S&P gives respite to Italy with surprise upgrade to rating outlook

中銀の国債買取と欧州共同債の発行が正当化された判断。

イタリアの財政についてはずっとギリシャショックの時からEUの間では問題になっていて、もうかれこれそんな状態が9年続いている。
一般的にはユーロという単一通貨で為替調整による財政調整が効かない中では、財政統合してちゃんと調整しろよというのが正直なところだが、そこまですぐに踏み込める体制にEUがあるわけがなく、だらだらと結論先送りが続いている。
しかしそんな中でS&PがECBのサポートを理由にイタリアの格付け見通しを引き上げてきたのだ。
その背景について少し所感を述べておきたいと思う。

どうしても対外債務の多い新興国においては、国債増発→外国人投資家どんびき→為替下落→対外債務支払い不能という事態に陥るし、実際にそうなりかけている国が増加しているということもあり、新興国については厳しい格付け見通しの国が多い。

一方で先進国について格付け会社はその判断について非常に悩ましい事態になっている。
いわゆる基軸通貨が発行できる米国が景気対策のために年間対GDPで2桁レベルの赤字を出して国債増発しているが、各格付け会社はAAA格を変更する気は微塵も感じない。
(過去にS&Pが米国債格下げしてめっちゃ政府にドン詰めされてた記憶はあるが、実質AAA)

そうなると先進国全般として対外債務(あるいは外貨建て債務)の規模は全体の債務規模に対して非常に低いんだから中央銀行が買い取ってしまえばそれデフォルトするんでしたっけという話になっている。
(いわゆるMMT理論)
特に上記で述べた通りAAA格の米国がバカスカ国債増発する中で、じゃあ同じような措置取っている先進国でソブリン格付けを無碍に格下げできるかというとそういうわけにはいかないだろう。

そういった意味ではイタリアについては少なくともECBがイタリアが国債増発した分についてはきちんと国債買取プログラムで買い取ることを実質的に保証している状態で、しかもそれが長期間続く政策フレームになっていることが今回の格付け見通しの判断に織り込まれたということである。
まあEUの場合はいわゆるドイツの財政健全性が抜群に高いため、いざとなったらイタリアの分もドイツがケツ拭くでしょということが多分に織り込まれた判断でもあった。
また今回のコロナウイルスで大きくEU全体がダメージを受けたので、今まで禁じ手とみなされていた欧州共同債がソーシャルボンドという形で解禁になったことから、よりイタリアのサポート体制について柔軟性・確度が高まったことも要因になるだろう。

<参考ニュース>
ソーシャルボンドとなる欧州共同債が人気

以上をまとめるとMMTと欧州共同債が評価されたS&Pの格付け判断であり、決してイタリア自体に何か変化があったかというと別に(以下略)

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