村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

外国銘柄

アップルのPERは15倍が正しいのか25倍が正しいのか

アップルの第4四半期決算、ウェアラブルやサービスが好調



ハードウェアセクターにはいるのかコンシューマーステイプルセクターに入るのか。

アップルの株価については足元ではEPS成長よりも、アップルという企業自体がハードウェア製造セクターに入るのかコンシューマーステイプルセクターに入るのかという議論が熱くなっている。
スマホ市場自体が既に成熟化しており、スマホ販売自体は伸びにくくなっているということから、アップルの直近のビジネス戦略は以下にiPhoneの売上高を上げるかではなく、iPhoneを軸にして付随品の販売・サブスクリプション的なサービスの売上を上げていくかの方に軸足を置きつつある。
それは既にアップルペイやクレジットカード、アップルTV、アップルウォッチ、エアポッドなどに注力していることからもそれは読み取れる。

今回の決算ではiPhoneの売上は停滞していたが、これら付随品・サービスの売上が上がってきているということが評価されて株価が上昇している。
なぜEPSが停滞しているのに株価が上昇しているかというと理由は下記のようになる。

今までアップルはiPhoneを製造・販売するハードウェア企業だと市場は認識しており、そのセクターのPERは15倍ぐらいが適正ということもあり、そのぐらいの評価が妥当だと市場は認識している。
しかし、iPhoneの販売台数のボラティリティよりも読みやすく、かつ安定的なフリーCFを多く生むであろう付随品やサービスの売上比率が高まってくると、実はアップルはハードウェアセクターではなく、コンシューマーステイプルセクターに属するのではないかと市場の認識が変化してくる。
コンシューマーステイプルならPERは25倍でもいいと考える人が多いので、そうなるとEPSは変化せずとも、ビジネスの中身の変化でPERが上昇し、株価は上昇するということになる。
まさにアップルはこのビジネス構成を変化させることができるかどうかの瀬戸際におり、だからこそ市場も本当にうまくいくのかどうかよくわかっておらず、PERは20倍というどっちつかずな位置にいる。
(まあリスクがない状態だったら既にPERは25倍になっているわけで)

なので今後のアップルの株価評価はiPhoneがどれだけ売上伸ばせるかではなく、iPhoneは販売状況を維持させながらいかに付随サービス事業を拡大させていくかの方が重要視されてきているということになる。
付随サービスの事業展開を失敗した場合にはPERは15倍になるので株価は平気で2割ぐらい下がるだろうが、逆にサービス事業の拡大が順調に進めばPER25倍へ株価評価は変わってくるだろう。
またアップルはこの過渡期での株価変動を大量の自社株買いで打ち返すというやり方をしているというのもアップルの株価動向においては言及しておきたいと思う。
 

キャタピラーの決算は滑ったが、世界の景況感はそこまで悲観的ではない

キャタピラー、通年見通し下方修正 中国需要減が重し

盛り上がりには欠けるが、ヘッドラインほどは切迫感はなさそう。

世界景気の指標とまで言われるほど注目されているキャタピラーの3Q決算が滑ったということで一瞬相場に緊張感が走った。
しかし決算内容についてよくよく中身を聞いてみたら決して最終需要が急速に悪化しているというわけではないようだ。

そもそもキャタピラーの建機ビジネスと損益計算書がどのように作られるのか知る必要性がある。
キャタピラーの主な業務は建設機械の製造とそれを販売代理店にディストリビュートするところまでである。
実際に最終需要者(建設業者や鉱山開発業者など)への販売はこの販売代理店を通じて行われるし、定期メンテナンス用部品などもこの販売代理店を通じて行われる。
そしてキャタピラーの売り上げ計上タイミングは販売代理店に卸したタイミングになる。
販売代理店は在庫リスクを抱えながら、最終需要者の需要動向を予測したり自分達の手元資金と勘案しながら多めに在庫を確保したり減らしたりしている。
なのでキャタピラーが販売代理店に商品を卸すタイミングと、販売代理店が最終需要者に販売するタイミングにズレが生じる。

こうしたことからキャタピラーの売上と販売代理店の売上には下記のパターンのようなズレが生じる時がある。

・最終需要がまだ盛り上がっていないが、販売代理店が今後需要が増加しそうという予測のもとにキャタピラーへの発注を増やす
・最終需要がそこまで減少していないはずだが、販売代理店側にまだ過剰在庫が残ってしまっており、キャタピラーへの発注を削減
・最終需要が盛り上がる中、販売代理店が調子に乗って在庫確保数を増やし、最終需要以上にキャタピラーへの発注が増加
etc

