村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

社債

流動性のないハイイールド社債やCLOを抱え込んでしまった場合のヘッジ方法

マネー、米低格付け債ETFから大規模流出 原油安で拍車も

流動性があるものを使ってヘッジするしかない。

例えば高利回りだとかいって大量にシェールガス企業のCLOやらハイイールド社債を今現在大量持っていたとしよう。
足元で買い手がドン引いてしまい、手元の保有ポジションを投げたくても投げられない状態に陥っているのに、これを緊急で手当てしろと命じられた。
この時あなたならどうするだろうか?
米国市場ではいくつか方法があるが、いずれも米国で上場しているハイイールド債ETF(HYGかJNKのどちらか)を活用する。

ひとつはハイイールド債ETFをショートするという方法だ。
これは一番単純かつ明快な手法で、株の空売りと同じやり方でショートポジションを構築するだけだ。
ただこの方法は一つ問題点として皆同じことを考えてショートを振ってくると貸し株料が高騰し、ヘッジに多額の料金がかかってしまうリスクがある上に、この貸し株料が毎日変動するのでトータルコストが見通しづらいという欠点がある。

二つ目はハイイールド債ETFのプットオプションを買う手法だ。
米国金融市場は世界最大の流動性市場であり、思いつく大抵のギャンブルチック手法の取引が可能だ。
特にオプションという一歩間違えると即死しかねないものについては米国市場の巨大さは圧倒的だ。
そこでハイイールド債ETFのプットオプションを買って、一定以下の値下がりに対してプロテクトをかけるという手段が取れる。
ただしこれも一つ問題点としてプットオプションを買うわけだから買うためのキャッシュがいる。
そういうことを考えると多少キャッシュを保有しているファンドはできるが、そうでないファンドは現実的に難しいように思える。

三つ目はハイイールド債ETFのインマネコールを売る手法だ。
この手法はインマネコールの流動性が一番の問題になるが、それをクリアできるならコールを売ることによってキャッシュが手に入るので一番困っているファンドにとっては現実的な解のように思える。
どうせ自分が現物投げることによって市場売り崩してしまうわけだから先にコール売っちゃえというのも解としてはありだが、この自分の投げで市場が崩れるというほどの大きなポジションでないと逆にインパクトがない手法でもある。

こう考えるとシェールガス企業のクレジット悪化はそれ以外のジャンク債を発行している企業にとって決して対岸の火事ではなく、売りに巻き込まれる対象であることなのは確かなのである。
 

サンタンデールがコールスキップしていたAT1債を償還

Santander to repay capital bond one year after spooking market



爆発的に将来のコールスキップリスクが増大している。

スペインの大手銀行サンタンデールが昨年初回コールをスキップしたAT1債について、新規発行したほうがコストが安いということで新発債を発行してコールスキップしていたAT1債をコールする予定だと報道された。
この事象についてどういうことなのか少し解説する必要性があるだろう。

AT1債とはこのブログでも何回か記事にしている通り、満期がなく、いつでも利払いを停止されることが可能であり、債券の中でも限りなく弁済順位が一番下の社債である。

<過去参考記事>

ドイツ銀行がいきなり破産申請をするということは現状ありえない

また金融ショックなどにより当該金融機関が窮地に陥った場合には自国金融当局の命令によって元本の削減や株式転換を命じることができ、足りない自己資本を債券保有者に負担させることができるスキームになっている。
ただし、その分上乗せ金利もたっぷり乗っており、昨今の金利低下による運用難の中投資家が増加している市場でもある。

昨年2019年2月にサンタンデールは初回コールを迎えたAT1債についてコールスキップを行った。
初回コールスキップを行うと投資家にとってはいつコールがかかるかよくわからなくなるケースが多々あるため、社債の価格変化リスクにおいてスプレッド変化による価格感応度の計算が非常に複雑になる。
(例えば1年後償還するのか10年後償還するのかでスプレッド10bps変化の価格感応度が大幅に変わる。)
そのため投資家としては初回コール日にコールしてくれることを期待するのだが、バーゼル3規制以降ステップアップ発行が禁じられたことから金融機関は初回コール日にコールするのかどうかをシビアに経済合理性で見てくるようになった。
そういった意味で、サンタンデールがコールを見送ったのはそちらの方が得だと思ったからだろう。

しかし、その後社債市場での投資家の買い意欲が増大していったことにより、新しく社債を発行したほうがコストが安くなりそうという観測が出始めてきた。
去年コールスキップしていたAT1債の上乗せ金利は541bps、該当社債格付けはBB+である。
おそらく足元で5年コールのAT1債を出せばもっと少ない上乗せ金利で発行できるだろう。
だからサンタンデールは既存AT1債を償還し、新しくAT1債を出すという決定をしたのだ。

