村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年01月

一部新興国で貿易金額にボトムアウトが見え始める

China’s dollar-denominated exports and imports beat expectations in December


輸出入が回復し始める順に株価は回復するだろう。

最新の各国貿易統計が出始めてきたが、一部新興国においては経済のレスネガティブがじわじわと見え始めた。
なぜかというとそれはやはり貿易統計だ。
ようやく輸出入動向についてボトムアウトが新興国が出始めてきた。
具体的に言うと、直近統計では中国・韓国・台湾・ベトナム・インドネシアについては明らかに輸出入貿易統計について底打ちが見えてきており、経済のボトムアウトの兆しが見え始めている。
インドネシアはともかくとして中国・韓国・台湾・ベトナムはいわゆるIT製造業サプライチェーン上にいる国ということで、やはり情報技術関連の回復が一番早いですよねということが改めて印象づけられた格好になった。
一方で、底打ちしそうだけどまだ顕著な回復が見られていないのはマレーシア・タイ・インド・フィリピンといった東南アジア系国家および東欧系、そしてまだボトムアウトどころかまだ下がりそうな可能性を否定できないのが中南米・アフリカ・トルコといった国々だ。

現在の新興国は国内経済を盛り上げようにもその原資となる外貨が足りなく、国際収支の天井にぶつかってしまっている状態だ。
なので一にも二にもまずは輸出の回復というのが経済回復において最重要優先課題であり、いち早くこの国際収支の天井から脱出しそうな国というのが中国・韓国・台湾・ベトナム・インドネシアということだろう。
本来タイもIT製造サプライチェーン上にいるはずだが、昨今のタイバーツ高が相当苦しい状態であり、輸出回復にはバーツ高緩和が必要な状況になりつつある。
マレーシアは原油でかなり統計がぶれるので、原油が足元では輸出統計の足を引っ張っている。
インド・フィリピンは残念ながらITサプライチェーンの範囲外であるため、回復は遅れそうだ。
東欧系(ポーランド・ハンガリーなど)はそこまでひどい状態にはなっていないものの、どうしてもEU経済の活性化が必要であるため、こちらもまだ本格回復が見込みづらい。
中南米・アフリカは資源や素材が全然ダメなため、回復は一番遅くなるだろう。
こういったことを考慮すると、やはり中国・台湾に新興国ポジションを絞り込むのは比較的妥当な判断ではなかろうか?
(韓国はほぼサムスンの輸出による上下なのでサムスンエクスポージャーとるかどうかだけなので除外)
ベトナムは良さげに見えそうだが、銀行の金融システムがクソすぎるのと外資投資規制の点で不利なのでこちらも今のところはポジション取りは考えずといったところだろうか。
インドネシアは本当に輸出回復が継続するのかどうかまだ自信が持てないので、こちらは要観察。
 

半導体は復調してきているが、バリュエーションにはかなり織り込まれている。

バリュエーションには既に織り込まれているし、そもそも信じて握っていた人達も多いですが。

足元で半導体関連需要の回復についてエビデンスとなるデータが複数ようやくでてきた。

・半導体製造設備輸出動向データが前年比プラスに転じはじめる
これは半導体製造装置の統計を見てもらえればわかるが、足元で明らかに前年比プラスに転じてきていることが統計上確認できる。
・TSMCの決算にてスマホ・5G・データセンター関連向け需要の回復について示唆がなされた。
TSMCの決算を確認していたが、上記3つについての需要回復について何度も強調する発言が出ており、ここらへんは単に半導体セクターの底打ちという面だけでなく、さらにどういったセクターが盛り上がってくるのかというところのヒントにもなりそうだ。
また半導体底打ちについては台湾輸出統計を見てもすぐ底打ちしていることがわかるだろう。

台湾TSMC 半導体好転、5G需要で再浮上

・ディスコの決算で12月以降急速に需要が回復しはじめた。
出てきたばかりの決算内容確認するとまだメモリ関連は厳しそうだが、それ以外については米中部分的合意以降急速に立ち上がっている的な話がなされている。

