村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

フロンティア

貧困新興国の債務がいくらぶっ飛ぼうが世界経済にはほとんど影響なし

Investors braced for credit crisis in emerging markets

弱小新興国がいくつ飛ぼうが世界的にはあんまり関係ない。

足元のコロナウイルスの最大の被害者は信用力の低い貧困新興国である。
FTを読んでいると名指しであそこの国が対外債務返せなくてやばいと言われている。
FTが名指しした国について一応列挙しておこうと思う。
自分が読んだ中で名指しされているのはエジプト・アルゼンチン・レバノン・チュニジア・ホンジュラス・スリランカ・アンゴラ・オマーン・ナイジェリア・トルコといった名指しが続々とFTで報じられている。
大半はムーディーズやS&Pで付与されている格付けがB格か、あってもBB格の最底辺レベルといったところまでである。
こういった国は自国通貨の信用力が全然ない上に外貨準備高も全然ないし公表数値も色々なテク使ってごまかしているということもあり、基本的にドルやユーロなどの外貨で政府債務を借りてるパターンというのが非常に多く、ちょっとした外部ショックでいきなり返済が難しくなるというパターンが常套化している。
ただ、このレベルの国が何個ぶっとぼうが、世界的な経済に対してはさほど影響はない。

それはなぜだろうか?
例えばスリランカは対外債務がGDPの60%ぐらいあるが、GDPが900億ドルぐらいしかないので外貨建て債務といってもたったの540億ドル、日本円でいうとたったの6兆円手前ぐらいだ。
ちなみにソフトバンクの有利子負債は20兆円だ。
つまり弱小新興国の有利子負債の金額なんて、先進国の大き目企業1社分にも満たないレベルしかないということだ。
おそらくそういった国の外貨建て債券を購入している人達もそういうリスクをコミコミで考えて投資しているはずだし、ここに過剰にレバレッジをかけるということもない。
こんなレベルの国が5個デフォルトしようが10個デフォルトしようがグローバルで見れば大したレベルの話ではないことは確かだろう。

ただし、こういったデフォルトするような国が元々はBBB格あるレベルの国にまで到達していくと、かつて起きたアジア通貨危機とかテキーラショックみたいないよいよ先進国みんなで考えて対策施さないとやばいというレベルになる。
例えば今の時点で炎上するとさすがにやばいと思われる国と言われれば、インド・インドネシア・ブラジル・ロシア・メキシコらへんではなかろうか?

今のところ新興国がやばくなりそうということでIMFがアップしているところだが、 とりあえずこれだけで新興国の炎上を弱小国家だけで押しとどめられるかどうかは正直よくわからない。

100年国債を発行したアルゼンチンは3年も持たなかった

アルゼンチン売りトリプル 株、ペソ、国債 ポピュリズム政権を警戒

結局こうなる結末なのかというところ。

アルゼンチンで現職マクリ大統領が予備選で野党候補のフェルナンデス元首相に大敗してしまったことから、アルゼンチンの全資産が売られる状態になっている。
株・為替も大暴落しているが、特に致命的なのはアルゼンチンのドル建て国債の大幅値下がりである。
2017年に発行したクーポン7.125%のドル建て国債は一日で単価が74から56へと大幅に値下がり、最終利回りも12.8%とかなりの確率でデフォルトすると見られる水準まで下がった。
短期のドル建て国債でも2022年1月償還クーポン5.625%のドル建て国債の単価が62、最終利回り28%というのを見ても、デフォルトを避けることは難しいと考える市場参加者が大半というところだろう。
一般的にはドル建て債券で単価が80を割ってくるとデフォルト懸念を織り込み始めると言われているが、選挙結果で一日でその水準を簡単に割ってきたところに市場の動揺が見て取れるだろう。

そもそも2017年に100年国債がクーポン7.125%で発行された時点で、過去20年に2回もデフォルトしている国の100年国債発行なんて馬鹿げているし、ありえないだろと言われていたが、当初はクレジットバブルであったし、2015年にマクリ大統領が就任してからはビジネスフレンドリーということでハードカレンシー建てならなんでも買っていいという雰囲気があった。

しかしフェルナンデス元首相が大統領になり、副大統領にこれまた元大統領のクリスティナフェルナンデスが就任すると自国債務やIMFとの合意で再交渉(再交渉というよりは金なんて返さないよということだと思うが)する予定であるため、結局は100年どころかたった2-3年でデフォルトが視野に入る状態になってきている。
IMFのお金なしでアルゼンチン経済を立て直すことなんて不可能なので、IMFから追加融資を得られなくなりデフォルトということになるだろう。

ではアルゼンチンのデフォルトで金融システミックリスクは起こるのだろうか?
アルゼンチンぐらいのデフォルトではそこに至ると考えるのは大袈裟すぎる話だと思う。
なぜなら普通の銀行はアルゼンチンにエクスポージャーなんて持ってないし、まして2000年前半にデフォルトしたアルゼンチン国債を大量に持つ銀行なんてどこにもいない。
アルゼンチン自体のデフォルトというのは、言ってみればベネズエラのデフォルトと同様ぐらいのインパクトしかないのではないかなと思う。

ただし、アルゼンチンと同様に高対外債務、財政赤字、経常赤字に苦しんでいて雑な運営を行っている新興国(スリランカとかモンゴルとかパキスタンとか)はいくらでもいるので、そうした国のドル建て国債にはいくらか圧力がかかることは想定しやすいと思われる。
特にIMFに逆らおうとか考えている政治トップが出てしまう国は要警戒ということになるだろうし、やっぱり新興国なんてとガードが固くなる投資家も増加するだろう。 

