村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

地政学

香港政府をひっくり返すのは、今のデモ隊の行動では不可能

香港、デモ激化で教育機関を休校へ 大学構内で衝突も

武力を持たない反政府行動は通常成就しないが。

香港でデモがより過激化しており、
ここでは途中経過では何が起こるのか予想が難しいが、最終的な帰結がどこに向かうのか考察しておきたい。
普通はこのレベルだと武力鎮圧されるのが一般的だ。
理由としてはデモ側に政府をひっくり返すほどの武力がないからだ。
政府をひっくり返すにはどうしてもそれを上回る武力が必要だ。

反政府側が武力を得るにはいくつか選択肢があるが
1、軍あるいは警察組織が政府を見限り裏切る
2、反政府側自体が自力で政府側を上回る武力組織を保有する
3、反政府組織を支援する外国から武力を調達する
大体はこの3つのうちのいずれかになる。

上記いずれももたない場合にはいくら国民が不満を持っていようが通常は政府をひっくり返して革命を成功させることはできない。
その一番の例はベネズエラだ。
ベネズエラはあれだけ政府の失政によって国民が食うのにさえ困る状況に陥っているにも関わらず、政府と完全に癒着してしまっている軍が寝返らなかったことからマドゥロ政権は未だ存続している。
一方でボリビアの場合は政府の軍へのグリップが非常に弱かったことから、あっさり軍に裏切られてモラレス大統領はメキシコへと亡命していった。

さて香港に話を戻そう。
香港のデモ隊が仮に香港政府をひっくり返せるとすれば選択肢1しか取れないことは明白だろう。
選択肢2はそもそも香港にいる金持ち達がそんなやる気はないので政府側を上回る武力組織を保有するのは無理だ。
選択肢3はイコール米国が支援してひっくり返すことになるが、それはリアルで中国と戦争を行うことを意味してしまうので、米国政府でさえ取れない選択肢だ。
となれば香港政府傘下の警察組織が政府を裏切るように裏工作をするしか、現実的に香港政府をひっくり返して民主化達成を行う方法はない。

しかし現在のリーダーのいないデモ隊側にはそういった大人な工作ができる人がおらず、ただ破壊行為を繰り返しているという状況になってしまっている。
現状香港の警察組織が裏切るようなそぶりは一ミリも見ることができない。
そうであれば暴動が臨界点に達した時に起こることは大規模な警察組織による暴力鎮圧であり、多数の負傷者と死者を出した挙句、デモ隊の要求事項は達成できずに終わるだろう。
また武力鎮圧後は障害がなくなることから中国による20数年後を見据えた統合政策がより一層強まっていく。

それが果たして現在デモ活動を行っている若者達が望んだ結末なのだろうか。
誰も幸せになれない結末を迎えるとしか個人的には思えなくなっている。
反政府的行動が自分が正しいと思う信義に基づいたものだとしても、その願いを成就するには冷静に現実的かつ狡猾な手法を取れるリーダーしかできない。
逆にさっそうと米国に渡って援助を求めたジョシュアウォンなどの行動はただただ香港警察の神経を逆なでしたにすぎないように思える。
また一般香港市民も決して政府支持ではないものの、デモ隊のせいで飯を食えない状態にあり、デモ隊に対しても不満を募らせ、衝突が増加していく可能性もある。

あとは投資家としては最終的な結末は見えるとして、その間に起こる過程とリスク資産動向について考えておく必要性はあるだろう。
それかもう開き直って暴落したら買い増すぐらいの不貞寝投資決め込むかのどちらかだ。
 

