Iran to raise taxes as US sanctions hit oil revenues



これを見ると、イランは以前のような余裕がもはやない。

米国が制裁を強化してから早数年がたっているイランの経済状況だが、かなり厳しい状態になっている。
逆にいえば、米国の経済制裁効果はかなり高いとも評価できる。
米国はイラン産原油を各国に輸入しないように圧力をかけたり、イランが原油掘削道具や技術を導入できないようにグローバル企業に圧力をかけており、これによりイランの原油生産量および輸出量はずっと減少傾向にある。
原油価格もかつての高価格の状況から40%も減少しているわけで、FTの報道では原油関連収入はかつての70%の水準まで減少している。
一方でイランは原油以外はまともな輸出物がないということもあり、外貨の帳尻合わせはかなり苦しい状態にあり、財政の帳尻も合わないことから補助金のカットに加えて税率の引き上げもやむをえずということになっている。

特にヘルスケア費用については現地通貨ベースで賃金が15%しか上がらない中、83%の値上がりするなど国民の生活に圧迫感が生じているのは確かだ。
しかし、これは逆に中東に安定感をもたらす一つの要因でもある。
現在中東は宗教・部族間の派閥争い的な戦争が多数勃発しており、特に一番大きくかつ危険なのはイランとサウジというシーア派・スンニ派の覇権争いだ。
イランは革命以降、シーア派戦闘集団に対して裏で武器や資金を供給し、革命を輸出するという行為を継続して行ってきた。
その原資がいわゆるオイルマネーなのである。
しかし、昨今の税収入の減少に伴い、自国民を食わすことも徐々に難しくなっており、必然的にシーア派戦闘集団への支援や対外の代理戦争にかける金を減らすしかなくなる。
少なくとも大規模な新たな戦争をしかける余裕はなく、シリアとイエメンへのシーア派戦闘員への支援だけで精一杯でこれ以上の支援拡大は逆に自国民の不満が暴発し、政権をひっくり返されるリスクが高くなる。

今のところはイランの政権は反米を煽ることによって表面上体裁は整えているものの、このままインフレの状況が続くとどこで不満が大爆発して政権の正統性に疑問を投げかけられるかわからない。
そうなればポーズだけでも国民ファーストというのを見せながらの難しい政権運営になるだろう。

イランは中東の中ではエジプトと並ぶ最大の人口数を誇る国であり、外から戦争をしかけて崩せるような国ではなく、内部からの崩壊が一番効率の良いダメージの与え方である。
これこそが米国とサウジアラビアが望む状態であり、このイランの状態は中東地政学の不安定化ではなく、安定化に寄与するものと思われる。