村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

投資雑感

長期投資は対象企業の借金拡大ペースに注意

【参考書籍】
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なぜ倒産 令和・粉飾編 ― 破綻18社に学ぶ失敗の法則


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なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則


ここもと自分は相場を見る上で「借金」というのをテーマにして相場を見ることが増えている。
その理由として現代経済・相場・借金は切っても切り離せない関係であり、相場を理解する上では借金の特性を理解することが必須だからと考えているからである。
そういった考え方を色々し、書籍を読んで考えている中で、上記参考書籍を読んで感じることをまとめたいと思う。

上記書籍は帝国データバンク・東京商工リサーチ協力で企業の倒産の事例をいくつかまとめた書籍である。
倒産例を見ると、自然体の状態から業態が衰退していって、立て直せずに倒産するという例があるものの、 個人的にはどちらかというと昔からやっていた事業がヒットした段階で会社を急拡大する方向に舵を切り、その設備投資のために借金をしたが、急拡大させた事業で失敗し取り返しがつかなくなって倒産せざるを得なくなったというケースの方が多いように見える。

なんかこの書籍に載っている倒産ケースはすごく既視感あるなあと思って過去を振り返っていると、ずさんな拡大計画をしたものの、どれもこれも行き詰ってひどい状態になったケースとしてライザップとかいきなりステーキとかが該当するなあと思い出した。

【ライザップの株価チャート】
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適切なレバレッジ拡大というのは企業拡大に絶対的に必要であるが、身の丈に合わないレバレッジによる業容拡大は破滅を招く劇薬でもある。
さらに企業経営は戦争と似ているところがあり、攻める分には決断は容易だが、撤退戦となると多大な損害を出しながら引かざるを得ないし、撤退の仕方を間違えると即座に致命傷となり破滅する。

こういった例を考えると長期投資において企業の健全性を測る上では借金の拡大ペースと、借金の拡大で増やしている設備投資は何か・それは無謀なものに投資していないか・もし失敗した時に致命傷になるようなものではないかというのを見る必要性がある。
もし借金の拡大と事業拡大ペースが無謀なものであるならば、株価がゼロになる民事再生法に追い込まれるケースが想定されるからであり、実際に米国で金利上昇とともに破滅的に株価が下落したのはまともに利益が出せてない上に、レバレッジを利かせるために借金しまくったとんでも企業ばかりだったのは記憶に新しい。

長期投資するには、自分が投資しようと思っている企業が「借金」という魔法を適切に使用しているのかどうかを常にウォッチする必要性があると感じた次第である。


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典型的なテクニカル分析は裏をかかれるようになっているように感じる

投資経験者の42.7%がテクニカル分析を活用 チャートを重視する人は、投資満足度が高い?

誰もが見れる情報はどういう価値があるのか考えるべきではないだろうか?

現代は昔と比べて投資情報というものが有用性とかはともかくとして非常に得られやすい世界になっており、特に2022年以降は日本でもYoutubeで投資解説する人が爆発的に増えたように思われる。
投資系動画の投稿している人の目的は様々で、自分の投資の振り返り目的だったり、単に広告収益目的、アフィリエイト目的、自己承認欲求目的と様々だろう。
そして投資系動画投稿をアップしている人のタイプとして、テクニカル分析オンリーで解説する人とファンダメンタルズも交えて解説する人で大きく分かれるように思われる。
Xでもテクニカル分析だけで色々解説する人は多数見かける。

このテクニカル分析オンリーで投資啓蒙する流れというのは、基本的にはファンダメンタルズ分析をするのが非常にめんどくさい上に、読んでも素人はどうせ理解できないので、だったらチャートにお絵描きするだけの方が誰が見てもわかりやすいし取っつきやすいからという性格があるように思える。
しかし、最近そうした「テクニカル分析は誰が見てもわかりやすい」というところと、ここもとの相場の動きを見ると、あまりにも誰が見てもわかりやすすぎるために裏をかかれるようになっているのではないかと最近感じている。