韓国の富裕層や機関投資家はプラグマティックにJREIT投資を拡大

J-REIT大人気、日本製品ボイコットの韓国で-年初から投資急増

富裕層はいつだってプラグマティックに考えている。

未だ日本の輸出管理厳格化で貿易・旅行客・小売りといった類で韓日間のいくつかの指標に悪影響が出ているが、ことJREIT投資に限っては投資妙味ありということで韓国投資家は投資を続けている。
これは韓国も国内に投資機会がほとんどない上に、ソブリン金利もどんどん下がっていることから、資金を余らせた機関投資家の飽くなき高利回り投資要求を満たせるものを片っ端から探しており、JREIT投資というのはいわゆるその中の選択肢の一つとしてどんどん韓国からの資金が流入しているということだ。
特にここもとアジアでの金余りは米中貿易戦争に伴って拡大しており、アジアの機関投資家達はリスクリターンの良い投資機会が少しでもあればそこに大量に金を突っ込むということを繰り返している。

しかし、このニュースを見てなんだかなあと思ったのは、いわゆる韓国の富裕層はあくまで日韓の問題について感情的にならず、プラグマティック(実利的)に考えており、投資機会として要求するリスクリターンを満たせるならしょうもない政府やマスコミの煽りに騙されず、しっかりと投資をして稼いでいるということだ。

結局今回の日韓の外交問題については、支持率を維持したいがために条約無視という行為を繰り返してきてフェイクニュースを伝えてきた挙句、マスコミもPVを稼ぎたいからそれに乗っかっていく、そしてそれに騙される一般国民はわけもわからず不買運動を起こして、国内の小売・ショッピングモールテナント・貿易・ツアーリズムなどにダメージを与え、自ら自分達が得られるはずだった職を失っている。
ちなみに韓国の若者は学歴の需給ミスマッチで大卒の職のあぶれかたがひどいことから、日本へ就職に行くという人が相当多いが、昨今の日韓摩擦で日本企業の就職フェアが取りやめになったり、親から日本企業へ就職することを妨害されていることから、特に若年層へのダメージは大きい。
(日本企業はほんとは雇いたいんだけど、自分以外の要素で大きくダメージを受けている)

Labour pains: Japanese jobs for South Korean graduates dry up amid trade row


特に文政権は心情的にはわからなくもないものの、北朝鮮への肩入ればかりをしていて、その他重要な外交政策・経済政策が非常におざなりになっている
特に法相が辞任してからの派閥争いがより激化している中、文政権は今までの方向性を変えずらい状況に陥りつつあり(変えると対抗勢力にそこを責められる)、現在の反日方向性を切り替えることができなくなっている。

(韓国の革新派と保守派の争いについては下記書籍を参考)

韓国 内なる分断 (平凡社新書0917)

というわけで、煽られ騙され被害を受けるのはいつだって一般庶民であり、富裕層は至って冷静に金銭的な損得を考えて投資というのを行っていることがうかがえる。


混迷極めるシリア情勢が新しいステージに入る

クルド人組織、シリア政府が支援で合意 トルコの進攻で

シリアの混乱がいつまで終わらないのを端的に表している

以前に記述した米国がクルド人勢力を見捨てたことについて、まだ時間的猶予があるかと思っていたがもうほとんど米軍は撤収したということらしく、状況が非常に流動的になっている。

<過去参考記事>

トルコリラは米国経済制裁懸念とシリア紛争懸念で再び正念場


そして独立国を打ち立てようとしているクルド人勢力をなんとかして封じ込めたいと考えているトルコがクルド人勢力に向かって軍事侵攻したところまではフォローしてきた。
しかしここでなんとクルド人勢力がアサド政権(現シリア政府)と協力するという報道が出てきて度肝を抜かれるようなニュースが出てきた。
情勢よく知らない人にはなんで昨日まで戦争してたやつらが協力することになっているんだとわけわからないことになっているだろうが、少し調べていればまあ選択肢としてはありうるけどという感想が出てくる案件だ。
こういうことが起こるのはこのシリアでの戦争というのは各人が全く違う動機で戦争に参加しているからである。では各人の動機を記載してみよう。

