村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2019年12月

2020年投資テーマについての注目ポイント

2020年の相場について個人的に気にしているポイントを列挙しておこうと思う。
基本的に2020年は強気なものの、割高バリュエーションを正当化できるのかどうかを注視してポジション維持を考えていければと思っている。

・米国が世界にしかける貿易戦争はどこに向かうのか
メキシコ・カナダについては新しい合意を取り付け、中国は交渉の手詰まり感と米国の景況感悪化にもつながったことからこれ以上の貿易摩擦の拡大が難しいと感じたのかさらなる対立激化は可能性が薄れてきた。
一方で、EUに対してはまだ本格的に圧力をかけておらず、これから圧力をかけてやるぞという雰囲気を見せ始めている。
中国との貿易戦争も引き続き相場のネタとしては認識されそうだが、インパクトは去年より薄くなるかもしれない。
一方でEUとのすったもんだは新しい動きとして考慮すべきかもしれない。

・FRBが利上げへの道筋を示すのかどうか、米長期金利の居所
現在市場ではFRBの2020年利下げ確率は1回が4割ぐらいまで低下しており、据え置き見通しが急速に台頭している。
FRBは
ただ、トランプ大統領は利上げできる余裕が米国経済にあると考えると再び貿易戦争に邁進する可能性があり、これが債券投資家が米債をショートしづらい要因の一つになるだろう。

・高PERを正当化できるほどEPSの上昇が再び始まるのか
足元は景況感が悪い中で株高が起こるといういわゆる典型的な金融相場となっている。
つまり市場参加者は既にEPSの上昇というのはかなり織り込んでいる。
もしEPS上昇が観測できなさそうと思われると、その国・セクター・銘柄から順に回復した分が剥落していくだろう。
業績相場に移行できるのかどうかに注目が集まる。
特に先進国株の高PER状態は業績相場移行が必須なレベルな状態になっている。

・リスクプレミアムの圧縮の限界を探る
2019年は総じていえば、フィクスドインカム系はよっぽど危ないところでなければ積極的にリスクプレミアムを取れた人が勝利した年であった。
これは日銀とECBが国債をバンバン買い入れることにより銀行・保健が国債市場からクラウディングアウトを食らっている。
米国もまだイールドカーブがフラットな状態なままなので、ヘッジ後の利回りが残らない。
一方でどんどん余資は増えるし、投資したいマネーも増えていく。
そうなるとリスクプレミアムがある資産に投資していくしかない。
その波は既に米国のBB格ハイイールド社債にまで及んでおり、BB格社債のスプレッドがたったの180bpsというのは久方ぶりの数値だ。
一方で、REITやCCC格・ディストレス債・CLOにまではまだ資金が回り切っておらず、リスクプレミアムがかなり残っている。
しかし、すでにCCC格・ディストレス・CLOはファンドを新規でローンチさせる動きも見えており、ここのリスクプレミアム圧縮がどこまで進むかが来年相場を占う上で重要なファクターになるだろう。

・米国の輸入は増加に転じるのか
最終的には米国が輸入を増加させるかどうかが世界の株価、特に新興国の株価にとっては重要な要素になっている。
究極的には世界は米ドルが全ての信用力創造の起点になっており、この米ドルにどれだけアクセスできるかがその国の安定度を決める。
新興国は国内の蓄えが少ないことから貿易による外貨獲得というのがないと国際収支の天井にぶつかって成長を妨げられてしまう。
だから米国輸入が増加するかしないかは2020年新興国株の大復活が起こるかどうかの最も重要なファクターになっている。

・11月の大統領選挙の行方
米国民主党の大統領選候補者はまだかなり流動的な状態になる。
一時期ウォーレンブーム的なのが起こっていたものの、あまりにも主張が左に振り切れすぎていたということもあり、足元で支持率が急速に下がってきている。
それを感じてか主張が徐々に真ん中により始めている。
サンダースも健康状態が危うく、特に大統領についてタフでマッスルさを求める米国民が選ぶ可能性はかなり低い。
なんだかんだで中道派のバイデン氏が大統領選候補になる確率が高まっている。
バイデン氏が大統領候補として出てくるとなると果たしてトランプ氏は再選されるのかどうか非常に予想が難しくなるが、それはまた選挙が近くなったら考えようと思う。

