中国で「地銀不安」再燃、内モンゴル包商銀の接収で

中国の地方中小銀行について包商銀行が公的管理下に置かれたことから実態がよかろうが悪かろうが懸念が続いている。

包商銀行は財務諸表の開示が2016年以来止まっていたということもあり、同様に開示が近年なされていない地方銀行も同じような状態ではないかと懸念されているのはまあ想像の範囲内だろう。
それによって中小銀行が続々と公的管理下におかれるのではないかという恐怖感が中国の中小銀行の劣後債に波及しており、これらAT1債の価格はベイルインされて損失が出る懸念を背景に一週間半ほどで3-5ptほど下落している。

では実際にAT1債がベイルインされるとどうなるのか?
自分が知っている範囲でAT1債(あるいはTier1債)がベイルインされた例は二例あり、イタリアのモンテパスキとポルトガルのバンコポピュラーレである。
モンテパスキはイタリアの銀行の中ではかなり大きい銀行で、かつTier2劣後債を個人投資家が大量に持っていて政権支持率に影響が出かねないということでTier1債は75%を株式転換で妥結、Tier2以上は全額保全という決着になった。

コラム:伊政府のモンテパスキ支援策、実体は「ベイルアウト」

一方でバンコポピュラーレはそもそもかなり前段階で財務がやばいと思われており、ベイルイン直前までは単価が54%ぐらいで推移し、ベイルインしてサンタンデールがテイクオーバーするとなった時に結局単価は2%まで落ちて終了した。

Banco Popular: First European AT1 Hybrid (CoCo) Triggered



<過去記事参考>

Coco債(金融劣後債)はいざとなったら紙くずになることが証明される

結果としてはほぼ全損。
その危ない銀行が揺れることによってどの程度政権にとってダメージが出るかによってAT1債がいくらで返ってくるのか左右される可能性が高いことがうかがえる。

では中国の中小銀行はどうだろうか?
包商銀行は総資産金額でいうと30位以下、シェアも0.2%であり重要性は低い。
地方中小銀行が発行するAT1債は全部足したところで結構たかがしれている金額というのもうかがえる。
インターバンク債権はカットするのはかなりまずいと思うが、少なくともAT1債についてはベイルインしたところでお前らちゃんと覚悟して買ったんだよなという論理は比較的通じやすいと思う。
特に当局の公表資料にモラルハザードは抑制し、責任者に負担を負わせるとコメントがなされているので、さすがにAT1債でベイルインについて満額保全というわけにはいかないと思われる。