しかし、これは逆にAT1債のリスクが以前よりも高まっているということを意味する。
上述したようにAT1債にはコールスキップされてスプレッド変化による価格感応度が大きく変わるリスクが存在する。
つまり低スプレッドで発行されたAT1債は高スプレッドで発行されたAT1債よりもコールスキップされるリスクが大きくなるのだ。
この低スプレッド期間が長ければ長いほど、多くの金融機関が高スプレッドAT1債を償還し、低スプレッドAT1債を発行するだろう。
最終的に帰結するところは、市場に低スプレッドだらけのAT1債市場が生まれ、次回の不況時に一気に市場のスプレッドが拡大することにより、ほとんどのAT1債がコールスキップされることを前提とした債券に変わってしまうということだ。
しかもその後コールされる確率も高スプレッドAT1債よりも極端に低くなる。
そのため、一斉に売りが殺到し流動性危機に陥ることは火を見るより明らかだ。
この変化はどうしても不可逆的であるため、おそらく実際にスプレッドの拡大が起こったらまさに買い手がつかない地獄絵図が見れる市場へ早変わりするだろう。
 

ババ抜き化を狙って動き始めたどべジャンク社債投資

Fund managers spy opportunity as distressed debt grows

皆が金を突っ込む前に乗るしかないこのビッグウェーブ的なノリじゃあるまいし。

足元になってここまでずっとぐだぐだで不安視されていたジャンクの中でもよりドベに近い社債への需要が俄かに活気づいてきている。
CLO価格を見てもじわじわとメザニンから順番に価格が回復していることに加えて、一番動きが顕著なのは米国ハイイールド社債のCCC格付けのスプレッドががつんと下がり始めたことだ。
一体なにが起こっているかというと、おそらく上記のニュースを見て先回り買いしているプレイヤーがいることだと思う。

<CCC格付けの米国ハイイールド社債の利回り推移>
タイトルなし

ICE BofAML US High Yield CCC or Below Effective Yield - FRED



上記ニュースではピムコをはじめ大型アセマネ会社3社がリストラボンド・ディストレス債券・不良債権扱いの社債(要はでデフォルト寸前で非常に安くなっている、あるいはもうデフォルトしていて回収率勝負になっている社債)に投資するファンド立ち上げを計画していることが報じられている。
CCC格付けの社債利回りの平均が12%もあるということで、久々の高い水準でかつBB格(たったの4%)やB格(たったの6%)はご存知の通り逆にスプレッドが相当低い水準に突っ込んでいってしまっていることから、この領域のバリュエーションは安いから金を突っ込めという米国お得意のギャンブル中毒的な動きが見え始めている。
(CCC格のデフォルト率とか回収率とかこまけえこたぁいいんだよ的テンション)
そう考えると今年中盤まであった同様な非流動性債券に投資していたファンドがクローズに追い込まれた流れから徐々に変化の兆しが出ている。

<過去参考記事>

流動性のない資産に金をつっこんだヘッジファンドに逆風


これからまだ後発が同様なファンドを立ち上げてくる可能性を感じたプレーヤーがここぞとこれらドベ社債に買い向かって、後から来た人達に高値で押し付けようとしているということだろう。
その対象は主にCCC格付けの社債とCLOのメザニンであることはほとんど疑いようがなく、ここまでバカスカ売られてきてプライスが大きくアンダーパーになって利回りが10%超えている社債が中心になることは間違いない。
CLOについてもとりあえず利下げによるクーポン減少懸念が数カ月前よりもずいぶん低くなったことから買いやすくなっているという理由もある。

このように今まではクレジットの状況と景気動向を見て、ほんとうにクズ中のクズ社債は駄目だなということで、流動性低いクズ社債に投資していたファンドがいくつか閉鎖させられる動きがあったが、足元では逆に新規で立ち上がる雰囲気さえ見せ始めていることから流れは変化しつつあることが見える。

もちろん行き過ぎれば最後はブームアンドバストで市場参加者全員に迷惑をかけながら大爆死する資産カテゴリであるが現状の利回りを見ればすぐにブームアンドバストが来るわけはないので、どの辺までブームが来るのかを観察するステージだと思われる。
現状はまだこの資金流入による発行増が見えないので、ブームが来てると判断するのは間違っていると思われる。

<過去参考記事>

米国CCC格ゾーンのハイイールド社債市場はリスクオフトリガーにはならない

 

インドネシアのドル建てハイイールド社債が炎上中

投資適格だけ見てると相場は平穏に見えるけど、アジアのハイイールド社債見るとかなり荒れてるんじゃないかと疑いたくなる。
特にひどい状況にあるのがインドネシアで、発行しているうちの25から30%ぐらいが利回り10%を超えるクズ社債となっている。

以下駄目な銘柄を挙げてみようと思う。

1、Duniatex
これは最近で一番ひどい例で、今年の3月にドル建て社債を起債した縫製会社だが、なんと7月になって利払いができなくなり実質デフォルトとなった。
上場企業じゃないことをいいことに会社情報に関してほとんど非開示で数字がわからなかったことから投資家の反応は遅れ、たった一日で社債単価がオーバーパーから35に叩き落されることになった。