今回はこういったズレパターンの中で最終需要が劇的に減少しているわけでないが、2018年にそこそこ多く在庫を抱えてしまった販売代理店が在庫を減らすためにキャタピラーへの発注を減らしたという話に過ぎないようだ。
つまり2013-2016年に続いていたような、資源バブルが崩壊して最終需要が毎年二桁%で減少していくようなそういった異常事態が起きているわけでなく、年初にキャタピラーが想定していた年率4-5%ぐらいの建機需要増加は見られているとのことだ。
結局読み違えたのは販売代理店在庫が想定より多かったというだけで、そこはキャタピラー側は粛々と減産を行って対応していきましょうという話をしていたので、決算ヘッドラインだけでプレマーケットで6%も株価が下がっていたのも、1-2期程度減産すれば十分だろうという市場の見方が台頭したことからプラス圏に切り返して引けたというのが今回のキャタピラー株の動向だ。
決算の中では確かに昨今の景気不安定さが最終需要にも悪影響を与えると話はしているが、急速減少しているというよりは底ばっていて、4Qの最終需要増加率はフラットレベルというまあ景気センチメントのわりにはよく耐えているほうじゃないですかねという感想を持っている市場参加者もそこそこいるのではないかと思う。
なお、地域別需要動向でいうと、北米は堅調、アジア太平洋は日本と中国以外が弱いが中国のインフラ投資拡大で一部分は相殺可能、欧州・中東は弱く前年比マイナスの可能性、中南米は増加しているものの低いレベルとのこと。

英語がわかるという方は一度キャタピラーの決算を聞いてみてはどうだろうか?
非常に勉強になるのでお薦めです。
 
なお、キャタピラーの決算に注目するのは有名FMのジムクレイマーの下記書籍にて、世界景気を知るために聞くべき決算はどこの会社かという内容でキャタピラーの決算と記載があるからだ。


全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦

国債利回り低下をファクターに上昇してきた安定配当成長株に要注意

マクドナルド、第3四半期利益が予想下回る 株価4%下落

そんな高いバリュエーションで誰が買いたいと思うのか。

最高値更新をうかがう米国株だが、その構成銘柄の動きは結構足元でころころ変わっていたりする。
その中で一つ警戒しておきたいのが安定配当成長株の割高感である。

自分が見ている中ではコカコーラ・マクドナルド・スターバックス・P&Gなどが該当する。
これらに共通している特徴としては
・日用品や外食の中でブランド力があり、一般的な認知度が非常に高い
・単なる高配当あるいは株主高還元ではなく、少なくとも利益が下がらなそう(できれば2-3%成長)
・ESGガイドラインに反していない

P&Gとコカコーラはなんとか決算すべらずに来ているが上値が重たい状態だし、マクドナルドは盛大に決算がすべったのと、スタバは既に以前のところから成長力は落ちるとCEOから警告する発言が出ておりド派手に株価が下落している。
これらの銘柄に一体何が起きているのか?

<スターバックスの株価チャート>
タイトルなし


それはバリュエーションが高すぎるということにある。
なぜ安定配当成長株が割高になったかというと2019年頭から発生していた国債利回りの低下に伴って、これらの株が利益が大して上昇していないにもかかわらず、機械的にバカスカ買ったプレーヤーがいるからだ。

上記挙げた4つの株はいずれも利上げが見え始めた2014年以降EPSがたいして上昇しなかったことから4年にわたってパフォーマンスがS&P500に劣後してきた株群である。
しかしその間もそれら銘柄は純利益自体はたいして上昇しなかったものの、自社株買いを繰り返してきたことから徐々にではあるがEPSは押し上げてきた。
そしてそれが花開いたのが2019年のこれら銘柄の大幅上昇によって観察できた。
しかし、この4-5年にわたって貯めてきた潜在的に株価上昇のタネは2019年前半でほぼ全部使いきったように見える。

大体ここらへんの銘柄は利益成長の上限が決まっているし、配当や自社株買いの量もある程度の上限・下限は読みやすいし、だからこそ個人投資家もこぞって買っている。
しかしここにきて国債利回りがさすがにこの水準より下になるかねという疑念が出ると、利益の成長もたかがしれていることが手元で計算出来て、株主還元利回りも計算できるような銘柄に対しておたくらPER30倍で買いたいかねという話になる。
S&P500のPERが20倍であることを考えれば、10倍も高いバリュエーションあなた払えますかという話だ。

もちろんこれら株が暴落なんていう考えは毛頭持っていないし、一定程度安くなれば喜んで買う個人投資家がいくらでも湧くだろうが、じゃあPER30倍より高い値段を皆買いたいかというとそういうことはないだろう。
というわけで当面のこうした割高安定配当成長株は再び冬眠し、S&P500に劣後する可能性はかなり高いと思っている。 


ウィーワークの舐めた資金調達態度を見る限り、潰れる確率は低い

ソフトバンクG、WeWorkに50億ドルの緊急支援を計画
WeWorkの資金調達でバンカーと投資家奔走、来月にも資金枯渇か

自分達の保身を考えて調達先を複数模索している時点で、かなり余裕がある。

ウィーワークが11月には手元資金が枯渇するだのなんだので、資金繰り懸念が噂されているが、今ウィーワークが模索している資金調達状況を見るとすごく余裕があるように見える。

