チリ暴動による死者11人に 地下鉄運賃値上げめぐり

メキシコ以外の南米の国全員に起こりえる事象。

チリで政府が財政規律維持のために鉄道向け補助金を減らすために運賃の引き上げを発表したところ暴動が起きて、政権は非常事態宣言をするといった危機的状態に陥った。
これによりチリの株価指数は4%下落、為替も対ドルで2%ぐらい、国債も現地通貨建てのもので30bpsぐらい利回りが上昇しており、いわゆるトリプル安状態になっており、プチパニックが起こっている。

なぜ南米でも優等生的な位置づけであったチリでこのようなお粗末なことが起こるのか?
これはチリに問題があるというよりかは南米全体で問題があり、メキシコ以外の南米の国ではどこの国も起こりうる可能性のある話だ。
チリ以外の南米の国でも、エクアドルも似たように燃料向け補助金を削減して同じように反政権暴力でもが起きてぐちゃぐちゃになっている。

エクアドル政府が首都から脱出、抗議デモ激化

このようなことが起こる理由としては、南米各国は絶対的に人口に対して雇用者数が少ないことが挙げられる。
なぜ雇用者数が少ないかというと、一番雇用吸収力のある製造業のサプライチェーンに入っていないからだ。
以前に下記書籍について書評を書く中で改めて認識したのが、南米・アフリカ・中東というのはこの製造業のグローバルバリューチェーンにほとんどの国が属していない状態になっている。

詳しくは下記書籍と書評を参照してもらいたい。

<書評>

「グローバル・バリューチェーン 新・南北問題へのまなざし」を読んで




グローバル・バリューチェーン 新・南北問題へのまなざし

南米でいうとメキシコを除くとほとんどの国は資源および農産物輸出の実質一本足打法だ。
(メキシコはトランプ政権からいじめられてはいるものの、なんだかんだで米国向け製品の製造業拠点としての地位は確立している)

資源だけでは正直言うと雇用吸収能力というのは足りておらず、政権は資源で獲得した金を民衆にばらまかないと無職や低賃金の国民の不満を押さえつけることができない。
では足元のように2008年と2012年頃までに夢見た資源バブル崩壊して、全ての資源価格がピークから3割も4割も安い状態では政権がばらまけるお金が足りないことからふつふつと国民の不満は高まっていく。
特に南米は汚職の度合いがひどいことに加えて、治安も悪いときていて、そこにきて財政規律維持のためにばらまくお金を減らす(=補助金を減らす)をやり、国民が貯めていた不満が爆発するのもやむをえないという感じがする。
このように南米は財政問題と雇用・福祉問題の直結度合いが先進国およびアジア新興国と比べて高い状態にあり、一たび財政問題にぶちあたると国の基盤が崩れるのが速い。

以上を勘案するとちょっと南米のリスク資産を安易に取りにいくことはかなり危険と思われるし、やられるときは真っ先にやられるエクスポージャーだというのも政治の不安定さを考えればかなり想像しやすい結論ではなかろうか。
ドル建て国債らへんならハードカレンシーだからちゃんと返済するための努力はするでしょというところだが、株や現地通貨建て債券については売られすぎたところをリバウンド狙いで取りにいく以外はあまり妙味はないように思われる。