村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

新興国

一部経済基盤がしっかりしている新興国に明るい兆しが出始める

マルチスズキ、10月販売台数は4.5%増-9カ月ぶりプラス

比較的しっかりした新興国には回復の兆しが見え始めているのかも。

ニュースを見ていて驚いたのがスズキ自動車のインド子会社であるマルチスズキの10月自動車販売台数が一気に前年度比+4%に転じてきたことだ。
2019年に入ってからはインドの自動車市場は保険料値上げやノンバンククレジットの貸し渋りなどがあり自動車販売台数は前年度比-30%とかいうとんでもないレベルの下げ方をしていた。
自分もこれはしばらく回復はないかなあと思いながら、でもマルチスズキの株価なかなか下がらないなあと思っていたら10月自動車販売台数はプラスに転じたというニュースが出てきて、かなり驚いている。
法人税値下げ・金融緩和・在庫払しょくのための値下げなどが効いてきているのかもしれないが、ここらへんは新しいニュースを見ながら判断したい。

また中国でもまだ自動車販売がトータルでいうと前年比マイナスなのだが、細かく内訳を見ると必ずしもフリーフォールしているという風には見えなくなっている。
未だ前年比マイナスをたたき出しているのは主に地場メーカーであり、その地場メーカーも言ってみればEV補助金に乗っかって低品質EVを生産しまくっていたところが一番ひどい状況にあるように思われる。
中国では儲かるネタとなれば品質がどうであろうがまずは参入して無理やり売りさばき、やばくなったらとんずらするという行為がまかり通っているため、メーカーごとの品質差は非常に大きい。
そしてEV補助金でとりあえずEVなら売れるんだろとばかりにいい加減な品質で売りさばいていたら中国政府にこのEV補助金政策は見直しが必要だと気付かれて締めあげられ、それで自動車販売がガタ減りしたという雰囲気がする。
いわゆる外資メーカーの販売動向を見ると日系は大半が前年度比プラス販売だし、ガソリンを馬鹿みたいに喰うジャガーランドローバーの販売台数でさえプラスに転じてきているところを見ると、中国自動車市場も下げ止まりが見えつつあるような気がする。

以上を勘案していくと、南米やアフリカはひどい状況が続いているものの、アジア新興国については米国利下げによる自国金融緩和余地が十分できてこれが少しづつだが効き始めているのではないかと思える内容が出始めてきているように思える。
ここからは新興国についてはマイナスニュースを追うよりもどのようなプラスニュースが出てくるかに注目していきたいと思う。
少し自分が考えていた市場想定も考え直す必要性があるかもしれない。
 

インドの通信業界はリライアンスジオ一強になる

インド最高裁、移動通信8社に支払い命じる-政府に計1兆4100億円

ここでそういう判決もってきますか。

インドではここ20年の間、通信会社の電波使用料について政府と企業の間で認識の食い違いがあり、長きにわたって裁判となっていた。
インドの電波使用料はユーザー数によって決まるシステムになっているのだが、通信と関係ないユーザー課金についても政府は電波使用料の請求を要求していた一方、企業側は通信に関係している顧客だけの課金が正当ということで、長らく企業側は政府の命令額より少ない金額しか払ってこなかった。

しかしそんな裁判もようやく最高裁判所の判決が出て一件落着のように見えるが、裁判結果は政府の言う金額をキャリアは払えとのこと。
最高裁判決なのでおそらくこれをひっくり返すのはほぼ不可能だと思われる。
そしてキャリアは全員で合計130億ドルもの追加料金を払う必要性が生じる。
おそらくはユーザーシェア割で払うことになるので、通信大手バーティエアテルおよびボーダフォンアイデアの負担分はかなり大きいことになる。

