村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年12月

追加財政支援策で続く茶番と仕事しましたアピール


もはやプロレス感。

米国の追加財政支援策についてようやく米上下議会の可決が通り、ようやくこれも一通り材料としては終わりましたかねーという感じになっていた。

<参考ニュース>
米議会、93兆円の新型ウイルス追加経済支援策を可決

しかしここにきてトランプ大統領が支援金増額しろとかいう要求を出してきて拒否権を行使したことにより、増額期待が出ているのかはたまたさらに延期されて不安がつのるのかよくわからない状態になっている。

<参考ニュース>
トランプ大統領、米議会の新型コロナ経済対策に反対表明 修正を要求

ただ、ここまでの相場の動きを考えると多くのプレーヤーはそもそもこの財政を巡る話については茶番だと考えていたのではないだろうかと個人的には感じている。
今まで選挙前あたりからずーっと追加財政支援については決まらず、相場もやや右往左往する展開になっていたものの、基本的にはどちらかというとアップサイドバイアスで動いていた。

こういう動きを見た時に基本的には最終的な妥結点がどこだったのかをインサイダー的に知っていた人がそこそこいたのではないだろうかと感じる。
いわゆる本国の政治ウォッチャーの方々や、政治家幹部とツテがある人は最終的な落としどころをどこにもっていきたいのか、どの地点で妥協点にもっていくのかというのをある程度情報を知っているはずである。
それを知っている人は目の前のヘッドラインで、少なくとも極度の恐怖に陥ることはないし、逆に相場がそれで下がるなら買い増ししたろという動きになるのが自然なように思える。
またそういった情報を知っている投資家は政治家の発言についても本音なのか、それともとりあえず有権者に私仕事してますよというアピールをしているだけなのかも知っているわけでそれで相場が動くならそこに上手くライドしていくということも可能だろう。

そういったことを考えれば基本的に政治家の発言と相場の動きをセットで考えていくと、基本的には相場の動きの方が正しいという可能性の方が高い。
本当に政治が経済に莫大な影響を与える時はもっとボラティリティ高く、どちらかというと下向きに動いていくという流れになるはずで、もう退陣までのわずかな時間しかないトランプ大統領が拒否権をこうじたところで多少の株価の動きはあれど、色々な株価の出来高を見る限りだからなんですかね程度の反応しかしていないというところに市場参加者の本音はでているように思える。

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思ったより長引きそうな中国テック企業への締め付け

China Targets Jack Ma’s Alibaba Empire in Monopoly Probe

締め付けはどうやら長引きそうだ。

中国のテック周りというのは半導体を除くと基本的にはアリババとテンセントの半ば寡占の状況にある。
少しでも有望そうなテック企業が出てくればそこにあり余った資金を投下して株式を取得し傘下におさめ、自社プラットフォームも場合によっては活用しながら上場まで持っていくというのが彼らの得意とする戦略になっている。
投資された側もアリババ・テンセントのプラットフォームが使えるので企業成長速度が速くなるということで願ったりかなったりだったりもする。
ただし、これが行き過ぎるとあまりにも独占体制が強まるということもあり、中国当局もテック企業の成長と独占の弊害を天秤にかけていたのだが、ジャックマーが調子にのってアント上場について懸念を抱いた中国当局を批判するようなことを言ったことをきっかけに弊害の方が強いと判断した中国当局が締め付けに動いたのがここ2か月ほどの動きである。
ここらへんについてはブログでも以前に記事にさせてもらった。

そこにさらに中国当局がジャックマーに対する調査を強化するという報道がされたことで、未だジャックマーの行動が許されておらず、これは年またぎで行われるものだと投資家が認識したのが今日の流れだろう。
中国の場合は西暦の年跨ぎは普通の休日と同じようなもので、本当の年跨ぎは春節なので、実際は2月を越えてもこの締め付けは続くだろうということだ。

よって今後は今までのような戦略は独禁法(まあそもそも中国で法律がどうとかというのはナンセンス)に引っ掛かる可能性が大きく、エコシステムを活用した企業巨大化の速度は鈍化せざるをえない。
特に中国では一度当局に目を付けられると、米国のようにロビー活動なんで効くわけないし、下手すると命まで取られかねないことになるわけで、そのような中で
アリババについてはこの流れは上層部の首すげかえまであるのではないかと思われるような状況になりつつあるようにも思え、株価もかなり厳しい動きとなっている。