2、不動産銘柄(リッポーカラワチ、カワサンインダストリジャバベカ、アグングポドモロ) 
インドネシアの不動産市況はかなり悪く、ここ数年フラットという状況だ。
そしてレバレッジが高く、また保有している土地に偏りがあったり、特徴のない不動産会社はいきなり不動産が売れなくなって資金繰りが詰まるという事例が多発している。
リッポーカラワチはもともとはピカピカの不動産デベロッパーだったが、ビジネスモデルが株式調達によるライトアセット戦略に依存していたことから、株式の軟調化に伴って戦略を実行できず、在庫がバカスカ溜まったことによって死ぬ一歩手前まで追いつめられている。
ジャバベカは工業用団地分譲と発電IPP事業を行っているが、工業用団地が周辺にもタケノコのように出来てしまい価格のたたき合い競争になった上に、IPPでは配電先のPLNから質が低いと受け取り拒否されてゼロ出力になるなどわけのわからない問題が発生。
アグングポドモロは去年一昨年あたりからさっぱり不動産が売れておらず、いずれも会社も資金繰りに汲々としている。

3、石炭会社(ジオエナジー、ゴールデンエナジー、ABMインベスタマ) 
インドネシアの石炭会社は結構ドル建て社債を発行しているが、昨今の石炭価格下落で小規模・雑オペレーションの会社はかなりクレジットが危なくなっている。
ジオエナジーはアニュアルレポートにジムロジャーズをのっけるといった普通のIRでは到底思いつかないような芸当で投資家をずっこけさせているが、案の定オペレーションが雑なので石炭産出がうまくいかなくなって赤字になっている。
ゴールデンエナジーも会社規模が小さく、こちらも利益が急減しており投資家から不安視されている。
ABMインベスタマは保有鉱山が小さいうえに、掘削オペレーションも運搬事業もいずれもシェアが小さく中途半端な位置にあることから赤字に陥るんではないかと観測されている。 

4、ガジャトゥンガル 
インドネシアのタイヤメーカーだが、万年資金繰りに苦しんでいるトラブルメーカー。
事業がかなり運転資金がいるビジネスな上に、親会社との不透明な資金のやりとりでさらに資金繰りが逼迫している。
リーマンショックから数えると三度目ぐらいの債務リストラになるかもしれない。 

5、サウィットスンバーマス 今ESGで話題のパームプランテーション銘柄。パーム油事態が環境に良くないという理由から欧州では使用について厳しい目線が向けられている。
欧州以外ではインドと中国の伸びが成長率の大半を担っているが、いずれも従来の年率伸び率5%から1-2%へ減少しており、需要が想定を下回る中、パーム油価格がリーマンショック来安値レベルに接近しつつある。
そういったことからサウィットスンバーマスも利払い能力が減少しつつある。 

6、ソエチ 
インドネシアの海運会社だが、ビジネスモデルがすでに破綻している。
10年以上の中古原油タンカーを買って、プルタミナに原油を運ぶというビジネスモデルなのだが、それプルタミナが料金値下げ要請したり、プルタミナ自体が船買ったらどうすんの?
としょっぱなから破綻しているビジネスモデル・案の定炎上している。

このようにインドネシアのハイイールド社債だけを見ると、なんかこれやばいことが起きているんじゃないかと思いたくなる炎上っぷりだ。
特に2017-2018年に起債している銘柄ほど雑なファイナンスをしたということもあり、ほぼ全滅に近いという状態になっている 

一部銘柄の大幅下落でレバレッジドローン全体に懸念が生じているのか

レバレッジドローンの価格急落、クレジット市場の重大リスクが鮮明に

レバレッジドローンの銘柄のうち、残高が6.93億ドルあるクローバーテクノロジーズのレバレッジドローン価格が48時間の間に2/3になったという話だが、足元の相場で一番気持ち悪いのはこのレバレッジドローンおよびCLO周りだと思われる。

これらローンは流動性が薄く、そんなに自由に売買できるといったものではないので、通常の社債を考えながら保有していたりすると、特定プレーヤーの売りでいきなり大きく価格が下がりリスクがいわゆる普通の社債と比べてダントツに高い。
そして過剰なオーバーシュート値崩れが他のプレーヤーの売りの呼び水となってしまい、ドミノ倒しのように売りが増加した挙句、いろいろなプレーヤーやリスク資産を巻き込みながら下落していく。

他のリスク資産も下がるのは、ローンの値下がりとともにリスクプレミアムが上昇し、他の資産が急速に投資妙味として見劣りするようになるというのもあるが、メインは損切りと同時にその損を埋めるために利益がのっかっているリスク資産を売る動きが増幅されるからだ。

2018年末はその動きが特に顕著であったが、今回はどういう動きになるだろうか?
直近でパルマースクウェアCLOインデックスは格付け別にみるとどの格付けもおそらくはこのクローバーテクノロジーズのローンの値下がりの影響を受けてプライスリターンが下がってきている。直近でも流動性の低い資産を大きく入れていたファンドにトラブルがあったが、この夏を乗り切れるかどうかが一番不安なところだ。

<過去参考記事>

流動性の薄い資産への逆風が相次ぐ


 
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