ちなみにニュースではボーダフォンの負担が40億ドル、バーティエアテルの負担が30億ドルと予想されており、ただでさえ赤字なのに、ワンショットででかい負担をさせられるということだ。
分割払いにするなら、ここから金利負担などもする必要性があるので、より負担感は重くなるだろう。
一方で2016年からサービスを開始してのし上がってきたリライアンスジオの負担感は非常に軽いものになる見込みであり、ニュースではたった1800万ドルと競合他社と比べてゴミみたいな負担感しかない。

そうなるとただでさえリライアンスジオの安値攻勢のせいで赤字に陥っているバーティエアテルとボーダフォンアイデアが、遅れている4Gに投資するための資金を捻出することがかなり難しくなるだろう。
インドの通信設備は非常に遅れており、リライアンスジオぐらいしかまともに4G投資が進んでいないということもあり、ここから投資資金捻出できないならリライアンスジオ一強になることはほぼ確実だろう。
なぜこのタイミングで判決が出てきたかというと、おそらく政府は法人税カットして税収が足りなくなるので、ほかの収入で埋め合わせようと躍起になっており、裁判所に圧力をかけたという可能性も否定できない。
そういった意味ではこれら通信業界は政府の財布の状況から影響を受けた悲しき犠牲者という見方もできるだろう。

とにかくインドの通信業界シェアが大きく動きかねない話にまで飛んでしまっており、いくら税収欲しいからといってここで強引に進んでいいのかどうか個人的には少し疑問に思っている。 
ここまでインドの通信業界はリライアンスジオを除いて非常に不安定な状態にあり、かつ何社もデフォルトする自体に陥っているのだが、これが果たしてインド政府が望むことなのだろうか?
あまりにも通信会社を苦しめると自国のインフラ基盤を弱めるだけなので、将来的に問題が起きそうな気がするが・・・



韓国の富裕層や機関投資家はプラグマティックにJREIT投資を拡大

J-REIT大人気、日本製品ボイコットの韓国で-年初から投資急増

富裕層はいつだってプラグマティックに考えている。

未だ日本の輸出管理厳格化で貿易・旅行客・小売りといった類で韓日間のいくつかの指標に悪影響が出ているが、ことJREIT投資に限っては投資妙味ありということで韓国投資家は投資を続けている。
これは韓国も国内に投資機会がほとんどない上に、ソブリン金利もどんどん下がっていることから、資金を余らせた機関投資家の飽くなき高利回り投資要求を満たせるものを片っ端から探しており、JREIT投資というのはいわゆるその中の選択肢の一つとしてどんどん韓国からの資金が流入しているということだ。
特にここもとアジアでの金余りは米中貿易戦争に伴って拡大しており、アジアの機関投資家達はリスクリターンの良い投資機会が少しでもあればそこに大量に金を突っ込むということを繰り返している。

しかし、このニュースを見てなんだかなあと思ったのは、いわゆる韓国の富裕層はあくまで日韓の問題について感情的にならず、プラグマティック(実利的)に考えており、投資機会として要求するリスクリターンを満たせるならしょうもない政府やマスコミの煽りに騙されず、しっかりと投資をして稼いでいるということだ。

結局今回の日韓の外交問題については、支持率を維持したいがために条約無視という行為を繰り返してきてフェイクニュースを伝えてきた挙句、マスコミもPVを稼ぎたいからそれに乗っかっていく、そしてそれに騙される一般国民はわけもわからず不買運動を起こして、国内の小売・ショッピングモールテナント・貿易・ツアーリズムなどにダメージを与え、自ら自分達が得られるはずだった職を失っている。
ちなみに韓国の若者は学歴の需給ミスマッチで大卒の職のあぶれかたがひどいことから、日本へ就職に行くという人が相当多いが、昨今の日韓摩擦で日本企業の就職フェアが取りやめになったり、親から日本企業へ就職することを妨害されていることから、特に若年層へのダメージは大きい。
(日本企業はほんとは雇いたいんだけど、自分以外の要素で大きくダメージを受けている)

