだろう。
ではソフトバンクにどう交渉して責任を取らせるか。ソフトバンクは世界一ジャンクボンドを発行している発行体であり、資金繰りという面に弱点を抱えている。

特に最近ソフトバンクは外貨建て債券やローン調達が多くなっており、こうした外貨建て調達は米銀なしではマーケティングが難しい。
そのうえ、1シリーズあたりの債券調達金額がばかでかいので、そういう案件こそ米銀を使わなければ成立しないという側面がある。
まずは米銀担当者はウィーワークの尻拭いをしないなら今後外貨建て債券のマーケティングはやらんと脅すだろう。
またソフトバンクのビジョンファンドは良い投資先は長く保有する一方で、成長力に鈍化がみられたりバリュエーションの伸びに限界がみられる会社については次々とIPOさせてEXITするというのが投資戦略の中心になっている。
もちろん米国市場でIPOするには米銀の手を借りないとできない。
ならば米銀担当者はそこからIPOEXITの手助けもやらんぞと脅せる。
さらに今進めているスプリントとTモバイルの合併についても米銀ロビーがなければ成功に導くことが難しいので、ここも米銀にとってはソフトバンクを脅せる材料の一つになっている。

こう言われればもうソフトバンクは米銀の言うことをおとなしく聞くしかなく、尻拭いのための追加ナンピン出資をせざるをえない立場に追い込まれていることは想像に容易いと思う。 

デフォルトに片足突っ込んでしまっているジャパンディスプレイ

JDI、中国ファンドが支援見送り 再建案白紙に

かなり詰んでる感があるけど。

JDIが中国ファンドからの支援が打ち切られたということで、もうJDIのデフォルトは待ったなしなのではと市場は考え始めている。
個人的にもちょっと今のままだと再建は難しそうだなと感じる。
なぜそう思うのかを決算資料を交えながら説明しようと思う。

2019年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
2020年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) 

まずPLから見るべき項目を見ていこう。
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製造業を見る上で最重要になるのが粗利益率(売上総利益/売上高)。
製造業における粗利益率は製品販売単価・原材料コスト・設備減価償却で決まるので短期的に改善させに行くのは難しい。
一般的にすぐコストカットできる広告費や人件費などは販売費および一般管理費扱いになるので、まず粗利益が十分にないと製造業はどうひねっても利益は出てこない。
粗利益率が改善させるためには
・製造物の製造単価引き上げ 
・設備稼働率を高めて一個あたり製造原価を引き下げる 
・設備投資の減損 
・投入原材料コストの削減 
この4つに絞られるが、JDIの業況を考えると現状いずれも行うことが難しい。
なので粗利益がまずマイナスになっている時点で企業の継続性に疑問が投げかけられる。

次に財務の中身を見ていこう。

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一応JDIの在庫回転期間は2カ月ぐらいに収まっていることから投げなければいけない在庫はあまりないように思える。
ただし、JDIの資金繰りはキャッシュフロー表を見るまでもなく厳しいことは財務諸表から見て取れて、売掛金に対して異常に大きい買掛金の状況を見ると、相当部材メーカーに対して頭を下げて決済を引き延ばしてもらっていると思われる。
しかも銀行も長期の借入金にもう応じてくれなくなっていて、ひたすら短期借入金をロールさせている状態なので、資金繰り担当者は毎期毎期の資金繰りを考えることで頭がいっぱいで、正常な設備投資案を考えることさえ難しい状況だろう。

前年度末締めている決算資料のキャッシュフローを見ても営業CFの段階で大幅マイナスになっていることから、この状態は普通に考えたら他社から出資を受け入れるしか選択肢はないだろう。

しかしJDIの大きな問題はおそらく設備稼働率の低さにあり、有機ELの開発が遅れている段階で果たして設備稼働率の改善なんてできる人がいるのだろうかと言われると非常に難しいものがある。
また開発の遅れを取り戻すにはまず大きな設備投資の減損を行い、それから多額の研究開発資金を投入を行わなければいけない。
でもデフォルトさせてからならもっとお得に買収できるじゃんと考えるプレイヤーがほとんどであるだろうから、今回結局中華勢から出資を断られれ、最後の頼みの綱であるアップルからも断られたらもうデフォルトするしか道は残っていないだろう。
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