シリア政府・・・アサド政権の存続・維持(生き残り)。イランとロシアの支援を受けている。
クルド勢力・・・生存権の確保。自治区を作りたい(生き残り)。米軍の支援を受けていたが見捨てられる。
シリア政府に協力しているイラン・・・同じシーア派であるシリア政府存続の支援して、シーア派勢力の確保(宗教的理由)
シリア政府に協力しているロシア・・・中東圏での影響力確保および地理的に近いのでイスラム過激派の封じ込めを行いたい(治安的な理由)
IS(イスラム国)・・・自治権の確保(生き残り)。サウジアラビアやトルコなどの沿岸諸国の支援を受けている。
ISを支援しているサウジアラビア・・・スンニ派勢力の拡大およびシーア派勢力の弱体化(宗教的理由)
トルコ・・・エルドアン大統領一派は金儲けのためにISを支援。および独立懸念のあるクルド人勢力の殲滅をしたいが、今までは米軍が支援していたため、NATOの一員であるトルコは攻撃できず。
米国・・・イランがバックについているシリア政府の殲滅、イラクの脅威になっているISの殲滅。目標達成のためにクルド人勢力を支援してきたが、ここにきて見捨てる決断をする。

上記のように全員利害がばらばらであり、はっきりと対立しているのはシーア派とスンニ派勢力だけで、あとの敵対関係は実は結構ふにゃふにゃであり、生き残りのために戦ってたり自国のセキュリティ確保のために首を突っ込んでいるだけだったりする。

そしてここにきて米国がクルド人勢力を見捨てたことによって地政学のパワーバランスががらりと変化した。
トルコ政府は遠慮なく米軍の後ろ盾がなくなったクルド人勢力を叩くことができるようになった。
しかし、戦闘地域はシリアであり、これはシリア政府が自国領土だと考えている地域への攻撃でもある。
そこで昨日まで敵同士だったクルド人勢力とシリア政府が手を組むことにしたということだ。
シリア政府も状況はギリギリなので、トルコ軍と正面からぶつかるのは危険だと考え、クルド人勢力をデコイにしようと考えているのだろう。
もちろんこれでクルド人勢力がトルコ軍に勝てば今度は後ろからシリア政府軍がクルド人勢力に圧力をかけてくるだろう。
このように構造的に各人の軍事力が均衡する中、敵対関係がころころ変わっていつまでもどの勢力も消滅しないことから終わる雰囲気が見いだせない状態になっている。
もちろんシリア政府の参入によってトルコリラをはじめトルコ資産には下落圧力が加わるだろう。

果たして今生きている人達が寿命が尽きるまでに終わるかどうかさえよくわからない。
 

トルコリラは米国経済制裁懸念とシリア紛争懸念で再び正念場

アングル:米軍撤退、トルコ軍侵攻 シリア情勢はどう変わるのか

米国やるやる詐欺のひとつだが、トルコ資産にとっては常に爆弾としてのリスクがある。

ここもとは急激な景気の悪化に伴う輸入の減少で、皮肉にも経常収支の帳尻が合うようになって外貨ファンディングのバランスが良くなったことから2018年9月以降はかなり動きが穏やかであったトルコリラだが、昨日米軍がクルド人支援をやめて撤退するという話が出たところから動きが再び怪しくなりはじめている。

ブログでもなんどか言及しているがトルコのエルドアン大統領は自国の東側がクルド人が支配する危険性があることを常に感じており、なんとかして殲滅したいと考えている。
下手すると民族浄化・ホロコーストも辞さない覚悟を持っている。
それを行っていないのはNATO加盟国で表立ってそうした人道的にありえない行為はさすがに簡単には起こせないということと、ここ数年は米軍がクルド人独立勢力をIS殲滅のために支援しているということにある。

特にここもとはこの米軍の支援によって資金・武器を得たクルド人独立勢力に対して自国から独立機運が発生するのではないかと常にエルドアン大統領は危機感を持っている。
しかしトランプ大統領は就任以降何回か泥沼にあるシリア紛争から足を洗いたいとも考えており、何回もクルド人勢力支援をやめて米軍を引き上げたいという話が報道で報じられている。
今回はトランプ大統領が根回しなしで見切り発車でツイッターに「米軍を帰還させる時がきた」とツイートしたことから、エルドアン大統領はクルド人勢力殲滅のために準備している国境地帯の軍を動かすのではないかと市場では危険視されてきていた。
過去形なのはご存じの通りもう侵攻を始めており、あとはどれぐらいの規模で続けるのかというところに尽きる。