<東証>ディスコが2年2カ月ぶり高値 10~12月期業績が計画超過

・ASMLの露光装置発注もまあまあ順調な推移を見せそう
決算を受けて期待感に届かず株価は売られているものの、引き続き半導体露光装置への引き合いは堅調といった内容。

ASML Beats Q4 Sales Target, Hikes Dividend, Share Buybacks



・インテルの決算好調
インテルの決算コメントにおいてデータサーバー向けのインテル製品出荷が非常に好調ということで見通しが引き上げられており、株価も素直に好感している。

インテル、売上高に強気見通し-データセンター需要回復

こういったところもあり、ここまで我慢して半導体関連株に信じて投資していた人達は報われましたなという感じになってきている。
これだけ材料が揃っていれば、もはや半導体セクター状況はボトムを打ったというのに反論するのは難しいように思われる。
(逆にこれだけ材料が揃っててボトム打ってないと言っている人には何を言っても無駄だろう)

ただじゃあ半導体関連銘柄がさらにすぐ上がって買いかというと個人的にはそうは思わない。
既にこうした回復が見込める(あるいはお祈り)として信じて何回もナンピンかけて買い足している投資家が相当数いることは確かで、既にバリュエーションにはこの回復分はほぼ全て織り込まれていると思っている。
去年あたりずっと雰囲気追っていたけど、買っている人達はもう市場データとか完全に無視して、ほぼこのセクター自体を信じるという一種の宗教観で買っていたように思われており、信心がない人は買えなかったかなあと思う。
ただし、以前に記事で書いた通り、半導体セクターは昨今のデジタル社会化において少しでもいいから絶対に保有しておかなければいけないセクターであることは確かである。

なまじボラティリティの高いセクターであるので、どこで新規買いするのか、今保有しているポジションはどの程度の量にしておくのか、売ってポケットにいくらの金をしまいこむかを慎重に考えてうまくライドしてもらいたい。
まあ短期的には損してもいいからポジションを取りたいというのであれば今取っても別にという感じはする。
なお、SOX指数のボラティリティは年25-30%あるので、短期的な損といっても20%以上の損は覚悟しておく必要性はあると思う。

<SOX指数のチャート>
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FRBのマネーマーケット対策がQEカウントされている

[FT]金融緩和か否か、市場との対話に苦慮するFRB

当の本人達はQEじゃないと言い張っている一方で、市場はQEと勝手に認識している。

去年の9月のレポ金利急騰によって、FRBはその対策を行う必要性が生じた。
このレポ金利というのは、詳しく説明するとめっちゃめんどいので省くが、現金を調達するために資産を担保に拠出する際の金利である。
マネーマーケットは日々金融機関が膨大な資金繰り調整を行うための市場であり、なくてはならない市場だ。
マネーマーケットにおける金利動向というのは、金融機関においては人体でいう血液と同様であり、このマネーマーケットで現金を調達できないというのは金融機関にとってイコール死を意味する。
そこに昨今の金融規制強化などが加わり、銀行側が現金を差し出さないケースが増加したことからレポ金利が大幅上昇する事態が発生した。
特にフィクスドインカム系では財務にレバレッジをかけて取引するのは当たり前の世界であることから、現金が調達できないことによる投げ売り逆回転が起こることほど金融市場でおそろしいことはない。
これはFRBもわかっているところであり、だからこそFRBはレポ取引とTビル購入を決定し、現在これを実行している。
しかし、その副作用として今まで縮小させてきたFRBのバランスシートが再び拡大してしまっている。