<アリババのチャート>
タイトルなし


これはアリババだけでなく、テンセントも似たような連想をされるわけでテンセントの株価もどうやらしばらくはやはり駄目そうな雰囲気である。
金融部門を持っていないテック銘柄ならまだましな動きだろうけど、基本的には中国テック銘柄は思ったより出番なしの期間が長くなりそうだなという感想しか出なかった。
テック銘柄ならおとなしく中国以外のものにフォーカスする方がやはり吉。
ただ時間がたてば割安になった中国テック銘柄に再びフォーカスされる時代がくるはずなので、引き続き動きについては監視しながらどうポジションを取っていくかは考えていきたいと思う。

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米国上場半導体株指数SOXが出遅れ始めている理由

MicrosoftがArmベースのチップを自社設計との報道

特定の半導体株がやや出遅れそうな雰囲気。

足下でやや米国上場半導体株を代表する指数であるSOXが盛り上がっている銘柄に対して出遅れ始めている。
それについては上記のマイクロソフトの報道が大きく絡んでいる。

ITは全てにおいてスピードが優先されている。
特にその中でキーファクターになるのはご存じの通りCPUである。
アップルを中心に汎用半導体を積むだけでは駄目だという判断をもとに、独自規格CPUを作る動きをしている。
話題になったらアップルの新Macbookで多くのユーザーを驚かせた爆速ぶりには、アップルのOS規格にフィットした自前規格CPUを搭載することによってこれを実現していることは多くの報道で既に既知のものとなっている。
アップルだけであればパソコン市場シェアからいうと大したことがないのだが、問題はマイクロソフトの動きである。
マイクロソフトもアップルの動きを見てこれはまずいのではないかと考えたのか、独自規格CPUの開発をしているという報道が出てきている。
ではなぜこの報道は半導体株の足を引っ張っているのか。

この独自規格CPUというのはより省電力で速く処理できるものを主にARMベースのものから設計し、大体はTSMCに製造委託する流れになる。
残念ながらご存じの通りARMは非上場であるため、ARM取り込み分は一般投資家には利益がない。
唯一このARMベース半導体製造を請け負うTSMCに恩恵があるが、その他の半導体銘柄はほぼ全員恩恵がない。
この報道ではマイクロソフト・ARM・TSMCの三社が利益の取り分を全部取ることになり、各社半導体はその利益サークルからこぼれることになる。
特にインテルとAMDについては状況はやや深刻で、大手ITが次々と自社製CPUを開発してくると、特にマイクロソフトがその開発に成功した場合には大きくダメージを受ける可能性が高い。
まだクラウドサーバーにまではそういった過激な動きはないものの、アマゾンがAWSサーバーに独自規格CPUを入れるのを試みたりしているので、この大きな波がせまりつつあることは株価を動かす大きなファクターだろう。
クラウドサーバーにも自社製CPUを入れていきますなんて発表された日には特に電力馬鹿食い・発熱もりもりのCPUばっかり作るインテルの株価は奈落の底に突き落とされる可能性さえ否定できない。
いわゆるウィンテル時代の終了である。
まだかなり先の話ではあるものの、報道ベースで字面として出てきたことから聡い投資家はやや半導体銘柄について勝ち組・負け組を選別しようと慎重モードになっているように思われる。

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各種リスクオフ報道でまばらにリスクオフ指標が増えるものの、銘柄間差は大きい

【新型コロナ】欧州や香港、英国からの渡航禁止-変異種阻止で

昨日は新型コロナウイルスの変異種が出てるのではないかということや、欧州各国のロックダウン措置強化と米国の財政支出の話が出尽くしたのではないかという観測から米国時間は相当下げを縮小させたものの、欧州時間で大きめに下がる展開となった。
いくつかリスクオフ度合いを探るべく、各種注目どころを点検。

・原油および関連銘柄
WTIスポットで46.27まで下落したが、その後やや戻し47ドル台と劇的に下落しているわけではないものの、今後数日がややもっとも不安定感が出そう。
ロックダウンで景気後退が織り込まれていくなら原油の下げがもっとも厳しくなるはずなので、ここの下げが継続するようだと相場としてはかなり危ういと思われる。
米国エネルギーセクター銘柄も大きめに下げ、ここも相場の足を最も引っ張る要因になる。

・米債30年
一旦は1.63%ぐらいまで突っ込んだものの、結局1.67%ぐらいまで戻り、米債だけ見るとほとんど動いていない状態に見える。
そういった意味では米債から見ると株の反応はとりあえず売り第一陣は大きめに反応したけど、債券側を見るとそれがなにか?といった感じになっている。
反応遅いだけじゃないのかという可能性もあるが、今のところここがリスクオフ指標としては先頭は走ってはいない。