Labour pains: Japanese jobs for South Korean graduates dry up amid trade row


特に文政権は心情的にはわからなくもないものの、北朝鮮への肩入ればかりをしていて、その他重要な外交政策・経済政策が非常におざなりになっている
特に法相が辞任してからの派閥争いがより激化している中、文政権は今までの方向性を変えずらい状況に陥りつつあり(変えると対抗勢力にそこを責められる)、現在の反日方向性を切り替えることができなくなっている。

(韓国の革新派と保守派の争いについては下記書籍を参考)

韓国 内なる分断 (平凡社新書0917)

というわけで、煽られ騙され被害を受けるのはいつだって一般庶民であり、富裕層は至って冷静に金銭的な損得を考えて投資というのを行っていることがうかがえる。


資源価格低迷で暴動が起きやすくなっている中南米諸国

チリ暴動による死者11人に 地下鉄運賃値上げめぐり

メキシコ以外の南米の国全員に起こりえる事象。

チリで政府が財政規律維持のために鉄道向け補助金を減らすために運賃の引き上げを発表したところ暴動が起きて、政権は非常事態宣言をするといった危機的状態に陥った。
これによりチリの株価指数は4%下落、為替も対ドルで2%ぐらい、国債も現地通貨建てのもので30bpsぐらい利回りが上昇しており、いわゆるトリプル安状態になっており、プチパニックが起こっている。

なぜ南米でも優等生的な位置づけであったチリでこのようなお粗末なことが起こるのか?
これはチリに問題があるというよりかは南米全体で問題があり、メキシコ以外の南米の国ではどこの国も起こりうる可能性のある話だ。
チリ以外の南米の国でも、エクアドルも似たように燃料向け補助金を削減して同じように反政権暴力でもが起きてぐちゃぐちゃになっている。

エクアドル政府が首都から脱出、抗議デモ激化

このようなことが起こる理由としては、南米各国は絶対的に人口に対して雇用者数が少ないことが挙げられる。
なぜ雇用者数が少ないかというと、一番雇用吸収力のある製造業のサプライチェーンに入っていないからだ。
以前に下記書籍について書評を書く中で改めて認識したのが、南米・アフリカ・中東というのはこの製造業のグローバルバリューチェーンにほとんどの国が属していない状態になっている。

詳しくは下記書籍と書評を参照してもらいたい。

<書評>

「グローバル・バリューチェーン 新・南北問題へのまなざし」を読んで




グローバル・バリューチェーン 新・南北問題へのまなざし

南米でいうとメキシコを除くとほとんどの国は資源および農産物輸出の実質一本足打法だ。
(メキシコはトランプ政権からいじめられてはいるものの、なんだかんだで米国向け製品の製造業拠点としての地位は確立している)

資源だけでは正直言うと雇用吸収能力というのは足りておらず、政権は資源で獲得した金を民衆にばらまかないと無職や低賃金の国民の不満を押さえつけることができない。
では足元のように2008年と2012年頃までに夢見た資源バブル崩壊して、全ての資源価格がピークから3割も4割も安い状態では政権がばらまけるお金が足りないことからふつふつと国民の不満は高まっていく。
特に南米は汚職の度合いがひどいことに加えて、治安も悪いときていて、そこにきて財政規律維持のためにばらまくお金を減らす(=補助金を減らす)をやり、国民が貯めていた不満が爆発するのもやむをえないという感じがする。
このように南米は財政問題と雇用・福祉問題の直結度合いが先進国およびアジア新興国と比べて高い状態にあり、一たび財政問題にぶちあたると国の基盤が崩れるのが速い。

以上を勘案するとちょっと南米のリスク資産を安易に取りにいくことはかなり危険と思われるし、やられるときは真っ先にやられるエクスポージャーだというのも政治の不安定さを考えればかなり想像しやすい結論ではなかろうか。
ドル建て国債らへんならハードカレンシーだからちゃんと返済するための努力はするでしょというところだが、株や現地通貨建て債券については売られすぎたところをリバウンド狙いで取りにいく以外はあまり妙味はないように思われる。 

