村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

地政学

コロナウイルスのアジア各国の対応状況について

状況がまだ変化してきているのでここまでのアジア各国のコロナウィルスに関する情報をまとめていこうと思う。

中国
武漢のコロナウィルス感染者の定義を変えたら爆発的に人数が増加したことから増加数が減少してきているという話は嘘でしたーな結果となっており、まだ抑え込めていない状況である。
この原因として中国共産党は本当に抑え込みたいと様々な施策を命令するが、地方政府がそれに対して粛清が怖くて隠蔽を続けるというインセンティブがどうしても働いていることに起因しているように思われる。
また、中国の公営病院のクオリティとキャパシティはお世辞にも先進国に追いついているとは言えず、軽い症状でも拉致されて隔離されると放置された挙句適切な処置をしてもらえず死ぬんではないかという恐怖があり、これも発覚を遅らせている原因の一つになっている。

・シンガポール、台湾および香港
小さい国ということもあり、一度パンデミックすると取り返しがつかなくなるので、かなり神経質な対応をしている。
外国人の玄関の数も限られていることも比較的他国比で検疫や情報収集がしやすいということもあり、対策はSARSの時とは比べものにならないレベルで進んでいる。
シンガポールでは感染者が出た企業が入居しているフロアを丸々閉鎖させたりなど、かなり強硬策にうって出ている。
香港も学校の閉鎖を延長させたりと結構なりふり構わない対策を打っている。

・日本
空港はそもそも前からサーモグラフ検査しているので、これ以上厳格化しようがなく、あと出来ることとしては入国拒否ぐらいしかない。
また国土が広い上に、外国人が入ってくる窓口が非常に多いため、全部管理しきるのがかなり難しい上に、今回のコロナウィルス自体が最初陰性でも後から陽性になったりするし、無症状者までいるので実質的には防ぎきるのは難しい状況。
結局は医療現場に全体的な負荷がかかることは否定できない。

・タイ
基本的に外国人はスワンナプーム空港から入国してくるが、陸上から中国人が入ってくる可能性もある。
そのためタイは感染者数自体は30人台とか言っているけど、こちらも検査していないだけで実はもっと大量にいることは、タイに旅行行っていた韓国人が感染していることからもそれはかなり真実味が高いだろう。

・マレーシア
ほとんど報道ないけど、なんかしてる?

・インド、インドネシア、カンボジアなど
そもそも普通の病気でさえまともに検査する能力が低いので、まずコロナウィルス感染者を診断する能力がない。
おそらくコロナウィルスとは別の合併症で亡くなったりするので、結局最後まで感染者数はわからずじまいだろう。

こういったところを背景に日本含めたアジア株はこれはまだ影響長引きそうですねという反応はなんとなく想像できるし、特にツアーリズムに絡んだところはやっぱりまだ避けるべきかなあという気がする。

イランは航空機誤射撃墜問題の対応で手一杯に陥る

イランデモ、最高指導者にも矛先 撃墜関連で数人を逮捕

振り返ってみればたしかにそこが転機だったように思われる。

緊迫していた米国-イラン情勢だったがイランが誤ってウクライナ航空の航空機を撃墜してしまったところからイランの動きが急速に鈍っていき、もう足元ではイラン側からほとんど目立った動きが見えなくなってきている。
これはイランが国内の対応で手一杯の状態に陥っており、米国に喧嘩ふっかけてる場合じゃないという状態になっているからだ。
そして、その原因が航空機撃墜にある。