Turkish Troops Begin Crossing Into Syria After US Stands Aside

トランプ氏はこうしたトルコの動きに対して「米国の意に沿わない行動をするならトルコ経済を破壊する」とまで言及してけん制しているが、トルコはトルコで明らかに敵対勢力であるクルド人を米国が支援するのにはらわたが煮えくり返っていたし、一部ではNATO脱退するのではないかという噂まで出ている。
足元ではまだ米国共和党がこの撤退について認めていない状態にあるが、本当に撤退した場合にはトルコは確実に軍事行動に出るのでトルコリラは大幅に売られると見ておいたほうがよいだろう。

段々インフレ率も下がって調子に乗って金利を下げてきたトルコリラについても投資妙味が下がりつつあるので、下手にトルコリラロングをしにいくと大やけどしかねないことにトルコリラ投資を検討している方は常に注意してほしいと思う。 

民族浄化のヨーロッパ史:憎しみの連鎖の20世紀  



サウジアラビア政府がイエメン空爆を諦めた背景

サウジ、イエメンでの部分的停戦に合意=関係者

サウジアラビアの空爆作戦は失敗に終わった。

サウジアラビアがイエメンのフーシ派と部分的停戦したという報道があった。
ここ数年イエメンはイランの支援を受けているフーシ派の勢力が拡大しており、これがサウジアラビアにとっては隣国に新しくシーア派勢力ができるという危険極まりない状態になる懸念が生じていた。
これに対処すべくサウジアラビアは空軍を使って空爆を行い、なんとかフーシ派の殲滅を画策した。
しかし、世論やコストを気にしていたせいもあり陸軍は投入しなかったことにより予定したような戦果は挙げられていない状態であった。
(歴史的に空爆だけで決着できた戦争例はない、本当に殲滅するならば陸軍投入は必須)

しかし少なからずこの空爆によってダメージおよび作戦妨害を受けているフーシ派も面白くはないので度々反撃を試みていたが、今回ドローンの大量投入による石油処理施設の爆破作戦に成功したというのが今回の背景だろう。
そしてこれを受けてサウジアラビア政府はイエメン空爆を停止することを決断した。

これはフーシ派からこれ以上空爆を続けて邪魔をするようであればこちらもできることはなんでもやるという意思表示とサウジアラビア政府は捉えたということを意味する。
これ以上戦果をあげられない空爆を続けた挙句、サウジアラビアにとって唯一といえる収入源にダメージを与えるような攻撃を受けることはコストパフォーマンスの観点から合わないというとらえ方をしたのだろう。
一方でフーシ派はフーシ派で、今回の作戦はとりあえずサウジアラビアが空爆をやめたことから一回きりであろうことがうかがえる。
もし複数回繰り返してしまえば、それはさすがに米国を筆頭に世界各国のエネルギー調達ラインに対するテロリズムが常習化する危険性が認知され、下手すると本当に米国陸軍が投入されてしまう危険性がある。
複数回サウジアラビアへのテロが実行されれば米国にとって米国陸軍投入コストがベネフィットを上回ってしまうので、多少の犠牲を伴っても米国政府が軍投入を決断する可能性は飛躍的に高まるし、欧州各国も見過ごすわけにはいかなくなるだろう。

以上を勘案するとサウジアラビア政府のイエメン空爆停止によって当面は中東情勢は動かなくなることが想定されるため、しばらくは追加でサウジアラビアの石油処理施設が攻撃されるという危険性は考える必要性はないだろう。
ただし、イエメンがフーシ派によって支配されるようになったら話はまた別次元に移行しかねないので、イエメンの情勢については随時追っていきたいと思う。
またいつでもサウジアラビアの石油処理施設は爆破されかねないという事実も消し難いことは頭の片隅には残しておきたい。 
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