モンゴルは鉱山開発遅延で再び経済危機に陥るのか

Rio Tinto/Oyu Tolgoi: Mongolian mishaps 

いやー、ちょっとこれはまずいんじゃないですかね。 

モンゴルのゴビ砂漠にあるリオティントの銅鉱山の拡張計画がどうやら遅延するようだ。
モンゴルの経済構造は非常に脆弱で、基本的に外貨収入は鉱物資源を中国に売ることオンリーで成り立っている。
しかも海に接していないことに加えて鉄道も敷いていないことから、陸上トラックで鉱物資源を運ぶ必要性がある。
なので中国にはかなり叩かれた値段で鉱物資源を売らされている。
そしてそれ以外には目立った外貨収入源がないのがモンゴルという国の特徴だ。

そんななか、前から色々ごたごたが生じているオユトルゴイ鉱山で生産上の問題に直面したようで計画通りに生産がいっていないという話が持ち上がっている。
加えて鉱石の品質低下も話題に上っているようで、こちらもアナリストなどからは予想外というコメントが出ている
(というよりアナリストが鉱石の品質なんて予想できるものなのか?)

さて、おそらくモンゴルの国家予算とかはどうせこの鉱山開発計画からあがる収入予想をもとに作成されていることはほぼ間違いないだろう。
じゃあ鉱山開発計画が遅れたら財政収入および経常収支両者ともどうなるだろうか?
以前の鉱物資源価格が大きく下がったときに経常赤字が8%とかいうとんでもない数字になったことに加えて、固定している為替にもアタックがかかったことを考えると昨今の鉱物資源価格の下落と鉱山開発計画の遅れはいずれもモンゴルの経常収支や財政収支にダメージを与えるもので、数値次第ではまたモンゴルのソブリン信用力は下がる懸念が出てくるのではなかろうか? 

ベネズエラはマドゥロ政権下では電力さえ供給できなくなった

ベネズエラでまた大規模停電 「電磁波攻撃」と政府

これが私服を肥やし続け、かつ社会主義をめざした結末になるのかと思うと寂しいところだ。

ベネズエラで3月以来の全土におよぶ大停電が月曜日の夕方から発生したようで、未だに復旧していないようだ。信号も止まり、電車も走らず、すべてが電力供給を基礎として成立している現代社会の基盤から崩壊していっていることになる。

しかもマドゥロ政権は相変わらず「米国からの電磁波攻撃だ」と主張している。
3月も同じ主張していて、仮に真実だとしたら(真実ではないのだけど)4カ月お前ら何もせずにぼーっとしてただけってことになるような気もするが、とりあえずそういったツッコミは横に置いておこうと思う。

原因は明らかで、ベネズエラ政府はあらゆる民営企業・準国営企業を接収して政府管理下においたことにある。
そこでまだトップをその分野のプロに任せていればいいのだが、チャベス時代に大半をチャベスのお気に入りの人物をトップに置き換え、素人同然の経営をさせることになった。
もちろんチャベスお気に入りの人物がまともな経営をするわけがなく、チャベスの要請に基づく資金拠出と自分の私服を肥やすのにめいいっぱい会社のリソースを使い、会社の資産をすべて食いつぶした。
それがマドゥロ政権になってからはさらにそれが加速していき、ベネズエラに存在するすべての企業はなんの資産も技術も人も持たない空虚なハコとなってしまった。
ベネズエラの電力の8割はグリ水力発電所というところからきているのだが、おそらくメンテナンスなんてほとんどしておらず、配電設備周りも草がぼーぼーに荒れ放題になっている。
通常そういう状態だと火事にあったときや草木が送電線を切ってしまう可能性があるため、普通の電力会社は定期的な設備チェックおよび周辺の草木の刈り取りメンテナンスを行うのだが、もちろんベネズエラ政府の管理下に置かれた企業がそんなことをするわけがない。
そして火事が起こったのか草木が送電線を切ってしまったのかはわからないが、それが原因で大停電を起こしたというのが有力な説だ。

なぜ有力な説という言い方をしているかというと、誰も現地に入って調べることができないぐらい情報統制されている上に危険で、しかもベネズエラ政府が情報を隠蔽しているからだ。
ベネズエラはあとどれだけ文明が崩壊するのか、予想したくないことだが南米周辺相場を考える上では欠かせない要素である。 

スリランカの爆破テロ事件による影響を数値化

Terror attack weighs on Sri Lanka’s economy

以前にブログで記載していたスリランカの爆破テロの影響について概ね影響範囲が特定できたようだ。

旅行客はおおよそ30%減少し、影響金額はおおよそ15億ドル。
スリランカのツアーリズムがGDPに占める割合は5%なので、5×0.3=1.5%ほどGDPに影響することが試算される。
経常赤字も単純に言えば対GDP比で1.5%赤字金額が増えることを意味している。
足元経常赤字は3%ぐらいなので、これが4.5%ぐらいになる。
しかも失う予定の金額はほぼ2016年にIMFから借り入れた金額とほぼ同じ金額失うことになる。
足元の外貨準備高は87億ドルぐらいなので、これもまんま15億ドル失うことはかなり手痛い。
経常赤字が対GDP比4.5%の赤字ということは900億ドル×4.5%=40憶ドルぐらいの赤字を埋めるぐらいの輸入減か輸出増か直接投資あるいは証券投資の増加がないと外貨準備高はすり減っていくままである。

しかし、手元で使える施策は正直いうと輸入減しかないだろうが、果たしてそれだけの痛みをスリランカは我慢することができるのだろうか? 
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村越誠

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