メキシコに対して、あーこんな国に投資する意味あるんかなーと思わせる一冊であった。

・メキシコは麻薬の生産地かつ流通経由地として一大拠点となっている。
メキシコは世界最大消費国のアメリカに陸続きで隣接している。
もちろん麻薬もアメリカは世界最大消費国である。
そのため、メキシコは昔からマリファナを代表として、アメリカ向けの麻薬を生産し、国境を越えて密売を行っていた。
加えて、以前はコロンビアなどのもうすこし遠隔地からも海上を越えて密売が行われていたが、米国が海上警備を強化したことから、海上ルートが使いにくくなり、メキシコに販売を委託するようになっていった。
メキシコと米国は何千キロも国境を陸続きで接しており、山、砂漠、森、加えてトンネルなどなんでもありでいくらでも密売ルートを構築できることから、メキシコからの密売量を抑制することは全くできなかった。
加えて、NAFTAが発効されたことから、メキシコー米国間の貿易が増える中、検閲にも限界が生じ、ありとあらゆる方法で検閲をすり抜けている。

・なぜメキシコからの麻薬密売がなくならないのか
端的に儲かるからだ。
メキシコははっきりいって労働者の給料は非常に低く、下手すると最低限の生活さえできない。
しかも職も少なく、無職が非常に多い。
失うものがなにもない人が数多くいる限り、麻薬生産・流通をやめることはないだろう。

・なぜメキシコで暴力的な麻薬カルテル絡みの事件が起きるのか
基本構造は麻薬カルテル間の縄張り争いだが、そこにメキシコ政府・警察の腐敗構造および米国の超法規的措置も加わり、暴力の連鎖を生んでおり、非情に複雑な構図になっている。
メキシコでは麻薬生産・流通において複数の利益集団が生まれていった。
そしてそれら利益集団(カルテル)は他の派閥に打ち勝つために、徐々に武装することを是とし、麻薬で稼いだ金を武器購入に充てていった。
メキシコ国内は銃器の保有が合法かつ、隣国米国からいくらでも銃器を密輸できる状態だ。
自然と武装が過激化していき、重火器に加えて、ヘリさえ撃ち落とせる銃器を揃えるようになってきた。
これに対してメキシコ政府・米国政府も黙っておらず、軍・FBIなどを使ってカルテルへの襲撃・超法規的なカルテル集団の殺害・麻薬生産地への枯葉剤散布など法律を無視した対策を行ってきた。
しかし、カルテルはそれに対抗するために武器を使用し始めた。
しかもメキシコの地方警察はそれぞれのカルテル集団から賄賂をもらい、味方しているという状態だったりして、メキシコ政府でさえらちがあかない状態に陥っている。
場合によっては地方警察と軍が銃撃しあうなど信じられない事態が発生したりしている。
米国側では、少なくとも警官が違法な集団から賄賂をもらい味方するということはないため、カルテル集団による残虐な武力行為は行われていないが、国境をはさんだメキシコ側では政治家・警察がカルテルに賄賂をもらって取り込まれていることから、残虐行為を止めることができなくなっている。

・いくら潰しても新しいカルテルが登場する。
麻薬戦争はもぐら叩き状態になっている。
米国で麻薬の需要が存在する限り、いくらカルテルをつぶしても、メキシコでは新しいカルテルが次々と登場する。
読んでいくうちに、この暴力の連鎖の先に終結が見えるのかどうか、私にはわからない。

読んだ限り、少なくともメキシコに一般国民を食わせるだけの十分な職がないこと、政治家・警察が腐敗していてカルテル集団に取り込まれる例が後を絶たない事を考えればこの麻薬戦争が近いうちに終結するとは到底思えない。

メキシコへ投資をする前に、ぜひとも読んでもらいたい一冊だと思う。