現在ウィーワークは二つの資金調達方法が見えており、一つはソフトバンクによるおかわり5000億円資本注入。
この手法は最も安易かつソフトバンク側も出す気でいるため、この手法を取るのはすごくイージーなのだが、噂によるとこれをやるとウィーワーク経営陣が保有する株に対して大幅な希薄化が生じるスキーム(あるいはDIPファイナンス?詳細は不明)になっているとかいう噂もあり、ソフトバンクからの出資の受け入れはウィーワーク経営陣の資産価値を限りなくゼロに叩き落す結果になる可能性が高いんだそうな。

一方で現在JPモルガンと模索している資金調達案はエクイティでの調達ではなく、新しく社債を発行してファイナンスしましょうという案だ。
ただし、ご存知の通りウィーワークの手元現金自体は非常に薄い上に営業CFがマイナスであるため、普通の調達は難しく、PIK債という債券の利払いを債券で行うという資金繰りギリギリの会社や債務再編案でよく出てくる手法を取ろうという案も出ている。
ただし、このJPモルガンの案は経営陣の株希薄化は起こらないが、PIK債の利回りが実質15%になるという話もあり、こちらは資金繰りは瞬間風速的には改善するが、債券の償還前に財務状況の整理が間に合うかどうかわからないのと、まだ最終需要がどれだけ集まるかが交渉中のため不明。

個人的にはこのニュースを見て、ウィーワーク側は最悪ソフトバンクがケツ持ちしてくれることは確信しているっぽいが、一方で自分の持ち株の価値が大幅に下落するのは嫌だという駄々をこねてソフトバンクからの資本注入以外の資金調達方法はないかと模索しているなと感じる。
つまりウィーワークはぎりぎりの資金調達を模索しているわけではなく、それなりに余裕を持った資金繰り模索状況だなと思う。

本当に切羽詰まっている会社はJDIのように、資金調達させてもらえる先が限られてしまい、選択肢がほとんどないという状況が常だ。
でもウィーワークについては、どうやらソフトバンクの孫氏がお熱のようで、すごい肩の入れ様をしていることから、いきなり資金調達ラインが切られるという危機感はないと思われる。
それにソフトバンク側もウィーワークを死なせてしまい、ビジョンファンドにダメージを与えてしまうのは本望ではないし、デフォルトさせてはいけない事情もある(そこらへんは過去記事参考)
というわけでウィーワークについては最終的にはどこかしらから資金を引っ張ってきて、存続する可能性は非常に高く、特にウィーワークのせいでマーケットが崩れるとかそういうことは今は考える必要性はないものと思う。 

IPO後初回決算の約束さえ守れない最低銘柄にスラックが追加される

スラック株が時間外取引で急落、下期の売り上げ鈍化の見通し響く

スラックがIPO後いきなり決算をミスるという大チョンボをしでかした。

この前上場していたウーバーやリフトもいわゆる上場後初回決算をミスった組で、その仲間にスラックも仲間入りした。
昨今投資マネーは国債金利の大幅低下とともに余りに余っているためか、VCやPEといった非上場株に投資するお金というのはどんどん増えている。
それに伴って、お手軽スタートアップ企業というのが続々と湧いてくるという現象を我々は目の当たりにしている。

はたから見たら、お前それどうやって最終的に黒字化まで持っていくんだよ、どう考えても競合が続々と出てきて消耗戦になるだけだろというようなふにゃふにゃ起業がかなり雑な資金調達をするという例が散見されるようになってきた。
そして売上はとりあえず上がるようになったけど、お手軽起業なので続々と競合が出現して、いつまでたっても黒字化の目途が立たないけどVCとかPEの都合でとりあえず上場しちゃいましょうとごり押し上場してしまうという例が増加しているように見える。

ソフトバンクのビジョンファンドなんて、株式市場を自分の財布としか思っておらず、これ以上のバリューアップが見込めないと思った投資先については無理やり上場させて市場からお金を踏んだくっているとしか思えない投資行動・EXITを繰り返している。
(ウィーワークなんてその典型例)
米国の証券会社もトレーディング業務が業績の足を引っ張る中で、なんとか株主が満足するリターンを出すためにはこうした案件も騙しだましやらなければいけないという事情もあり、一般投資家が食い物になっている。
そして上場したときに投資家との暗黙的な約束事である絶対に初回決算だけはミスらないという約束事さえ破る企業が続々と増えている。

過去にはブログでメルカリについても糾弾したことがあるが、そういう投資家との最初の約束さえ破るような企業は、いわば初回デートで4時間遅刻した挙句ドタキャンするようなビッチと同程度ぐらいの信用しかない(というか信用がない)。

<過去記事参考>

上場一発目決算をミスるメルカリ株に失望


そのような初歩的な約束も守れない企業に自分の大切なお金を預けることが可能なのかと今一度自分に問いかけてほしい。
じゃあなんでそんな初回の約束も守れないのに上場するんだと言えば、VCとPEが市場からお金をせしめるために無理やり上場させているという大人の都合だからだ。
しかも足元では2017年の時とは違い、そういった約束を破る企業の株に対する評価は非常に厳しくなっている。

我々上場株に投資する投資家はきちんとその会社の競争力・参入障壁を考慮した上で、足元赤字であるならば黒字化までのストーリーに無理がないかどうかを精査して銘柄を選ぶことが従前より求められている。 
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村越誠

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