村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

欧州

何も決められず迷走する英国ポピュリズム

ブレグジットは山場を迎えた? 英議会で4日起きた5大事

ごり押しポピュリズム政治ができるのは米国ぐらいしかないのではなかろうか。

米国は今でも世界一わがままが言えて、そしてパワーのある国だ。
だからトランプが無茶苦茶なことを言って脅しをかけても、他国はその言動を真剣に聞き、どう対処しなければ頭を抱えながら交渉する必要性に迫られる。
米国は内政はともかくとして、外交については言っていることが無茶苦茶なポピュリズムでも他国よりずっと実現ハードルが低いので、国内にて外交の失敗を咎められることは他国よりずっと少ない。

しかし英国は違う。
あくまで先進国のうちの一ヵ国に過ぎず外交において自国都合のわがままはそうすんなり通らない。
今回のBrexit騒ぎはまさにそれに直面した一番のケースだろう。
新しく首相になったボリスジョンソンはいわゆるBrexitのスピアヘッドだが、何分主張が極端なため、まずそのわがままがそのまま外交成果につながらない。
EUにとっては首相がボリスジョンソンになろうが英国のわがままに付き合う気などさらさらなく、ボリスジョンソンのわがままは簡単につっぱねられる状態になっている。
そしてそこから妥協点を見出そうとしないジョンソン首相に対して呆れた与党議員でさえ造反を見せたことにより、野党+造反与党議員で離脱法案延期の可決もしてしまったし、総選挙提案も支持を得ることができず、ジョンソン首相の議会を閉会させて動きを封じ込める作戦は失敗に終わり、首相生命は既に縮み始めている。

野党と造反与党議員はこのままではEUとの交渉はまとまらず、強硬離脱になることは避けられないと思っている。
もうこのドタバタが2016年から3年続いている。
外国人投資家からしたらこのちゅうぶらりん状態はたまったものではない。
強硬離脱になるならなるで決着がついているのであれば、それに従い投資計画を立てることができるが、なるのかならないのかわからない状態が何年も続いてしまうというのでは重要な決断をすることは難しい。
加えてもしジョンソン首相が短期でその政治生命を終え、総選挙になった場合には現在の野党が勝つ可能性が高い。
野党率いるコービン党首はガチガチの労働者寄りの政治家ということもあり、企業に対して不利益となる行動を連発させる可能性すらある。

そうなった時、英国にエクスポージャーを持ちたいなどと思う投資家や企業はどれぐらい残ってくれるだろうか?
このままぐだぐだが続くのは英国にとっては非常によくないことだけは確かで、英国Brexit強硬派の政治家は自分達のわがままがすんなり外交では通らないことをちゃんと考えたうえで、考え方をあらためてほしい。 

イタリアの五つ星と中道左派の連立政権でイタリア債が最後の輝きを見せる

イタリア五つ星運動」、民主党との連立樹立承認 新政権誕生へ

普通に考えたら五つ星に投票してきた人達は裏切られたという気持ちでいっぱいだろう。

ここにきて五つ星が中道左派と連立を組んで政権を構築するというウルトラC的な行動に出てきた。
これによって早期解散総選挙の可能性は消えつつあるということで、昨今の国債がどぼどぼマイナス金利に沈んでいく中で高い利回りを出すということで光り輝いているイタリアの中長期債に全員突関をしており、イタリア10年国債利回りが1%を切る水準にまで買われてきた。

<イタリア10年国債の利回り>
タイトルなし


個人的には確かに短期的にはイタリア債にポジティブだが、これは中長期的にはまずい流れなのではと感じざるを得ない。
理由を考えてみよう。五つ星に票を投じてきた人達は元々中道左派のEUにペコペコした挙句、なにも物事が進まないことに嫌気がさしたから五つ星を支持し、票を投じてきたのだ。
なのにここにきて中道左派と連立するという時点でなんなんだこいつと思うのが大半の有権者の感想ではなかろうか?
また中道左派に票を投じてきた人達も、え、五つ星と連立組むの?と率直な感想を持ちそうだ。

もちろんこの連立によってイタリアでの早期選挙の可能性はなくなってきているのでイタリア債は買いだという判断は短期的には正しい。
でも普通に考えたら五つ星と中道左派の政策が合致するなんてことはあり得ないことに加えて、また決められない政治が続くことが目に見えている。
それによって五つ星と中道左派に票を投じてきた人達の支持率が減少するのは確実だと思う。
そして次の選挙でサルビーニ氏が台頭してくることはまず間違いないと思われるし、五つ星と中道左派の連携に不協和音が見られればサルビーニ氏は積極的な口撃をしてくるだろう。