イランの航空機撃墜については外交というより内部からの国民の急速な突き上げが大きい要因になってしまった。
少し考えれば至って単純な話で、自国民が多数乗った航空機を撃墜され、さらにそれを隠蔽しようとしたというのだから国民にとっては支持していた政府の重大な裏切り行為だと認識したのだと思う。
おそらく、これがほとんど自国民が乗っていない航空機撃墜であればほとんど騒ぎは起こっていなかったと思われる。
例えばだが、日本政府が日本人が多数乗った羽田空港発便のシンガポール航空の航空機を北朝鮮からのミサイルだと間違って誤射して撃墜させたというのと同レベルの話だ。
これだけで先進国なら政権一個ひっくり返るレベルの珍事だが、新興国でも珍事中の珍事だろう。
あまつさえ、やばいと思ったのかなんとか隠蔽しようと試みたことも非常にまずく、イラン国民にとってはただでさえ空港から離陸しようとする飛行機を撃墜すること自体がありえないと思える珍事なのに、そこには多数の自国民が乗っていて多数の死者が出たにもかかわらずうやむやに終わらせようとしたところで、今までイラン政府のために米国政府の制裁による困窮を我慢してきたにもかかわらず裏切られたという思いが一気に噴出したことから国内の雰囲気が一変したものだと考える。
今ここで国外をさらに刺激するような行為に出て経済制裁が強化された日には、下手すると今まで一致団結してきて困窮に耐えてきた国民にそっぽを向かれるリスクがあり、そのほころびは大きなものになりかねないと判断せざるを得なくなったものだともう。

以上の情勢を考えると、当面しばらくはイランが国外に喧嘩をふっかける余裕なんてものは一ミリもない状態に陥るので、結果的には中東情勢は小康状態、原油価格も一旦出戻りという判断を市場はしている。
なお、この中東情勢落ち着いた分のリスクオンについては既に市場に十分織り込まれ済みとも個人的には判断している。
 

イラクがこんな混とんとした状況になることを避ける未来はなかったのか

サッダーム・フセイン - Wikipedia



いや、あんまり結末は変わらなかったかも。

今の中東情勢の混乱原因はひとえにイラク戦争によるサダムフセインの失脚がきっかけになっている。
ご存知の通り中東地域の国境線というのは欧州列強によっててきとーに引かれた国境線であり、部族・民族や宗教などできちんと引いた国境線ではない。
そのため、政治家が自分の権力と利益を確保するために特定の部族・民族・宗教をえこひいきすることにより国内の争いの火種が大きくなっていき、最終的には内戦のような状態にまで発展しがちだ。
しかもそこに大国(主に米国・欧州・ロシア・イラン間だが)の思惑が絡むことにより、より複雑な武力闘争が行われるという事態になる。
イラクという国家は特にシーア派イランとスンニ派サウジアラビアの中間点におり、加えて北の方にはクルド人も住んでいるということもあり中東国家の中でも部族・民族・宗教バランスを取るのが非常に難しい地域である。
しかもそこに石油資源が絡むので、より利益闘争というのは激しくなる。
そこをサダムフセイン時代はサダムフセインの強権的独裁によって無理やり押さえつけていた。
その押さえつけ方はどの部族・民族・宗教にも言い方を変えれば平等に圧力をかけることにより、特定の集団が声高に利益を主張しないように暴力を振りかざしながらバランスを取っていた。
しかしイラク戦争によって米国がサダムフセインをイラクから追放してしまったことにより、各利害関係集団がここぞとばかりに利権を巡って争いをを始めてしまった。
そしてこれを米軍はコントロールすることができず、そのため各利害関係集団に周辺国や大国の思惑などが重なってアンコントローラブルに陥ったというのがイラク戦争以降のイラクの現状である。

ではイラク戦争を回避し、サダムフセインが大統領に居座り続けることができる未来があったのかというのを考えると、サダムフセインのウィキペディアを見る限りは難しそうに感じる。
サダムフセインの経歴を見ると元来暴力を行使していくことによって成り上がってきたというのが伺え、常に暴力をもって物事を推し進めるインセンティブが当人の中では高かったことは間違いない。
しかもイランに対抗するために様々な支援を欧米から受けてきたサダムフセインは途中から何を勘違いしたのか武力をあからさまにイラン以外の周辺国に振るうといった暴挙に出ていた。
加えてシーア派が多いイラクにおいて背後に革命を輸出してシーア派を支援している武力大国イランがいることから、少しでも弱みを見せることは即死を招きかねないということもあったのだろう。

