トランプ大統領の指示でイラン精鋭部隊司令官を殺害-米国防総省

両者とも直接的な戦争には発展させたくないから口だけ合戦か代理戦争の拡大かのどちらか。

米軍がイラクのバグダッド空港近くにてイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表し、イラン側もこれを事実と認めたことから米国・イラン間の緊張が一気に高まり、戦争懸念が高まったということでリスクオフの動きとなった。
なぜ今回このタイミングでこのイラン軍関係者を殺害発表したのかというと、大体のニュースは選挙に向けた支持率確保のためという報道がほとんどであり、個人的にもまあそうなんだろうなと思う。

そういった諸々を考えると現実論的にはイランと米軍が直接的な戦争になる可能性は限りなくゼロだ。
理由としては米軍にとってイランとの直接戦争はちょっとした中東の紛争とは違って桁違いの被害が出る可能性が高い。
イラク戦争の時はたった数日で片がついたが、これはイラクの人口が2400万人ぐらいしかいなかったことにくわえて、イラク国内の宗教派閥や政治派閥がバラバラであったことからフセイン大統領の軍掌握力が低く、あっという間に首都が米軍によって抑えられてしまったからだ。
しかしイランはそうはいかない。
イランは人口が8100万人もおり、この人口数は中東でいうとエジプト・トルコと同レベルのトップクラスの数がおり、はっきりいうと他の中東国の比にならないレベルでいる。
しかも宗派はシーア派で統一されており、国としての政治結束力や軍掌握力も他の中東国家と比べても段違いだ。
なので直接対決になればイラクのように楽勝制圧とはならず、どう考えても長い期間の泥沼戦争となる。
これは他のイランと対立している中東国家も同じように考えており、サウジアラビアもイランと対立しているが、かといって直接戦争はあまりにもコストがかかるし、現実的におそらくサウジアラビアとイランが対決したらサウジアラビアが負けるので直接戦争に発展することだけは辞めてほしいと思っている。
それに米国側も戦争になれば資金面以上に兵士の死亡数によって大きくトランプ政権の支持率が大幅に下がっていくことは目に見えているので、トランプ政権も口では先制攻撃だの威勢のいいことは言っているが、所詮口だけということはほぼ間違いない。

一方でイランはイランで経済的にかなり苦しい状態にあり、戦争を負担しきれる金を持ち合わせておらず、戦争に発展すれば確実に国内から経済困窮に対する不満がよりエスカレーションし、内部が戦争に耐えきれるレベルで政府支持率を維持することが難しい。
特にあらゆる物資が戦争に使用されるため、ただでさえインフレ率が高いところに一気にモノの供給不足が発生するため、インフレ率は一般国民が耐えきれないレベルに振り切れるだろう。
それを反米・宗教統制だけで果たして維持できるのかどうか非常に疑わしい。
だからとりあえず口だけ激しいことをいって相手側をびびらせて少しでも行動を抑制させたいという誘因が非常に大きい。

もちろん直接対決ではなく、今回のような他国におけるピンポイント殺害・代理戦争的な動きは増加するかもしれないが、イラン本土空爆や侵攻などというレベルはコスト面を考えれば両者ともリターンに見合わないコストを払うだけのように見える。
それにイラン側は本気になったら国民総火の玉的動きを見せる可能性も十分にあるため、現状は両者ともお互いの国以外でのピンポイント殺害および代理戦争、加えて激しい口攻撃に終始するものと思われる。
ありえる最悪の事態はイラクでイランがバックにいるテロ組織一派が継続的に駐留米軍に対してゲリラ的テロ攻撃を繰り返すというレベルではないかと思う。

相場としてはCNN発表のFear&Greed Indexを見れば強気すぎるのは明らかで、少しでも市場が懸念だと思うことが起これば多少市場が冷えるのはそりゃしょうがない動きでしょうと思う。

<Fear&Greed Indexの推移>
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