2020年の相場について個人的に気にしているポイントを列挙しておこうと思う。
基本的に2020年は強気なものの、割高バリュエーションを正当化できるのかどうかを注視してポジション維持を考えていければと思っている。

・米国が世界にしかける貿易戦争はどこに向かうのか
メキシコ・カナダについては新しい合意を取り付け、中国は交渉の手詰まり感と米国の景況感悪化にもつながったことからこれ以上の貿易摩擦の拡大が難しいと感じたのかさらなる対立激化は可能性が薄れてきた。
一方で、EUに対してはまだ本格的に圧力をかけておらず、これから圧力をかけてやるぞという雰囲気を見せ始めている。
中国との貿易戦争も引き続き相場のネタとしては認識されそうだが、インパクトは去年より薄くなるかもしれない。
一方でEUとのすったもんだは新しい動きとして考慮すべきかもしれない。

・FRBが利上げへの道筋を示すのかどうか、米長期金利の居所
現在市場ではFRBの2020年利下げ確率は1回が4割ぐらいまで低下しており、据え置き見通しが急速に台頭している。
FRBは
ただ、トランプ大統領は利上げできる余裕が米国経済にあると考えると再び貿易戦争に邁進する可能性があり、これが債券投資家が米債をショートしづらい要因の一つになるだろう。

・高PERを正当化できるほどEPSの上昇が再び始まるのか
足元は景況感が悪い中で株高が起こるといういわゆる典型的な金融相場となっている。
つまり市場参加者は既にEPSの上昇というのはかなり織り込んでいる。
もしEPS上昇が観測できなさそうと思われると、その国・セクター・銘柄から順に回復した分が剥落していくだろう。
業績相場に移行できるのかどうかに注目が集まる。
特に先進国株の高PER状態は業績相場移行が必須なレベルな状態になっている。

・リスクプレミアムの圧縮の限界を探る
2019年は総じていえば、フィクスドインカム系はよっぽど危ないところでなければ積極的にリスクプレミアムを取れた人が勝利した年であった。
これは日銀とECBが国債をバンバン買い入れることにより銀行・保健が国債市場からクラウディングアウトを食らっている。
米国もまだイールドカーブがフラットな状態なままなので、ヘッジ後の利回りが残らない。
一方でどんどん余資は増えるし、投資したいマネーも増えていく。
そうなるとリスクプレミアムがある資産に投資していくしかない。
その波は既に米国のBB格ハイイールド社債にまで及んでおり、BB格社債のスプレッドがたったの180bpsというのは久方ぶりの数値だ。
一方で、REITやCCC格・ディストレス債・CLOにまではまだ資金が回り切っておらず、リスクプレミアムがかなり残っている。
しかし、すでにCCC格・ディストレス・CLOはファンドを新規でローンチさせる動きも見えており、ここのリスクプレミアム圧縮がどこまで進むかが来年相場を占う上で重要なファクターになるだろう。

・米国の輸入は増加に転じるのか
最終的には米国が輸入を増加させるかどうかが世界の株価、特に新興国の株価にとっては重要な要素になっている。
究極的には世界は米ドルが全ての信用力創造の起点になっており、この米ドルにどれだけアクセスできるかがその国の安定度を決める。
新興国は国内の蓄えが少ないことから貿易による外貨獲得というのがないと国際収支の天井にぶつかって成長を妨げられてしまう。
だから米国輸入が増加するかしないかは2020年新興国株の大復活が起こるかどうかの最も重要なファクターになっている。

・11月の大統領選挙の行方
米国民主党の大統領選候補者はまだかなり流動的な状態になる。
一時期ウォーレンブーム的なのが起こっていたものの、あまりにも主張が左に振り切れすぎていたということもあり、足元で支持率が急速に下がってきている。
それを感じてか主張が徐々に真ん中により始めている。
サンダースも健康状態が危うく、特に大統領についてタフでマッスルさを求める米国民が選ぶ可能性はかなり低い。
なんだかんだで中道派のバイデン氏が大統領選候補になる確率が高まっている。
バイデン氏が大統領候補として出てくるとなると果たしてトランプ氏は再選されるのかどうか非常に予想が難しくなるが、それはまた選挙が近くなったら考えようと思う。

・情報通信セクター以外に動意づくところはあるのか
機関投資家のアクティブ運用では、情報通信セクター頼みの運用をしているところは多いように思える。
この情報通信セクターの成長と上昇は、下手すると平均株価指数で情報通信セクターだけインデックスを上回り、他は全部負けているみたいな珍現象まで起こしかねない動き方が足元で観測されている。
なんとなく他のセクターへの浮気も考えたいところだが、ポジションの一定程度は常に情報通信に張っておきたい。
なお、じゃあどこのセクターが浮気しやすいのかと言われると、ヘルスケアかなあと山勘している。

・ドイツが財政支出を打つかどうか
世界的に金利が低くなっている中で、じゃあ財政打てるじゃんというMMT的な動きがちらほら見える。
その中でも最も皆が期待しているのがドイツが財政政策だろう。
EUではドイツが財政を打たない限り本格的景気回復はないと見る動きは多く、ラガルドECB総裁も以前からずっとドイツに財政打てと催促している。
そのような中でドイツ連銀のメンバーにおいても財政黒字にこだわるべきではないという発言をする人も出てきており、ドイツが動くか動かないかはリスク資産や債券金利動向に非常に大きな影響を与える可能性がある。