そして次の選挙に入ればサルビーニ氏率いる同盟に票が集まることはほぼ確実であり、その時イタリア国債はどういう動きを見せるのか今から想像するとうへーっという気持ちになる。
そういう未来がほぼ見えているけど、欧州も国債金利がマイナスに沈む中でどうしようもないということでその考えに蓋をしてみんな脳死したようにイタリア国債を買っているというのが今の現状だ。
未来の帰結点がわかっていても無視して投資せざるを得ない投資家がいる、それが今の債券市場の構造だ。結局は最後ババをつかむのは誰かというババ抜きだが、それまではチキンレースが続くだろう。債券投資家は状況がギリギリ切羽詰まるまで粘りがちなのである(アルゼンチン債とかはまさにその典型例) 

ドイツに対する財政刺激策拠出の圧力が増大している

Christine Lagarde urges eurozone to reform budget rules

IMF総裁からECB総裁へと華麗なる転身を決めているラガルド氏からユーロ圏の財政規律ルールに対するリフォームが必要という発言が出ている。

この発言は今のドイツが各国に統一的に押し付けている財政規律がそもそもユーロ圏の景気の落ち込みに拍車をかけていると言わんばかりの発言である。
それでもラガルド氏の発言は至極真っ当なものであろう。

そもそも政治は統合しているのに財政は統合されていないという時点でちぐはぐなのに、一番金を持っているドイツが景気落ち込みに対して財政支出が一番最後というのが枠組みとしては終わっている。
もちろんユーロ圏で一番経済が強いのはドイツであり、だからドイツが財政支出拡大による景気刺激を打ち込んでくるのは一番最後というのは理論的にはそうだが、それでは景気の悪い同じユーロ圏国家はドイツまで景気悪化が波及するまではひたすらドイツに虐められながら財政緊縮という不景気策を押し付けられることになる。
ラガルド氏はギリシャショック時にIMF総裁として対応してきたということもあり、このままのEU財政ルールでは次の景気落ち込みに弱小国が耐えられないというのもあるし、そもそもこれだけユーロ各国の国債がドボドボマイナス金利に落ち込んでいるのも、根本的に金が余っているドイツにお金が滞留していて、その他に全然お金が回っていないことを意味している。

他の国も国債を追加発行して景気刺激策に回したいと思ってもEU財政規律ルールで発行ができない状態だ。
しかもECBはQEで国債を買っているが、この状態だと需要は増加しているが供給側が足りないということが明白なわけで、そりゃ銀行が困るほど国債利回りがマイナス突っ込みますわなという話だ。重債務国ならいざしらず、財政黒字も経常黒字もじゃぶじゃぶに余っていて、そして10年国債利回りが-0.6%にもなってしまっているドイツは少なくともちゃんと財政支出をやれや、さもなければ各国がもっと財政支出増やして景気刺激策に回すというのを許容しろやという意味合いがラガルド氏の発言には含まれていることは間違いないと考える。

これは先立ってドイツが景気刺激のために財政支出を打つという発言をしていることも背景にはあるだろう。
ドイツがより強い財政刺激策を打つためのプレッシャーをラガルド氏は与えているのかもしれない。 

ギリシャがもうキリギリス状態になろうとしている

Greece's new finance minister vows to prioritise tax reforms

もうちょっと節操持ってほしいなと毎回思う次第ですが。

ギリシャの新財務長官がここにきて税改革をして経済を上げ潮にしていきたいと主張している。
中身としては包括的な税率カットで、4年間程度所得税、法人税、消費税のカットを目標にしているようだ。
元々2011年のギリシャ危機時以降、IMFやEUに緊急資金融資とベイルアウトを引き換えに緊急税徴収を課しているという事情はあるにせよ、ちょっと税カットに言及するのは早すぎるのではと思う。

おそらくは国債利回りが2%まで低下してきたことから、これなら既存の高利回り国債償還した後にリファイナンスしたらかなりおつりが来るんではないかという皮算用も含まれているようだ。

<ギリシャ10年国債利回りのチャート>
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ただアルゼンチンの例でもあった通り、B格レベルの国の外貨建て資金調達(ギリシャについてはユーロが自国通貨建てだが、実質的には国内の景気との乖離幅が大きいので外貨建て資金調達と変わらないという認識でよいと思う)はいつどんな急激な変化が起こってもおかしくないと思ったほうが良い。
一番良い例はこの前のアルゼンチンで選挙結果だけで外貨建て国債による資金調達コストが12%から年限によるが25-50%ものレベルになり、再度デフォルトするのではないかという懸念まで持たれるようになっている。