こうしたサダムフセインの得意とする強権暴力による支配と欧米から支援を受けてきたことによる武力大国の指向が結果的に最後は米国との仲たがいを生み、イラク戦争へいたったわけで、やはりサダムフセインの暴力性は遅かれ早かれ先進国に脅威と見なされる運命にあったのではないだろうか?
一方でイラクを統治するにはそれだけの暴力性を持った指導者でないと難しいというのも真であり、結果的にイラクは現在のような混迷に陥る運命は避けられなかったように思われる。

なお、イラクやイスラムについては下記書籍を参考にしてほしい。


イラクとアメリカ 


現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義 (講談社現代新書)

イランのイラク空軍基地爆撃は出来レース爆撃

イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃 イランが司令官殺害の報復

完全に出来レース戦闘にしか見えない。

昨日はイラクの空軍基地がイランに弾道ミサイルで爆撃されて数十人が死亡したとか、すわ戦争が始まるとかいう懸念が高まり、わーっと東京時間からリスクオフという展開となっていった。
しかし時間がたつにつれ、市場が「これは出来レース爆撃」というのを認識し始めていき、欧州時間になると大したことないリスクオフのレベルにまで戻ってきた。

まず時系列に沿って事態を説明していきたいと思う。
朝一番にイラク空軍基地が爆撃されて80人ぐらい死亡したとイランの国営放送が報道した。
その後米国側から死者は確認できていないとか、特に問題ないとかトランプ大統領が発言するなど情報が錯そうしていく。
そしてその間に一応は技術的事故らしいがイランの空港から離陸したばかりのウクライナ航空のボーイング737-800が墜落するといった事件も発生。
しかしこの間、実際に爆撃された基地の映像が出てこず、実際どれだけの規模の爆撃だったのか確認が取れない。
そのうえ、衛星飛ばしてないイランがどうやって死亡者数確認したんだと疑問に思う人が増え始め、途中でイラン国営放送が具体的な数は確認できないとゲロる。
さらにイラク政府がイランから事前に爆撃する連絡があったということを正式報道した。

ここまでくればもう市場はこの爆撃は出来レースだと市場は認識し始める。
イランはとりあえず国民に対してソレイマニ司令官の暗殺報復をしている格好を見せなければいけないが、変に米軍に死亡者ださせてまかりまちがって戦争になったら財布事情が厳しすぎてどうしようもなくなるので、国民向けアピールだけはしておきたいという思惑がある。
米国もとりあえず死者さえ出なければ国内世論を落ち着かせることができるし、中東でばかばかしいコストをかけたくないと思っていることから事前連絡で爆撃されることも実質了承したということだ。
これでお互いが一旦落としどころが見つかればよい程度の話だろう。

そもそも現状のイランと米国はどちらも自分のお財布事情が厳しいところから、本当は何も起こしたくないというのが現状で、起こしたとしても小規模にとどめておきたいというのが正直なところだ。
そもそもソレイマニ司令官についてもお前勝手にイラク侵入してるじゃないかという落ち度があり、そういった面でもイランの肩を持つのは難しい案件である。
現状考えられる中東情勢で引っ込みつかなくなる事態は

1、イランで部族・民族・宗教間対立が高まり、米軍によるコントロールが効かなくなる
2、イスラエルが我慢しきれなくなってイランに先制攻撃する
3、サウジvsイランが発生する

この3つであり、上記3つ以外は正直いってどうとでも手打ちできる案件だと思う。

なお、こうした中東情勢の緊迫が高まるとまず真っ先にリスクオフ度が大きいのが欧州である。
欧州企業は歴史的にも中東ビジネスとつながりが深い上に、戦争が起こった場合に大量に発生する難民は欧州先進国になだれこんでくるということもあり、政府負担が非常に大きくなる。
そのため利益減や社会不安の増大などを懸念して真っ先に欧州資産が売られる。
そして次に売られるのが原油輸入金額の大きいアジア諸国だ。
具体的にいうと日本・韓国・インド・中国らへんだ。
この辺は中東からの原油輸入にエネルギー調達ラインを大きく依存しており、中東間情勢が不安定化すると売られざるをえない。
特に日本は先物があるため、他のアジア新興国でカバーして売れない分を先んじて売るというダブルの圧力がかかるため、本来より大きめな値幅を伴って売られる傾向にある。
そしてなんだかんだで一番売られないのは本来は当事者なのに地味にエネルギー純輸出国に変身していて多少中東情勢荒れようが地理的に離れているし、政治的にはともかく商売的には遠い関係にある米国株というのはなんとも皮肉なことである。

