金融システムレポート(2019年10月号) 

レポート全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr191024a.pdf

既に知ってたという情報からなるほどと思う情報まで幅広くカバーされている。
その中で個人的に興味あった部分だけ抜粋しようと思う。
なお各項目のレポート内グラフは正直貼るのがめんどくさいので、ぜひとも各人が読み込んでほしいところだ(雑)

・邦銀のCLOエクスポージャーは基本的に問題なし。
なぜかNHKでは真逆の報道のされ方になっているが、日銀の見解としてはほとんどAAA格(ただし通常の事業法人AAA格とは全く別物なことには留意)で、レバレッジドローン自体のリスクが高いことや景気減速時にレバレッジドローン自体が一定程度毀損する可能性などに言及しているが、そこまで大きな問題点としては考えていないことがうかがえる。
ただし2018年の利上げ局面に急速にCLOを積み上げる動きが国内銀の投資行動の中で見えたことから、

・欧州債への投資が活発化していた背景
プロの方はとっくに知ってた速報だが、米ドルの為替ヘッジコストがべーしす含めて高く、加えてイールドカーブが全然立っていないことから欧州債投資に傾かせた地銀・生保が多かったという話も盛り込まれている。
為替ヘッジコストのチャートも載っているので、知らなかったという方は一度見てほしい。

・株は資金流出、債券は市大幅資金流入
FRBが利下げに転じたことから今年1月頃から債券への資金流入が非常に活発化していた。
一方で株は同時期から資金が流出している。
(逆にこれだけ資金流出していて米株耐えているというのは割安ということなのだろうか?)

・テック系の株価上昇の大半はソフトウェア銘柄の株価上昇
いわゆるテックでも半導体やハードウェアの銘柄よりも、ソフトウェア、ようはクラウドやサブスクリプション系ITサービスの上昇寄与の方がよっぽど大きいようだ。
そういうことを考えれば、ソフトウェアサービスを行っている米国IT銘柄株を買うのは理にかなっているのではなかろうか。

・債券系は固定債は資金流入だが、レバローンはだだ売られ
IG・HY債はガンガン資金流入しているがレバローンはひたすら売られている。
利下げによってクーポンが下落するので投資妙味なしとみんな自主的に売っているだけで、システミックリスクはないという認識で良いのだろうか?

・ドル保有者にとって日本国債への投資妙味
2019年ちょっと前あたりからドル保有者はマイナス利回りの日本国債を買って円ヘッジすると同じ年限の米国債より高い利回りを享受できる状態が続いていた。
しかし、足元で長期金利が下がりづらくなる中、FRBの利下げ観測で短期金利が下がり始めていることから来年中旬あたりには同年限の日本国債・米国債はフェアバリューになるものと思われる。

・外需系製造業比率の高い日本株・内需サービス系の多い米国株
日本株の構成は外需の製造業比率が他地域に比べて大きい。
そのため景況感がピークから崩れにいく時、例えば米国と比べるとより高い下落率になってしまうのはしょうがないと言えるだろう。
一方で米国は内需サービス系が多いことから、こちらは米国内の景気の動向が一番強く影響することがうかがえる。

・CLOの発行の大半はBBB格以上
CLOの発行のうち6-7割がAAA、15-20%はAA-BBB格、残り10-15%がジャンク級あるいはエクイティクラスの発行であることがうかがえる。
足元で驚くほど価格が下落しているのはBB格とBBB格までで、まだA格以上はさほど価格が下落していないし、AAA格にいたってはまだパー付近を維持している。
この発行比率を考えればBBB格ぐらいまでのCLOの単価下落はせいぜい流動性ない資産に投資するヘッジファンドへの影響が出るぐらいで、銀行ポートフォリオのド本命であるAAA格のCLOの単価の大きめな下落が見えない限りは今のところ問題はなさそうに見える。
 
その他書こうと思えばいくらでもレポート内容について書けるが、興味のない項目もあるので、その他気になる部分については各人でレポートを読んで確認してほしい。