他にも大体多重債務かつデフォルト常連国というのは少し資金調達環境が改善するとすぐに油断してIMFからの融資を断ろうとしたり、一気に外貨建て国債を発行して多額の資金調達を試みようとしたり、税金カットして人気取りしようとしたりする。
ギリシャの場合はEUが資金を融通してくれる限りは確かに許される感じはあるけど、あんまり調子乗った発言しているとイタリアのようにいきなりEUから制裁金うんぬんみたいな話を食らって短期的にせよいきなり国債利回りが急騰するとかいうことが起こるので、いきなり調子をこかずにちゃんと段階を踏みながら財政政策を行ってほしいと思う。

大体格付けの低い国というのはこうした財政規律的な部分をきちんとしたステップを踏まずにいきなり周囲から反発買うレベルで緩めようとするからこそ低格付けに甘んじているのだろうと思う。
しかも自分の財政規律がゆるゆるかつ資金調達力がなくて、最終的にIMFに泣きつくくせに、少しでも余裕ができるとIMFからの融資なんて存在しなかったかのようにふるまうので余計にたちの悪さが目立つ。 

いよいよEUで本来は真っ先に財政出動するべきドイツが動き出すかもしれない

ドイツ連立政権、景気後退時に財政均衡路線脱却の用意=雑誌

まだシュピーゲル報道なので確定していないのと規模感が出ていないが、期待感は高まる。

ご存じの通り主に中国向けの設備投資輸出が大幅鈍化したことから、欧州の景気先行き感の警戒感は非常に強い状態になってきているが、ここでドイツ政府が財政出動するかもしれないという報道をシュピーゲルがリポートした。

こうした財政出動を行おうと具体的に考え始めたのは、やはり支持率狙いといったところだろう。
 まず現在のメルケル政権の退潮が明らかになってきたのが、2018年10月だ。

<過去参考記事>

独州議選でメルケル首相の退潮が明らかになった。


FTの報道ベースで税金カットによる景気刺激策を考慮しはじめているという話が2019年1月だ。

<過去参考記事>

ドイツが景気対策を考慮し始める


合わせて考えるともちろん景気対策的な側面はあるが、与党支持率の拡大のために財政出動による景気刺激策を考えているというところだろう。
欧州では一番金を持っているドイツが財政出動しないとEUの構造上財政刺激策が効かない。
それはなぜだろうか?

ドイツ以外の国が財政出動を行っても、意固地に財政均衡路線を貫いているドイツが貿易を通じて金を吸い取ってしまうからだ。
そして吸い取ったお金で経常黒字と財政黒字を拡大させて、ドイツは健全な運営していると誇るのだ。
別に通貨連合じゃない国ならそれは立派なことだが、通貨連合で一番経済が強い国がそれをやらかすというのは通貨連合のリーダーとしては最悪だとしか言えない。
その財政均衡路線のせいで、ドイツは無駄に周辺国から金を吸い取り、そして周辺国は経済の活力をどんどん吸われて活力を失っていく。
これが現在のEU経済が弱い理由の一つになっている。
しかもドイツとその他の国の規模感は大きく違うので、インパクトもはっきりいうと薄い。

なので、市場が待ちに待ったドイツによる財政出動が出てくれば、欧州の景気に与えるインパクトはそれなりに考えなければいけないし、市場が期待するのも非常にわかる。
ただ、これでGDPの1%ほど支出増やしまーすとかケチ臭いことを言うとずこーっと市場が滑ってしまうので、一体どれだけの財政出動を行ってくるかはしっかりニュースを追わなければいけない。
本気で景気刺激策を打つなら、EUのルールぎりぎりの対GDP比3%ぎりぎりぐらいの赤字が出るレベルで財政出動してほしいところだ。

それにドイツ10年国債の利回りはなんと驚きの-0.6%だ。
<ドイツ10年国債利回りのチャート>
タイトルなし

これ普通に考えると、本当に10年国債を利回り-0.6%で発行できるなら、簡易的に計算すると発行額面100に対して94しか返す必要性がないことを意味している。
じゃあ6の分だけどうぞお金を使ってくださいと債券投資家は認めているということだろうか?
ここまでマイナス利回りが深まるなら、少なくともマイナス利回り分だけ喜んでお金を使っていいんではなかろうか?
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