米国・イラン間の緊張の高まりについて、ここまでわかっていることをまとめてみる。

色々起こっているけど、確信持てない情報とかが大量に出回っているので、自分が把握できることを改めて書き出して整理したい。

・イラク政府の米軍追放条例可決について
イラク国内はスンニ派とシーア派に二宗教が混在する地域で、イラク戦争前はフセイン大統領がこれを無理やり押さえつけて国を治めていた。
しかし、米国がイラク戦争でこの地獄の窯の蓋を開けてしまったがために、両宗派のいがみあいが激しくなり、ご存じの通り米軍にもテロ的な攻撃を繰り返すレベルでどうしようもない状態に陥った。
そしてイラク政府内にはこのシーア派とスンニ派のいがみあいが未だ続いており、今回の米軍追放条例可決はシーア派が仕掛けてきたものである。
一方でスンニ派はイランのソレイマニ氏の爆殺が嬉しくてしょうがなく、今回の米軍によるイラン重要人物の殺害は米国・イラン間の緊張の高まりだけでなく、イラン国内での宗派の対立を再び煽るような雰囲気が出始めている。
おそらく情勢が爆発するとすればまずはイラク国内で動乱が爆発的に増加するところからスタートするので、それが始まるのかどうかを観察したい。

イラク議会、米軍追放を決議 背景にイランの思惑



・米国とイランの激しい口攻撃
ここまで米国のトランプ大統領とイランのホメイニ師はどちらも激しい口攻撃を展開している。
しかし、実際に情勢が動いているのはイラクに留まっており、イランにまではまだ直接的な攻撃は出ていない。
一方でイラク国内の米軍や米国人にはどうやらゲリラ的なテロが仕掛けられ始めているというニュースもちらほら出てきており、イラク国内の米軍拠点がテロ的な攻撃に合う可能性はかなり高まってきている。

・イランの核合意破棄の脅し
イランが核合意を破棄して核実験を続けるぞと懇意にしていた欧州各国に対して脅しをかけ始めている。
実質的には欧州国家はおろおろするばかりで、イランとほとんどまともな議論は行えていない。
欧州国家ができることはなんとか米国にこれ以上事態を悪化させないでくれと懇願することだけだが、ここまでトランプ大統領は全く聞く耳もたずといったところ・・・

・地理的に近い欧州資産は他の地域よりダメージが出るだろう
中東経済は地理的に近い欧州の経済とつながりを持っている。
中東情勢が荒れると難民が欧州へ向かったり、欧州からの中東への輸出が減少することによって欧州企業へダメージが出ることから、まだ状況が実現していなくても欧州株を売りに来る投資家もそこそこいるだろう。
また直接的に隣接するトルコ資産関連も従前より厳しい値動きをしそうな感じもしている。

・原油価格は上振れ傾向
シェールガスの生産の伸びが鈍化しそうというファクターとOPECが減産を続けているというファクターから、景況感は弱いものの原油価格は需給の引き締まりが見られそうということで原油価格は素直に中東情勢の緊張高まりに応じて上振れてきている。

<過去記事参考>

景気はスローダウンしているが原油価格は底堅い理由


こうして色々列挙してみると、一番実際にやばい事象が起きそうなのは断然イラクであることは間違いないだろう。
イラクでどれだけ宗派間の緊張が高まって事態が悪化するか、イランは本当に核合意破ってそのまま核実験を強行するのか、その時米国(トランプ大統領)は一体どのような決定を下すのかが足元最も重要なポイントとなっている。
まだイラン・米国のまじもん戦争というところまでは情勢は発展していないと個人的には考えている。

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