その例として米国株指数の代表であるS&P500のチャートを見ながら確認したい。
下記チャートは2022~2023年のS&P500のチャートであるが、うちアホでも引けるテクニカルサポートラインを引いて、そこを下値ブレイクしたところを紫色のボックスで囲んだので見てもらいたい。

【S&P500のチャート】
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これを見るとブレイクしたところが4回あるのだが、いずれも絶好の買い場であったことがわかる。
実際に2022年半ばから2023年にかけてはS&P500やナスダック100でテクニカルラインを下値にブレイクしたところで、お絵描きチャーチストが「ほら、言ったとおりでしょ(どやぁ)ここからもっと下げますよ!」というXのつぶやきやYoutube動画投稿が多かったが、そこがド底でスルスルと戻るのが4回もあったわけである。

こういうのを見ると、わざとテクニカルをブレイクさせるように仕掛けている人がいる、あるいはテクニカルでブレイクした時に絶好の投資チャンスとして資金をぶちこんでくる人がいる(ショートでもロングでも)と考えるのが妥当なように思う。
特にYoutubeで具体的に投資素人が単にチャートにテキトーな線を書いて安易に相場を語る投稿者が増えており、それらの人達のテクニカルラインの引き方を見るとほとんど同じであるように思われるところからも、単純なテクニカル分析なんてのはもはや誰もがやっているわけで、そこに優位性が本当にあるのかと疑問を持ちたくなる。

普通の人ならばこの時点で「チャートにお絵描きしただけでは勝てない」ということに気づくのだが、Youtubeにテクニカル分析でしか相場を語れない動画を投稿している人は経済や金融市場の勉強ができるほどの脳みそを持たない愚か者なのでそういうことにも気づくことができない、あるいは意図的に無視しているかのどちらかだろう。
(ファンダメンタルズ調べて解析して述べるとかくそめんどいことやりたくないという怠け者というのが大半だろうけど)

そういったことを考えると、逆に言えばファンダメンタルズ分析でビッグピクチャーで相場の方向性を予想し、テクニカル分析でブレイクしたところで逆張りするというのが良いように思う。
そこで参考として足下のS&P500でその例を考えたい。
足下やや米国株は足踏みなわけであるが、追加でロングを入れるのであれば素人が覚えたてのテクニカル分析でラインを引いたところを下にブレイクしたところで買えばいいのである。

【S&P500のチャート】
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上記S&P500だとどう考えればいいのか?
どうせ今みんなが見ているテクニカルサポートラインの一本目が4700、2本目が4600なんだから、4700割れたところでちょっと買って、4600割ってきたところで本腰入れて買い始めればいいのである。
ファンダメンタルズとテクニカル分析を融合すればこれぐらいてきとーな投資判断でも方向性があっていれば大体どうにかなるものである(雑)

ただし、もちろんこれは足下が金融相場であることを前提にしているのと米国景気がソフトランディングして金融緩和によって株価が上がるシナリオを前提にしているわけで、ファンダメンタルズ的に違うシナリオを持っているのであれば上記のロングエントリーの考え方にはならないので、その辺は各自で前提とするファンダメンタルズシナリオを考えてエントリー戦略を構築してもらいたい(投げっぱなし)

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バフェット氏がOXY株を買った理由を「バフェットからの手紙」から読み解く

【参考書籍】

バフェットからの手紙【第8版】 ──世界一の投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社


そういう考え方をして買ったんだねというのがわかって参考になりました。

上記の「バフェットからの手紙」をあらためて読んでいたところ、とある文章を見てここ2~3年の投資の中で大ホームランとなったオキシデンタルペトロリアム(OXY)への投資について、なるほどと腑に落ちたところがあったので、今回はそれをまとめていきたい。

