Bank of Jinzhou to cancel coupon payment on AT1



中国の大手銀以外のAT1債はみんな同じ運命になるのか?

週明けからいきなり錦州銀行(Jinzhou bank)がAT1債の利払いを停止するという発表をした。
この記事では何回かAT1債の特性に触れているが、AT1債とは銀行が発行する劣後債の一種で、債券の中では最もリスクの高い資産カテゴリになる。
なぜかというと以下のような条項が含まれているからだ。
・任意あるいは金融当局の強制で利払いを停止させることが可能。
しかもデフォルト扱いにならない。しかも利払いについては実質的な株配当と同じ扱いになるので、配当原資がないと利払いできない。

・国によってルールが違うが、一定の資本基準を満たさなくなる、あるいは金融当局の強制で債券の元本を取り崩すあるいは株に転換させることが可能。
・満期はない。早期繰り上げ条項(コール条項)はついているが、発行体はスキップして永遠に債券を償還しなくてもよい。
・バーゼル3以降はコールをスキップしてもステップアップはなしで、発行体は経済合理性でコールするかどうか決めることができる。

そして今回の錦州銀行はUSDのAT1債の利払い停止に踏み切ったということだ。
これによって毎年期待できた5.5%のクーポンは当面払われなくなったことは確定であり、債券価格は数年利払いができないということを前提としたプライシングに移行していくだろう。
それだけに錦州銀行の財務状況はひどいということだ。
任意で利払いを停止できるとは言え、一度それを行ってしまったら当面銀行の信用力はゼロに等しいことをシグナリングすることになるわけで、今後の劣後債発行が絶望的になるわけなので、それを覚悟の上で利払いを停止させにくるということはよっぽど状況はひどいといえよう。
この発表で錦州銀行のAT1債の単価は85pt→70ptまで下落した。

そして、問題はこういった事態が他の中小銀行のAT1債にも波及するのではないかという話だ。
少なくとも2018年の決算資料を発表できていない中小銀行はその危険性はかなり高いと思われる。
元本が削減されない分幾分かは想定よりましではあるが、改めて中国の中小銀行の脆弱性が浮き彫りになる形となった。
また、信用不安が起きないように中国当局はどのように流動性のサポートを行っていくかに注目していきたい。
さすがに中国政府の場合はここらへんの処理は他の国よりかなり速いので、システミックなことにはならないとは思ってはいるが・・・