・情報通信セクター以外に動意づくところはあるのか
機関投資家のアクティブ運用では、情報通信セクター頼みの運用をしているところは多いように思える。
この情報通信セクターの成長と上昇は、下手すると平均株価指数で情報通信セクターだけインデックスを上回り、他は全部負けているみたいな珍現象まで起こしかねない動き方が足元で観測されている。
なんとなく他のセクターへの浮気も考えたいところだが、ポジションの一定程度は常に情報通信に張っておきたい。
なお、じゃあどこのセクターが浮気しやすいのかと言われると、ヘルスケアかなあと山勘している。

・ドイツが財政支出を打つかどうか
世界的に金利が低くなっている中で、じゃあ財政打てるじゃんというMMT的な動きがちらほら見える。
その中でも最も皆が期待しているのがドイツが財政政策だろう。
EUではドイツが財政を打たない限り本格的景気回復はないと見る動きは多く、ラガルドECB総裁も以前からずっとドイツに財政打てと催促している。
そのような中でドイツ連銀のメンバーにおいても財政黒字にこだわるべきではないという発言をする人も出てきており、ドイツが動くか動かないかはリスク資産や債券金利動向に非常に大きな影響を与える可能性がある。

30歳資産2000万円を豊かな生活を送るための資産形成メルクマールにしたい。

昨今会社で使えないおじさんに対する風当たりはより一層厳しくなっている。
やはりそうなると40歳手前ぐらいでいくら資産を積み上げているのかが人生における重要な点だろう。
普通の人が安心して生活できるためにはどれだけの資産形成をしておかなければいけないだろうか?
個人的には30歳時点で2000万円というのをメルクマールにしたいと思う。
30歳時点で2000万円という試算金額は一応は頑張ればだれでも達成できる数値だと思っている。

ただし、それにはいくつか条件がある。
①20歳台前半で結婚すること、両者あわせて最低年収600万円
②計画的な支出をできる
この2つが必要だ。

30歳2000万円を貯めるためには22歳で大学卒業して働き始めるとしよう。
8年の間に2000万円貯めなければいけないということは年間250万円の貯蓄が必要だ。
年間250万円を貯めるのは、そこそこ高年収の人でないと単身では難しいだろう。
しかし、結婚したならばそこまで難しくない数値として現実味が出てくる。
両者とも働けば、例え両方とも年収300万円だとしても、年間600万円の収入になる。
そこから考えれば年間支出を350万円に収めれば年間250万円の貯蓄ができる。
少し甘めに見積もって月間支出30万円に収めればよい。

月間支出30万円のうち、どうしても支出せざるを得ない最低限の支出は
・家賃(月10万円)
・ スマホおよび固定通信費(これを1万円に収めたい)
・光熱費(できれば平均1万円)
・食費(7万円ぐらい見積ればいいのでは)
つまり合計20万円ぐらいになる。
そうなるとあと残り10万円で様々な支出をやりくりするという努力をする。
もちろんどちらかが年収400万円になれば、支出できる金額が年間450万円になり、月間40万円の支出が可能になるので、上記ケースよりぐっと生活が楽になる。

なのでベストケースでは25歳より手前で結婚して、早急に世帯で年間250万円を貯蓄できる体制を構築する。
これが普通の人の現実的な資産形成手法だろう。

30歳2000万円の資産形成ができれば、それをいくらか投資に回すことによって、年間50-60万円ぐらいの資産運用収益獲得が期待できる。
これはちょっとしたパート一人分ぐらいの年収に換算できる。
これを積み上げていけば40歳には変な金の使い方をしなければ節約せずとも3000万円ぐらいの資産を形成できるだろう。
ここまでくれば例えば自分が使えないおじさんとして会社から放逐されたとしても、自分と妻が何かしらのパートで稼ぎ、加えてパート1.5人-2人分のお金を資産運用で稼ぐことができ、とりあえず食うに困らない生活が可能だ。

しかし、これを達成するためには普通の年収程度しか稼げない人には本当に20歳代で計画的かつシビアな生活を送る必要性がある。
しかし、普通の人より多く資産形成しようと思ったら普通の人ができないことをするしか方法はない。
それをしっかり認識してほしい。

