投資信託の要因分解なんて単なる目安ですから。

投資信託のマンスリーレポートや色々な投資関連指標にパフォーマンスの要因分解が乗っている時があるが、個人投資家は決してこれをそのままうのみにはすべきでないと個人的には思っている。
それはなぜなのか?
それは要素を分ければ分けるほど恣意的に数字をいじることのできる余地が大幅に増えるからだ。
恣意的に数字をいじるとは一体どういうことなのか。

例えば米国株について考えてみよう。
米国株を価格変動と配当による価格上昇を要因分解してみた図が以下の通りになる。

タイトルなし
増加した利益というのはこの部分になる。

タイトルなし
価格変動だけで上昇した分のみと配当による価格上昇のみの部分はこの部分になる。

タイトルなし

では両方の要因で増加したのは一体どちらに分けるべきなのだろうか?
タイトルなし

これは色々なやり方がある。
どちらかの要因に全て寄せるというのもあり得るし、半分ずつ寄与度を振り分けるということもあり得る。
つまりこの時点で複数のファクター両方の効果で得られたリターンについての要因分解が恣意的に操作できる余地が生じている。
恣意的という言い方は少し語弊があるものの、投資家に何かしらの数字を見せるために無理やり帳尻を合わせる数値を作成する必要性が出てくるのだ。
これは要因分解の2個のファクターだけで済ませた場合だ。

しかしこれが3個になるともっと複雑になる。
先ほどの二次元の四角で表せられた要因分解が三次元になる。
そうなるとたちどころに3要素のうち、複数の要素で上昇している部分の範囲が急増する。
4つ以上になれば四次元だ。
じゃあこれらをきちんと本当に各要素に切り分けられるか?
それは無理で、暫定的にこれらを恣意的にどこかの要素に寄せていくしかない。
3つまでなら立方体グラフで複数ファクターで増加している要因についてぎりぎり説明が可能なものの、これが4つ以上になるともはや四次元以上と絵で表すことも不可能になる複雑極まりないことになり、説明すること自体が現実的でなくなる。
これが投資信託の要因分解の限界なのである。
しかも単月ならまだこの歪みは少ないが、分析範囲が長期間になればなるほど歪みが大きくなり、要因分解としての意味をなさなくなってくる。

だから投資家はこうした要因分解についてはあくまで目安程度に考えるべきで、これを真剣につぶさに見て色々な思考をめぐらせるのも無駄に近いし、要因分解自体が真に投資信託のリターンの要素をきちんと反映していると思わないほうがよい。