【参考ニュース】
バフェット氏、米オキシデンタルに目を付けた訳

バフェット氏が優良企業で割安な企業を探す尺度の一つに堕ちた天使(フォーリンエンジェル)と呼ばれるカテゴリがあることが、この書籍に書かれている。
フォーリンエンジェルとは具体的に何を指すかと言うと、投資適格格付け(BBB-以上)を失ってジャンク格付け(BB+以下)に落ちた銘柄のことを指す。
一般的には急速に企業状況が悪化している現象である。
しかし、バフェット氏はこのフォーリンエンジェルに非常に注目していることがこの書籍では書かれている。
なぜ注目しているのかというと論理的は参考書籍を読むと下記の通りに読み解ける。

ーーーー
フォーリンエンジェルとなった企業の経営者は切実に投資適格に戻ることを熱望している。
一方で元々ジャンク格付けの企業は ヘロイン中毒者のようにレバレッジをかけることしか考えていない。
だから、フォーリンエンジェルとなった企業に適切なタイミングで投資適格に戻るための救いの手を差し伸べれば、非常に大きなリターンを得られるチャンスがある
ーーーー

なるほど、こういう考え方でOXYを投資したんだなと思う。
当時OXYは多額の買収をしたが、その後想定外に原油価格が下落しジャンククラスに格下げされてしまった。
しかし、バフェット氏はこの時点で原油価格の下落は第四コーナーを回っていて、そろそろ原油価格が厳しいステージは終わると考えていたのだろう。
そして、そこにOXYが思いがけず救済資金を求め四苦八苦している中で、バフェット氏は超割安価格で優先株(もちろんその時はそれなりにリスクがあると見られていた)出資をしたわけである。
OXYは元々大企業であり、資金さえあって原油価格さえ戻れば、いくらか無駄を削いでいけば十分復活する可能性が高かったということを考えて投資したのだと思う。
実際に株価を見ればこの投資判断は大ホームランであった。

【OXYの株価チャート】
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ただ、この投資を実際に実行する上では

・原油価格の低迷の終焉は近い
・経営陣がこれまでの間違った経営判断を反省する

この2点の判断が必要であり、どちらかの判断を間違えていれば大損する結果となった可能性もあったわけである。
この辺の最後の重要判断を間違えないところがバフェット氏の凄みなんだろうと思う。

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VIXとS&P500の株価の関係性をあらためて確認してみる

買いは半年ROMれ、売りは1年ROMれってのがもしかすると相場の常識なのかもね。

年末年始ということもあるので、大したニュースフローもないわけなので、最近はChat GPTを駆使して色々なデータを検証しているので、今回も簡単なデータ検証でわかったことについて書いていきたい。

株価動向の緊張感を見る上で、VIXの数値を見るというのは誰もがやっているごく一般的なものであるが、あらためてVIXの数値とS&P500のパフォーマンスについてどういう関係性になるのかというのをデータ化して見てみたいと思う。

まず横軸をVIXの数値、縦軸をS&P500の1年後パフォーマンスにしたデータを見てみよう。

【VIXと1年後S&P500のパフォーマンス】
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このデータを見る限り、VIXが高くなった時に買うべしという説は合っているように見える。
実際にVIX30以上で1年後パフォーマンスがマイナスなんていうデータは非常に少ないわけで、VIXが高くなったら株を買うべしという理論は合っているようだ。
一方で、これも意外であったが、VIX15以下の時の1年後マイナスリターンデータは数こそそこそこあるものの、マイナス幅は意外と小さい。
このことは以前の米国個人投資家サーベイでも書いたと思うが、VIXが低いという理由だけで相場は総楽観だからここでマイケルバーリの真似して全力ショートして儲けようと思うと、逆に相場の肥やしになって燃やし尽くされる可能性があるということをやはり示しているデータだと思われる。

しかし、今度はS&P500の1年半後のパフォーマンスデータを見ると少し様子がおかしくなる。

【VIXと1年半後S&P500のパフォーマンス】
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1年半後のパフォーマンスデータになると、VIXが低い位置からのデータでマイナスパフォーマンスになるデータが急に増加するのである。
つまり1年では総楽観からの夢から醒めないが、1年半後になると夢から急に醒めるということになる。

