イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃 イランが司令官殺害の報復

完全に出来レース戦闘にしか見えない。

昨日はイラクの空軍基地がイランに弾道ミサイルで爆撃されて数十人が死亡したとか、すわ戦争が始まるとかいう懸念が高まり、わーっと東京時間からリスクオフという展開となっていった。
しかし時間がたつにつれ、市場が「これは出来レース爆撃」というのを認識し始めていき、欧州時間になると大したことないリスクオフのレベルにまで戻ってきた。

まず時系列に沿って事態を説明していきたいと思う。
朝一番にイラク空軍基地が爆撃されて80人ぐらい死亡したとイランの国営放送が報道した。
その後米国側から死者は確認できていないとか、特に問題ないとかトランプ大統領が発言するなど情報が錯そうしていく。
そしてその間に一応は技術的事故らしいがイランの空港から離陸したばかりのウクライナ航空のボーイング737-800が墜落するといった事件も発生。
しかしこの間、実際に爆撃された基地の映像が出てこず、実際どれだけの規模の爆撃だったのか確認が取れない。
そのうえ、衛星飛ばしてないイランがどうやって死亡者数確認したんだと疑問に思う人が増え始め、途中でイラン国営放送が具体的な数は確認できないとゲロる。
さらにイラク政府がイランから事前に爆撃する連絡があったということを正式報道した。

ここまでくればもう市場はこの爆撃は出来レースだと市場は認識し始める。
イランはとりあえず国民に対してソレイマニ司令官の暗殺報復をしている格好を見せなければいけないが、変に米軍に死亡者ださせてまかりまちがって戦争になったら財布事情が厳しすぎてどうしようもなくなるので、国民向けアピールだけはしておきたいという思惑がある。
米国もとりあえず死者さえ出なければ国内世論を落ち着かせることができるし、中東でばかばかしいコストをかけたくないと思っていることから事前連絡で爆撃されることも実質了承したということだ。
これでお互いが一旦落としどころが見つかればよい程度の話だろう。

そもそも現状のイランと米国はどちらも自分のお財布事情が厳しいところから、本当は何も起こしたくないというのが現状で、起こしたとしても小規模にとどめておきたいというのが正直なところだ。
そもそもソレイマニ司令官についてもお前勝手にイラク侵入してるじゃないかという落ち度があり、そういった面でもイランの肩を持つのは難しい案件である。
現状考えられる中東情勢で引っ込みつかなくなる事態は

1、イランで部族・民族・宗教間対立が高まり、米軍によるコントロールが効かなくなる
2、イスラエルが我慢しきれなくなってイランに先制攻撃する
3、サウジvsイランが発生する

この3つであり、上記3つ以外は正直いってどうとでも手打ちできる案件だと思う。

なお、こうした中東情勢の緊迫が高まるとまず真っ先にリスクオフ度が大きいのが欧州である。
欧州企業は歴史的にも中東ビジネスとつながりが深い上に、戦争が起こった場合に大量に発生する難民は欧州先進国になだれこんでくるということもあり、政府負担が非常に大きくなる。
そのため利益減や社会不安の増大などを懸念して真っ先に欧州資産が売られる。
そして次に売られるのが原油輸入金額の大きいアジア諸国だ。
具体的にいうと日本・韓国・インド・中国らへんだ。
この辺は中東からの原油輸入にエネルギー調達ラインを大きく依存しており、中東間情勢が不安定化すると売られざるをえない。
特に日本は先物があるため、他のアジア新興国でカバーして売れない分を先んじて売るというダブルの圧力がかかるため、本来より大きめな値幅を伴って売られる傾向にある。
そしてなんだかんだで一番売られないのは本来は当事者なのに地味にエネルギー純輸出国に変身していて多少中東情勢荒れようが地理的に離れているし、政治的にはともかく商売的には遠い関係にある米国株というのはなんとも皮肉なことである。