混迷極めるシリア情勢が新しいステージに入る

クルド人組織、シリア政府が支援で合意 トルコの進攻で

シリアの混乱がいつまで終わらないのを端的に表している

以前に記述した米国がクルド人勢力を見捨てたことについて、まだ時間的猶予があるかと思っていたがもうほとんど米軍は撤収したということらしく、状況が非常に流動的になっている。

<過去参考記事>

トルコリラは米国経済制裁懸念とシリア紛争懸念で再び正念場


そして独立国を打ち立てようとしているクルド人勢力をなんとかして封じ込めたいと考えているトルコがクルド人勢力に向かって軍事侵攻したところまではフォローしてきた。
しかしここでなんとクルド人勢力がアサド政権(現シリア政府)と協力するという報道が出てきて度肝を抜かれるようなニュースが出てきた。
情勢よく知らない人にはなんで昨日まで戦争してたやつらが協力することになっているんだとわけわからないことになっているだろうが、少し調べていればまあ選択肢としてはありうるけどという感想が出てくる案件だ。
こういうことが起こるのはこのシリアでの戦争というのは各人が全く違う動機で戦争に参加しているからである。では各人の動機を記載してみよう。

シリア政府・・・アサド政権の存続・維持(生き残り)。イランとロシアの支援を受けている。
クルド勢力・・・生存権の確保。自治区を作りたい(生き残り)。米軍の支援を受けていたが見捨てられる。
シリア政府に協力しているイラン・・・同じシーア派であるシリア政府存続の支援して、シーア派勢力の確保(宗教的理由)
シリア政府に協力しているロシア・・・中東圏での影響力確保および地理的に近いのでイスラム過激派の封じ込めを行いたい(治安的な理由)
IS(イスラム国)・・・自治権の確保(生き残り)。サウジアラビアやトルコなどの沿岸諸国の支援を受けている。
ISを支援しているサウジアラビア・・・スンニ派勢力の拡大およびシーア派勢力の弱体化(宗教的理由)
トルコ・・・エルドアン大統領一派は金儲けのためにISを支援。および独立懸念のあるクルド人勢力の殲滅をしたいが、今までは米軍が支援していたため、NATOの一員であるトルコは攻撃できず。
米国・・・イランがバックについているシリア政府の殲滅、イラクの脅威になっているISの殲滅。目標達成のためにクルド人勢力を支援してきたが、ここにきて見捨てる決断をする。

上記のように全員利害がばらばらであり、はっきりと対立しているのはシーア派とスンニ派勢力だけで、あとの敵対関係は実は結構ふにゃふにゃであり、生き残りのために戦ってたり自国のセキュリティ確保のために首を突っ込んでいるだけだったりする。

そしてここにきて米国がクルド人勢力を見捨てたことによって地政学のパワーバランスががらりと変化した。
トルコ政府は遠慮なく米軍の後ろ盾がなくなったクルド人勢力を叩くことができるようになった。
しかし、戦闘地域はシリアであり、これはシリア政府が自国領土だと考えている地域への攻撃でもある。
そこで昨日まで敵同士だったクルド人勢力とシリア政府が手を組むことにしたということだ。
シリア政府も状況はギリギリなので、トルコ軍と正面からぶつかるのは危険だと考え、クルド人勢力をデコイにしようと考えているのだろう。
もちろんこれでクルド人勢力がトルコ軍に勝てば今度は後ろからシリア政府軍がクルド人勢力に圧力をかけてくるだろう。
このように構造的に各人の軍事力が均衡する中、敵対関係がころころ変わっていつまでもどの勢力も消滅しないことから終わる雰囲気が見いだせない状態になっている。
もちろんシリア政府の参入によってトルコリラをはじめトルコ資産には下落圧力が加わるだろう。

果たして今生きている人達が寿命が尽きるまでに終わるかどうかさえよくわからない。
 
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村越誠

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