これが意味することは相場の総楽観は1年~1.5年が限界で、それ以上引っ張ろうとすると景気の過熱が懸念されるため、FRBが金融引き締め策を講じてくることによって逆金融相場に入っていって、株価が下落していくということを意味しているのだと思われる。

前回の米国個人投資家サーベイは、株価が暴落し始めたら半年ROMってから中銀が対応策に動き始めるのを観察してから動き出すべしというのが教訓であったが、逆にVIXからわかるデータは業績相場の総楽観相場は引っ張れても1年が限界なので、その先は超警戒しながらポジションを調整していって、次の暴落を待つべしという話だろうと思われる。
逆に言えばショートをするにしても、総楽観相場になってから1年は待つべしということなのではないかと思う。

ちなみに、今現在の 相場ステータスはFRBが利下げを開始しようとし始めたばかりということで金融相場なわけで、ここでおそらく俺は和製マイケルバーリだ!と勘違いしてショートすると丸焦げになる可能性の方が高いように思われることには留意が必要だ。

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ISM製造業景況指数と株価の関係をあらためて考察

ISM製造業景況指数と株価のパフォーマンスの関係は注目に値する。

世間一般ではISM製造業景況指数は50を境目にして景況感が判断され、50以下であれば不況・50以上であれば好況と捉えられている。
この字面だけ見ると、50以下の時は不況で危ないので株を売るべき・あるいは持たないべきであり、50以上の時に株を買うべき・持つべきという結論に陥りがちである。
Chat GPTに聞いても概ねその認識が世間一般の認知として説明されている。

【Chat GPTの回答】
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しかし、その結論は本当なのだろうか?
あらためてそれをデータで検証していきたい。

実際にISMの数値と半年後のS&P500のパフォーマンスを見てみよう。

【ISM製造業景況指数と半年後のS&P500のパフォーマンス】

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いやあ、さすがにこのデータはかなりはっきりしていると思われる。
一応ISM製造業景況指数が3ヵ月前より下の場合は青色・上の場合は赤色でプロットしているが、それをしなくてもデータとしては明白だ。
ISMは50を割っていた方が株価の上昇期待は高いし、一方で60以上の場合は株価が下落する可能性の方がずっと高いし良いパフォーマンスは一切でないことがわかる。
もうこれの原因は金融政策のサイクルという説明だけで片がつくもので、ISMが50以下になれば不景気でFRBが金融緩和に動いて株価爆騰・60以上になれば景気過熱でFRBが金融引き締めに動いて株価暴落というのは一目瞭然である。

念のため1年後の株価パフォーマンスと3ヵ月後の株価パフォーマンスも見ておこう。

【ISM製造業景況指数と1年後のS&P500のパフォーマンス】
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【ISM製造業景況指数と3ヵ月のS&P500のパフォーマンス】
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1年で見ても、3ヵ月後で見てもほとんど傾向は変わらない。
ISM製造業景況指数が引くければ低いほど株価パフォーマンスは高く、ISM製造業景況指数が高ければ高いほど株価パフォーマンスは悪いのである。
ちなみにISM製造業景況指数が50以下の時に1年後のS&P500の株価騰落率がプラスになる確率は84%もある。
つまり、世間一般のISM製造業景況指数と株価動向のイメージは全く見当違いであり、50以下の時ほど金融緩和を頼みとして積極的に株を買うべしという結論になる。

さて、今のISM製造業景況指数の数値はいくつか思い出したい。
最新数値は46.7である。
さらにFRBは利下げに傾いてきている。
これを総合的に考えれば、取るべき投資戦略はそこまで難しくなく、普通に現在ロングで持っている分は全部引っ張り、押し目があれば積極的に買っていくという結論になると思われる。

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