理解ができないならIT・半導体・医薬はバスケットで投資するべし

わからないならバスケットで投資するしかない。

個人投資家でも機関投資家でもそうだが、業界自体に精通していないと非常に分析が難しい業界が3つある。
それはITサービス・半導体関連・医薬関連である。
ただ、この3つというのは世界的なベンチャーキャピタル投資動向でもこの3分野で過半を占めるほどであり、いわゆる最先端成長産業とも言われている。
年間平均利益成長率も他のセクターを上回る分野で高いEPS成長率が期待できる。
この3つを外して投資でパフォーマンスを上げていくのは難しい可能性が高く、はっきり言えばこの3セクターに投資していないだけでS&P500にパフォーマンスがボロ負けすることになる。
これは2011年、2014年、2017年といずれの期間を起点にしても同様の結果になる。

<SOX指数のチャート>
タイトルなし

<情報技術ETFのチャート>
タイトルなし

<ヘルスケアETFのチャート>
タイトルなし


なので現状この3分野への投資を避けて儲けようというのは非常に難しい。
ただ、この手の銘柄は非常に個別銘柄ごとではリスクが高く、どこまでの成長を織り込んで企業評価がなされているのかも計算が難しい上に、外れ銘柄を引いたりすっ高値を掴んだりすると目も当てられないパフォーマンスになったりする。
大体個別銘柄でこういう事象が発生したら売りという判断ができないぐらい詳しくない銘柄に触ると、往々にして損切りが遅くなり手ひどいパフォーマンスになる。

なのでこの難しい分野に投資したいけどなるべく安全策を取りながらやりたいというのであれば以下の方法でのバスケット投資をするしかない。

・ナスダック100指数に連動するETFあるいは投資信託(インデックスファンド、1545、QQQ)
・IT関連ETF(SOXXなど)
・医薬・ヘルスケア関連ETF(IYHなど)
・上記3つのレバレッジ系ETF(TQQQ、SOXL、CUREなど)

これらでセクター成長自体を取りに行くというのが個別銘柄判断ができない投資家ができる最良手段だろう。
かくいう自分も正直言うとこの3分野については追い切れていないどころか、特に医薬については全く持って知見がない。
医薬セクターは足元の利益なんて誰も見ていなくて、現在パイプラインに乗っかっている新薬候補の上市可能性が株価メインドライバーになっている。
しかし上市可能性がなくなるといきなり株価が大幅ディスカウントされるということもあり、個別銘柄単位でいうと株価の非連続性が高い。
残念ながら本当にその分野の知識がない人には全く分析判断することは不可能だと筆者は考えている。
もちろん資産のいくらかはそういうギャンブル的なやり方もありだろうが、それに大半の金をつぎ込むというのは長く相場で稼いでいこうと考える場合は不適格だろう。
なのでここらへんは上手にインデックスファンドあるいはETFを活用しながらリターンを得る努力をしていきたいと思う。

逆に上記3分野以外のセクターというのは言い方は悪いが個人的にはぐっと分析がしやすいと思うところがあるので、できれば個別銘柄ピックアップで一本釣りを目指す方が高いリターンを狙える確率が高いように思える。
特にオールドセクターは駄目な企業と良い企業がはっきり分かれており、駄目な企業を排除するだけでもパフォーマンスは向上すると思われる。

米国発電会社は自業自得の山火事リスクを背負っている

Fire and flood focus minds of bosses and investors



多分一部は気候変動と関係ないような気がするんですが。

FTの記事で気候変動に伴う事業会社の損失拡大の例として、昨今増加していて実際に米国発電会社にピンポイントで影響を与える山火事の増加などが挙げられていた。
確かに米国では山火事発生によって電力会社の設備にダメージを与えて損失が出ているといった話や、そもそも電力会社の設備が火災原因になって巨額賠償金が発生していきなりデフォルトになるとかいう不穏な動きを示す銘柄というのが散見される。

ただ、この米国電力企業関連が火災に巻き込まれて死ぬパターンというのは気候変動が原因ではない可能性が高いように思われる。
この類似例としてベネズエラで起こった大停電の例が挙げられる。
ベネズエラの国営電力会社はご存知の通りチャベス社会主義によって利益が出ない体質に陥っており、様々なメンテナンスが行き渡らなくなっている。
その中で特に致命傷だったのが高圧線周りの草刈りの費用を捻出できなかったことにあり、高圧線周りの漏電から火災の火種が草刈りできなかった草木に引火し、大規模な山火事が発生して配電が断たれたことにある。
これによりベネズエラでは大停電が発生した。

