米長期金利の離陸、進路はクリア-コロナ前の経済状況反映なら2%も

年限別でかなり様相が違う。

足下でやや米債利回りの上昇について気にする人がさらに増加してきているように思われる。
確かに米国財務省が公表している実質金利データを見ると30年がいよいよプラス浮上というところまで来ている。
20年もまだマイナス実質金利ではあるものの、30年と同様にややテンションが高いともいえる。
一方で10年以下の実質金利を見るとかなり世界は違う。
10年金利は上昇したとはいえ、実質ベースで見ると実は11月の時よりも下なのである。
そして7年5年とより手前側を観察していくとさらに実質金利はディップした状態になっている。
7年以下は下手すると実質ベースでは去年9月の時より低いという状態になっている。

<年限別実質金利推移>
タイトルなし

https://muragoeinvest.com/ustmarket

20-30年ゾーンの金利というのは基本的には長期運用資金を行う主体が投資するゾーンで、生保・年金といった資金が中心になっていると一般的に言われている。
これら主体者は瞬間風速で含み損が出たとしても、そもそも契約者との超長期負債と投資タームをマッチングさせているため、そこのミスマッチと運用契約に無理がなければすぐに損切ったりする必要性がない資金性格となっている。
また20-30年の金利中心に高くなっているのはここらへんのゾーンがモーゲージ金利のメインゾーンで、直近の米国住宅販売状況と価格の上がり方を見るとそもそもこの金利で貸すこと自体が馬鹿なんじゃないのかというのが意識されているように思える。
またFRBも別にこのゾーンの金利上昇は住宅市場が急速に冷え込まない限りにおいては運用損失でいきなり爆発するところがあるわけでもないので放置という雰囲気がしている。

一方で10年以下になると、銀行が運用主体であったり、企業全般の借り入れコストに直接的にかかわってくるため話が違ってくる。
銀行の場合は四半期ごと決算があり、そこで運用損失があまりにも出るようだと上からの命令で投げさせられたり、あとは企業全般の借り入れコストに関わるのでFRBも神経をとがらせてモニターするゾーンになる。
ところが、現状は10年以下については前述した通り実質金利はまだ過激な上昇をしているとは言い難い状況にある。

また金利上昇によって相場が崩れたというのは前に遡ると2018年末と2013年の2パターンが思い出される。
2018年末の時は直接的な利上げだったので、今回とは大きく事情が異なるため、ここは除外していいだろう。
一番懸念される類似パターンとして2013年のバーナンキ議長がテーパリングを口走ってしまい全年限金利を一気に急騰させたところだろう。
この時の金利上昇具合は下記ページから見てもらえばわかるが、5年実質金利が-1%ぐらいあったところから一気に0%まで押し上げられ、それより長い年限全般もパラレルにやられた。
この時から貿易収支が芳しくなかった新興国市場はぐだぐだになり、あしかけ8年に渡って先進国株式市場に劣後する状態となった。
また2013年テーパリングの時はイールドカーブ変化なしでパラレルに1%金利が上昇して混乱したが、現在はイールドカーブが長い年限と短い年限間で立ちながら推移していることから、2013年に似ているようで似ていないと個人的には思っている。

<テーパリングショック時の年限別実質金利推移>
タイトルなし

https://muragoeinvest.com/ustmarket

以上を考慮して見ると20-30年金利の上昇(しかもまだ急カーブとはやや言いづらい)だけでは根本的に相場は崩れない、あるいは相場の下げ材料としては「気のせい」レベルの話になるのではないかと思う。
やはり相場がガタつくとすれば10年以下ゾーンの実質金利がはっきりと上昇圧力がかかってきた時ではなかろうか。
そしてやはり足元の相場は今年前半はいくところまで行ってバーストするというシナリオがメインだと思っている。 

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