FRBはこの措置についてはQEではないと言明している。
QEは一般的には長期金利を抑制させるために長期国債やMBSを購入することをさすので、たしかに今回のTbill購入およびレポでの措置とは全く性質が異なり、この言い分には納得感がある。
一方で市場はそんなこといったって、FRBがバランスシートを拡大させることは変わりないだろう、その分クラウディングアウトされてしまったお金はリスク資産に向かうだろという発想をもとに市場が金融相場的動き方をしている。

問題なのがFRBは今回の措置については早くてレポについては4月末、Tbillについては2Q末には終了するかもしれないとけん制球を入れていることだ。
まだ市場はほとんど気にしていないが、この4月末・6月末においては金利動向には非常に注意を払いたいと思っているし、この辺が相場的に金融相場から業績相場へ移行する節目になりそうというのも頭の中でシュミレートしている。
6月末移行に再びFRBはバランスシートの縮小に向かうのか、それとも資産を維持するのか、それともまだ買う気でいるのか、この辺が今年中旬の相場を考える上で非常に重要なファクターになるだろう。
FRB自体が利下げについてもほぼ打ち止めを決め打ちしていることからも再び金融政策の反転がいつ来るのか考えておかねばならない。
 

再度ナスダックを若干利益確定

コロナウィルスが原因というよりPERがやっぱり高すぎるというところ。

ナスダックにエントリーしてからおおよそ20%上昇してきたが、もう少し利益確定したいということで、追加でナスダックを売っていくことにした。

<NDXのチャート>
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買いの場合は大抵これっていう理由があるのだが、やはり難しいのは売りの方で、毎回のことだが相場が熱狂的になっていく中ではっきりこれっていう理由がないままなんとなく売るというやり方をするしかなく、これが生真面目な人には難しいといつも感じる。
(自分もその一人だが)

まあ理由をしいてあげるなら、PERが気づいたら2018年のどピークを越えてきていて、ここからの上昇にはEPSの上昇が必要という認識を強く持っている。
これは短期的要因だがFRBによる疑似的QEも加わって金融相場的動向をしているのでEPSが上がらない中でPERの上昇だけで相場が成り立ってしまっている。
それにFRBの疑似的QEも4月-6月に終了することも見込まれる。
つまり、そろそろ高バリュエーションを正当化するにはEPSの上昇が見えてこないといけない時期にさしかかっているように思える。
いわゆる金融相場から業績相場への移行だ。
この移行時期においてはどれぐらいの値幅が出るかはわからないが、金融相場で買っていた人達の利益確定売りがそこそこ出ると考えている。
そこに今回のコロナウィルス騒動が加わり、まあ無理してポジション維持するような相場でもないでしょうという常識的な判断をすることにした。
ただ、もちろん全部一気に売るというわけではなく、あくまで一部売りであり、現金比率は平常時の50%をキープさせ続けるつもりだ。
また一旦はこれ以上の利益確定はよっぽどナスダックが急角度上昇しない限りはやる必要性もないだろうと考えている。

ちなみに今年のNDXのパフォーマンスについては10-20%程度の上昇ぐらいを見込んでおり、相場としては非常に高いパフォーマンスをたたき出した2014年の翌年である2014年に似た動きをするのではないかと考えている。
なので押してくれば再び追加エントリー玉を投入することは当たり前であり、強気で相場に挑んでいきたいというのはあまり変化はない。
ちなみに押したタイミングというのは個人的には大体この辺を見ているというのも書いておこうと思う。

・VIX20以上
・TQQQやSPLXなどのレバレッジ系ETFの出来高の急増
・CLO価格やHYGなどの高利回り債券系資産の対ベース金利スプレッドの拡大
・中国のNCD利回りの拡大
・マネーマーケット各種プレッシャー動向 

<足元のポートフォリオ>
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コロナウィルスの感染拡大状況と相場への影響

新型コロナウイルス感染症の現状と評価(2020年1月21日現在)

