米雇用統計、11月は26万人増に回復 利下げ休止へ

揺れ動く政策金利動向予想。

ここにきて米国政策金利見通しがかなり揺れ動いている。
まず足元の米国景気動向を確認しよう。

ISM製造業は米中貿易摩擦に伴う企業の設備投資減により不調。
貿易動向自体がマイナスというのもあるが、どちらかというと企業が先行きの見通しを作りにくいという要因で設備投資を後ずらししているケースの方が大きいように思える。
一方でISM非製造業については内需大国である米国はヘルスケアやITサービス中心にまだ堅調さを維持している。
一部セクターではジョブカットみたいな話があるものの、新規失業保険申請数を見る限りは状況に変化は起きていない。

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住宅関連指標はモーゲージ金利の低下の恩恵を受け数字を維持している。
しかし、住宅価格はさすがに高いせいもあり、価格の伸びは時給の伸び以下程度に鈍化。

レッドブック小売りを見る限り、小売りも好調を維持している。
これは給料の上昇より借り換えによるモーゲージ金利支払い減少の方が大きいようにも見える。

米住宅ローン金利、2016年10月以来の低水準 - Bloomberg


以上の状況から米国経済はあちらこちらでわーわー言われているが、FRBの利下げによるモーゲージ金利低下効果によって企業の設備投資減以外はまだ際立った悪影響は出ていないように思われる。
しかし、経済に余裕があるのであれば米中貿易戦争で米国側から仕掛けられる余力が生まれるため、逆説的に言うと米国景気が好調であるほど米中貿易戦争リスクが高まる。

米中貿易戦争は決して一過性のものではなく、これから何年も続く長い相場テーマになることは間違いないので、企業のCEOはそれを考慮しながら企業経営を強いられることになり、言ってみればバブルになりにくい構造になっている。

一方で金余りによる過剰流動性がまだ超危険な資産にまでは回っていないものの、比較的安全だと思われている資産に対しては相当量が流入していることも確かだ。

こうした状況を背景に、さらなる企業の設備投資意欲減退がなければ、米国景気はとりあえずボトムが見れるのではないかという見通しまでたってきていることから、米国政策金利フォワードは一番相場の緊張が高かったところでは来年利下げ2回ぐらいを織り込んでいたのが、来年利下げが1回以上ある確率が70%ぐらいのレベルにまで落ちてきている。

以上を勘案して利下げはあっても一回だが、かといって利上げができる環境にまで至らないというのが個人的な来年の米国政策金利の見立てになっている。
利上げができるかもという雰囲気も米中貿易戦争次第だが、少なくとも2021年までは醸成することは難しいように思える。
また米中貿易戦争という企業の設備投資に圧力をかけるファクターからなにかバブル的な動きが米国国内から出てこない限りは根本的にはイエレン時代よりもさらに利上げペースは遅くなる可能性が高いように思える。

以上を勘案して米国の国債金利も下がりにくくはなっているが、かといって急激に上昇するということも考えづらく、各種資産いずれも奇妙な安定感を保っていくというのが個人的な来年の見立てになっている。