・社債ETF
HYG・LQD・BKLNともに少し米債金利が下げたが価格がいつもよりやや大きめにマイナスになっているということもあり、クレジットはやや売り目線が強かった。
既にFRBの社債ETFバックストップ買い入れ枠はなくなっているので、ここが複数回ダメージくるようだとやや相場は荒れる展開になりそうだ。

・ARKK・ARKGの動向
ダウ以外の米国主要株価指数は下落したものの、ARKKやARKG、その他脚光テーマ株(自然エネルギー・サイバーセキュリティー・バイオなど)は平然と上昇していてこれはかなり予想外であった。
特にARKK・ARKG銘柄の出来高増加と株価上昇に生き残りそうな銘柄に資金を集中させてやるという動きの強さを見た。
ちなみにアップル・マイクロソフトも上昇しており、大手銘柄間でも濃淡差は大きかった。

特に今回のリスクオフはメインが欧州が原因であるため、欧州時間にかけてリスクオフが強まり、米国時間になるとテーマ系銘柄・バブル系銘柄が一定程度状況を押し返すといった流れになりそうである。
欧州時間はどれぐらいの幅で下げるのか・その後の米国時間でどの程度回復するのかというシーソーになるというシナリオを考えている。

そういった意味では一律に下がる雰囲気というよりは以前の銘柄間格差の大きい動きが年末・年初と続いていく方向に傾きそうな感じである。

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米国ETFの資金フローから示唆される市場動向

https://www.etf.com/etfanalytics/etf-fund-flows-tool

ETF.comのサイトからETFの資金流入動向データを取得して何か示唆できるものはないかと見ていた。
2019年11月以降の資金フロー累積データが集められたので、グラフを見ながらデータが意味することを探ってみたい。

<米国株ETFの資金フロー累積>
タイトルなし

米国株は淡々と買いのフローが入っていると評価できるだろう。
ただ6月から9月はETFにフローが入っていない中で株価は上昇していたことを考えると、個別株押し上げの威力がすさまじかったことが挙げられる。
大統領選終わって以降とワクチンニュースがあってからは資金フローはプラスで大爆発しているところである。
この資金フローがどこまでプラスで行くのか、プラスが止まった時に再び個別株押し上げでもう一押しがあるのかどうかが注目どころだろう。

<インターナショナル株の資金フロー累積>
タイトルなし

3-5月にかけては資金フロー的には米国株に対してはボロ負けであった。
しかし6月以降は米国株の資金フローが止まった一方でどんどん買いが集まり、大統領選以降は米ドル安とともに資金流入が加速している。
これが続いている間はそう簡単に他の先進国株もそう大幅に下がるということもなさそうだ。


<インバースETFの資金フロー累積>
タイトルなし

インバースETFのフローを見ると3月ボトムから7月にかけて米国でもすごい勢いで資金流入したが、7月以降は横ばい停滞となっている。
3-7月は日本だけでなく米国の投資家もインバースで大きくショート勢が焼かれたことがよくわかるグラフになっている。
ただやや不思議なのは8月以降の資金流入が全くない状況である。
通常相場が上昇するときはインバースETFに資金が流入し、逆に下落する時は利益確定で動くため資金フローはマイナスになる。
普通は相場が上がるにつれインバースETFの資金流入は再び始まることを考えると、足下のインバースETFへ資金流入していないのはショート勢がまだ上昇余地があると恐れているのかもしれない。
なんとなくだが真のFOMOになった場合には少なくともこんなバカげた上昇はありえないとショートする人が増加するはずなので、インバースETFの資金フローが再び増加するまではロングポジションは維持できるのかもしれないと感じる。


<米国レバレッジETFの資金フロー累積>
タイトルなし

こちらは特に示唆するべきものはない状況である。
相場が上昇するにつれ一旦利益確定するという動きしか見えておらず、そもそも絶対的な資金フローが少ないため示唆するものもなく、影響するようなこともないということだろう。

<コモディティETFの資金フロー累積>
タイトルなし

コモディティETFは足下やや元気がない。
旬は8月頭で終わっている状況で現状も目立った資金回帰がなされていない。
もしかするとこの後回復するかもしれないが、それでも中心となるゴールド・シルバーは株に出遅れる可能性の方が高いように思える。

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村越誠

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