ドイツ銀、償還可能な債券の返済見送りへ 市場の混乱が影響



さすがにてきとーぶっこいて解説してる人は少しぐらい自分で調べたら?

ドイツ銀がAT1債という弁済順位の低い社債の償還を見送ったということで、「なんかドイツ銀がやばい」とかいうすごくてきとーな意見つぶやいている頓珍漢な人がいるので、ちょっと詳しく解説しておこうと思う。

以前にも記事にしたが、AT1債とはバーゼル3の規制下で自己資本を拡充するために発行する社債であり、Additional Tier1という資本カテゴリに入れられる債券である。
しかし、その条件として早期償還(コール)は5年以降の日付、バーゼル3の規制の下決められた水準の資本を下回ると利払い停止・元本削減を金融当局から命じられる、コールスキップした場合のステップアップは禁止という非常に重たいリスクを課せられるかわりに、高利回りという特徴がある。

そして今回ドイツ銀がコールをスキップした社債というのがドル建てでクーポンが6%、当時の米国5年金利水準が当時1.5%ぐらいでおそらくスプレッド(上乗せ金利)は4.5%ぐらいだ。
この時、発行体が重要視するのはコール日におけるスプレッド水準である。
コールをすればそれだけAdditional Tier1が減少するので、新規のAT1債を発行するとお得かどうかというのを非常に重視する。
今回はスプレッド4.5%という水準ではどう考えても当面は発行厳しそうだと判断したため、早期償還を見送ったわけだ。
つまり早期償還するといった判断には、該当する社債が一体いくらの上乗せ金利で発行したのかというのが一番大きな要素になる。
例えばこのAT1債の元々の上乗せ金利が10%とかあれば、普通の相場ならコールして新しい債券を発行した方が発行体に対してインセンティブが大きいのでコール確率は非常に高くなる。
一方で3%とかで起債している場合はよほどタイトな相場でないと達成できなそうということでコールスキップされる確率が高まる。

もちろんドイツ銀自体の信用力が低いうんぬんは一定程度あるが、今回はどちらかというと新規発行コストと天秤をかけてスキップした方がお得だよねという経済合理性に基づいた判断であるため、別につぶれそうで返済するお金がないから見送ったというわけでは全くない。
もちろんこの後コロナウイルスによる景気鈍化でやっぱりドイツ銀の業務やばいとなる可能性はあるけど、それと今回のコールスキップは全く別事象である。

なのでこのコールスキップという事象を見ただけでやれ信用不安だとか煽る人は金融規制を調べていない全くの素人であり、全く聞く価値のないゴミみたいな意見を垂れ流しているにすぎない。