米国はなまじ電力会社が民営化されているということもあり、株主からの配当還元や自己株買い還元圧力が強く、これに対応するためにメンテナンス費用をすごくケチっていると言われている。
そのためベネズエラと同様な高圧線周りの草刈りを怠り、これに引火することによって大規模な山火事が増加している可能性が高い。

<エジソンインターナショナルの株価>
タイトルなし



現にPG&Eという米国電力会社においては、この会社の設備が原因によって大規模森林火災が発生したと認定され、莫大な賠償金負担が発生するということで格付けがBBB格からたった数カ月でD(ようはデフォルト)にまで落ちた。

<PG&Eのチャート>
タイトルなし




欧州・アジア圏ではあまりこうした山火事による発電会社の巨額賠償金発生というのは聞かなく、これは気候の違いはあるものの、米国ほど株主還元圧力が高くないことや半国営系が多いことから、基本的なメンテナンス投資がきちんとできているということではなかろうか。

そういった意味では米国発電会社への投資というのは場所によっては山火事リスクによる突然の多額損失発生を背負うリスクがあるため、こと人気のある米国株だが発電会社だけは避けた方が無難なように思える。
ちなみにPG&Eの件では株よりも社債投資家の方が被害範囲としては広範囲だったようにも思われる。
 

中国のAT1債がもはやAT1債としての役割を放棄

CBIRCのAT1債の扱いに関するニュースリリース

なりふりかまわぬ中国金融当局の措置。

こちらはCBIRCが「中国語のみ」で開示している資料だが、中身はかなり衝撃的な内容だ。
このCBIRCの発表の内容は、なんとAT1債の減免トリガーがゴーイングコンサーンベースではなく、Tier2債と同じゴーンコンサーンベースのものに変更するという話であり、AT1債の本来の役割を完全に放棄させるところまで妥協に向かっている。
具体的にどういうことなのか詳しく解説しよう。

通常AT1債というのは「銀行が実質破綻しないよう、破綻する前に損失を負担させる劣後債」である。
大抵の国ではこのラインをバーゼル3の基準と同様な中核的自己資本比率が5.125%というのを目安にしている。
ただし、実際の運用については各国・各地域で異なり、例えば欧州のAT1債は5.125%までCET1比率が下がったら問答無用で減損トリガーが引かれるが、アジアの国々の場合は個別で金融当局が判断してというような感じだ。
ただ、AT1債というのは実質破綻に陥る前に減免トリガーが引かれる「ゴーイングコンサーンをベースにした劣後債」であることはどこでも共通した話だ。
しかし、中国金融当局はこの原則を捻じ曲げにきたのだ。
中小銀行がLGFV向け融資の不良債権化で苦しんでおり、ファンドライジングが必要であることから、これら中小銀行がAT1債の発行が必要であることは目に見えている。
しかし、包商銀行を考えるといつトリガーが引かれるかわからないので安易に債券投資家は手を出せない。

<参考過去記事>

中国の中小銀行が公的管理下に置かれた時、AT1債はどうなるのか

そこで中国金融当局はAT1債について国内基準行については「ゴーンコンサーンベース」でしかトリガーを引かないと宣言したのだ。
つまり「実質破綻を認定した場合のみ減免される劣後債」にステータスが変わった。
これはTier2債とほぼ定義が同じになったことを意味する。
もちろんAT1債自体は弁済順位がTier2債より低いし、クーポンスキップの可能性も高いし、満期がないという点では未だにTier2債よりも劣後している債券であることは確かだ。
しかしAT1債の一番の特徴である「実質破綻しないよう、自己資本を拡充させるために事前に減免する劣後債」という役割は完全に放棄された。

現状投資家は中国当局が包商銀行のベイルイン失敗で中小銀行を変な形で潰すことはないと認識している。
ただ、ゴーイングコンサーンベースであるAT1債はそれでも減免される可能性があるため手を出しずらい。
そこで中国共産党は上記の内容を発表し、投資家に対してAT1債はクーポンは止まるかもしれないが、少なくとも元本が毀損するようなことはさせないということをはっきりと示したのだ。
これはモラルハザード以外のなにものでもないが、投資家が背負うリスクはクーポンスキップだけであることが明示され、投資家が投資しやすいように制度を曲げてきた。

このように中国政府は何が何でも中小銀行破綻で金融システムが崩壊しないよう下支え策を次々と打っている。 

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村越誠

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