キャタピラー、通年見通し下方修正 中国需要減が重し

盛り上がりには欠けるが、ヘッドラインほどは切迫感はなさそう。

世界景気の指標とまで言われるほど注目されているキャタピラーの3Q決算が滑ったということで一瞬相場に緊張感が走った。
しかし決算内容についてよくよく中身を聞いてみたら決して最終需要が急速に悪化しているというわけではないようだ。

そもそもキャタピラーの建機ビジネスと損益計算書がどのように作られるのか知る必要性がある。
キャタピラーの主な業務は建設機械の製造とそれを販売代理店にディストリビュートするところまでである。
実際に最終需要者(建設業者や鉱山開発業者など)への販売はこの販売代理店を通じて行われるし、定期メンテナンス用部品などもこの販売代理店を通じて行われる。
そしてキャタピラーの売り上げ計上タイミングは販売代理店に卸したタイミングになる。
販売代理店は在庫リスクを抱えながら、最終需要者の需要動向を予測したり自分達の手元資金と勘案しながら多めに在庫を確保したり減らしたりしている。
なのでキャタピラーが販売代理店に商品を卸すタイミングと、販売代理店が最終需要者に販売するタイミングにズレが生じる。

こうしたことからキャタピラーの売上と販売代理店の売上には下記のパターンのようなズレが生じる時がある。

・最終需要がまだ盛り上がっていないが、販売代理店が今後需要が増加しそうという予測のもとにキャタピラーへの発注を増やす
・最終需要がそこまで減少していないはずだが、販売代理店側にまだ過剰在庫が残ってしまっており、キャタピラーへの発注を削減
・最終需要が盛り上がる中、販売代理店が調子に乗って在庫確保数を増やし、最終需要以上にキャタピラーへの発注が増加
etc

今回はこういったズレパターンの中で最終需要が劇的に減少しているわけでないが、2018年にそこそこ多く在庫を抱えてしまった販売代理店が在庫を減らすためにキャタピラーへの発注を減らしたという話に過ぎないようだ。
つまり2013-2016年に続いていたような、資源バブルが崩壊して最終需要が毎年二桁%で減少していくようなそういった異常事態が起きているわけでなく、年初にキャタピラーが想定していた年率4-5%ぐらいの建機需要増加は見られているとのことだ。
結局読み違えたのは販売代理店在庫が想定より多かったというだけで、そこはキャタピラー側は粛々と減産を行って対応していきましょうという話をしていたので、決算ヘッドラインだけでプレマーケットで6%も株価が下がっていたのも、1-2期程度減産すれば十分だろうという市場の見方が台頭したことからプラス圏に切り返して引けたというのが今回のキャタピラー株の動向だ。
決算の中では確かに昨今の景気不安定さが最終需要にも悪影響を与えると話はしているが、急速減少しているというよりは底ばっていて、4Qの最終需要増加率はフラットレベルというまあ景気センチメントのわりにはよく耐えているほうじゃないですかねという感想を持っている市場参加者もそこそこいるのではないかと思う。
なお、地域別需要動向でいうと、北米は堅調、アジア太平洋は日本と中国以外が弱いが中国のインフラ投資拡大で一部分は相殺可能、欧州・中東は弱く前年比マイナスの可能性、中南米は増加しているものの低いレベルとのこと。

英語がわかるという方は一度キャタピラーの決算を聞いてみてはどうだろうか?
非常に勉強になるのでお薦めです。
 
なお、キャタピラーの決算に注目するのは有名FMのジムクレイマーの下記書籍にて、世界景気を知るために聞くべき決算はどこの会社かという内容でキャタピラーの決算と記載があるからだ。


全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