新型肺炎コロナウィルスが中国の武漢を中心に広がっているという話が、徐々にニュースでの取り扱いが増えてきたので、念のため相場への影響がありそうかなさそうかというのを確認したいと思う。
過去の相場に影響した病気例でいうと、2003年SARSと2014年エボラウィルスの2つがある。
エボラウィルスはほぼアフリカ内で収まったので相場的には少し揺らぎが見えた程度で、世界経済に対するインパクトはほとんどゼロであった。
しかし今回のコロナウィルスはSARSと同様に中国から感染が拡大していっており、すわSARS再来かという人もちらほらいる。
個人的には医学的見地がないことから、ここまでわかっていることをまとめていき、まずは現状認識から努めていきたいと思う。

・1月21日時点で公式発表では中国で260名程度(ほとんどが武漢)、日本1、韓国1、タイ2。
(ただし中国の数値はうそぶっこいて嘘ぶっこいている可能性が否定できない)
・日本・タイ・韓国では二次感染は確認できず
・台湾やオーストラリアでも渡航者の感染が確認された
・一方で中国国内では武漢渡航歴がない接触者が発症していて二次感染が起こっている。
・人から人へ感染することも確認されている。
・死亡例は6例(いずれも中国国内)、いずれも高齢者
・現在の致死率は1.8%とまだかなり低い。また死亡例もまだ高齢者オンリー。
・武漢発のグループツアーは禁止、個々人も公共交通機関において色々検査される見込み

ここでSARSと比較しておきたい。
・WHO調べで感染者は8096人(中国政府がどれぐらい誤魔化しているかは不明)
・致死率は10%近くあった
・アウトブレイク発生が2002年11月だったが、中国政府の情報統制で世界的な対応は2003年2月にベトナムで死亡した米国人の例までかかった
・2003年3月時点で500人ぐらいが香港で感染が確認されたが、中国の統計数値は引き続き誤魔化されていた。
・封じ込め成功宣言は2003年7月と終息までに約8ヵ月かかった

比較をしてみると新型肺炎コロナウィルスについては前回のSARSと比べると、一応中国政府の対応は早めに動いているということは確かだろう。
(それでもかなり隠蔽しているっぽいが)
SARSの時は香港でのアウトブレイクまで中国政府は隠蔽してきたため、香港やその他地域での発症を広げたことを批判されている。
そもそも中国の公的病院というのは未だ野戦病院みたいな下手すると床雑魚寝みたいな扱い方をされるということもあり、何分人口が多いということもあり、広がり初期はどうしても抑えられないというのが中国の貧弱な社会保障制度の実情だ。
(一方で昔と違いたんまり金を払えば豪華な民間病院に入院できるという点では進化した)
今回のコロナウィルスとSARSの感染時期はほとんど一緒であり、年末や旧正月に向けて先んじて移動した人経由で感染が広がるリスクが懸念されている。
また、中国政府の発表はどうしても多かれ少なかれ誤魔化されている懸念はぬぐえないので、中国以外の発症例を確認し、SARSと比較しながら相場への影響を考えたい。

なお、SARSの時の相場への影響として
・香港の不動産価格下落。
・ホテル株や航空株の業績は大幅下降し、実際にJALやANAはかなり手痛いダメージを受けた。

また、春節前連休ということもあり、(中国7連休、台湾7連休、韓国4連休、香港4連休)連休中に感染拡大でとんでもない事態になることの懸念およびもう利食っておこうという両方のインセンティブが働いているせいかアジア株相場は21日火曜日から急にグダグダになり始めている。

また実際の中国の状況や中国政府発表については下記記事が参考になるので、こちらも読んでおきたい。
読んだ限りは致死率はやはりSARSと比べれば低いものの、かかると若い人でも一時的に重篤化しやすいということと、一定の感染拡大はやむを得なさそうというところだろう。

武漢の新型肺炎重症患者が「ただの風邪ではない」と気づいた症状を証言

「新型肺炎の感染拡大は初期段階」「春節に患者増える」:中国政府専門家委の一問一答

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プロフィール

村越誠

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